財産分与をもらった後でも,別途に慰謝料をもらえますか。

1 財産分与の中に慰謝料を含める慰謝料的財産分与もある
2 経緯,背景から責任の対価の趣旨があれば慰謝料的財産分与と判断される

1 財産分与の中に慰謝料を含める慰謝料的財産分与もある

一般的には,財産分与と慰謝料は別個のものです(民法768条,709条,710条)。
しかし,財産分与の趣旨として慰謝料を含めることもあります。
詳しくはこちら|慰謝料的財産分与;清算的財産分与との区別
逆に言うと,この趣旨が曖昧になる場合もあります。

<財産分与の中に慰謝料が含まれるか否かが曖昧になるケース>

・弁護士などの専門家を介さずに,当事者同士で離婚協議書を調印した
・書面上の財産分与と記述されている
・片方は(清算的)財産分与として捉えていて,もう一方は慰謝料の意味で捉えている

慰謝料の趣旨の財産分与,のことを慰謝料的財産分与と呼んでいます。
結局は,財産分与がどのような趣旨のものであったかということが問題となります。
逆に財産分与には慰謝料(的財産分与)を含んでいないという場合は,別途慰謝料請求をすることができる,ということになります(後掲判例1)。

2 経緯,背景から責任の対価の趣旨があれば慰謝料的財産分与と判断される

財産分与の中に慰謝料が含まれているかどうか,の判断について説明します。

<財産分与に慰謝料が含まれているかどうかの判断基準>

あ 離婚協議書の表現

 財産分与には慰謝料は含まれないと明記してあれば問題なしです。

い 財産分与の内容の決定方法,算定方法

(例)
 夫婦共有財産を評価し,これに分与割合をかけて算出した,ということが明確
 →これは清算的財産分与であり慰謝料的財産分与は含まない,と解釈されます。

う 財産分与の金額や支払方法 と (元)夫婦それぞれの経済力

 慰謝料も含んでいるとみるには少ないと言える→慰謝料は含まれない方向

え 財産分与の合意に至る経緯

(例)
 ・財産分与の協議中は,破綻の責任には一切触れていなかった
 ・財産分与の協議後に不貞などの有責行為が発覚した
  →慰謝料は含まれない方向

条文

[民法]
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

(財産分与)
第七百六十八条  協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2  前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3  前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

判例・参考情報

(判例1)
[最高裁判所第2小法廷昭和43年(オ)第142号慰藉料請求事件昭和46年7月23日]
離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とするものであつて、分与を請求するにあたりその相手方たる当事者が離婚につき有責の者であることを必要とはしないから、財産分与の請求権は、相手方の有責な行為によつて離婚をやむなくされ精神的苦痛を被つたことに対する慰藉料の請求権とは、その性質を必ずしも同じくするものではない。したがつて、すでに財産分与がなされたからといつて、その後不法行為を理由として別途慰藉料の請求をすることは妨げられないというべきである。もつとも、裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに分与の額および方法を定めるについては、当事者双方におけるいつさいの事情を考慮すべきものであるから、分与の請求の相手方が離婚についての有毒の配偶者であつて、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被つた精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額および方法を定めることもできると解すべきである。そして、財産分与として、右のように損害賠償の要素をも含めて給付がなされた場合には、さらに請求者が相手方の不法行為を理由に離婚そのものによる慰藉料の支払を請求したときに、その額を定めるにあたつては、右の趣旨において財産分与がなされている事情をも斟酌しなければならないのであり、このような財産分与によつて請求者の精神的苦痛がすべて慰藉されたものと認められるときには、もはや重ねて慰藉料の請求を認容することはできないものと解すべきである。しかし、財産分与がなされても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解せられないか、そうでないとしても、その額および方法において、請求者の精神的苦痛を慰藉するには足りないと認められるものであるときには、すでに財産分与を得たという一事によつて慰藉料請求権がすべて消滅するものではなく、別個に不法行為を理由として離婚による慰藉料を請求することを妨げられないものと解するのが相当である。所論引用の判例(最高裁昭和二六年(オ)四六九号同三一年二月二一日第三小法廷判決、民集一〇巻二号一二四頁)は、財産分与を請求しうる立場にあることは離婚による慰藉料の請求を妨げるものではないとの趣旨を示したにすぎないものと解されるから、前記の見解は右判例に牴触しない。