遺留分の基礎知識
- Q&A【遺留分という制度】
遺留分とはどのような制度ですか。
- 相続人が一定割合の相続財産を取得することを法律上保障する制度です。
この制度は、残された家族の生活における物質的な基盤を最低限確保することを目的としています。
よく出される例は「一家の大黒柱が亡くなってから,愛人がいたことが発覚し,さらに「すべての財産を愛人に遺贈する」という衝撃の遺言が発見された」とい
うケースです。
そのままでは,妻子の元には一切の財産が残らず,路頭に迷うことになってしまいます。
このような場合に,遺産のうち一定の部分は「遺留分」として妻子は愛人から返還を受けることができるのです。
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- Q&A【遺留分の制度で保護される人の範囲】
遺留分の制度で保護されるのは誰ですか。
- 兄弟姉妹以外の相続人です(民法1028条)。
つまり,配偶者、直系卑属(子または孫)、直系尊属(父母または祖父母)ということになります。
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- Q&A【遺留分として保障される範囲】
どの程度が遺留分として保障されるのですか。
- 直系尊属のみが相続人である場合は、被相続人の財産の3分の1です。
その他の場合では、被相続人が1人の場合,財産の2分の1です(民法1028条)。
遺留分権者が複数いる場合は、ちょっと複雑です。
各権利者の法定相続分に上記遺留分の割合を乗じた割合が、各相続人の遺留分となります(民法1044条)。
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- Q&A【遺留分の制度の具体的な使い方】
遺言で,不当に少ない財産しか承継できないことになりました。
遺留分の制度を使いたいのですが,具体的にどうするのでしょうか。
- 他の相続人や受遺者に対して,遺留分の不足分を請求することができます。
これを「遺留分減殺請求」といいます(民法1031条)。
この請求権は,遺留分が侵害されていることを知ってから1年以内に行使しなければ,時効によって消滅します。
また,相続の開始から10年が経った場合も同様です(民法1042条)。
理論上は口頭でも遺留分減殺請求は可能です。
ただ,後から「請求した」,「請求されていない」という争いになることを防ぐために内容証明郵便を用いて請求したことを証拠化しておくべきです。
もしも請求した証拠がないと,後から,「請求していないから時効が成立している」と相手に主張されてしまいます。
内容証明で請求した段階で時効は止まり(中断),このことが証拠化されます。
その後も相手方が主張を固持して遺産の(一部)返還に応じない場合は,提訴(裁判所に訴える)せざるを得ないを得ないことにもなります。
提訴する場合でも,その前に時効が中断されていれば,提訴のタイミング自体は相続(正確には遺留分が侵害されていることを知った時)より1年以上後でも問
題ありません。
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- Q&A【遺留分減殺請求をした後の結果】
遺留分減殺請求をした場合にどのような状態になるのですか。
- 法律的には,請求により,遺贈・贈与された財産(所有権)の一定割合が請求者に帰属することになります。
例えば不動産の一部がこれに当たる場合は,この不動産は結果的に遺留分減殺請求をした者と,遺留分減殺請求をする前の所有者(受遺者)との共有状態になり
ます。
請求を受けた者は,遺留分を侵害する範囲で,遺贈・贈与された財産を返還しなければいけません。
ただし受遺者は,現物返還ではなく,その価額分の金銭を弁償することが認められています(民法1041条)。
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- Q&A【遺留分減殺請求のバトルを避ける方法】
父の死後に遺留分減殺請求をされると兄弟で紛争になります。
避ける方法はありますか。
- 遺留分に関する規定に違反しない内容の遺言を作成することで,この紛争は避けられます。
しかし,不動産・有価証券(株等)の評価は遺産分割時に行われるため,結果的に遺留分に関する規定に違反してしまう可能性があります。
生前(相続の開始前)に,相続は放棄できませんが,遺留分については家庭裁判所の許可を受ければ可能なので,これによって避けることもできます(民法
1043条)。
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- Q&A【遺留分減殺請求のバトルを避ける方法】
遺留分減殺請求による紛争を避ける方法はありますか。
子供達(推定相続人)の間で話し合いができない状態です。
- 生命保険を活用して遺留分の請求を避ける方法があります。
→「特別受益」の項目をご覧
下さい。
遺留分対策(事業承継)
- Q&A【事業承継対策】
私(A)は,将来相続の際,確実に長男だけに財産を渡したいです。
