HOME > 相続・遺言 > 相続・遺言 Q&A【相続 の基礎知識】

手続きの流れ

Q&A相続による財産承継について, 全体的な流れをまず教えて下さい。
A 細かい流れが他にもありますが,一般的なケースにおけるおおまかな流れは次のとおりです。
  死亡(相続の開始)→遺言書の確認→相続人の確定→相続→相続財産の調査→相続放棄,限定相続等の手続き→遺産分割協議→相続終了
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法定相続

Q&A 亡くなった父(被相続人)の財産をもらえるのは誰ですか。
A 配偶者(妻)は最優先,これ以外に「子→両親→兄弟」のうち優先順位が最も高いグループです。
具体的には次のとおりです。
1 妻と被相続人の子供(胎児も含む)
2 子供がいない場合は,被相続人の父母(または祖父母)
3 父母・祖父母が亡くなっている場合は,被相続人の兄弟姉妹
なお,遺言がある場合は遺言が優先されます。
以上のルールは法律(民法)上決められている方法です。
ですから,「法定相続」と呼ばれています。
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代襲相続

Q&A被相続人の子が既に 亡くなっていた場合,両親が相続人になるのでしょうか。
A 「既に亡くなっていた子」のさらに「子」(被相続人の孫)がいれば,その「子」が相続人となります。
  両親は相続人にはなりません。
「子」の変わりに「孫」が相続人となるわけです。
このようなリレー的な相続のことを「代襲相続」(だいしゅうそうぞく)と呼んでいます(民法887条)。
Q&A代襲相続はどのような場合に適用されるのでしょうか。
A 「子」と「兄弟」が既に亡くなっていた場合です。「親」には適用されません。
「子」が亡くなっていた場合
 →その「子」,さらにその「子」・・・と適用されます(民法887条2項本文)。
「兄弟」が亡くなっていた場合
 →その「子」(被相続人の甥・姪)だけが適用されます(民法887条2項但書)。
「両親」が亡くなっていた場合
 →代襲相続は適用されません。
  この場合,「両親」の「子」は被相続人の兄弟ということになってしまいます。兄弟は元々相続人なので「代襲相続」として認める意味はないことになりま す。
Q&A 法定相続人である血縁者でも相続できないことがありますか。
A 相続権を制限されることもあります。
「相続欠格」(民法891条)や家庭裁判所が判断する「廃除」(民法892条)に該当すると相続人として扱われません。
  相続欠格の例:被相続人や他の相続人を死亡させた。
       遺言書を書き変えたり,隠したり,捨てたりした。
  廃除の例:被相続人に虐待したり,重大な侮辱を加えたりした。
       被相続人が遺言で相続人を「排除」する意思を示した。
Q&A 遺言が書かれていた場合,どのようなルールになりますか。
A 原則として,遺言の内容どおりに財産は承継(相続)されます。
法定相続よりも遺言の方が優先,ということです。
逆に言えば,有効な遺言がない場合に法定相続が適用される,ということになります。
Q&A 相続人が存在しない,というケースではどうなりますか。
A 上記のような相続人が存在しない場合,例えば内縁の妻(籍は入れていないが,事実上の夫婦であったような相手)といった「特別縁故者」に財産が与えられる こともあります。
このような特別縁故者,つまり財産を与える程緊密な関係であったかどうかは家庭裁判所が判断することになっています(民法958条の3)。
  
