非典型担保
- Q&A【非典型担保】
抵当権や根抵当権以外の形で担保を設定する方法はありますか。
- 譲渡担保,所有権留保,仮登記担保が代表的な「非典型担保」です。
オーソドックスな担保の形態は抵当権や根抵当権です。
これらを「典型担保」といいます。
これは法整備がしっかりしており,使いやすい担保権です。
しかし,この「ルールがしっかりしている」ところは,裏を返すと不便な面もあります。
そこで,従前より,「所有権」を工夫した形で活用することにより,「便利な担保権(担保機能)」が作られ,利用されてきました。
具体的には,譲渡担保,所有権留保,仮登記担保などです。
これらを「非典型担保」といいます。
なお,「担保」そのものではないけれど,担保に類似する機能を持つ方法として,売買契約+買い戻し特約,というものもあります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [民法]
(買戻しの特約)
第五百七十九条
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合にお
いて、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
- Q&A【典型担保のデメリット】
抵当権や根抵当権の不便なところはどのようなものでしょうか。
- 動産については債務者の手元に残せない,不動産は競売手続きに時間・費用がかかる,というところです。
民法上,動産に関して約定担保物権として規定されているのは質権(342条)のみです。
典型的な「高価な指輪を質入れする」というイメーヂそのものです。
致命的なデメリットは,債務者の手元に担保物を置いておけない,ということです(344条,345条)。
一方,不動産については,質権も適用されますが,抵当権,根抵当権がオーソドックスです(369条,398条の2)。
抵当権,根抵当権のデメリットは,実行の際に,一定の時間・費用のコストがかかってしまう,というものです。
ルール,手続きが整備されている分,「固い」という側面もあるのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [民法]
(質権の内容)
第三百四十二条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
(質権の設定)
第三百四十四条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
(質権設定者による代理占有の禁止)
第三百四十五条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。

譲渡担保
- Q&A【譲渡担保】
譲渡担保とはどのようなものでしょうか。
- 担保のために,債務者所有の物の所有権を債権者に移転する,というものです。
譲渡担保の形式は,貸金等の債権を担保するため,譲渡担保契約(設定契約)により債務者所有の物の所有権を債権者に移転する,というものです。
なお,移転するのは「所有権」です。
対象物自体を債務者の手元から引き離すことは必要ありません。
正確には,対抗要件としての引渡しは必要ですが,「占有改定」(民法183条)も可能です。
結局,物理的には債務者の手元に置いたまま,ということが可能です。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [民法]
(占有改定)
第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
- Q&A【譲渡担保の法的構成】
お金を借りるために「所有権」を渡してしまうのは,アンバランスだと思います。
不正が生じることはないのでしょうか。
- 解釈上「形式的な所有権」とされています。判例理論で不正の防止が図られています。
確かに,担保目的で所有権を渡す,ということは,売買契約などのような「純粋な所有権」とは違います。
そこで,譲渡担保での権利関係について2つの解釈があります。
<譲渡担保の法的構成>
1 所有権的構成
担保目的物の所有権は債権者に帰属する
2 担保権的構成
所有権は債務者にあり,債権者は担保権を取得するにとどまる
ただし,この解釈の違いが実際の運用・法的処理で表面化するのは破産・民事再生・会社更生などの倒産処理の場面くらいです。
というのは,実際の「実行」の場面では,判例理論によってルールが形成されており,法的構成による違いが結果として表れることはほとんどないのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【判例上の清算義務】
譲渡担保について,判例によってどんなルールが作られているのでしょうか。
