証拠の確保
- Q&A取引先からの売掛金を確実に回収するために,普段から注意することはありますか。
- A 売掛金の回収不能リスクを低減するためには,普段から証拠をきちんと残すことが重要です。
取引先が任意に支払いをしないときは,裁判手続を利用して強制的に回収することができます。
裁判では証拠が重要になります。
逆に,相手の立場から考えると,証拠があれば,裁判で負ける,ということです。
そうすると,実際に裁判にならなくても払ってくれる可能性が高まります。
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- Q&A取引に関する証拠はどのように作ったら良いでしょうか。
- A 典型的な取引の証拠は契約書です。
継続的な取引の場合,慣習的に口頭での発注だけで取引をしてしまうことが多いと思います。そのような場合,証拠がなければ,「売った」「買ってない」
の水掛け論になります。契約書を取交わしておくことで,後日,重要な証拠として役立ちます。
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- Q&A取引ごとに契約書を交わすのは大変です。取引先も嫌がります。
証拠化する良い方法はありませんか。
- A 定期的に発注を受ける継続的な取引であれば,最初に基本契約書を交わしておけばよいでしょう。
商品の種類,価格,ロット数,納期,支払方法等に関する契約を交わしておけば,個別の取引には発注書を出してもらうだけで足ります。また,納品毎に納品書
や受領証を出してもらえば証拠として非常に有用です。
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- Q&A 押印は強いのですか。
- A 押印された書面は,特に強い証明力が認められます。
一般的に,契約書等があっても当事者が書面の内容について同意したとは限りません。
実際に,無断でサインされた「偽造」や,署名・押印した後に,記載内容を「変造」された書面が問題になる紛争はよくあります。
しかし,書面に押印されていれば「内容に同意して印鑑を押したんだ」と考えるのが普通です。
民事訴訟法では,押印があれば原則的に証明力が認められることになっています。
【民事訴訟法228条4項】
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
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- Q&Aサインも押印と同じ強さなのでしょうか。
- A サインは押印よりもやや弱い部分があります。
民事訴訟法228条4項では,「署名」と「押印」に推定力を与えています。
しかし,詳しく考えると署名と押印はちょっと違います。
署名の場合,「本人が書いた」ことが条件となっています。
これを証明する必要があります。
押印の場合,陰影(紙面上に押されたハンコの文字)が本人の名称であれば,「本人が押した」という推定が働きます。
(詳しく言うと,事実上の推定と言います。民事訴訟法228条4項の「法律上の推定」と併せて「2段の推定」と呼んでいます)
というわけで,筆跡鑑定が必要ではない,という点でサインよりも押印の方が有利(強力)と言えるのです。
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- Q&A押印のない書類は無効なのでしょうか。
- A 押印がなくても証明に用いることができます。
本人や担当者個人のサインだけでも,契約書(や納品書など)として成立します。
ただし,後からサインした人が「私のサインではない」と主張した場合は,ちょっと面倒です。
筆跡鑑定などでサインした人が本人であることを証明する必要が出てきます。
また,サインした現場に居た第三者が証言することで証明することもあり得ます。
いずれにせよ,押印があれば強力ですが,逆に押印なしでも無効というわけではないのです。
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- Q&A書類のコピーは証拠にならないのでしょうか。
- A 証拠になります。
逆に,相手から,「偽造したコピーだ」と主張されるリスクは一応あります。
しかし,最近のコピーは性能が良く,鮮明なので,そのような主張は「苦し紛れ」と捉えられることが多いです。
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- Q&A書類をFAXで送られたものは証拠にならないのでしょうか。
- A 証拠になります。
コピーよりも鮮明度が落ちます。
その点,「偽造した書面だ」と主張されるリスクはある程度高まります。
しかし,取引の規模が小さい場合は,その程度の証拠で十分,ということも多いでしょう。
少なくとも「何も書面が残っていない」よりは格段に良いです。
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- Q&A契約書や受領証以外に,証拠となるものはありますか。
- A 取引の存在を推認できるものであれば,工夫次第でどんなものでも証拠になります。
発注書があれば,それを毎回保存することで証拠となります。
1回分の発注書でも証拠となりえますが,取引すべての発注書があれば,日常的に発注書のみで取引されていたことを裏付ける証拠となります。
口頭での発注しかない場合でも,受注記録を残しておけば,それも証拠となりえます。
受注記録は単なる内部書類ですが,毎回記録を残すことで説得力が増します。
また,発注の請書などを毎回相手に送り,控えを保管することも有用です。
こういった日々の積み重ねが主張の信憑性を高めますし,何より,「誤解による未払い」といった紛争の予防につながります。
紛争になったときの備えになる,というよりも,紛争を起こさない(未然に防ぐ)ということにもつながります。
多大なエネルギー・金銭コストの節約になります。
予防法務と呼ばれる所以です。
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債務名義
- Q&A取引先が支払いをしてくれません。
強制的に回収するにはどうしたらいいですか。
- A 強制的に債権を回収するには,判決などの債務名義を取得しなければなりません。裁判所に債務名義を提出すると,強制執行(差押
など)をしてくれます。
債権の回収方法にもいくつかありますが,相手の財産を競売して回収するには,債務名義が必要になります。債務名義とは,強制執行を開始するための書類
の総称ですが,その典型例は判決です。売掛金の支払いを命じる裁判を起こし,勝訴すると,裁判所が支払いを命じる判決をしてくれます。裁判で勝訴するため
にも,日常的に取引の証拠を残しておくことが重要なのです。
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- Q&A判決を取得した後,どうやって強制執行するのですか。
- A 判決を取得したら,対象財産を決めて,裁判所に強制執行の申立をします。
強制執行の対象として典型的なものは次のとおりです。
1 不動産
2 預貯金
3 売掛債権
逆に言えば,取引先の財産状況を把握していることが前提となります。
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- Q&A判決以外の債務名義はどんなものですか。
- A 訴訟をしなくても取得できる債務名義は数種類あります。
1 仮執行宣言付支払督促
2 和解調書・調停調書
3 執行認諾文言の付いた公正証書(いわゆる「執行証書」)
ただし,これは金銭の支払(または有価証券の引渡)に限られます。
予防法務的な観点から言えば,回収リスクの高い取引先からは,あらかじめ執行証書を取りつけておくのがよいでしょう。
取引先の代表者(または委任された者)と一緒に公証役場に行き,公証人に作成してもらいます。
