【認知の可否|全体・重複認知|効力・戸籍記録の消除】

1 認知の対象者|基本
2 認知×認知|認知の可否|先の提出が優先
3 認知×認知|効力・消除
4 嫡出推定・誤作動|具体例・概要
5 推定を受けない嫡出子×出生届|概要

1 認知の対象者|基本

事情によっては認知ができないこともあります。
認知しようとする『子』について,認知できる条件をまとめます。

<認知の対象者|基本>

あ 任意認知・対象となる子

非嫡出子=嫡出でない子

い 具体的条件

次の両方に該当する
ア 婚姻関係にない父母間に生まれたイ 誰からも認知されていない ※旧民法872条『私生児』
※能見義久ほか『論点体系判例民法9親族』第一法規p216

2 認知×認知|認知の可否|先の提出が優先

当然ですが『認知の重複』は認められません。

<認知×認知|認知の可否>

他人から既に『任意認知』をされた子
=他人の非嫡出子
→さらに認知をすると『認知が重複』してしまう
→認知請求・任意認知はできない
※東京地裁昭和39年9月12日
※大阪高裁昭和11年6月26日

結局『先に認知届を提出した方が優先』と言えます。

3 認知×認知|効力・消除

『重複した認知』は認められません(前述)。
『2番目の認知届の提出』があった場合,本来,受理されません。
この点,仮に誤って受理された場合の扱いをまとめます。

<認知×認知|効力・消除>

あ 重複認知×効力

誤って『重複する認知』が受理された場合
→無効である
※東京地裁昭和7年9月19日

い 重複認知×記録消除

誤って『重複する認知』が受理された場合
→職権で消除される
※大正5年11月2日民事甲1331号民事局長回答
※島津一郎ほか『新判例コンメンタール民法13』三省堂p101

4 嫡出推定・誤作動|具体例・概要

子の出生に関しては『嫡出推定』というルールがあります。
詳しくはこちら|嫡出子・嫡出推定|基本|差別的ニュアンス・再婚禁止期間・準正
嫡出推定により『真実の父でない者が父と推定されてしまう』ことがあります。
嫡出推定が誤作動を生じた状態です。
この場合,認知すると『父が重複してしまう』ことになります。
前提となる『嫡出推定の誤作動』の具体的状況をまとめます。

<嫡出推定・誤作動|具体例・概要>

あ 典型的具体例

女性Aが男性Bと婚姻している状態であった
女性Aが他の男性Cと性交渉を行い妊娠・出産した
→子は『男性B』との間に嫡出推定が及んでしまう

い 嫡出推定・誤作動

新生児が,男性Aとの間の嫡出推定に該当する
→原則的に『男性Aの嫡出子』として扱われる
しかし実際の父は男性Cである

嫡出推定の誤作動が生じた場合の『認知』の扱いは別に説明しています。
詳しくはこちら|嫡出推定・誤作動×認知の可否|嫡出否認が必要|例外=推定が及ばない

5 推定を受けない嫡出子×出生届|概要

婚姻後200日以内に子が誕生することがあります。
近年の『できちゃった結婚=デキ婚』の状況が典型例です。
この場合,嫡出推定を形式的に適用すると『認知が必要』となります。
しかし判例の解釈により認知は不要とされています。
要するに出生届において『夫』を『父』とすることができるのです。
結論は当たり前のようですが,ちょっと複雑な解釈論があるのです。
(別記事『嫡出推定を『受けない』×出生届』;リンクは末尾に表示)

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