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相続分の譲渡

Q&A「相続分」は譲渡できるのですか。
A 相続分の譲渡は可能です。
「相続分」というのは,遺産の中の特定の財産・権利とは違います。
遺産全体に対する各相続人の分数的割合です。
要は,「相続人としての地位」という趣旨です。
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Q&Aどんな場合に「相続分の譲渡」を使うべきなのですか。
A 遺産分割協議や調停・訴訟が長引くと予想されるケースにおいて,その紛争から早く脱する手段として使われるのが一般的です。
ただし,税務上の課税関係が複雑になる傾向があります。
遺産の規模によっては,綿密に税務上の処理を検討してから判断するべきです。
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Q&A相続分の譲渡によって,被相続人が負っていた債務(マイナス財産)も移転するのですか。
A 移転します。しかし,譲渡人は解放されません。
相続債務については,その債権者が承諾しない限り,「譲受がなかったもの」として考えることになっています。
つまり,譲渡人は,債権者から請求を受ける立場のままになります。
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Q&Aどのようにして相続分を譲渡するのですか。
A 様式等に規定はありません。ただし,遺産分割前に譲渡する必要があります。
民法上,特に相続分譲渡の様式は決められていません。
ですから,有償,無償いずれでも構いません。
相続分のうち一部だけ(例えば2分の1)を譲渡することも可能です。
口頭・書面のいずれでも可能です。
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Q&A口頭で相続分を譲渡すると後で問題になりませんか。
A 実際には書面にして,かつ譲渡人から他の相続人に通知するとベストです。
相続分譲受によって,譲渡人・譲受人は当然として,他の相続人にも大きな影響があります。
まず,譲渡の契約は契約書として明確化・記録化すべきです。
また,他の相続人にも早めに知らせておくと良いでしょう。
場合によっては,他の相続人から「取戻」(買取)の請求がなされることもあります。
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Q&A相続分の譲渡は相続人の間で行うのですか。
A 相続人同士で譲渡しても良いですし,相続と関係ない第三者に対して譲渡することも可能です。
相続分譲渡の譲受人については,特に制限がありません。
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Q&A相続分を譲り受けた人はどのようなことができますか。
A 遺産分割協議に参加するのが典型です。
相続分の譲受人は要するに,「相続人と同じ立場」に立つことになるのです。
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Q&A赤の他人が相続分を譲り受けた場合,他の相続人にとって好ましくないと思います。
良い方法はありませんか。
A 「相続分の取り戻し」という手続きがお勧めです。
まさに,共同相続人等「以外の者」が相続分を譲り受けた場合には,「相続分の取り戻し」(民法905条)が可能です。
相続分の価額,費用を償還するのと引き換えに,相続分を取り戻すことができるのです。
「強制買取」とでも言うべき制度です。
相続分の取戻は,相続分譲渡後1か月以内に行う必要があります。
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<民法905条(相続分の取戻権)>
共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることが できる。
2  前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。
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相続分譲渡の課税関係

Q&A相続人間で相続分を譲渡すると税務上どのように扱われますか。
A 譲渡後,つまり増減があった後の相続分を元に相続税の算定が行われます。
相続人間で相続分の譲渡が行われると,法定相続分が「修正された」ような状態になります。
この,いわば「修正後」の相続分を元に相続税が算定されるのです(後掲裁判例)。
有償で譲渡された場合は,譲渡代金分について,譲渡人は加算,譲受人は減額します。
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【東京地方裁判所昭和55年(行ウ)第86号課税処分取消請求事件昭和62年10月26日(抜粋)】
同条にいう相続分とは、民法九〇〇条ないし九〇四条の規定により定まる相続分(以下「法定等相続分」という。)のみをいうものではなく、共同相続人間で相 続分の譲渡があつた場合における当該譲渡の結果定まる相続分(譲渡人については法定等相続分から譲渡した相続分を控除したものを、譲受人については法定等 相続分に譲り受けた相続分を加えたもの)も含まれるものと解するのが相当である。
Q&A相続分の譲渡についての課税は,相続税申告の前後で違いはありますか。
A 相続税申告後に相続分譲渡が行われた場合は,「遺産分割協議成立時」に修正申告または更正請求を行います。
相続税申告後に相続分譲渡が行われると,「既に行った申告の内容が違っている」状態になります。
しかし,相続分譲渡は,その後,遺産分割協議が行われることにより,具体的な承継内容が決まります。
言わば,「暫定的」「中間的」な状態です。
そこで,最終プロセスである遺産分割協議(調停・訴訟)が終了した段階で更正請求などができることになっているのです(相続税法55条の反対解釈)。
ただし,課税庁からの更正処分については,相続分譲渡による変動を反映させるという最高裁判例があります(後掲)。
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<相続税法55条(未分割遺産に対する課税)>
第55条 相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場 合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていな い財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得 したものとしてその課税価格を計算するものとする。ただし、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した 財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従つて計算された課税価格と異なることとなつた場合においては、当該分割により取得した財産に係る課 税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは第32条の更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げな い。
【最高裁判所第3小法廷平成元年(行ツ)第162号課税処分取消請求事件平成5年5月28日(抜粋)】
本件再更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に違法はないとした原審の判断は、相続税法五五条本文にいう「相続分」には共同相続人間の譲渡に係る相続 分が含まれるとした点を含め、正当として是認することができる。
Q&A相続人以外に相続分を譲渡した場合はどのような課税になりますか。
A 明確・統一的な解釈はありません。譲渡人には相続税,譲受人には贈与税が課せられると思われます。
相続分の譲渡人は,その後遺産分割協議に参加せず,具体的承継も受けません。
それにも関わらず,相続税の申告を行い,納税をするべきだと思われます。
そして,譲受人は,譲渡代金との関係で「差」があれば,贈与を受けたとみなされ,贈与税が課せられると思われます。
このように複雑になるのは,「相続分譲受人は税法上『相続人』でもなく『受遺者』でもない」→相続税申告ができない,という「ねじれ」があるからです。
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遺産の承継(相続対象財産)