その文面の中に「支払いを怠ったときは強制執行して構いません」といった文言を付しておくことが必要です。
「強制執行認諾文言」とか呼ばれています。
執行証書を作成しておくことで「支払いをしないと強制執行される」という心理的な強制がはたらき,任意の支払いが期待できます。
当然ですが,相手方としては「退路を断たれた」という感覚になります。どのような場面でも好ましいやり方とは限りません。
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- Q&A友好的な取引関係を続けたいので,事前に強い書面を取り付けることが難しいです。
良い方法はありますか。
- A 事後的に,相手方が支払猶予を求めてきた場面で執行証書などを作成する,ということならば「関係を悪化させる」ということにはならないで
しょう。
確かに,あらかじめ債務名義を取得する方法は,友好的な関係の維持を難しくします。
次善の策として,取引先が支払いを怠り,又は支払いの猶予を求めてきたときに,強力な書面を取り付けるということが考えられます。
具体的には,支払いを猶予する代わりに債務名義の取得に協力するよう求めることです。
取得する債務名義は執行証書でもよいですし,訴え提起前の和解による和解調書,民事調停による調停調書でも構いません。
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- Q&A取引先からの支払が遅れ,猶予を申し入れてきました。
債務名義を作成したいのですが,それぞれどのような特徴がありますか。
- A 請求権の内容,要するスピード,主張の相違の有無などによって適する手続きは変わってきます。
1 執行証書
金銭の支払(または有価証券の引渡)にしか使えません。
明渡・商品の引渡,については債務名義としては使えません。
公証役場に予約を入れて,行くことになります。
当日に予約が入れられることも多いです。
金銭の場合はこれが良いでしょう。
2 訴え提起前の和解
金銭の支払以外にも使えます。
オールマイティーなのですが,予約(期日)が数週間先になってしまうことも多いです。
合意管轄を用いた短縮法もあります。
3 調停(調書)
双方の言い分が食い違うなど,紛争性がある場合に適しています。
場合によっては,すぐに債務名義(調停成立)ができないこともあります。
このようなことを避けるために,極力証拠(記録)を出来る範囲で残しておくべきです。
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- Q&A取引先が支払いをせず,連絡もとれません。
債務名義を取得したいのですが,訴訟しかありませんか。
- A 支払督促という方法があります。
執行証書や訴え提起前の和解は,相手方の協力がなければ利用できず,調停は相手方が出席しなければ成立しません。
相手方の協力が一切得ら
れない場合
は,裁判で判決を得ることで債務名義を取得できますが,その前にもう1つ,簡易な債務名義があります。
それが,仮執行宣言付支払督促です。
裁判所に支払督促の申立てをすると,裁判所が相手方に支払督促を送達します。
この督促に対して相手方が何らの異議
もとなえないで2週間経過すると,仮執行宣言付支払督促の申立てをすることができるようになります。
つまり,裁判所には2度支払督促の申立てをするので
す。
1度目は普通の支払い督促,2度目は「仮に執行できる権利」の付いた支払督促です。
2度目の支払督促によって,裁判所が仮執行宣言付支払督促を相手方
と自分に送達してくれます。
この自分に送達された仮執行宣言付支払督促が債務名義となります。
なお,支払督促を受けた相手方は,支払督促に対して「異議」を申し立てることができます。
この異議が仮執行宣言付支払督促が送達される前になされる
と,支払督促は効力を失い,督促手続が訴訟手続に自動的に移行します。
仮執行宣言付支払督促の送達後に異議が出された時は,支払督促は有効で,仮執行宣言
に基づいて強制執行をすることができます。
ただし,訴訟手続へ移行するため,移行後の訴訟で負ければ,既になされた強制執行がひっくり返されることになり
ます。
支払督促は,相手方が事実関係を争ってこない場合には,簡易な債務名義の取得方法として,非常に効果的・効率的です。

差押
- Q&A 債務名義(判決など)を取ったので,取引先の預金を差し押さえたいです。
どの支店に預金があるかまでは分かりません。差押えはできますか。
- A 現時点では,支店まで特定しないと現実的には不十分です。
ここは考え方が2つあります。
【説1 特定不要説】
例えば,「みずほ銀行」の預金,と特定すれば,自動的に残高のある預金を押さえてくれるという説。
【説2 特定必要説】
「みずほ銀行 大宮支店」と,支店まで特定しなくてはならない,という説。
現状では,裁判所によって採用する説が違っています。
説1 大阪高裁平成19年9月19日,東京高裁平成18年6月19日,東京高裁平成17年10月5日
説2 高松高裁平成18年4月11日
実際には,地裁では説が割れています。
仮に抗告などで争っていると,その間に相手方は預金を下ろして逃してしまう可能性もあります。他の銀行に移すとか。
ですから,実務上は「長時間かけても争う」ということは難しく,できるだけ支店まで特定してから差押の申立をする,ということが通常です。
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- Q&A 取引先の預金を押さえたいけれど,どの金融機関に預金が残っているのか,まったく分かりません。
どうしたら良いでしょうか。
- A ある程度「あてずっぽう」で差押をかけてみる,調査会社に依頼する,財産開示手続を申立てる,などの方法があります。
1 あてずっぽうで差押
例えば,債権額を3等分して,近所の3つの金融機関の支店の預金を対象とした差押を申し立ててみます。
その結果,残高があれば差押が成功ですし,口座がなければ空振りとなります。
2 調査会社に依頼
普通と言えば普通の方法です。
調査会社によっては,見つからない場合は費用不要(完全成功報酬)ということも可能です。
トライする価値はありましょう。
3 財産開示手続の利用
相手方に「財産を教えなさい」という手続きです。
ストレート過ぎて,相手方が応じない,とか,却って財産逃しに走られてしまう,ということもあります。
その意味で,万能の手続きではありません。
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- Q&A債務者が銀行の貸金庫の中に純金の延べ棒を保管しています。
これを差し押さえることはできませんか。
- A できます。
貸金庫の中にある債務者の動産については,その動産を直接差押えるのではなく,貸金庫契約上の内容物引渡請求権を差押える方法により,強制執行をすること
ができます。
そして,債権者の申し立てを受けた執行官が保管期間(銀行)から貸金庫内容物の引き渡しを受け,それを売却して配当することになります。
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- Q&A債務者の貸金庫の中身が分からないのですが,差押えはできますか。
- A できます。
貸金庫の内容物に関する引き渡し請求権は,貸金庫の内容物全体を一括して引き渡すことを請求する権利という性質を有します。
内容物について個別具体的に特定した目録を提出する必要はありません。
実際には,開扉に立ち会った執行官が売却できるものを選別します。
その後,選別した物を売却し,その代金を債権者に配当することになります。
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- 【最高裁判所 平成11年11月29日(抜粋)】
三 しかしながら、原審の判断のうち、本件動産が本件貸金庫内に存在するかどう
