1 『名』の変更|基準|合理性がないと許可されない
2 命名自体が問題系|父母の片方の独断での命名→幼少のため許可された
3 命名自体が問題系|父の元カノの名を長女に命名→許可された
4 恥ずかしい系|母が独断で『精子』の命名→『整子』への変更→許可された
5 恥ずかしい系|男の子に『桃千代』命名→嫌がり使わなかった→許可された
6 姓名判断系|姓名判断に応じた『名』変更→許可されなかった
7 姓名判断系|近所の類似名+姓名判断に応じた『名』変更→許可されなかった
8 紛らわしい系|近所に同姓同名がいた→許可された
9 紛らわしい系|同じ『名』の男女が結婚→許可されなかった
10 紛らわしい系|ある意味嫁姑の衝突=『同名』→許可された
11 僧侶系|僧名に変更した後さらに別の僧名に変更→許可された

本記事では『名』つまりファーストネームについての『変更』の手続について説明します。

1 『名』の変更|基準|合理性がないと許可されない

(1)『名』の変更基準|戸籍法

『名』の『変更』手続について,戸籍法上の規定があります。

<『名』の変更|戸籍法>

『正当な事由』→家裁の許可が必要
※戸籍法107条の2

当然ですが,一定の合理性がないと変更は認められない,ということです。

(2)『名』の変更許可の基準

『名』の変更許可の基準は,条文上『正当な事由』と記載されているだけです。
『基準』として判例上示されるケースも少ないです。
1つのカテゴリだけ『基準』を紹介します。

<父母の片方の独断での『命名』×有効性>

父母の一方が独断で命名→出生届を提出した
届出は有効である
※山形家裁鶴岡支部昭和57年11月29日

以下,実際の具体的な判例の内容をまとめます。

2 命名自体が問題系|父母の片方の独断での命名→幼少のため許可された

<父母の片方の独断での命名→変更>

あ 基準

従前の名が社会生活上いまだ定着していない場合
→変更が認められる

い 具体的事情の判断

子の年齢は審判時1年4か月であった
→『定着』していない
→『名』の変更を許可した
※山形家裁鶴岡支部昭和57年11月29日

前述のとおり『命名を両親の一方が納得していない』だけでは『変更』は認められません。
とは言っても,まだ幼少であれば『名前が拡散していない』です。
そこで,例外として変更を許可することも比較的認められる傾向があります。

3 命名自体が問題系|父の元カノの名を長女に命名→許可された

命名の経緯に非常に特殊な事情があるケースの判例を紹介します。
ありそうだけど普通は生じない,という現象が生じています。

<父の元カノの名前を付けた>

あ 事案

長女が誕生した
父が推奨した『文子』という命名をした
その後『文子』というのは父の以前の恋人と同一の名であることが発覚した
当然命名した当時は,母はこの事情をまったく知らなかった

い 発覚経緯;オフライン恋文時代

父が,元恋人と偶然スキー場で再会した
焼けぼっくい再燃焼が発現した
父が元恋人に宛てて『恋文』を書いた
その時,推敲を重ねた
草稿を自宅ゴミ箱に捨てた

う 母驚愕の草稿内容

『現在結婚しているのを後悔し,妻や子供がいなかったら二人でどこかへ行ってしまいたい。文子さんの為なら命も惜しくない・・・』
(命名に含まれる『文』と発覚経緯の『恋文』が重複する→皮肉→母の受けるダメージは大きい)

え 裁判所の評価

通常であれば『文子』の名称や文字を避けるはずである
この名前を維持させることは,長女自身にとっても穏当ではない
両親にも不愉快な感情をかもしたり,家庭の円満や平和を脅やかす要因となる
家庭生活の破壊を来しかねない
長女自身の幸福を阻害する→その生活基盤をあやうくする可能性をもはらんでいる
『文子』の命名自体が一種の錯誤と言える

お 裁判所の判断(結論)

『勝美』への変更を許可した
(元恋人に負けない・勝つという気持ちが込められているかもしれない)
※前橋家裁沼田支部昭和37年5月25日

4 恥ずかしい系|母が独断で『精子』の命名→『整子』への変更→許可された

ネーミングが『恥ずかしい』と思い,後悔するカテゴリの1つです。

<『精子』→『整子』>

あ 両親で命名の意見が分かれた

女の子が誕生した
父母で命名を考えていたが意見が食い違っていた
父の意見=『家を整える』→『整子』
母の意見=『精神の強い子になれ』→『精子』

い 父の出張→母が独断で『精子』命名

父は漁船のドック入りのため沖縄に2か月間の出張が始まった
母は独断で『精子』の命名で出生届を提出した

う 両親が改めて協議→後悔

父は沖縄出張が終わり,戻ってきた
父は『精子』命名を知って,強く反対した
『精子』の兄・姉も反対した
そこで『精子』は『せい子』という表記を用いるようになった

え 『名』の変更許可申立

正式に『精子』→『整子』と変更する許可申立がなされた

お 裁判所の判断

『名』の変更を許可した
※那覇家裁昭和47年10月30日

5 恥ずかしい系|男の子に『桃千代』命名→嫌がり使わなかった→許可された

現在『桃太郎』という男性は『英雄(au)』の1人としてポピュラーです。
これにちなむケースを紹介します。
『平成』ではなく『昭和』27年です。
時代のスパイラルを感じるケースと言えます。