次男も納得してくれています。
どのような方法が良いですか。
- A きちんと対策を取らないと思いもよらない結果が生じかねません。
いくつかの方法について説明して行きます。
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- Q&A【生前の相続放棄】
- A できません。
相続放棄は相続開始後(死亡後)にだけ可能です。
生前に行うことはできません。
生前は裁判所に申し立てることはできません。
仮に文書に一筆書いたとしても無効です(札幌高等裁判所昭和59年10月22日)。
※なお,大審院大正5年8月12日は実質的な相続放棄契約の有効性を認めています。しかし,これが一般論として現在も先例として効力があるとは思えませ
ん。
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- Q&A【遺言】
- A 一応意味はありますが,不確実です。
遺言に「全財産を長男に相続させる」ということを書けば一応そのとおりになります。
しかし,次男が遺留分を請求してくると,結局,長男の承継した遺産の一部は次男に渡すことになります。
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- Q&A【遺言+遺留分放棄】
- A 確実です。
遺言の先にある「遺留分減殺請求」を封じることは可能です。
「遺留分放棄」という手続きです。
単に書面に調印しただけでは効力がないと考えられます。
次男が家庭裁判所に申し立てることになります。
家庭裁判所から許可をもらえば「遺留分の放棄」が成立します(民法1043条)。
被相続人(予定の方)であるAの生前に手続きをすることが可能です。
この組み合わせでうまく全財産が長男に承継されることになります。
なお,状況によってはこれ以外に次の方法が使えることもあります。
・中小企業経営承継円滑化法による除外合意・固定合意
・信託を駆使する方法
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遺留分放棄
- Q&A遺留分放棄については,どんな場合に家庭裁判所は許可をくれるのでしょうか。
- A 特殊な事情がない限り許可されるのが現状です。
経験上,99%程度は許可されているようです。
許可の要件を詳しく言うと次のようになります。
<遺留分放棄の許可の要件>
1 放棄が本人の自由な意思に基づいている
2 放棄の理由に合理性・必要性がある
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- Q&A遺留分放棄の理由の合理性,とはどんなものでしょうか。
- A 遺留分放棄と引き換えとして金銭などを贈与する(した)こと,が典型例です。
一定の財産(金銭など)を渡すのと引き換えに遺留分放棄をする,という場合は,まさに「合理性」がありと言えましょう。
それ以前から贈与を受けていた場合も,同様です。
なお,実際の運用では,詳細に「合理性」を検討しない傾向があります。
大雑把に言えば,ご本人(申立人)が大きな間違いをしている,などでなければ許可される傾向が強いのです。
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- Q&A遺留分放棄が許可されなかった例はどのようなものでしょうか。
- A 例えば相続とは関係ない問題で熾烈な対立があり,その駆け引きとして「相続放棄」が使われたような例が不許可の典型例です。
両親が結婚に大反対しているようなケースが典型例です。
セリフ調に説明しましょう。こんなシーンです。
「どうしても結婚したいなら親子の縁を切る!」
「現在の法律では『縁を切る』ができない」
「仕方ないから『遺留分放棄』をしろ!」
これ以外にもいくつか不許可の裁判例はありますが,いずれも「極端な理由」です。
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- <遺留分放棄が不許可とされた例>
東京家庭裁判所昭和35年10月4日
神戸家庭裁判所昭和40年10月26日
大阪家庭裁判所昭和46年7月31日
和歌山家庭裁判所妙寺支部昭和63年10月7日
水戸家庭裁判所下妻支部平成15年6月6日
- Q&A次男が遺留分放棄の手続きを終えた後,私(A)が遺言を書かないまま亡くなるとどうなりますか。
- A 法定相続になります。
遺留分(=法定相続分の半分)を獲得する,失う,という以前の問題です。
遺留分放棄をした人も,フルに法定相続権が与えられるのです。
相続人がお子さん2人だけ(長男・次男)だとすれば,2分の1ずつになります。
結局,遺留分放棄の手続きはしなくても変わりはない,という状態になります。
要は,遺留分放棄は遺言とセットで初めて意味がある,ということができます。
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遺留分放棄許可取消
- Q&A遺留分放棄をした後にキャンセルすることはできませんか。
