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企業法務 Q&A【震災関連】

欠勤・休業

Q&A 震災後の電車の運休により,通勤・帰宅が非常に困難です。そのため,従業員が出社できませんでした。
給与や手当を払われるべきなのでしょうか。
A 詳細な事情によって大きく異なります。大原則としては支払う義務はないということになりましょう。
就業規則や労働協定,労働契約に給与を支給する旨の規定があればこれに従います。
このような規定がないことを前提にします。
大原則はノーワークノーペイ,です。
ただし,「欠勤」が雇用主に起因する場合は給与や休業手当の支払義務が生じることがあります。
以下,ケースごとに解説します。
Q&A 計画停電や路線の損傷などにより通勤経路の電車がまったく動きません。
仮にタクシーで往復すると10万円近くかかってしまいます。だから従業員が欠勤しました。
給与や手当は支払われるべきなのでしょうか。
A 原則として支払われません。
この場合,事実上「通勤不可能」と考えられます。
「不可抗力による休業」です。
そうすると前項のとおりで,ノーワークノーペイ,ということになります。
なお,この休業は雇用主に起因するものではありませんので「休業手当」の支給もありません。
Q&A 計画停電により通勤経路の電車の本数が少なく,また快速が運休のため,通常よりも多く時間を要します。
そのために従業員が欠勤しました。
給与や手当は支払われるべきなのでしょうか。
A 原則として支払われません。
この場合,あくまでも「通勤は可能」です。時間がいつもよりも長くかかるのは従業員が負担すべきリスク,となります。勿論,雇用主が一定時間の遅刻を認め るかどうかはまったく別問題ですが。
いずれにせよ,結論としてノーワークノーペイ,ということになります。
むしろ,従業員が独断で欠勤した場合は,通常の「無断欠勤」という扱いになりますので,ペナルティの対象になりえます。
ただし,雇用主の判断(指示)により,休みにした,という場合は,「休業」ということになります。
休業手当(労働基準法26条)を支給すべきことになります(後述)。
Q&A 計画停電により,出社しても機械やパソコンが動かない時間帯があります。業
務が十分にできません。
だから従業員が欠勤しました。
給与や手当は支払われるべきなのでしょうか。
A 原則として停電の時間帯については支払う義務はありません。
この場合,本当に「業務ができない」かどうかが重要です。
雇用主が「業務ができなくはないが効率が落ちるから中止しよう」と考えて休みにする,と判断したのであれば,「不可抗力」ではなく,「雇用主の判断による 休業」となります。
このような「休業」については,休業手当(労働基準法26条)を支給すべきことになります。
雇用主が事業活動を行おうと思っても,実際に停電中は仕事にならない(雇用主の判断ではない業務不可能=不可抗力),という場合は,ノーワークノーペイで す。給与も休業手当も支払う義務はありません。
なお,通常は「業務不可能」と言い切れるのは停電の時間帯だけ,ということが多いでしょう。
Q&A 計画停電を含む震災の影響で従業員が仕事を休んだ場合,通常の賃金が払われる場合・休業手当が払われる場合・何も払われない場合があることが分かりまし た。
どのように区別したら良いかまとめて教えて下さい。
A 重要な要素は,「不可抗力」と言えるかどうか,また,雇用主が経営上の努力を怠っていないか,です。
分かりやすく分類します。
1 「不可抗力」の場合
(=当該休業が,事業の外部的要因により発生した,また,雇用主が企業経営において要求される最大の努力を尽くしても休業を避けられなかった)
  →休業に対する休業手当・賃料は発生しない。
  例:事業所の建物が倒壊した,工場の機械が損壊して製造不可能,停電によりパソコン・機械を使った作業が不可能
2 「不可抗力」とまでは言えない(就業が不可能ではない)が,雇用主が経営判断として休業を選択した(命じた)場合
  →休業手当の支給義務あり
  例:交通機関の遅延や政府の通勤抑制勧告・操業短縮勧告を受けて雇用主が自宅待機(休業)を命じた場合
3 休業を避ける容易な手段・方法があるにも関わらず,雇用主が経営上の努力・注意を怠たり,休業を選択した(命じた)場合
  →通常の賃金支払義務あり(民法536条2項)
  例:原料の仕入先のうち1社が被災し製造不可能になった。他の代替的な仕入先がいくらでもあるのに敢えて雇用主が当面操業を中止することにした場合
Q&A 休業手当が支給される扱いになった場合はその手当の金額はいくらになりますか。
A 法律上の最低限は通常の場合の60%です。
休業手当は,就業規則や個別の労働契約で規定があればそれに従います。
そのような規定がない場合は,原則として通常通りの給与を支払う義務がありま す。
ただし,従業員との協議により,金額を設定することは可能です。
その場合は,通常の場合の60%以上に設定しなくてはなりません。
なお,実際に 「60%」を計算する方法はある程度複雑です。
専門家へご相談されることをお勧めします。
Q&A 計画停電とは言っても,予定変更があるし不安定です。
雇用主として,一斉に休みにすべきかどうか迷います。
良い方法はないでしょうか。
A 各従業員に判断を委ねるという工夫もあり得ます。