- 実行の際には「丸取り」は許されず,清算が必要とされています。
譲渡担保権の実行は,「競売」は必要ではなく,「形式的に移転済みの所有権」を
「確定的に取得する」という非常に簡単なものです。
仮に債権額が少ない場合,「小さな借金と引き換えに高価な不動産を取り上げられる」ということが生じます。
そこで,判例(一例を後掲)において,「譲渡所有権の実行の際は清算金の支払が必要」とされています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [最高裁判所第1小法廷昭和42年(オ)第1279号建物収去土地明渡請求事件昭和46年3月25日(抜粋)]
貸金債権担保のため債務者所有の不動産につき譲渡担保形式の契約を締結し、債務者が弁済期に債務を弁済すれば不動産は債務者に返還するが、弁済をしないと
きは右不動産を債務の弁済の代わりに確定的に自己の所有に帰せしめるとの合意のもとに、自己のため所有権移転登記を経由した債権者は、債務者が弁済期に債
務の弁済をしない場合においては、目的不動産を換価処分し、またはこれを適正に評価することによつて具体化する右物件の価額から、自己の債権額を差し引
き、なお残額があるときは、これに相当する金銭を清算金として債務者に支払うことを要するのである。そして、この担保目的実現の手段として、債務者に対し
右不動産の引渡ないし明渡を求める訴を提起した場合に、債務者が右清算金の支払と引換えにその履行をなすべき旨を主張したときは、特段の事情のある場合を
除き、債権者の右請求は、債務者への清算金の支払と引換えにのみ認容されるべきものと解するのが相当である(最高裁判所昭和四三年(オ)第三七一号、同四
五年九月二四日第一小法廷判決)。
- Q&A【処分清算方式,帰属清算方式】
譲渡担保権の実行は具体的にどのようにするのでしょうか。
- 第三者に売却するか,確定的に債権者が取得し,必要な清算を行います。
当初の契約に基づいて,第三者に売却(換価)するか,債権者が確定的に所有権を取得します。
<譲渡担保契約の種類(実行方法)>
・処分清算方式
債権者が第三者に売却する方式
・帰属清算方式
債権者自身が対象担保物件を取得する方式
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【明記がない場合の清算方式の解釈】
譲渡担保契約で,帰属清算・処分清算方式を記載していなかった場合はどちらになりますか。
- 周辺の事情から解釈します。一般的には帰属清算方式と認定されることが多いです。
事実認定の一般論として,契約書の記載だけではなく,その経緯や他の資料から当事者の意思を推測,解釈することになります。
譲渡担保契約に関しては,ごく素朴に考えると,「所有権を移転している形式」から,債務不履行があった際には債権者が所有権を確定的に得る,という動きを契約当事者は想定しているだろう,と認められることが多いです。
→代表弁護士三平聡史のブログ

所有権留保
- Q&A【所有権留保】
所有権留保とはどのような制度なのでしょうか。
- 分割払いでの売買で,完済までは売主に所有権がとどまっている,という形態の売買のことです。
譲渡担保と同じく,法律の明文で規定されている制度ではありません。
実務で生み出された制度です。裁判所でも認められています。
売買契約において,代金の支払いが一括ではないことがあります。
分割払いが典型例です。
そして,完済前に支払が滞った場合,売主としては,売却した商品を取り戻したいと考えるのが自然です。
しかし,法的には,売買契約により,所有権は買主に移っています。
ストレートに取り戻すことはできません。
回収する法的手段は,差押え→競売,ということになります。
この場合,時間・費用が必要となってしまいます。
そこで,この手間を回避する手段として「所有権留保売買契約」が形成されました。
<所有権留保売買契約の内容>
売買契約の目的物の所有権移転時期を代金完済時とする特約付き売買契約
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【求償権担保のための所有権留保】
売買において,第三者である信販会社が立替払いをする取引がよくあります。
この場合は「所有権留保」ではないのでしょうか。
- 通常,約款において,立て替えた信販会社が完済まで所有権を持っている(留保する)ことになっています。
クレジットカードや,個別的分割払いを信販会社が介在することによって行うことがあります。
この場合,信販会社が買主に代わって売主に代金を支払っているのです。
信販会社が買主に「求償権」を有するわけです。
この「求償権」を担保するために,信販会社が立て替え金完済まで商品の所有権を獲得する(留保する)のが通例です。