- A 家庭裁判所に対し,許可取消の申立をすることができます。
手続きとしては,2つの類型があります。
1 非訟事件手続法19条1項(家事審判法7条)による裁判所の職権発動
2 事情変更を理由とする取消(東京家裁昭和44年10月23日)
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- 【非訟事件手続法19条】
裁判所ハ裁判ヲ為シタル後其裁判ヲ不当ト認ムルトキハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得
2 申立ニ因リテノミ裁判ヲ為スヘキ場合ニ於テ申立ヲ却下シタル裁判ハ申立ニ因ルニ非サレハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
3 即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル裁判ハ之ヲ取消シ又ハ変更スルコトヲ得ス
- Q&A遺留分放棄の許可取消は,どんな場合に認められるのですか。
- A 取消をしないと不合理な場合だけ取消が認められます。
1度許可をした以上,容易に撤回を認めない,というスタンスなのです。
少なくとも,単に(事情に変化はないのに)「考えが変わった」というだけでは取消は認められません。
大雑把に言えば,「遺留分放棄をする前提として重要な事情」が変わった(なくなった)という場合に取消が認められます。
<取消を認めた例>
・東京家庭裁判所昭和44年10月23日
養子縁組が前提→離縁した
・松江家庭裁判所昭和47年7月24日
子の1人が家業である農業を継ぐことが前提→継がないで嫁いだ
・東京家庭裁判所昭和54年3月28日
兄弟円満だったので,好意で譲歩→対立が勃発
<取消が認められなかった例>
・東京高等裁判所昭和58年9月5日
多額の保証債務を負っていたので,強制執行を避ける目的があった→保証債務が消滅(完済)した
・東京家庭裁判所平成2年2月13日
大きな「事情の変化」なし
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- Q&A次男からの遺留分減殺請求を封じる方法はほかにもありますか。
- A 中小企業経営承継円滑化法の手続きや信託を用いる方法があります。
家業(中小企業)の株式であれば,中小企業経営承継円滑化法の制度が使える場合があります。
種類株式を活用する方法もあります。
また,信託契約によって,「将来の受益権」を次男に与えることにより,遺留分の主張を封じる方法もあります。
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除外合意,固定合意(中小企業経営承継円滑化法)
- Q&A中小企業経営承継円滑化法による手続きとはどんなものですか。
- A 前提として,一定規模の中小企業の代表者だけが対象となります。
遺留分のルールと関係するのは2種類の制度です。
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- Q&A【除外合意】
- (中小企業経営承継円滑化法4条1項1号)
内容=後継者へ生前贈与した自社株について,遺留分算定基礎財産に参入しないとする合意です。
結果=贈与された自社株は遺留分減殺請求の対象から外れます。
趣旨=事業承継を安定的に行い,後継者が会社経営に専念できるようにする
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- Q&A【固定合意】
- (中小企業経営承継円滑化法4条1項2号)
内容=後継者への生前贈与の自社株について,遺留分算定の基礎財産に参入する価格を合意時点での価格とする合意です。
結果=後継者の経営意欲・モチベーションの低下防止です。
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- Q&A【除外合意+固定合意】
- (中小企業経営承継円滑化法4条1項1号・2号)
除外合意と固定合意を組み合わせることもできます。
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- Q&A【除外合意,固定合意の手続き】
- 次の2機関での手続きを経る必要があります。
1 経済産業大臣の確認
2 家庭裁判所の許可
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- Q&A【経済産業大臣の確認内容】
- 除外合意,固定合意の制度を利用するための前提条件の確認です。
形式的な要件が中心です(7条1号)。
<確認内容>
・当該合意が経営の承継の円滑化を図るためにされたものであること
・申請者が後継者の要件に該当すること
・合意の対象となる株式を除くと,後継者が議決権の過半数を確保することができないこと
・以下の場合に非後継者がとることができる措置の定めがあること
1 後継者が合意の対象となった株式を処分した場合
2 旧代表者の生存中に後継者が代表者として経営に従事しなくなった場合