業務遂行について,ある程度各従業員に裁量を認め,委ねている部分が多い,という場合は,雇用主が確定的に指示・命令しない方法も考えられます。
すなわち,「停電時に行うべき業務はあるが,あまり成果は少ないかもしれない。欠勤してもペナルティは加えません」と雇用主が従業員にアナウンスする,と いうことです。
この場合は,結局,従業員の判断により欠勤したことになりますので,ノーワークノーペイということになると思われます。
ただし,アナウンス方法・内容によっては,「休業を指示した。休業手当を支給されるはずだ」という誤解を生じかねません。
このようなアナウンス時には,「休んだ場合は欠勤となります。懲戒処分はないけどもその日数分無給になります」と誤解が生じないような説明の工夫が必要に なりましょう。
また,有給休暇の申請を推奨するということも考えて良いでしょう。
Q&A 震災を理由とした従業員の欠勤について,従業員にペナルティを課せられるのでしょうか。
A 懲戒処分・降格・配転のようなペナルティを課すことはできません。
震災により,ケガをしたり,また,通勤が不可能となったために欠勤した,というケースにおいては,減給・解雇といった懲戒処分はできません。
原因が従業員の個人的な行為にあるわけではありません。
結果的に欠勤したとしても,このような場合は合理的な理由がないということで,懲戒処分は懲戒処分権の濫用として無効となります(最高裁昭和58年9月 16日)。
同じ趣旨により,降格・配転命令・出向命令・転籍命令も「人事権の濫用」として無効となります。
Q&A 計画停電が長期間継続するので,工場の稼働率が低いままです。
これに伴い,必要な人員もしばらく減少します。
人員を削減する方法はありますか。
A 整理解雇は難しいです。一時帰休(レイオフ)は可能です。
今回の震災による計画停電は,工場・事業所ともに,影響がある程度継続するのが特徴です。ただ,その一方,で電力供給の状況が回復し次第,解消されること が想定されています。
このような状況を元にしますと,整理解雇は無効となる可能性が高いです。
と言いますのは,「整理解雇」についてはその合理性が認められない限り,解雇権の濫用として無効になるのです(労働基準法18条の2,最高裁判決昭和50 年4月25日など多数)。
整理解雇の4要件,というものが裁判例上確立しています。
人員整理の必要性,解雇回避努力義務の履行,被解雇者選定の合理性,手続の妥当性,というものです。
平たく言えば,「本当に解雇が避けられないのか,他に対応手段はないのか」というハードルがあるのです。
ということで次につながるのですが,「他の対応手段」として有力なものがあります。
それが「一時帰休」です。いわゆるレイオフ,です。
簡単に言えば,人員の必要性が回復するまでの一定期間,休業にしておく,というものです。
まさに,今回の震災による電源事情に整合しているかもしれません。
Q&A 一時帰休(レイオフ)を行った場合には,給与・手当を支払う必要はありますか。
A 休業手当を支給する義務があります。
一時帰休にした場合,「給与そのもの」は支払う必要はありません。
ただし,「休業手当」を支払う必要があります。
休業手当の金額については,前述のとおりです。
労働基準法で最低限の金額が規定されています。
Q&A 一時帰休(レイオフ)を行いますが,休業手当の金額について就業規則その他で決められていません。
どうやって決めるのでしょうか。
A 労使の協議により定めることになります。
規定がない場合は,改めて従業員(代表者)と雇用主で協議の上定めることになります。
Q&A 一時帰休(レイオフ)を行うと,業務は進まないけれど手当は払われる状態になるのですね。雇用主としては経済的に厳しいことになります。救済措置はありま せんか。
A 各種助成金の支給を受けられることがあります。
事業の規模,収支状況によっては,助成金の支給により実際の損失は大幅に緩和されます。
後述のQ&Aにて解説します。
Q&A 一時帰休(レイオフ)にしようと思いますが,(助成金を受給しても)休業手当の支給が困難なほど収益が悪化しています。
どうしたら良いのでしょうか。
A 整理解雇が認められる可能性もあります。
一時帰休(レイオフ)における休業手当は,助成金の受給額を控除したとしても,一定の金額は雇用主が負担することになります。
計画停電や流通の悪化の継続が長引いた場合,休業手当の負担も重いということが生じるかもしれません。
その場合は,「本当に解雇が避けられない。他の手段がない」ということになり,最終手段である整理解雇が認められる可能性が出てきます。
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労災

Q&A 従業員が業務中に被災しケガをした場合,労働保険の給付は受けられるのでしょうか。
A ケースバイケースですが,給付を受けられることが比較的多いです。
「業務起因性」,「業務遂行性」があれば労災として保障の対象となります。
非常に簡単に言いなおすと「業務自体に含まれるリスクかどうか」ということです。
では,大地震などの天災ではどうでしょうか。
理論上は,原因が,「想定外であった天災」であるとすれば,
「業務自体に含まれるリスク」ではない→「業務起因性」なし→労災ではない(=保障されない)
,ということになりましょう。
しかし,実際には,その地震などの天災の内容(震度などの程度)によっては,「機械の設置によって防げた」,「想定は可能だった」として,「業務自体に含 まれるリスク」として,労災の対象となることが実例としては多いです。