かが不明であることをもってDの被上告人に対する本件動産の引渡請求権を否定し
た部分は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
1 銀行と利用者との間の貸金庫取引は、銀行の付随業務である保護預り(銀行法
一〇条二項一〇号)の一形態であって、銀行が、貸金庫室内に備え付けられた貸金
庫ないし貸金庫内の空間を利用者に貸与し、有価証券、貴金属等の物品を格納する
ために利用させるものである。そして、前記一2、5の事実によれば、本件のよう
な貸金庫取引においては、貸金庫は銀行の管理する施設内に設置され、銀行がその
保管専用するマスターキーによる施錠を解かなければ、利用者は貸金庫を開扉する
ことができず、また、銀行は、所定の手続を履践しない利用者に対して、貸金庫室
への立入りや貸金庫の開扉を拒むことができるものと解され、利用者としては、銀
行の協力なくして貸金庫に格納された内容物を取り出すことができない。これらの
点にかんがみると、銀行は、貸金庫の内容物に事実上の支配を及ぼしており、その
「所持」(民法一八〇条)を有することが明らかである。また、銀行は、業務とし
て貸金庫取引を行うものであり、貸金庫の安全保持を通じてその内容物を安全に保
管する責任を負っているから、「自己ノ為メニスル意思」(同条)を持って貸金庫
の内容物を所持していることも肯定することができる。したがって、銀行は、貸金
庫の内容物について、利用者と共同して民法上の占有を有するものというべきであ
る。
もっとも、銀行は、貸金庫契約上、緊急を要する場合等を除き、貸金庫の開扉に
際してマスターキーによる施錠を解いた後は、貸金庫の開閉や内容物の出し入れに
は関与せず、したがって、利用者が何を貸金庫に格納し又は取り出したかを知らず、
貸金庫に実際に物品が格納されているか否かも知り得る立場にはない。このような
貸金庫取引の特質から考えると、貸金庫の内容物に対する銀行の前記占有は、貸金
庫に格納された有価証券、貴金属等の各物品について個別的に成立するものではな
く、貸金庫の内容物全体につき一個の包括的な占有として成立するものと解するの
が相当である。
2 そして、利用者は、貸金庫契約に基づいて、銀行に対し、貸金庫室への立入り
及び貸金庫の開扉に協力すべきことを請求することができ、銀行がこれに応じて利
用者が貸金庫を開扉できる状態にすることにより、銀行は内容物に対する事実上の
支配を失い、それが全面的に利用者に移転する。そうすると、銀行に対し、貸金庫
契約の定めるところにより、利用者が内容物を取り出すことのできる状態にするよ
う請求する利用者の権利は、内容物の引渡しを求める権利にほかならない。また、
1に述べたところからすれば、この引渡請求権は、貸金庫の内容物全体を一括して
引き渡すことを請求する権利という性質を有するものというべきである。
3 以上によれば、【要旨第一】貸金庫の内容物については、法一四三条に基づい
て利用者の銀行に対する貸金庫契約上の内容物引渡請求権を差し押さえる方法によ
り、強制執行をすることができるものと解される。
4 ところで、貸金庫の内容物引渡請求権が差し押さえられると、法一六三条によ
り、債権者の申立てを受けた執行官において、貸金庫の内容物の引渡しを受け、こ
れを売却し、その売得金を執行裁判所に提出することになる。もっとも、貸金庫の
内容物についての貸金庫契約上の引渡請求権は、前記のとおり、貸金庫の内容物全
体を対象とする一括引渡請求権であるため、これが差し押さえられると、差押禁止
物や換価価値のない物を含めて貸金庫内に在る動産全体の引渡請求権に差押えの効
力が及ぶ。この場合には、執行官をして、貸金庫の内容物全体の一括引渡しを受け
させた上、売却可能性を有する動産の選別をさせるのが相当であり、このように解
することは、引渡請求権の対象である動産の受領及び売却について執行官を執行補
助機関として関与させた法一六三条の趣旨にもかなうものである。なお、債権者に
おいて特定の種類の動産に限定して引渡請求権の差押命令を申し立てた場合、その
趣旨は、執行裁判所に対して売得金の配当を求める動産の範囲を限定するものと解
するのが相当である。そして、差押命令においてこのような限定が付された場合に
は、執行官が売却可能な動産を選別するに当たってこの制限に服すべきものである
が、このことにより、既に説示した貸金庫の内容物全体についての一括引渡請求権
という性質が変わるものではない。
そうすると、貸金庫契約に基づく引渡請求権の差押えにおいては、貸金庫を特定
することによって引渡請求権を特定することができる。さらに、【要旨第二】差押
命令に基づく動産の引渡しが任意にされない場合の取立訴訟においても、差押債権
者は、貸金庫を特定し、それについて貸金庫契約が締結されていることを立証すれ
ば足り、貸金庫内の個々の動産を特定してその存在を立証する必要はないものとい
うべきである。
- Q&Aいろんな差押えが空振りに終わりました。もう諦めムードです。ダメ元でできることはないですか。
- A 財産開示手続や最後の手段として破産申立などが挙げられます。
裁判所が債務者に財産内容を明かすよう命じる制度があります。
民事執行法の改正により平成16年から始まった制度です。
また,債権者として債務者の破産を申し立てる方法もあります。
手続きが始まると,管財人が付いて,債務者自身から財産を取り上げます。
当然,財産を全部調査されます。
残っている財産があれば,他の債権者含めて配当を受けることになります。
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営業に関する権利の差押
- Q&A取引先が支払をしません。
それでも店舗で営業をしています。
営業権なり店の権利を差し押さえることはできないでしょうか。
- A 店舗経営に関するモノで差押できるものは限られています。
実質的には,強制的に押さえる(取り上げる)→売却する(換価)
という方法が可能なものでないと差押できません。
まとめると次の3つの要件です。
<執行の対象の要件>
1 独立性
それ自体単体で処分可能
2 換価可能性
金銭的評価が可能
3 譲渡性
譲渡が可能
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- Q&A【営業権の差押え】
- A 不可能
確かに,円満な取引として,営業丸ごとを売却する,ということはあります。
「事業譲渡」と言います。
そこで,営業丸ごとを取り上げて売却してカネにしよう,という発想はありましょう。
しかし,現実的に考えると,事業譲渡の場合,「事業」を構成する個々の動産・不動産だけではなく,取引先,という「モノ」ではない対象も譲渡(引継)対象
です。
要は,債務者自身の「一定の行為」が必要となってきます。
独立性(独立した財産),譲渡性(譲渡可能)という部分が否定されるのです。
実際に「強制的」に行うということは想定しにくいです。
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- Q&A【株式の差押】
- A 一応可能
原則として,「債権差押」のルールが適用になります(民事執行法167条1項)。
うまく行けば,株式取得→役員交代,ということで「合法乗っ取り」が実現します。
ただし,ちょっと複雑であったり,ハードルが高かったりします。
まず,閉鎖会社(株式譲渡には会社の承認が必要)の場合,差押→売却,というプロセスにおいて「発行会社による譲渡承認」が必要になります。
「強制執行」でも「発行会社による譲渡承認」まで無視することはできないのです。
仮に,発行会社から譲渡承認がもらえない,ということになると,「換価可能性」が否定され,差押ができない,ということになります。
なお,株券が発行され,債務者自身が管理している場合は,動産執行,のルールが適用されます。
結局,公開会社(上場会社など)の株式,でない限り,差押は実効性が乏しいということになりましょう。
