離婚に関係する金銭は時効にかかりますか。
期間はどのように決まっているのですか。

1 財産分与の消滅時効は離婚成立から2年間
2 夫婦間の慰謝料の消滅時効は離婚成立から3年間
3 不貞相手への慰謝料の消滅時効は『不貞行為を知った時』から3年となる
4 養育費は過去の未払い分が5年or10年で時効消滅する

1 財産分与の消滅時効は離婚成立から2年間

財産分与には消滅時効があります。

財産分与は,離婚が成立した日から2年が経過すると,財産分与を請求できません(民法768条2項)。

2 夫婦間の慰謝料の消滅時効は離婚成立から3年間

(1)離婚慰謝料の消滅時効起算点

慰謝料の請求権は,不法行為にもとづく損害賠償請求権の1つです(民法709条,710条)。
3年の短期消滅時効にかかります(民法724条)。
離婚とともに慰謝料を請求するという場合は,離婚が具体化することによって慰謝料が生じたと考えます。
離婚慰謝料と呼ばれます。
そこで,消滅時効の起算点は離婚成立の日となります。

(2)不法行為自体の消滅時効起算点

一方,不貞行為など,これ自体が不法行為となることもあります。
この場合,不貞行為の時点で損害賠償請求権が生じた,とも考えられます。
そうすると不貞行為を(請求者)が知った時,が消滅時効の起算点となります(民法724条)。

(3)夫婦間の消滅時効の『停止』

不貞行為自体による慰謝料については,離婚成立から6か月間は消滅時効が完成しません。
これを『時効の停止』と呼んでいます(民法159条)。
夫婦間では,常識的に相互に権利行使をしないことが趣旨です(後掲文献1)。
逆に言うと,離婚時に請求できるように保護しておくということです。

(4)実際の離婚に伴う慰謝料請求

夫婦間の慰謝料請求は,通常,離婚時に行います。
この場合一般的に離婚慰謝料として請求します。
不貞行為から3年の経過による時効消滅を意識しなくて良いです。

3 不貞相手への慰謝料の消滅時効は『不貞行為を知った時』から3年となる

夫婦間では不貞行為に対する慰謝料請求について,消滅時効の起算点は離婚成立時となるのが通常です。
一方不貞相手への請求についてはこれとは違います。

現実として,不貞関係が発覚した夫婦は,これによって離婚するかどうか,はすぐには決まりません。
夫婦間で謝ったり,話しあったりして,その後の方針を決めるのが通常です。
このような考慮期間様子見期間が長期化すると3年が経過するということが生じます。
不貞発覚から3年が経過時点で不貞相手への慰謝料請求を認めるべきだ,という発想もあります。
一方で不貞相手と被害者との関係夫婦でもないですし離婚という状態も生じません。
夫婦間の消滅時効の停止離婚慰謝料は該当しません。

この論点について,最高裁判例により見解が統一されました(後掲判例1)。
『不貞行為を知った時』を起算点とすることとされたのです。

逆に言えば被害者の取るべき対応は,次のようになります。

<不貞行為の被害者の取りべきアクション>

離婚するかどうかの検討をしながら並行して,発覚から3年以内に不貞相手への慰謝料請求をすべき

4 養育費は過去の未払い分が5年or10年で時効消滅する

養育費の消滅時効について説明します。

(1)継続的に生じる養育費

継続的に生じる養育費の請求権には消滅時効はありません。
長期間不払いだったという場合でも合意や審判で決めた期間内は,毎月(当月分)の養育費を請求できます。

(2)過去分(不払い分)の養育費

養育費のうち過去支払うべきであったが支払われていないという部分は別です。
過去分の養育費請求権は,請求権が発生した時点=決められた日,から消滅時効が進行します。
消滅時効の期間は2種類あります。

<過去の養育費の消滅時効>

あ 離婚協議書・口頭で取り決めを行った場合

 →5年(民法169条)

い 調停,審判,訴訟において定められた場合

 →10年(民法174条の2)
 《具体的対象》
 ・調停調書
 ・裁判上の和解調書
 ・確定審判
 ・確定判決
 

条文

[民法]
(夫婦間の権利の時効の停止)
第百五十九条  夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(定期給付債権の短期消滅時効)
第百六十九条  年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。
(判決で確定した権利の消滅時効)
第百七十四条の二 確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
(略)

(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条  不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

判例・参考情報

(判例1)
[最高裁判所 平成6年1月20日]
夫婦の一方の配偶者が他方の配偶者と第三者との同せいにより第三者に対して取得する慰謝料請求権については、一方の配偶者が右の同せい関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権の消滅時効が進行すると解するのが相当である。けだし、右の場合に一方の配偶者が被る精神的苦痛は、同せい関係が解消されるまでの間、これを不可分一体のものとして把握しなければならないものではなく、一方の配偶者は、同せい関係を知った時点で、第三者に慰謝料の支払を求めることを妨げられるものではないからである。

(文献1)
[我妻榮・有泉亨 コンメンタール民法総則 第3版 380頁]
夫婦間の継続中は,相互の間で権利を行使することは,事実上困難だからである。