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- Q&A【家庭裁判所の許可基準】
- A 実質的な部分をチェックします。
要は,不利益を被る推定相続人が,真に納得しているかどうか,というところがポイントになります(8条2号)。
具体的には,非後継者が,株式を承継しないことの引き換えとして,他の財産を承継する(している),などの事情を調査されることになります。
<許可基準>
合意が当事者全員の真意によるものであること
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固定合意と贈与税
- Q&A【固定合意と贈与税】
固定合意により合意した評価額(証明額)と贈与税評価額が違う場合はどのようにすべきでしょうか。
- A 形式的な評価額よりも,「実際の(真の)評価額」を尊重すべきです。
税務上の評価,というのは形式的なものです。
相続税・贈与税の「評価通達」で算定方法は細かく定められています。
この「贈与税評価額」,が「実際の評価額」と乖離していることもあります。
具体例でご説明します。
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- Q&A【生前贈与時点の評価額(証明額)>贈与税株式評価額 の場合】
- 具体例;
贈与税株式評価額=100
生前贈与時点の証明額=200
- 贈与税申告では,「100」を用いるべきです。
生前贈与時点の証明額は,あくまでも「当事者間限りの取り決め」です。
非公開会社の株式は,財産の中でも特に個性が強いものです。
当事者の考え方で,「価値」「評価」は変わってきます。
当事者の考え方(価値観)によって,課税上の評価が変わるというのは不合理だと言えます。
「気持ち1つで課税額が変わる」ということになりますので。
実際の例として,実際の価値は贈与税評価額(評価通達)よりも高い,と主張した税務署が敗訴した裁判例があります(後掲)。
要は,せっかく評価通達というルールがあるのだから,その適用結果が極端に不合理という状態にない限りは評価通達を尊重する,ということです。
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- 【東京地方裁判所平成15年(行ウ)第214号贈与税決定処分取消等請求事件平成17年10月12日(抜粋)】
しかしながら,本件株式のように取引相場のない株式については,その客観的な取引価格を認定することが困難であるところから,通達においてその価格算定方
法を定め,画一的な評価をしようというのが評価通達の趣旨であることは前説示のとおりである。そして,本件株式の評価については,評価通達の定めに従い,
配当還元方式に基づいてその価額を算定することに特段不合理といえるような事情は存しないことは既に説示したとおりであるにもかかわらず,他により高額の
取引事例が存するからといって,その価額を採用するということになれば,評価通達の趣旨を没却することになることは明らかである。したがって,仮に他の取
引事例が存在することを理由に,評価通達の定めとは異なる評価をすることが許される場合があり得るとしても,それは,当該取引事例が,取引相場による取引
に匹敵する程度の客観性を備えたものである場合等例外的な場合に限られるものというべきである。
- Q&A【生前贈与時点の評価額(証明額)<贈与税株式評価額 の場合】
- 具体例;
贈与税株式評価額=100
生前贈与時点の証明額=50
- 贈与税申告は,「実際の価値」に基づくべきです。
この例では,50とすることも100とすることも両方考えられます。
原則として,贈与税の算定においては,評価通達が用いられるべきです。
しかし,この例のように証明額がそれよりも低い,ということは,「評価通達の算定方法が不合理」ということも考えられます。
つまり「贈与税評価額が実際の価値(実勢価格)から乖離して『独りよがり』になっている」ということになります。
仮にこのような状態であれば,法律上,「贈与税の算定では評価通達を用いず,実際の(真の)価値を用いる」ということになっています。
ということで「とにかく実際の(真の)価値を用いれば良い」というのが結論です。
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- Q&A【実際の申告のコツ】
- A 評価額の算定が税務署と異なることによるリスクを減らすために「多めに」申告・納税する安全策もあります。
現実的に,株式の実際の(真の)評価額は簡単に計算できません。
断定的に計算することはできません。
そこで,評価通達の算定方法を用いない場合は,税務署の判断と異なるリスクを残します。
仮に,事後的に税務署から修正申告を要請された場合,「差額」を追加納付すれば済む,ということにはなりません。
ペナルティとしての加算税まで余分に払うことになります。
具体例を用いて,具体的対応をまとめます。
<安全策;還付請求方式>
申告→100で行う
その後,更正の請求を行う(=50を主張する)