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- Q&A【許可・認可類の差押え】
- A 不可能
譲渡性がありません。
当然,許認可は,当事者自身を審査してなされたものです。
別の人に気軽に「パス」できるものではありません。
運転免許証や大学の合格証を他の人にお金で売ることができないのと同じことです。
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- Q&A【店舗内の動産執行】
- A 理論上は可能,現実的には困難
動産執行,という方法が民事執行法上規定されています(民事執行法122条)。
しかし,現実的にはハードルが高いです。
1 換価可能なほど価値のあるものが少ない
一般に,店舗で使用されている什器備品類は,ほとんど値が付かない,ということが多いです。
購入する時はそれなりの金額でも,売却する時はまったく状況が違うのです。
2 所有者が確定しにくい
単純な場合は,問題は生じないことも多いです。
しかし,経営者・店のオーナー(株主)と,店舗内の個々の動産の所有者,は一致しないこともよくあります。
フランチャイズにして,店舗名だけ同じにしている,とか,什器備品をリースで借りている,などです。
なお,仮差押の場合は,申立の段階で所有者まである程度は証明(疎明)しなくてはなりません。
「相手に確認しないと分からない」という状態だと却下になってしまうことが多いです。
この部分は裁判官によっては柔軟に考えてくれる場合もあります。
ただし,東京地裁(民事第9部)は杓子定規な印象があります。
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- Q&A【賃借権の差押え】
- A 不可能
独立性が否定されます。
仮に,賃借権が譲渡されたとした場合,譲受人は対象物件(店舗)の占有も取得しないと意味がありません。
店舗内の什器備品,という意味ではなく,店舗自体の占有という意味です。
要は,現在の占有者に退去してもらい,新たに占有する,という意味です。
このように,他のアクションがないと,「単独で賃借権だけ」処分(売却)しても意味がないのです。
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- Q&A【敷金・権利金の差押え】
- A 可能,ただし現金化(換価)は困難
敷金・権利金は明渡の際に返還されるものです(控除されるものはありますが)。
そこで,敷金・権利金の「返還請求権」を差し押さえることはできます。
「債権差押」の一環として可能です。
ただし,実際に現金化するのは多少難しいです。
オーナー(賃貸人)に敷金返還を請求しても,元々明渡時までは支払われないものです。
結局,差押をしても,債権者としては,「債務者が対象物件を退去した時に」やっと返還を受けられる,という状態になるに過ぎません。
なお,一般的に店舗の賃貸借契約で,「差押を受けた時」が契約解除事由として規定されていることが多いです。
そうすると,次のような流れになる可能性も一応はあります。
契約解除→退去→敷金返還が実現
しかし,実際にそのような条項が有効であるとは言い切れません。
契約が解除されないことの方が一般的でしょう。
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- Q&A【売掛金の差押】
- A 可能
まさに「債権差押」の典型です。
当然,取引先について特定できないと申立ができません。
これは,売掛金が存在した場合は,当然,実効性が高いです。
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- Q&A結局,相手方は,支払を拒否し続けても,何事もなかったかのように営業を続けられるのでしょうか。
- A 現実的・結果的には,営業継続は可能と言えましょう。
これだけを考えると,法が悪質な経営者の営業活動を保護している,ように見えるかもしれません。
そもそも,債権の性質として,「回収」が目的です。
「ペナルティ」を目指すことはこの目的を外れてしまうのです。
このような状況も含めて「債権回収」自体が,営業活動の持つリスクと言えます。
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財産開示手続
- Q&A財産開示手続はどのような場合に利用できるのですか。
- A 判決その他の「債務名義」を持っていて,かつ強制執行をしたけど執行不能となったというケースが典型です。
判決や裁判上の和解調書といった,強制執行できるもの(債務名義)を持っている方が典型です。
そして,実際に差押などの強制執行を行ったけども完全な配当を受けられなかった場合または,仮に強制執行をしても完全な弁済を受けられない可能性が強いと
いう場合に財産開示の申立ができます。
なお,その債務者が3年以内にこの制度(財産開示制度)において財産開示をした場合は原則として利用できません。
その,「前回」の記録を閲覧や謄写すれば財産内容が分かるからです。
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- Q&A財産開示手続は,どのような流れで進むのでしょうか。
- A 裁判所の実施決定→財産目録提出期限→財産開示期日 という流れです。
申立書や添付書類を確認した上,裁判所が実施決定を出します。
裁判所は債務者に,財産目録の提出を命じます。
その上,債務者が出頭する「財産開示期日」も定めます。
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- Q&A財産開示手続で,債務者が開示に応じないのではないでしょうか。
- A ペナルティーとして30万円以下の「過料」がありますが機能が弱いです。しかし,和解に至る可能性もあります。
まず,条文上「過料」が規定されています。
しかし,裁判所がこれを発動するのは稀です。
仮に発動すると,一般の債権者より優先で債務者の資金を奪い取ります。
ある意味,申し立てた債権者の希望と矛盾することになるのです。
(「罰金」「科料」という「刑罰」とは異なり「過料」の場合,労役場留置(強制労働)という代替措置はないのです)
結局,無視したらその先がない,という意味で,実効性が弱い,という批判もあります。
その一方で,統計上20%程は,当事者間で支払方法を協議して決め,財産開示の申立自体は取り下げて終わる,ということもあります。
ある程度「まとも」な相手方(債務者)であれば,法令順守のポリシーを持っています。
真正面から法令を破ることは,レピュテーションリスク,融資・助成金等を受ける際の制約にもつながるので避けたいと考える事業体も一定数あるのです。
逆に言えば,財産開示手続は,そのような相手方の「良心」に掛けて行う,という言い方もできましょう。→代表弁護士三平聡史のブログ

債権者からの破産申立
- Q&A最初から債務者の破産申立をするのはどうでしょうか。
- A 相手方(債務者)が支払不能・債務超過である疎明がないものとして却下される可能性があります。
債権者が相手方(債務者)の破産申立をする場合,「他人の財布の中」を疎明する必要があります。
疎明というのは,「証明」よりも低い立証という意味です。
とは言っても,「そもそも支払が遅れているのだからおそらく債務超過だろう」というだけでは弱いです。
この点,財産開示手続で開示に応じなかったこと,というのは債務超過を示す資料の1つとして使えます。
これ単体で足りるということはないでしょうけど,他の事情と合わせて破産開始決定まで持っていくことはできましょう。
- Q&A破産申立で債権の回収ができるのでしょうか。
- A 債務者の財産状況によります。一般的には配当率はゼロに近いことが多いです。
管財人が債務者の財産調査を行います。
この場合,財産家事手続と異なり,直接事業所に赴いたり,銀行等へ直接連絡するなど,協力に財産を「取り上げ」てくれます。