Q&A 相続する財産にはどのような物がありますか。
A 被相続人の土地や金銭などの財産と,それに属した一切の権利義務です。
基本的に,被相続人のすべての財産が相続人に受け継がれ(継承され)ます。
しかし,被相続人の一身に専属したもの(あくまでその人にのみ認められるもの)や,墓地などの祭祀財産は含まれません。
被相続人の一身に専属したものの例としては,生活保護を受ける権利や扶養を求める権利などがあげられます。
Q&A 相続する権利のある者が複数人いて,共有という状態になった場合に,どのくらいの割合で共有されるのですか。
A 法定相続のルールのとおりとなります。
具体的には次のとおりです。
相続人のパターンによって決まります。
A:配偶者(妻,夫)と子の場合:それぞれ2分の1ずつ
B:配偶者と直系尊属(父母や祖父母)の場合:配偶者が3分の2で,直系尊属が3分の1
C:配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者が4分の3で,兄弟姉妹が4分の1

さらに,例えばAの場合で,子が2人いる場合には配偶者が2分の1,子がそれぞれ4分の1となります。
この割合は,遺言や話し合いによって相続する割合が定まっていない場合の話です。この割合を法定相続分(900条)といいます。
Q&A 法定相続により承継した状態での不都合はどのようなことがありますか。
A 共有している財産の管理や権利行使には相続人の合意が必要なため,不動産の売却や株主総会での投票などが困難となりがちです。
具体的な財産による不都合を説明します。

<収益不動産>

例えば遺産である収益不動産が,法定相続によりその子供A,B,Cの共有になった場合を考えます。
テナントからの家賃は子供それぞれが3分の1ずつを請求できる状態になります。実際にはAが代表としてテナントに家賃を請求し,もらった後にB,Cに3分 の1ずつ分配することが多いです。
維持費などの経費はAが支払った(いわば立て替えた)後にAがB,Cに対して3分の1ずつを請求することになります。
これだけでも煩雑ですが,実際には管理方法で共有者(A,B,C)の意見が相違するとさらに面倒になります。
例えば外壁工事を行い,Aが工事費を支払った場合,B,Cが工事は不必要だったと言って費用(の3分の1)を払わないというトラブルが生じることがありま す。
また,家賃を値上げしようとしても,3人で意見が一致しない場合は値上げができません。家賃の値上げは「共有物の管理」に該当するので持分の過半数の同意 がないとできないのです(民法252)。
不動産を売却することを考えても,3人全員でなければ売却できません(民法251条)。なお,3分の1の「持分」を売却することは1人でもできますが,普 通買い手は付かないでしょう。