うまくいけば還付請求ができる(50が還付される)
<リスクテイカー>
申告→50で行う
税務署から修正申告を要請される可能性がある。
その場合,単に「差額」だけではなく,加算税を課せられるリスクを負う。
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種類株式
- Q&A【種類株式を用いた相続(遺留分)対策】
種類株式を用いた対策とはどんなものですか。
- A 無議決権株式,取得請求権付株式,取得条項付株式を用いる方法です。
種類株式というのは通常の株式と違う性格を持つ株式のことです。
文字通り,いくつか種類があります。
<種類株式>
・無議決権株式
・取得請求権付株式
・取得条項付株式
これらの利用によって,相続紛争予防,特に遺留分による事業承継への悪影響を抑えることができます。
無議決権株式
- Q&A【無議決権株式を用いた相続(遺留分)対策】
無議決権株式を用いた対策とはどんなものですか。
- A 議決権のない株式を次男に渡す,という方法です。
これは,「家業である会社の株式が財産の大部分」というケースで使える手段です。
株式のうち一定割合について,議決権のない株式とします。
そして,次男には議決権のない株式を与え,長男に議決権のある通常の株式を渡すのです。
次男が遺留分を侵害されない程度までの財産をもらっていれば,次男は遺留分の主張をできません。
その一方,次男の株式は議決権がありませんので,経営に実質的に関わることはできません。
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- Q&A【議決権のない株式を用いる注意点】
- A 注意点が2点あります。
<注意点>
1 次男が少数株主権を行使してくるリスク
・帳簿等の閲覧請求権行使
・株主総会招集請求権行使
・株主総会の議題提案権行使
・役員の解任請求権
2 定款に種類株式の規定がない場合は,定款変更が必要
→株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)が必要
3 既存の株式に制限を加える場合は全株主の同意が必要
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取得請求権付株式
- Q&A【取得請求権付株式を用いた相続(遺留分)対策】
- →株主から会社に対して,株式の買い取るよう請求できるものです。
取得請求権付株式は,あくまでも株主に選択権を与えるものです。
株主自身が,株式は要らないから現金化したい,と考えた場合に強制的に会社に買い取らせることができるというものです。
経営者サイドから,株主をコントロールするものではありません。
相続(遺留分)対策としての機能は薄いと言えましょう。
勿論,株主が会社への関与から脱したいと思った場合の方法を作っておくメリットはあります。
なお,元来の趣旨は,「株主に現金化の道を確保しておく→出資し易い」というものです。
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取得条項付株式
- Q&A【取得条項付株式を用いた相続(遺留分)対策】
- →会社から株主に対して,株式を売却するよう請求できるものです。
取得条項付株式は,会社サイドの判断で,強制的に株主から株式を買い取ることができるものです。
純粋に「買い取る」場合は現金と交換にはなります。
それだけではなく,他の財産との交換ということも可能です。
典型的なものは「無議決権株式と交換」というものです。
現金や無議決権株式と交換に(通常の)株式,つまり議決権を取り上げることになります。
経営権の分散を防ぐ強力な手段です。
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- ※株式のネーミングについて
厳密には,「全部取得条項付種類株式」というネーミングです。
「取得条項付株式」とは別の「種類」なのです。
ただし,「取得条項」が「付いている」株式という意味では同じです。
当サイト(ブログ)では必要な箇所以外では敢えて表記を区別しません。
- Q&A【取得条項付株式の注意点】
- →取得条項付株式を相続(遺留分)対策として利用する場合の注意点が2点あります。
<取得条項付株式の注意点>
1 「会社の決定(判断)」は株主総会の決議が必要
株主から株式を取得するという会社の判断は,具体的には株主総会の決議ということになります(会社法108条1項7号)。
従って,議決権の過半数の賛成が得られる状態にあることが前提となります。
2 現金での買い取りの場合,代金が「時価」となる
実務上,「時価」の判断は容易ではないことも多いです。
株式の買取は強制的なものです。
ある程度敵対的な状況になるのが通常です。
非上場株式の評価は非常に難しい面があります。
要は「終値」のような一義的な基準がないのです。
評価額(時価)について協議がまとまらない場合は,裁判所に申し立てて判断してもらう,ということになります。
このように時間・費用のコストがかかる可能性も孕んでいるのです。