直近で財産の不正な動き(財産逃し)があればその取り戻し(否認権の行使)も行います。
しかし,統計的には,本当に財産が乏しく,「強力な回収」が炸裂することは少ないです。
なお,破産申立を行った債権者も,これに乗じる形で債権届出をした債権者も平等に扱われます。
(租税が優先されるなど,債権の性質に応じた優劣はあります)
実際に破産申立をする場合は,回収目的というよりも,「けじめを付ける」といったポリシー・意地といった趣旨が大きいとも言えましょう。
執行妨害
- Q&A担保である建物に賃借権の登記がされました。
このような妨害行為に対して,有効な対抗手段はありますか。
- A 競売を申し立てるとともに売却のための保全処分を申し立てる,という方法があります。
競売手続開始後に目的不動産の価値を減少させるような行為があったときは,裁判所へ申し立てることにより,裁判所から価格減少行為の禁止等を命じる処分を
してもらうことができます。
賃借権の登記がされたこと自体は,「競売されれば抹消される無駄な抵抗」であるため,価格減少行為にはあたらないと言えます。
価格減少行為と言えるのは,第三者が占有するなど,不動産の使用が妨げられる状態まで達した場合です。
しかし,第三者が占有するのをただじっと待つしかないわけではないです。
次のような理論で占有移転禁止等の保全処分が認められることもあります。
「賃借権の登記がされた→近々賃借人に引き渡す予定があるのではないか→価格減少行為」
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- Q&A抵当建物の屋上に物置が設置されました。
物置にも抵当権の効力は及びますか。
- A 原則として,物置にも抵当権の効力が及びます。
抵当権の効力は,抵当不動産に付加して一体となっている物に及ぶとされています(民法370条)。この付加して一体となった物(「付加一体物」といいま
す。)の内容については争いがありますが,少なくとも「不動産に従として付合した物」(付合物,民法242条)は付加一体物とされています。
屋上の物置は付合物に当たのでしょうか。
付合物の要件として,必ずしも,建物と物置とが構造的に接合されている必要はありません。建物と物置の接着の程度,物置の構造及び利用方法を考察し,物置
が建物と一体となって利用され,取引されるべき状態であるならば付合していると判断してよいでしょう。
物置が付合物であるならば,建物の付加一体物として,建物に設定された抵当権の効力が物置にも及ぶことになります。
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- Q&A抵当建物の屋上に設置された物置が,建物として第三者の名義で登記されています。
しかも抵当権の登記もされていません。
どういうことなのでしょう。
- A おそらく,分譲マンションのような「区分建物」として登記されたのでしょう。
物置が建物として登記されるためには,原則として,独立した建物としての用途に供することができることが必要です。
建物の1部屋だけを建物として登記するには区分所有建物として登記することになりますが,今回の場合は,抵当建物と物置とを「一棟の建物」とする表示登記
をし,かつ,抵当建物と物置とを区分建物とする登記がされたはずです。
「区分建物」の場合,抵当建物に設定されていた抵当権は,別の「区分建物」には効力が及びません。
つまり,元々の建物の抵当権は物置には及ばない形になります。
結局,物置の登記事項証明書には,抵当権の登記が記載されていなかったのでしょう。
分譲マンションの101号室に抵当権を設定しても,その隣の102号室には抵当権の効力が及ばないのと同じです。
しかし,区分建物として登記するためには,物置が「構造上区分された,独立して居住,店舗,事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるも
の」であることが必要です(区分所有法1条)。
屋上に設置された物置が,そのような条件を満たしているとは到底思えません。
妨害のための不正な登記です。
登記官の職権による登記の抹消を求めるべきです。
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仮差押
- Q&A取引先から,納品した品物の代金を回収しようとしています。
提訴したいのですが,その間に財産を逃されてしまうと思います。
対抗策はありますか。
- A 仮差押という方法があります。
仮差押であれば,訴訟前の段階から,相手に知らせず不意打ち的に財産を仮に差し押さえることができます。
これにより,その対象財産を自由に「逃す」ことができなくなります。
ただし,債権者側は,「担保」を提供する必要があります。
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- Q&A仮差押によって,具体的に,どのような形で「財産を逃せなく」なるのですか。
- A 裁判所からの通知や登記・登録という形が取られます。
不動産・・・登記
裁判所から法務局に「仮差押登記」が依頼されます(正確には「嘱託」といいます)。
→相手方は不動産を売却したり,担保に入れたりできなくなる。
預貯金・・・通知
裁判所から金融機関に「通知」がなされます。通知の内容は「本人(預金者)には払いださないで下さい」というものです。
→相手方は引き出し不能になる。
保険・・・通知
裁判所から保険会社に「通知」がなされます。通知の内容は「本人(保険契約者)からの解約・払戻には応じないで下さい」というものです。
→相手方は解約不能になる。
これらの裁判所発信のアクションによって,結果的に,相手方自身は,対象財産を「逃す」ことができなくなります。
俗に言う「ロックされた状態」です。「凍結状態」とも言います。
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- Q&A仮差押を受けました。どのような対抗手段がありますか。
- A 仮差押を否定する理由としてどのような事情があるか(ないか)によって数種類の方法があります。
1 保全異議(保全法26条)
「仮差押や仮処分の発令が間違っていた」という場合の不服申立手続きです。
発令した裁判所が再度,「判断ミスはなかったかどうか」を考慮することになります。
一般的な保全(仮処分・仮差押)を失効させる手続きです。
「ノーマル版保全キャンセラー」とでも呼ぶべきものです。
異議の内容・・・特に制限なし
例;被保全債権の不存在,担保の不足,目的物が債務者の所有に属さないなど
期間制限・・・なし
手続の内容・・・口頭弁論又は当事者双方の立ち会える審尋期日が設定されます(民事保全法29条)。
異議が認められれば,保全命令は取り消される。
2 保全取消(保全法37~39条)
保全(仮差押・仮処分)を失効させる形式的・明確な理由がある場合の手続きです。
「簡易版保全キャンセラー」とでも呼ぶべきものです。
条文上,要件(取消理由)が明確に決まっています。
<取消理由>
・起訴命令後に債権者が提訴しない場合(37条)。
・事情変更による保全取消(38条)。
→発令後の被保全債権の消滅,保全の必要性の消滅など。
・特別の事情による保全取消(39条)。
→仮処分命令(仮差押は含まれない)により償うことができない損害を生じるおそれがあるとき等。
3 保全抗告(保全法41条)
保全異議(1)及び保全取消(2)の裁判に対する上級審へ不服申立手段です。
訴訟で言うところの「控訴」に当たります。
期間制限=送達から2週間。
なお,保全抗告審での結論に対して,次のステップとしての不服申立手段はありません。
民事保全の手続きの中では「2審制」が取られているのです。
4 仮差押解放金
最初の仮差押の発令の時点で,決定主文中で「仮差押解放金の金額」が設定されているはずです。
これは「人質のチェンジシステム」です。