<株式>

遺産の株式を法定相続によりその子供A,B,Cの共有になった場合を考えます。
例えば株式が120株あったとしても,A,B,Cそれぞれ40株ずつ承継する,ということにはなりません。
1つ1つの株式について,A・B・Cが3分の1ずつ所有(共有)しているという状態になるのです。
そうすると,株主総会で株主として投票(議決権行使と言います)する場合,ストレートに投票できません。
投票しようとするのであれば,A,B,Cの3人で,「権利行使者」を指定する必要があります(会社法106条)。
A,B,Cの3人で話し合いがまとまれば良いですが,3人とも自分が権利行使者になると主張した場合,権利行使者の指定自体ができません。
なぜなら,権利行使者の指定は持分の過半数の同意で決めることになっているからです(最高裁平成9年1月28日判決)。

<預貯金>

遺産の預貯金が,法定相続により子供A,B,Cに承継された場合を考えます。
この場合はA,B,Cはそれぞれ,預貯金の3分の1をそれぞれ独立に承継することになります。
ですから,それぞれが単独で預貯金残額の3分の1の払い戻しを受ける権利があります。
ただし,実務上,金融機関から相続人全員の印鑑証明書を求められることが多く,スムーズに払い戻しを受けることは困難です。

Q&A 法定相続による遺産共有を解消するためにはどうしたら良いですか。
A 遺産分割の協議(話し合い)により,具体的な遺産分割の内容を決めることです。
ただ,相続人全員が合意しなければ遺産分割協議は成立しません。
協議がまとまらなかった場合は,遺産分割の調停を家庭裁判所に申し立てることになります(民法907条2項)。調停では調停委員を交えて再度協議が進 められます。
それでも話し合いがまとまらない場合(調停不調)は,自動的に審判(裁判)に移行します。
審判では審判官(裁判官)が最終的に具体的分割方法(内容)を決めます。
なお,遺留分減殺請求(後述)がされた後は遺産分割の調停は申し立てられず,共有物分割請求(民法258条)を選択することになります。
Q&A 遺産分割の話し合いをしていますが,うまく納得できる結論になりません。
話し合いがまとまりません。どうしたら良いでしょうか。
A 遺産分割の交渉のために弁護士,司法書士に依頼することをお勧めします。
  依頼した方が良いのかどうかも含めてアドバイスすることが可能で す。
細かい規定や,後述の遺留分減殺請求といった手段,法的に相当な遺産分割の割合等というものがございます。専門家のアドバイスを聞くことをお勧めいた します。
また,遺産分割協議が成立したら,後々の争いを避けるために行政書士らに合意書の作成依頼をすることをお勧めします。
Q&A 法定相続による不都合を避ける方法はありますか。
A 遺言制度を活用することで,これらの不都合を避けられます。 
上記のとおり,法定相続の場合,相続人の意見が一致しないと面倒なことが生じます。
生前に遺言を作成しておけば,各財産についての相続する者を決められます。
「遺産共有」という面倒な状態を生じさせないこともできます。
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同時死亡の推定

Q&A【複数の方の死亡の前後関係による大きな違いの例】
大災害などで複数の方が一斉に亡くなった場合,死亡の順序で何か違いがありますか。
大きく違いが生じる場合もあります。

典型的な具体例を挙げます。
<死亡時期の前後関係で大きな違いが生じる例>
・夫婦が,飛行機事故や大災害で両方とも亡くなった
・夫婦の間に子は居ない(孫以降も存在しない)
・夫婦ともに,両親とも居ない
・夫婦ともに,兄弟は健在
・夫は10億円相当の資産を持っている
・妻は資産を持っていない(ゼロ)

生物学的には,生命が続いていた時間としては,数時間なり数分あるいは数秒違いがあってもおかしくないはずです。
民法(相続関係)においては,その前後関係で決定的な違いが生じます。

夫が死亡→妻が死亡
夫の遺産のうち4分の3(=7億5000万円相当)は妻が一旦相続により承継します。
その後,妻の死亡により,全部が「妻の兄弟」に承継されます。

妻が死亡→夫が死亡
夫の遺産は,すべて「夫の兄弟」に承継されます。
結果的に,「妻の兄弟」は一切承継しません。
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Q&A【同時死亡の推定】
複数の者が同じ災害で亡くなって,その前後関係が分からない場合はどのように扱うべきでしょうか。
同時に死亡したものとして考えます。