ある程度類型的なケースについては,労働省や労働基準局などでガイドライン(通達など)が作られています。
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助成金

Q&A 計画停電のため,事業活動を縮小しようと思います。
公的な手当はありませんか。
A 各種の助成金が使える場合があります。一例は雇用調整助成金です。
経済上の理由により,事業活動を縮小することとなり,休業を実施し,休業手当を支給したような場合,事業主は,支給額の一部について,雇用調整助成金を利 用することができます。中小企業の場合は,「中小 企業緊急雇用安定助成金」という制度もあり,要件が緩和されています。
Q&A 事業所自体や設備が損壊し,事業活動が一時的にできず,休業の措置を取りました。
公的な手当はありませんか。
A 助成金が使える場合があります。一例は雇用調整助成金です。
事業活動ができず,従業員に休業手当を払った場合は,雇用調整助成金の適用が考えられます。
しかしこれは,「経済上の理由」が要件です。
物理的に事業所が損傷を受けた,という理由では該当しません。
ただし,震災により,修理業者・部品調達の手配が困難なために修復が不可能(遅れた)という場合は,広い意味での「経済上の理由」に該当し,雇用調整助成 金の適用が受けられる可能性があります。
Q&A 事業所自体や設備が損壊し,事業を中止することになりました。
公的な手当はありませんか。
A 従業員が失業手当を受けられることがあります。
震災により事業所が損壊したようなケースの場合,激甚災害として指定されれば,従業員は,雇用保険の特例として速やかに失業手当が受けられます。
Q&A 休業とした場合の雇用調整助成金の支給額はいくらでしょうか。
A 休業に関する助成率は中小企業では原則3分の2とされています。
事業主が従業員に支払った手当の金額を元に,支給額の割合(助成率)が次の通り定められています。
なお,雇用を維持するという趣旨に沿う一定の要件を満たす場合は下記とおり助成率は上がります。
大企業 3分の2(上限4分の3)
中小企業 5分の4(上限10分の9)
※上限額はいずれの場合も1人1日当たり7505円です。
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Q&A 雇用調整助成金の支給額を上げる方法はありますか。
A 単純な休業ではなく,従業員に「教育訓練」をしてもらうと支給額が上がります。
次の金額が支給額に加算されます。
<教育訓練を行った場合の助成金加算額>
 事業所内訓練 1人1日2000円
 事業所外訓練 1人1日4000円
代表弁護士三平聡史のブログ
Q&A 教育訓練とはどんな内容でしょうか。
A 事業内容に関する知識を習得する内容です。
例えば,講師を招いて,講演を受ける,というものが典型例です。
ただし,通常時に予定されているものとは異なるものでなくてはなりません。
通常の生産や販売などの事業活動の一環となっている場合は,収益(売上)に直結しますので,助成する必要性がなくなるからです。
当然,助成金の適用を受けるための申請において,教育訓練の内容・計画を細かく記載した資料を提出することになります。
代表弁護士三平聡史のブログ
Q&A従業員が被災地でがれきの撤去などの活動を行おうと思います。
助成金の対象ではないのですか。
A 当初は助成金の対象外でしたが,ようやく対象となりました。
当初,厚労省では,「教育訓練」を厳格に考えて,ボランティアの性質を持つ活動は「教育」ではない,として助成金の対象外としていました。
そのため,事業活動ができない被災地の会社では,ボランティア活動がなされている中,会場を借り,講師を招いて講演を受講している様子が多くありました。
不満の声に応える形で,平成23年5月24日付の通達(職開発0524第1号)で解釈の変更が行われました。
この通達によって,被災地においては,被災住民生活支援,地域再生支援などの活動については,助成金の対象となることになりました。
考え方としては,このようなボランティア的な活動は,企業のCSR(社会的貢献)の一環として,広い意味での「教育」と捉える趣旨です。
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Q&A雇用調整助成金の適用を受けるための手続きはどのようなものでしょうか。
A 事業主に関する情報(資料)とともに,休業等の計画を事前に提出する必要があります。
細かい書類は規定されています。ハローワークに提出します。
提出書類の例は,労使間の休業に関する協定書や休業や教育訓練の計画書です。
教育訓練を行う場合は,計画書に,教育訓練のカリキュラム・科目・期間・対象者などを記載します。
Q&A東北地方太平洋沖地震の被災者について特例はないのですか。
A 一定の被災地域については,届出期限などについて特例があります。
青森・岩手・宮城・福島・茨城県のうち災害救助法適用地域に事業所が所在する場合,次のような特例が適用されます。
1 本来休業等の計画は事前に提出する必要がありますが,事後的提出でも良い
2 本来,生産量・売上高の情報は3か月分提出する必要があるが,災害後1か月(見込み)で良い
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