既に仮差押を受けた財産からロックを外してもらう のと引き換えに 新たに現金を提供して,これを供託する(ロック状態にする) というものです。
実質的には「仮処分自体は認める」という前提で用いる手段です。
5 起訴命令申立
そもそも民事保全(仮差押など)は,その後,正式な裁判で決着を付けることが予定されています。
要は暫定措置という位置づけです。
しかし,実際には,仮差押を行った後,債権者が正式な裁判を起こさない例もあります。
(例えば「売買代金請求訴訟」などの正式な裁判,のことを「本案訴訟」と呼びます。先行的・暫定的な保全と区別する呼び方です)
その場合,債務者としては,「白黒決着が付かないまま=グレー状態のまま,財産のロックをされたままの状態」となります。
そこで,債務者(仮差押等を受けた方)は裁判所に対して「起訴命令申立」をすることができます。
この申立がなされると,裁判所から債権者に対して,「訴訟を起こせ」という命令が出ます。
制限期間内に提訴がない場合は,債務者は一方的に保全を取り消すことができます。
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- Q&A仮差押を受けました。相手方は,「(私が)貸金を返さない」と主張しています。
しかし,実際には,別の機会で弁済しています。この場合の対抗手段は何ですか。
- A 保全異議を申し立てる,または,起訴命令申立→本案訴訟で反論する,という手段が原則的です。
通常,と言いますか,より早急に仮差押を外す要請が高い,という場合は保全異議を申し立てるべきです。
保全異議の審理の中で,「そもそも貸金自体が消滅したか,存続しているか」を審理することになります。
ただし,この場合,後から相手方が正式な貸金返還請求訴訟を提起してきた場合,同じ内容の審理が重複して行われることになります。
保全異議の審理 と 貸金返還請求訴訟(本案訴訟)の審理 という形で重複するのです。
その意味で,場合によっては,最初から「起訴命令申立」を行うこともできます。
この場合,相手方んい本案訴訟を速やかに提起させることになります。
そして,本案訴訟の中で債務者サイドから積極的に反論(立証)を行えます。
勿論,起訴命令に対して相手方が本案訴訟を提起してこなければ,「保全取消」の手続きによって容易に保全を失効させることができます。
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他の債権者との競合
- Q&A【配当要求】
当社は取引先に代金債権を持っています。
既に長期間滞納されています。
他にも債権者が多そうです。
差押などで回収できるのでしょうか。
- A 差押をしても,他の債権者も参加してくることが考えられます。
差押をした場合,最終的に申し立てた債権者は債権を回収できます。
しかし,他の債権者もその差押手続きに参加することができます。
「配当要求」と言います。
文字どおり,最終的な金銭の配当を受けることを要求する手続きのことです。
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- Q&A【配当要求権者】
他の債権者が申し立てた差押に参加できるのはどのような債権者ですか。
- A 債務名義を有している債権者が典型です。
債務名義の主なものは,確定判決,執行証書(公正証書),仮執行宣言付支払督促命令などです。
単に「借用書」「契約書」などの私文書を持っているだけでは参加できません。
また,債務名義がない場合でも,仮差押を行っている場合も配当要求ができます(民事執行法51条)。
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- 【民事執行法51条1項(不動産執行)】
(配当要求)
第五十一条
第二十五条の規定により強制執行を実施することができる債務名義の正本(以下「執行力のある債務名義の正本」という。)を有する債権者、強制競売の開始
決定に係る差押えの登記後に登記された仮差押債権者及び第百八十一条第一項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、配当要
求をすることができる。
【民事執行法154条1項(債権執行)】
(配当要求)
第百五十四条
執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。
- Q&A【配当要求終期】
既に差押の申立をしています。
今のところ,他の債権者は参加(配当要求)してきていません。
いつまで他の債権者が参加しなければ単独で回収できることになりますか。
- A 原則として「配当要求の終期」が裁判所に決められます。
配当要求の締切日のことです。
裁判所は「配当要求の終期」を決めて,差押開始決定と配当要求終期を公告します(民事執行法49条)。
なお,債権執行の場合は,「配当」という制度はありますが,省略されることもあります(民事執行法166条)。
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- 【民事執行法49条(抜粋)】
(開始決定及び配当要求の終期の公告等)
第四十九条
強制競売の開始決定に係る差押えの効力が生じた場合(その開始決定前に強制競売又は競売の開始決定がある場合を除く。)においては、裁判所書記官は、物
件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して、配当要求の終期を定めなければならない。
2
裁判所書記官は、配当要求の終期を定めたときは、開始決定がされた旨及び配当要求の終期を公告し、かつ、次に掲げるものに対し、債権(利息その他の附帯
の債権を含む。)の存否並びにその原因及び額を配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告しなければならない。
(略)
- Q&A【債権差押の「直接取立」】
債権の差押で「配当」が省略されるというのはどのような場合でしょうか。
- A 「競合」が生じない場合です。
簡単に言えば,他の債権者が同じ債権を差し押さえると「競合」となります。
その場合は,第三債務者は債務を弁済する代わりに供託します。
そして,供託された金額について,複数の債権者で按分配当する,などの処理を行います。
逆に,単純に単独で債権者が差押をした場合は,「競合」を生じてない状態です。
そのままであれば,「配当」は行われません。
つまり,債権全額について,回収できることになります(勿論,差押債権が債権額未満の場合は差押債権額が最大限となります)。
「競合」が生じない場合は,差押をした債権者が,直接第三債務者から回収(取立)することができます。
なお,直接取立ができる時期は,「債務者への差押命令送達から1週間後」となっています。
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- 【民事執行法155条】
(差押債権者の金銭債権の取立て)
第百五十五条
金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押
債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
2 差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、その債権及び執行費用は、支払を受けた額の限度で、弁済されたものとみなす。
3 差押債権者は、前項の支払を受けたときは、直ちに、その旨を執行裁判所に届け出なければならない。
- Q&A【他の債権者が債権執行に参加する時期】
債権の差押をした場合,いつの時点まで他の債権者に参加される可能性があるのでしょうか。
- A 実際の回収(直接取立),取立訴訟の訴状送達時,などです。
債権差押をした場合,すぐには安心できません。
他の債権者が参加した場合,配当を按分することになってしまうからです。