一般的に,クレジットカードや立替払い(ローン)契約書の約款に,その旨の特約が記載されています。
これも所有権留保の1形態です。
クレジットカードやローンによる売買で,当然と言えるシステムです。
そこで,割賦販売法7条において,所有権留保の特約が推定される旨規定されています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [割賦販売法]
(所有権に関する推定)
第七条 第二条第一項第一号に規定する割賦販売の方法により販売された指定商品(耐久性を有するものとして政令で定めるものに限る。)の所有権は、賦払金の全部の支払の義務が履行される時までは、割賦販売業者に留保されたものと推定する。
- Q&A【所有権留保の利用例】
どのような売買において所有権留保が利用されているのでしょうか。
- 建設機械,自動車など,一定の価値を有する動産の売買が典型例です。
一般的に,不動産の売買でも所有権留保を利用することはできます(判例後掲)。
ただし,宅地建物取引業者は所有権留保の利用が禁止されています(宅地建物取引業法43条)。
実務上は,動産において所有権留保が利用されています。
クレジットカード,個別消費の分割払い(ローン契約)のような消費者向け金融においては一律に約款で所有権留保特約が含まれています。また,割賦販売法7条で推定規定もあります。
意図的・積極的に所有権留保が活用される場面は,建設機械や自動車などです。
すなわち,ある程度の耐久性があり,時間が経過しても換価価値がある(=売却して一定の値が付く)ことが実質的な利用条件と言えます。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [宅地建物取引業法]
(所有権留保等の禁止)
第43条 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合には、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡すまで(当
該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の額の10分の3をこえる額の金銭の支払を受けていない場合にあつては、代金の額の10分の3をこえる額の金銭の支払
を受けるまで)に、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。ただし、買主が、当該宅地又は建物につき所有権の登記をした後の代金債務
について、これを担保するための抵当権若しくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限りでな
い。
2 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合において、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡し、かつ、代金の額の10分の3をこえる額の金銭の支払を受けた後は、担保の目的で当該宅地又は建物を譲り受けてはならない。
3 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の売買を行なつた場合において、代金の全部又は一部に充てるための買主の金銭の借入れで、当該宅
地又は建物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して返還することを条件とするものに係る債務を保証したときは、当該宅地又は建物を買
主に引き渡すまで(当該宅地又は建物を引き渡すまでに受領した代金の額から当該保証に係る債務で当該宅地又は建物を引き渡すまでに弁済されていないものの
額を控除した額が代金の額の10分の3をこえていない場合にあつては、受領した代金の額から当該保証に係る債務で弁済されていないものの額を控除した額が
代金の額の10分の3をこえるまで)に、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。ただし、宅地建物取引業者が当該保証債務を履行した
場合に取得する求償権及び当該宅地又は建物につき買主が所有権の登記をした後の代金債権について、買主が、これを担保するための抵当権若しくは不動産売買
の先取特権の登記を申請し、又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限っでない。
4 宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の売買を行なつた場合において、当該宅地又は建物の代金の全部又は一部に充てるための買主の金銭