複数の方の「死亡」のタイミングによって相続の結果に違いが現れることがあります。
そのタイミング(前後関係)が分からない時は,どう解釈すべきか困ります。
そこで,この問題についてルール化したのが民法32条の2です(後掲)。
いわゆる「枝番」です。
民法制定後に,「想定外の解釈の悩み」(法律の抜け穴)が生じたので,後から補充的に新設された条文です。
要約するとこのようになります。
「同時死亡の推定」
複数の者が亡くなった場合で,死亡の前後が分からない場合は,同時に死亡したものとして扱う。
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【民法32条の2】
数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定 する。 
Q&A【同時死亡の場合の相続方法】
複数の方が同時に亡くなったとした場合,相続による財産承継はどのようになるのでしょうか。
相互に相続しない,というのが結論です。

民法32条の2で「同時に死亡」という推定規定があります。
この場合の,「同時に死亡」の場合の相続の方法は,勘違いする方も多いです。
結論としては,夫婦同時死亡の場合に夫の遺産について考えると,「妻が死亡→夫が死亡」と同じです。
かえって分かりにくいので言い換えます。

「同時に死亡」→「夫の死亡時に,妻に承継しようとしたら・・・妻も亡くなっていた→妻には承継しようがない」
このように考えるとスッキリします。
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脳死(死亡判断時点)

Q&A【「死亡」のタイミング】
「死亡」のタイミングはどのように判断されるのでしょうか。
現時点では「脳死」も「死亡」と扱われています。

従前はいろいろな見解がありました。
伝統的には,「心臓(循環系),肺(呼吸系),脳(中枢系)の不可逆的停止」
とされていました。
不可逆的停止とは,文字どおり「戻ることがない停止」です。
ショック症状で一時的に心臓が止まる,などは含まない,ということです。当然ですけど。
実はさらに細かく言えば,「3機能すべての停止」をもって死亡とすべきなのか,「どれか1つ」で良いのか,明確なものはありませんでした。

平成5年に臓器移植をしたケースで,摘出元の患者が「3機能すべての停止」には至っていなかったのではないか,として問題になりました。
このケースでは民事ではなく,刑事上の問題が大きかったです。
仮に「死亡前」だとすれば臓器摘出手術=殺人罪,となります。
結論としては,検察が「不起訴処分」としたので,裁判所の判断は下されないまま,となりました。
さらにちなみに,「死亡後」の臓器摘出=死体損壊罪,という考えもあったのですが,検察は,これも不起訴処分としています。

その後,医療技術の進歩→臓器移植の活用場面の増加,という流れで,「脳死」も「死亡」と認められる運用が定着しつつあります。
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Q&A【脳死の場合の「死亡のタイミング」】
脳死の場合の「死亡のタイミング」はいつですか。
医師の「脳死の判断時点」と考えられます。

脳機能の不可逆的停止,の「推定時間」という考えもなくはないです。
とにかくこれは新しい問題です。
先に言っておきますと,「未解決」です。
判例も法律も,各種行政サイドのガイドライン類も一切ありません。
三権とも未解決です。

近年は,ご存じのとおり,医療技術が進歩→臓器移植の技術が発展し,亡くなった方の臓器を,生存されている方のために最大限活かそう,という考えが普及し てきています。
角膜移植などは典型例です。
そこで,主流になりつつあるのが,「脳の不可逆的停止」だけで死亡とみなす,という考えです。
実はこれがさらにレヴェルアップしました。
平成21年に臓器移植法(臓器の移植に関する法律)が改正されました。
その際,「脳死」を「死亡」とみなしたと解釈される条文が作られました。
すごくデリケートなので直接引用しておきます。
実務上は,この条項を根拠として,脳死を死亡と扱うのが主流になっています。
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【臓器移植法6条1項の抜粋】
「死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)」(条文前提は末尾引用)
【臓器移植法6条1項(全文;平成21年改正)】 
医師は、死亡した者が生存中に臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の 摘出を拒まないとき又は遺族がないときは、この法律に基づき、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出する ことができる。 
Q&A【「脳死」の場合の「死亡の前後関係」】
「脳死」の場合,「死亡の前後関係」が特に不明確ではないでしょうか。どうやって判断するのでしょう か。
具体的状況から前後関係を判断します。
どうしても不明であれば,「脳死診断」の時期に関わらず「同時死亡の推定」を適用すべきだと考えま す。