このように,取得条項付株式は,会社側が議決権をコントロールできるという画期的なものですが,一定の制約が伴います。
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受益者連続型信託
- Q&A遺留分の問題を封じる方法のうち,信託を用いた手続きとはどんなものですか。
- A 受益者連続型信託を活用する方法です。
信託により,Aの財産を他の方(受託者)に形式的に譲渡します。
この際,次のような内容の信託契約を締結します。
<信託契約の内容>
実質的な財産権である「受益権」はAが持つ
Aが亡くなった時には,受益権は(A→)長男とする
長男が亡くなった時には,受益権は(長男→)次男とする
Aが亡くなった後,「受益権」は長男が持つことになります。
株式については,受益者が議決権を行使できます。
長男が経営権を握れることになります。
ここで通常であれば,次男が
「自分(次男)は財産をもらっていない。遺留分が侵害されている」
ということで遺留分減殺を請求してくるところでしょう。
しかし,信託契約で,「長男死亡時には次男が受益権を得られる」となっているために,遺留分の主張が制限されることになります。
次男も(将来ではあっても)「受益権の承継者」として扱われます。
正確には,「受益権のうち一定割合の承継者」ということになります。
簡単に言えば「将来(長男が死亡したら)次男も受益権をもらえる。侵害されていないじゃないか」というような立場です。
「将来得られる分までカウントされる」というのが信託ならではの理論です。
なお,「将来得られる分」は割合的に評価します。
そして,複数の受益者(長男と次男)の「得た受益権の割合」についての統一的な計算方法はまだありません。
敢えて考えるとすれば,平均寿命を用いて,形式的に「受益権を持っている期間」を出して,按分比例する形で割合を決めるという方法になりましょう。
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- Q&A【受益者連続信託の「期間制限」】
受益者連続信託では受益権の承継について,どのくらい先まで指定できるのですか。
- A 信託行為から30年後に存在している者,が有効とされる範囲です。
受益権を承継する者が「信託行為から30年後の時点」で存在している必要があります(信託法91条)。
・承継タイミングは制限なし
実際に「受益権を承継するタイミング」は,「30年後」よりも先で構いません。
・将来誕生する人物OK
信託行為の時点では存在してない人物,でも構いません。
まだ誕生していない「孫」を設定する例はよくあります。
・承継回数制限なし
また,この範囲内であれば,「承継」の回数に制限はありません。
例えば「委託者(当初の財産所有者)→配偶者→長男→次男→孫」など,数次にわたる承継も可能です。
<まとめ>
「登場人物(役者)エントリーは30年後で締切(確定)」と考えると良いでしょう。
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- Q&A【受益者連続信託の税務上の注意点】
- →税務上は「100%の受益権が長男→次男に移転する」と考えます。
つまり,A→長男,の時点で100%の受益権(信託財産である株式)が相続税の対象となります。
次に,長男→次男,という将来の相続の時点で,100%の受益権,が相続税の対象となるのです。
1ステップ分を省略する,という節税効果は一切生じません。
民法上と税法上の扱いが明確に異なるので注意が必要です。
なお,「遺留分算定基礎財産には入らないけど税法上相続財産とみなされる」というのは「遺留分キャンセラー」3種に共通です。
<遺留分キャンセラー>
・生命保険
・死亡退職金
・受益者連続信託
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- Q&A【後継ぎ遺贈型遺言】
将来の相続まで指定するのは信託ではなく通常の遺言に書けば同じことではないでしょうか。
- A 後継ぎ遺贈型遺言は無効とされています。
遺言者が亡くなった時の承継者(受遺者)を指名するのは遺言の典型例です。
その次の相続,つまり,受遺者が亡くなった時に,誰が承継するか,まで指定した遺言を「後継ぎ遺贈型遺言」と呼んでいます。
<後継ぎ遺贈型遺言の条項例>
遺言者が所有する不動産甲について,遺言者が死亡した場合には長男に相続させ,次に長男が死亡した場合にはその不動産を次男に相続させ,さらに次男が死亡
した場合にはその不動産を孫に相続させる
この有効性については,いくつかの説がありますが,実務上は否定されています。
理由は,そもそも遺言は遺言者の相続時の承継先だけを拘束できる,という本質論です。
その先の承継内容については,遺言者の希望に過ぎず,拘束力はない,ということになります。
信託では可能でも,通常の遺言では「次の」相続については決められないという結論です。
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