の借入れで、当該宅地又は建物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して返還することを条件とするものに係る債務を保証したときは、当
該売買に係る宅地又は建物を買主に引き渡し、かつ、受領した代金の額から当該保証に係る債務で弁済されていないものの額を控除した額が代金の額の10分の
3をこえる額の金銭の支払を受けた後は、担保の目的で当該宅地又は建物を譲り受けてはならない。 - [最高裁判所第3小法廷昭和57年(オ)第452号所有権移転登記請求本訴、所有権移転請求権保全仮登記抹消登記請求反訴事件昭和58年7月5日(抜粋)]
不動産の売買の遡及的合意解除の場合においても、法定解除の場合と同様、第三者の権利を害することができないが、右第三者についても民法一七七条の適用が
あるから、右不動産の所有権の取得について対抗要件としての登記を経由していない者は、たとえ仮登記を経由したとしても、右第三者として保護されないもの
と解するのが相当である
- Q&A【留保所有権の実行方法】
留保所有権を実行するには具体的にどうしたら良いのでしょうか。
- 売主が買主に対し,売買契約の解除を通知します。
その後,所有者として対象物の返還を請求します。
特約で,代金完済までは売主に所有権があることになっています。
滞納となったら,売主は「所有者」として対象物(商品)の引渡しを請求する,という非常に単純な手法を取ることになります。
ただし,「売買契約」が残ったままとなってしまいますので,「売買契約の解除」が必要と考えられています。
具体的には,売主から買主に,「売買契約を解除する」という通知を出すことになります。
なお,信販会社が立替払いをしている場合は,信販会社が買主に「立替払い契約」の解除の意思表示を行うことになります。
→代表弁護士三平聡史のブログ

仮登記担保
- Q&A【仮登記担保】
仮登記担保とはどのようなものですか。
- 貸金の返済がなされない時に,代物弁済などにより,担保物件の所有権が債権者に移転する契約で,この所有権移転について仮登記を予め行っておく,というものです。
仮登記担保法の適用を受ける「仮登記担保」とは次のような要件です(仮登記担保法1条)。
<仮登記担保の要件>
1 金銭債務(債権)を担保する目的の契約である
2 不履行の際,債務者または第三者(物上保証人)から債権者に,財産(権利)が移転することを目的とする契約である
3 代物弁済予約,停止条件付代物弁済契約,売買予約等の形式の契約である
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [仮登記担保法]
(趣旨)
第一条
この法律は、金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされ
た代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの(以下「仮登記担保契約」という。)
の効力等に関し、特別の定めをするものとする。
- Q&A【仮登記担保法】
仮登記担保法という明文の法律によってルールができたのはどうしてでしょうか。
- 少額の貸付金のカタとして高価な不動産が取り上げられるなどの弊害が目立ったからです。
債権者名義の仮登記を行っておき,仮に弁済が不履行となった場合に,本登記に改める,というスタイルの融資(担保確保)方法が実務上編み出され,利用されてきました。
しかし,少額の貸付金のカタとして,高価な不動産が取り上げられてしまう,という不合理な運用による弊害も生じました。
そこで,仮登記担保契約に関する法律(一般に「仮登記担保法」と呼びます),を制定し,実行方法などについて明文ルール化がなされたのです。
不当な運用がされないよう,実行時の「清算義務」などが規定されています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【譲渡担保と仮登記担保の違い】
譲渡担保と仮登記担保はどのように違うのでしょうか。
- 所有権移転時期が違います。譲渡担保=設定時,仮登記担保=実行時 となっています。
<所有権移転時期>
譲渡担保=設定時
なお,解釈上,移転する所有権は「確定的」ではないとされています。
仮登記担保=実行時
譲渡担保の場合,文字どおり,「譲渡」することが「担保」機能となっています。
仮登記担保の場合,「仮登記」が「担保」です。
つまり,設定時は「仮登記」であり,所有権そのものが移転する,というわけではありません。
そして,債務不履行があった場合の実行として,「所有権を債権者に移転させる」ということになるわけです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【譲渡担保と仮登記担保の使い分け】
譲渡担保と仮登記担保は結果的にどんな違いが現れるのでしょうか。