ここで改めて「死亡の前後問題」が問題となります。
「脳死」のケースの具体的状況としては,意識がないけど身体はぬくもりがある,という状況が典型です。
その患者に対して意思が診断を行い,脳の機能が停止されていることを判定するわけです。
具体的な「医師の診断作業」というアクションが介在しているのです。
その医師のアクションの最後のプロセスとして「脳死判定」があるのです。
つまり,医師の脳死診断のタイミング,で「死亡時期」がズレるのです。
もっと分かりやすく,具体例を挙げます。
夫婦が災害などで同時に意識を失いました。そこに医師が駆けつけます。
診察を行います。その結果として「脳死判定」がされるかもしれません。
どちらから先に診察するか,で「死亡の前後」が変わる可能性があります。
近親者が医師に要請すればそのとおりの順番で医師が診察を行うことが多いでしょう。
この先は特に判例等がないのは前述のとおりです。
敢えて言えば,外傷や目撃者の証言その他の手がかりをすべて使って,前後関係を予測する,ということだと考えられます。
仮にすべての手がかりを使っても「まったく前後関係は予測できない」という場合は,「同時死亡の推定」を適用するのが妥当だと考えます。
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慰謝料の一身専属性

Q&A 被害者が亡くなった場合,本人の慰謝料請求権,というのはないのでしょうか。
A:あります。本人の慰謝料請求権が相続人に承継される,と考えます。
以前は,本人が「慰謝料請求の意思表示をしないと承継されない」という見解が主流でした。
当然,大怪我をしている状態なので,「残念だ・・・」など,あまり明確でない言葉でも「慰謝料請求の意思表示」と認めた例もあります。
しかし,「言葉を発するかどうかで変わってくるのは不合理」と考えられ,近年では特にそのような言葉に関わらず,相続が認められています。
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【最高裁判所 昭和 42年11月1日(抜粋)】
案ずるに,ある者が他人の故意過失によつて財産以外の損害を被つた場合には,その者は,財産上の損害を被つた場合と同様,損害の発生と同時にその賠償を 請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し,右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情がないかぎり,これを行使することができ,その損害の賠償を請求 する意思を表明するなど格別の行為をすることを必要とするものではない。そして,当該被害者が死亡したときは,その相続人は当然に慰藉料請求権を相続する ものと解するのが相当である。ただし,損害賠償請求権発生の時点について,民法は,その損害が財産上のものであるか,財産以外のものであるかによつて,別 異の取扱いをしていないし,慰藉料請求権が発生する場合における被害法益は当該被害者の一身に専属するものであるけれども,これを侵害したことによつて生 ずる慰藉料請求権そのものは,財産上の損害賠償請求権と同様,単純な金銭債権であり,相続の対象となりえないものと解すべき法的根拠はなく,民法七一一条 によれば,生命を害された被害者と一定の身分関係にある者は,被害者の取得する慰藉料請求権とは別に,固有の慰藉料請求権を取得しうるが,この両者の請求 権は被害法益を異にし,併存しうるものであり,かつ,被害者の相続人は,必ずしも,同条の規定により慰藉料請求権を取得しうるものとは限らないのであるか ら,同条があるからといつて,慰藉料請求権が相続の対象となりえないものと解すべきではないからである。しからば,右と異なつた見解に立ち,慰藉料請求権 は,被害者がこれを行使する意思を表明し,またはこれを表明したものと同視すべき状況にあつたとき,はじめて相続の対象となるとした原判決は,慰藉料請求 権の性質およびその相続に関する民法の規定の解釈を誤つたものというべきで,この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,論旨は理由が あり,原判決は破棄を免れない。そして,本訴請求の当否について,さらに審理をなさしめるため,本件を原審に差戻すことを相当とする。
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