では,いつまで他の債権者は参加できるか気になるところです。
民事執行法165条にこのことが規定されています。
また,転付命令という手続きを使っても結果的に「他の債権者参加シャットアウト」が実現します。
- <他の債権者の参加締切>
・直接取立による回収(条項なし。当然解釈)
・第三債務者の供託(165条1号)
・取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時(165条2号)
・転付命令(160条)
- <まとめ>
債権差押の場合,債務者への送達後1週間の時点で,すぐに第三債務者に支払を請求します(直接取立)。
第三債務者がすぐに支払に応じれば良いですが,拒否するような場合は,とにかく急いで提訴します。
第三債務者がなかなか払ってくれない時点で,他の債権者が,同一債権について差押を申し立てた場合は,配当実施となり得ます。つまり,単独で独占的に回収
することができなくなってしまうのです。
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- 【民事執行法165条】
(配当等を受けるべき債権者の範囲)
第百六十五条 配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる時までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者とする。
一 第三債務者が第百五十六条第一項又は第二項の規定による供託をした時
二 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時
三 売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時
四 動産引渡請求権の差押えの場合にあつては、執行官がその動産の引渡しを受けた時
- 【民事執行法160条】
(転付命令の効力)
第百六十条
差押命令及び転付命令が確定した場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三
債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。
- Q&A【仮差押の効果】
仮差押の場合は,他の債権者よりも優先することになりますか。
- A 他の債権者よりも優先することにはなりません。
仮差押は文字どおり「仮」なのです。
債務者がその財産を動かさないようにしておく,つまり,ロックしておくだけです。
仮差押を申し立てた債権者を優遇する目的ではないのです。
逆に言えば,他の債権者が仮差押をした財産について差押を申し立てることは可能です。
配当の中でも,「仮差押債権者」が有利に扱われるということはありません。
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欠損処理(債権管理)
- Q&A【破産と欠損処理】
取引先が代金未払いのまま破産しました。
これで欠損処理できるのでしょうか。
- A 原則的に,債務者に破産手続きを取られたら,税務上欠損処理することに問題はありません。
ただし,保証人に注意が必要です。
法人が破産すると,法人格が消滅します。
破産手続中で配当が受けられる場合と受けられない場合がありますが,いずれにしても,破産手続終了時点で「これ以上は回収不可能」という状態になります。
税務上,欠損処理できます。
個人が破産した場合は,当然,個人(権利主体)自体は消滅しません。
ただし,破産手続とセットで「免責決定」がなされます。
特に悪質な詐欺的行為がある場合は免責不許可となることもありますが,ほぼ全件で免責許可決定がなされているのが実情です。
そして,「免責決定」が確定すれば,「回収不可能」となりますので,税務上の欠損処理ができます。
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- Q&A【破産と保証人】
取引先が代金未払いのまま破産しました。
連帯保証人への請求もできなくなるのでしょうか。
- A 保証人への請求は可能です。主債務者の破産・免責は影響を及ぼしません。
まさに,主債務者に事故(支払不能)があった時のための「保険」「スペア」が保証人というシステムの趣旨です。
このように「請求の可否」については,主債務者の破産・免責は保証人に影響を及ぼしません。
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破産と消滅時効
- Q&A【破産と消滅時効(債権管理)】
取引先が破産しました。連帯保証人への請求で注意点はありますか。
- A 主債務者の破産が保証債務の「消滅時効」に影響を及ぼします。
債権管理上明確にしておく必要がありましょう。
破産手続は,「配当事案」「廃止事案」があります。
この区分けによって保証債務への影響も変わってきます。
<1 配当事案>
破産者に,配当できるだけの財産が残っていたケースです。
この場合,配当の前提として,破産管財人が「破産債権者表」を作成します。
当然,一定の調査をして,裏付けの確認等をしつつ破産債権者表を作成します。
そして,破産債権者表が作成され,確定した場合,その内容は「確定判決と同一の効力」を持ちます(破産法124条3項)。
「確定判決と同一」なので,消滅時効の期間は「10年間」となります(民法174条の2第1項)。
通常,企業間の取引での消滅時効は1~5年(短期消滅時効や商事時効)です。
「延長」されたことになります。
また,消滅時効のカウントがリスタートするのは,破産手続終結決定から,となります。
【破産法】
(異議等のない破産債権の確定)
第百二十四条
第百十七条第一項各号(第四号を除く。)に掲げる事項は、破産債権の調査において、破産管財人が認め、かつ、届出をした破産債権者が一般調査期間内若し
くは特別調査期間内又は一般調査期日若しくは特別調査期日において異議を述べなかったときは、確定する。
2 裁判所書記官は、破産債権の調査の結果を破産債権者表に記載しなければならない。
3 第一項の規定により確定した事項についての破産債権者表の記載は、破産債権者の全員に対して確定判決と同一の効力を有する。
【民法(抜粋)】
(判決で確定した権利の消滅時効)
第百七十四条の二
確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確
定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
<廃止事案>
細かく分けると,「異時廃止」「同時廃止」があります。
いずれも,「配当するだけの財産が残っていない」場合に取られる手続きです。
破産者の債権債務の清算が終了する前に破産手続きを終了する,という意味です。
この場合は,通常,破産管財人による債権の調査,というのは行われません。
結局,「確定判決と同一の効力」というものも生じません。
結論として,従前の時効期間(主に1~5年)は変わらないままです。
ただし,債権者として破産手続上「債権届出」をした場合は,次のような解釈により,消滅時効が中断します。
「債権届出」は「破産手続参加」と扱われます(民法152条,破産法111条)。
(なお,他の手続きでも同様の規定があります(民事再生法94条,会社更生法135条))
そして,破産手続参加は民法147条の「請求」として扱われるので,これによって中断の効力が認められるのです(最高裁昭和47年3月21日,民法152
条参照)。
そして,消滅時効期間がリスタートするのは,「廃止決定確定時」と考えられています。
【民法(抜粋)】
(時効の中断事由)
第百四十七条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
(破産手続参加等)
第百五十二条
破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。
