1 不貞行為×不真正連帯債務|一方の弁済→他方への請求ができない
2 不貞行為×不真正連帯債務|慰謝料額が同じとは限らない
3 配偶者・不貞相手への慰謝料請求|『同時/時間差』方式
4 不貞の慰謝料請求|『同時/時間差』→違いが生じる理由

1 不貞行為×不真正連帯債務|一方の弁済→他方への請求ができない

不貞行為の責任として『不貞を行った2名』が慰謝料支払義務を負います。
一方が弁済した場合の法的な扱いをまとめます。

<不貞行為×不真正連帯債務|一方の弁済>

あ 法的性質|基本

共同不法行為である
共同不法行為者は『不真正連帯債務』を負う
※民法719条
※最高裁昭和57年3月4日

い 弁済の効果

共同不法行為者の一方が弁済した場合
→他方の債務も消滅する
※横浜地裁平成3年9月25日

原則的に『他方には請求できない』という状態になります。
しかしこれは原則論です。
実際には別の事情の影響により,このようにならないことも多いです。

2 不貞行為×不真正連帯債務|慰謝料額が同じとは限らない

不貞を行った2名の慰謝料額の違いに関してまとめます。

<不貞行為×不真正連帯債務|慰謝料額の違い>

あ 不貞の慰謝料|金額の違い

配偶者Bと不貞相手Cの負う慰謝料額は同じとは限らない
(別記事『理論』;リンクは末尾に表示)
(別記事『相場』;リンクは末尾に表示)

い 一方の全額弁済×不足|例

Cに認められた『慰謝料額』の全額を弁済した場合
→Bに認められる『慰謝料額』の方が大きいこともある
→この場合『差額』はまだ残っている

個別的事情により『慰謝料額が違う』ということはあり得るのです。

3 配偶者・不貞相手への慰謝料請求|『同時/時間差』方式

不貞行為の慰謝料は『不貞を行った2名』に対して請求できます(前述)。
請求する場面では『配偶者』と『不貞相手』への請求のタイミングが重要です。
実務においてタイミングにより『違いが生じる可能性』があります。
なお『不貞相手への請求をする→配偶者が戻ってくる』誘引作戦もあります。
(別記事『実務的攻防』;リンクは末尾に表示)
ここではこの誘引作戦は考えず,単に慰謝料請求の有利/不利だけの考察を進めます。
思考実験として2パターンの請求プロセス進行を想定します。

<慰謝料請求を『同時』に行うパターン>

あ 訴訟段階

配偶者,不貞相手を共同被告として500万円を請求
→被告2名に対し200万円の認容判決

い 支払段階

2名が合計で200万円を支払ったら弁済完了となる

<慰謝料請求を『時間差』で行うパターン>

あ ステップ1

不貞相手に500万円請求
→200万円の認容判決
→200万円が支払われた

い ステップ2

配偶者に500万円請求
→理論的にはゼロ(棄却)となるはず
→現実的にそうとは限らない

4 不貞の慰謝料請求|『同時/時間差』→違いが生じる理由

慰謝料請求のタイミングにより違いが生じる理由を整理します。

<『同時/時間差』→違いが生じる理由>

あ 理論的な『慰謝料額』の違い

配偶者と不貞相手の慰謝料金額(相場)の違い
(別記事『理論』;リンクは末尾に表示)
(別記事『相場』;リンクは末尾に表示)

い 理論的な判断

前提事情がしっかりと主張・立証できれば
→『同時』『時間差』いずれのパターンでも結果に違いは生じない

う 現実的な判断の傾向

『責任なし』という積極的・独立的判断をすることを避ける意向が生じる
→実務上『違いがない』と判断されない傾向がある

感覚的なものが現実的な慰謝料の判断につながる,という理論です。
非常にデリケートな思考回路の考察です。
再現可能性はそれ程高いとは言えないです。

<参考情報>

第一東京弁護士会法律相談運営委員会『実例 弁護士が悩む家族に関する法律相談―専門弁護士による実践的解決のノウハウ』