- 担保物を誰が譲渡できる(されてしまうおそれがある)のか,という点で違いが現れます。
実質的な違いとしては,第三者が関与した時の効果,です。
<第三者が関与した時の効果>
譲渡担保
「債権者」が担保物を第三者に譲渡できてしまう。
「債権者」の債権者から差押を受ける可能性がある。
仮登記担保
「債務者」が担保物を第三者に譲渡できてしまう。
「債務者」の別の債権者から差押を受ける可能性がある。
※ただし,最終的には仮登記後の譲渡は否定されることになります。
<まとめ>
譲渡担保
所有権が最初から債権者に移ってしまう。
債権者としては実行が容易なので便利。
債務者としてはリスクが高い。
仮登記担保
所有権は実行まで債務者に残る。
債権者としては実行時に一定の時間・手間がかかる。
債務者としては,リスクが低い。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【仮登記担保の実行方法】
仮登記担保の実行方法はどのようなものでしょうか。
- 債権者から債務者(物上保証人)に清算金の見積額を通知することです。
<仮登記担保の実行方法>
1 清算金の見積額の通知(仮登記担保法2条)
債権者から債務者または物上保証人に通知します。
2 2か月の経過(仮登記担保法2条)
1の通知が債務者に到達してから2か月経過後に所有権が債権者に移転します(判例後掲)。
3 清算金の支払(仮登記担保法3条)
「清算金」が生じている場合は,債権者から債務者(物上保証人)にこれを支払う必要があります。
この実行方法が仮登記担保法によるルールの要です。
つまり,少額の債権のカタとして高額の不動産を取り上げる,ということが封じられているのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [仮登記担保法]
(所有権移転の効力の制限等)
第二条
仮登記担保契約が土地又は建物(以下「土地等」という。)の所有権の移転を目的とするものである場合には、予約を完結する意思を表示した日、停止条件が
成就した日その他のその契約において所有権を移転するものとされている日以後に、債権者が次条に規定する清算金の見積額(清算金がないと認めるときは、そ
の旨)をその契約の相手方である債務者又は第三者(以下「債務者等」という。)に通知し、かつ、その通知が債務者等に到達した日から二月を経過しなけれ
ば、その所有権の移転の効力は、生じない。
2
前項の規定による通知は、同項に規定する期間(以下「清算期間」という。)が経過する時の土地等の見積価額並びにその時の債権及び債務者等が負担すべき
費用で債権者が代わつて負担したもの(土地等が二個以上あるときは、各土地等の所有権の移転によつて消滅させようとする債権及びその費用をいう。)の額
(以下「債権等の額」という。)を明らかにしてしなければならない。
(清算金)
第三条 債権者は、清算期間が経過した時の土地等の価額がその時の債権等の額を超えるときは、その超える額に相当する金銭(以下「清算金」という。)を債務者等に支払わなければならない。
2 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第五百三十三条 の規定は、清算金の支払の債務と土地等の所有権移転の登記及び引渡しの債務の履行について準用する。
3 前二項の規定に反する特約で債務者等に不利なものは、無効とする。ただし、清算期間が経過した後にされたものは、この限りでない。 - [最高裁判所第2小法廷昭和63年(オ)第68号土地建物所有権移転仮登記の本登記等請求事件平成3年4月19日(抜粋)]
担保仮登記の権利者は、法二条所定の通知をし、その到達の日から二月を経過すれば、仮登記担保契約の目的である土地等の所有権を取得し、債務者に対し所有権に基づき右の土地等の引渡しを請求することができるものと解するのが相当である。
- Q&A【清算金算定方法】
清算金とはどのように算定するのでしょうか。
- 目的物の価格から被担保債権額を差し引いた金額です。
まさに,少額の債権のカタとして高額の不動産を取り上げる,という場合は,「差額」を金銭として債務者に戻す,というものです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【2か月の待機期間】
2か月の待機期間は何のためでしょうか。
- 評価額(清算金額)が不当な場合の反論の機会の趣旨です。
またこの期間中に弁済すれば「受戻し」が可能です。
例えば,債権者が担保不動産の評価額を不当に低く見積もったような場合,債務者としては対抗して評価を行います。
正式・本格的に評価を行う場合,不動産鑑定士に依頼するなど,一定の時間を要するのです。
このような準備は,債権者から本登記の請求について提訴や仮処分申立がなされた時に対抗することになった場合に役立ちます。