<『桃千代』は男の子には不適切>

あ 命名

男の子に『桃千代』と命名した
『桃イコール女性』とは限らない
例;桃太郎(実在ではないが)

い 通称使用へ

『桃千代』はこのネーミングを嫌がるようになった
中学校卒業の頃より,通称として『兼弘』という名を使用するようになった
十数年間,日常生活では『兼弘』を使い続けてきた

う 裁判所の評価

『桃千代』という名称は女性を連想せしめるものである
男子の名としては,珍奇に属する

え 裁判所の判断(結論)

変更を許可した
※福岡高裁昭和27年9月15日

6 姓名判断系|姓名判断に応じた『名』変更→許可されなかった

両親の新生児への想い入れは非常に大きいです。
この点『姓名判断』も根強い人気を誇っています。
これに関する『名』変更ケースを紹介します。

<姓名判断に応じた『名』変更>

あ 事案

出生届で『和加子』と命名された
出生後間もない時期に,姓名判断を行った
『ゆみえ』がベストと指南された
家族は『ゆみえ』と呼ぶようになった
子供が小学校に入学した
正式に戸籍上も『有満恵』と変更する許可申立がなされた

い 裁判所の判断

『名』の変更を許可しない
※東京高裁昭和52年10月25日

7 姓名判断系|近所の類似名+姓名判断に応じた『名』変更→許可されなかった

根底にある『姓名判断』の影響を裁判所が見抜いた判例です。

<姓名判断でのベストネーム狙い>

あ 事案

申立人は『◯◯元助』(もとすけ)である
約1キロメートル離れたところに同姓の『◯◯本介』(ほんすけ)という者が居住していた
呼称が紛らわしい
申立人宛の電報と郵便が,各1回,『本介』方に誤配されたことがある

い 裁判所の評価

名の文字・呼び名(読み方)は異なる
電報と郵便物の誤配は,申立人の転居後,間もない頃の一時的な事故である
将来そう度々起るものではない
申立人は,姓名判断で好ましいとされた『龍司』に変更したいという動機が窺われる

う 裁判所の判断(結論)

『名』の変更を許可しなかった
※東京高裁昭和32年9月7日

8 紛らわしい系|近所に同姓同名がいた→許可された

命名した名前を変更する理由として『紛らわしい』という事情はよくあります。

<近所に同姓同名が居てたよ>

あ 事案

『幸枝』と命名された
近隣に約1か月違いで出生し同じ幼稚園に入園している『同姓同名者』が居住していた
役場から来る書類もまぎらわしい

い 裁判所の評価

今後一緒に小学校に進学することにより不便不都合が予想される
未だ幼少で名の上に築かれた社会生活関係は複雑であるともいえない

う 裁判所の判断(結論)

『幸枝』→『幸恵』への変更を許可した
※東京高裁昭和48年4月12日

9 紛らわしい系|同じ『名』の男女が結婚→許可されなかった

現在,最高裁で審理中ですが,少なくも現時点では『夫婦同姓』の制度が稼働しています。
これとは違って,夫婦で『同名』というコンフリクトが生じたケースです。

<夫婦同『名』>

あ 事案

夫婦の『名』が同一であった
夫は『名』の変更許可を申し立てた

い 裁判所の判断

『名』の変更を許可しない
※東京高裁昭和47年2月9日

10 紛らわしい系|ある意味嫁姑の衝突=『同名』→許可された

夫婦の問題・離婚原因として『嫁姑問題』は昔も今も大きなシェアを誇ります。
『嫁vs姑の衝突』でも『名前の衝突』というケースがあります。

<嫁vs姑『同名』問題>

あ 事案

妻と姑は同一の名『俊子』であった
電話・郵便物の名宛人の判断に混乱が生じる→日常生活において多大の支障を被っていた
妻は『明子』を通称として用いていた
正式に『明子』への変更許可を申し立てた

い 裁判所の判断

『名』の変更を許可した
※広島高裁岡山支部昭和46年2月1日

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11 僧侶系|僧名に変更した後さらに別の僧名に変更→許可された

『僧侶』は『僧名』をもらいます。
本名も『僧名』に揃えたい,というニーズは強いです。
『名』変更許可申立のメジャーユーザーの1クラスタです。
この点『所属寺院』を転職すると『別の僧名』に変わります。
『ダーマ寺院での転職』という,ゲームの世界のような話しが現実化したケースを紹介します。

<『僧名』への変更×2回>

あ 事案

改名の許可を得て名を僧名に変更した
その後所属寺院が替わった
更に『名』変更の許可を求めた

い 裁判所の判断

『名』の変更を許可した
※広島高裁岡山支部昭和57年11月25日