また,元々が金銭の借入(債務)ですので,返済さえ行ってしまえば,「代物弁済」はなかったものとして扱うことになっています(受戻権;仮登記担保法11条)。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [仮登記担保法]
(受戻権)
第十一条
債務者等は、清算金の支払の債務の弁済を受けるまでは、債権等の額(債権が消滅しなかつたものとすれば、債務者が支払うべき債権等の額をいう。)に相当
する金銭を債権者に提供して、土地等の所有権の受戻しを請求することができる。ただし、清算期間が経過した時から五年が経過したとき、又は第三者が所有権
を取得したときは、この限りでない。
- Q&A【強行法規性】
最初の融資の際,契約で清算金支払のルールを設定しておけば,面倒な手続きを省略できるのでしょうか。
- 仮登記担保法のルールよりも,債務者に不利な特約は無効とされます。
確かに,債権者としては,融資・担保設定時の特約として,実行方法について省略的取扱を規定できれば,有利になるでしょう。
しかし,それでは,法律で不当な仮登記を封じた意味がなくなります。
そこで,清算金に関して,債務者に不利な方向の特約があったとしても無効とされます(仮登記担保法3条3項)。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [仮登記担保法]
(清算金)
第三条 (略)
3 前二項の規定に反する特約で債務者等に不利なものは、無効とする。ただし、清算期間が経過した後にされたものは、この限りでない。
- Q&A【法定借地権】
土地・建物のうち土地だけについて仮登記担保を設定しました。
実行により土地を取得すれば,建物の撤去を請求できますか。
- 「土地の賃借権」が生じるのが原則です。
形式的には「代物弁済予約」などの形態ですが,実質的には「担保」です。
そこで,抵当権のルールである「法定地上権」(民法388条)と同じようなルールが仮登記担保法10条でも規定されています。
土地・建物が同一所有者であり,土地について仮登記担保の実行がなされた場合,「土地賃貸借」が生じることになっています。
なお,民法388条では「地上権」ですが,仮登記担保法10条では「賃借権」となっています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [仮登記担保法]
(法定借地権)
第十条
土地及びその上にある建物が同一の所有者に属する場合において、その土地につき担保仮登記がされたときは、その仮登記に基づく本登記がされる場合につ
き、その建物の所有を目的として土地の賃貸借がされたものとみなす。この場合において、その存続期間及び借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。

動産・債権担保(ABL)
- Q&A Q 不動産以外を担保にして融資を受けられないのでしょうか。
- A 動産・債権を担保とした融資という制度があります(ABL)。
一般的・伝統的な金融機関による融資は,不動産の価値を引き当てにする方式,つまり,(根)抵当権設定を前提とするものでした。
一方,不動産は保有していないけれど,優れた技術や機械設備や在庫商品がある,というケースがあります。
以前は公示方法(登記)がなかったので,担保とすることは事実上不可能でした。
しかし,現在では,このような「収益力」を引き当てとする担保制度が法改正で可能となっています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A Q 商品や債権を担保とする具体的な方法はどのようなものですか。
- A 動産・債権の譲渡担保を登記する方法です。
従前は,動産の対抗要件は引渡(民法178条),債権の対抗要件は債務者への通知(原則;民法467条),とされていました。
しかし,これでは「担保」としての保全を確実するには不十分でした。
一覧性に欠け,第三者にとって認識しにくいからです。
そこで,法改正により,それぞれ「登記」することが可能となりました。
これで情報が整理され,また,第三者が一見して分かるようになりました。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A Q ABLで担保となる財産の具体例はどのようなものでしょうか。
- A 各種の「収益の源」となるもの,あるいは将来入金予定の売掛金などです。
具体例は次のとおりです。
<ABLの担保の例>
・肉牛として将来販売予定の「子牛」
・野菜として将来販売予定の「(野菜の)苗」
・将来納品予定の「在庫製品」
・工場内の特定の「機械設備」
・将来入金予定の「売掛金債権」
→代表弁護士三平聡史のブログ