【破産法(抜粋)】
(破産債権の届出)
第百十一条
破産手続に参加しようとする破産債権者は、第三十一条第一項第一号又は第三項の規定により定められた破産債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」
という。)内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。
一 各破産債権の額及び原因
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消滅時効
- Q&A当社は建築工事業をしています。
その代金が消滅時効にかかるのは何年ですか。
- A 3年間です。
一般的には,請求できる段階,要は契約上の支払期限から3年間,となります。
ただし,工事終了の方が遅い場合は,工事終了時点から3年間,となります(民法170条)。
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- Q&A消滅時効が短い債権について,時効期間を長くしておきたいです。
取引先との基本契約書で長めの時効期間の条項を入れれば良いのでしょうか。
- A 時効期間を設定する(延長する)条項は無効です。
時効の利益を事前に放棄することはできません(民法146条)。
時効期間を延長するということは,債務者にとっての「時効の利益」を少なくする方向ということになります。
そこで,これも「時効の利益の放棄」に準ずるものとして無効とされます。
当事者がどんなに納得しても法律が介入して無効となるのです。
このような規定を「強行法規」と呼んでいます。
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- 【民法146条】
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
- Q&A売掛金が時効で消滅するのを防ぐためにはどうしたら良いでしょうか。
- A 一部でも入金してもらうなどの方法があります。
消滅時効の進行を止める方法がいくつかあります(民法147条)。
「時効の中断」と呼んでいます。
<時効の中断>
・請求
請求書を送付する,という意味ではなく,裁判で請求する,つまり提訴のことです。
・差押え,仮差押,仮処分
保全手続きのことです。
・承認
債務者が債務を負っていることを認めるというアクションです。
実務上は「債務確認書」とか「弁済計画書」とかのタイトルで債務者が調印した書面が使われます。
また,一部の弁済,というのも「承認」に含まれます。弁済という行為自体が「債務を認めている」という態度にほかならないからです。
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- Q&A消滅時効の中断では,どのように時効の期間が延長されるのですか。
- A 従来と同じ時効期間です。起算点が中断時点にずれるだけです。
例えば,工事代金の場合,当初より時効期間が3年間です。
分割払いであれば,各回の支払が「承認」となり,中断されます。
そこで,「最後の支払日から3年」ということになります。
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- Q&A取引先が工事代金をなかなか支払いません。
時効期間を長くすることはできませんか。
- A 裁判所を利用する手続きによって時効期間が10年になります。
判決が確定すると,時効期間は一律10年となります(民法174条の2第1項)
次のような判決に準じるものについても同様とされています。
・裁判上の和解(民法174条の2第1項後段)
・認諾,放棄(コンメンタール民法総則,我妻榮・有泉亨)
・支払督促(最判昭53年1月23日の理由中の判断)
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- 【民法174条の2】
1 確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他
確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
- Q&A公正証書を作った場合,消滅時効期間は10年に伸びますか。
- A 伸びないと思われます。
判決や裁判上の和解であれば,民法174条の2の適用により時効期間が10年とされます。
しかし,公正証書(執行証書)はこの条文は適用されないという高裁の裁判例があります(後掲)。
既判力という効力がない点で,判決と同視できない,というのが理由です。
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- 【東京高等裁判所 昭和56年9月29日(抜粋)】
控訴人は、本件金員貸付については公正証書が作成され、該公正証書上、被控訴人らによって右貸借による債権が確認され、かつ、その債務につき執行認諾の意
思表示がなされているから、民法一七四条ノ二第一項の規定により、その消滅時効期間は一〇年に延長されるものであると主張し、控訴人主張のような公正証書
が存在することは当事者間に争いがない。しかし、このような公正証書上の権利については、いわゆる執行力があっても既判力がないから、民法一七四条ノ二第
一項に規定する確定判決と同一の効力を有するものにより確定したる権利には該当しないと解するのが相当であるかる、右規定の適用はない。したがって、控訴
人の右主張は、採用することができない。
- Q&A時効の期間を長くすることは,裁判所を使わないとできないのですか。
- A 準金銭消費貸借契約を用いるとできます。
最初の契約の時点で時効期間を自由に決めるということはできません。
しかし,既に発生している債権については,結果的に「期間を長くする」が可能です。
例えば,工事代金の消滅時効期間は3年です(民法170条)。
この代金について滞納した状態において,この代金を「金銭消費貸借」にチェンジすることができます(民法588条)。
体裁はこのようなものです↓
「残代金について,金銭消費貸借の目的とする。そして,以下のとおり支払う」
要は金銭の「貸し借り」となるのです。
そうすると,一般の会社における債権として時効期間は5年となります(商法522条)。
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- 【民法588条】
消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、
これによって成立したものとみなす。
【商法522条】
商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い
時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。

仮差押による消滅時効中断
- Q&A消滅時効期間をより長くする方法はありますか。
- A 仮差押をした状態で放置すると時効が完成(進行)しないという判例があります(後掲)。
これについては反対説もあります。
「正式な訴訟の判決でも確定後消滅時効が進行する→10年で時効完成」
と比べると
「仮差押(暫定的措置)→永久に時効が完成しない」
というのは不合理だという考えです。
しかし,現時点で生きている判例では時効は進行しない(完成しない)とされています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【最高裁判所第3小法廷平成7年(オ)第1413号債務不存在確認等請求事件平成10年11月24日】
仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続すると解するのが相当である(最高裁昭和五八年(オ)第八二四号同五九年三
月九日第二小法廷判決・裁判集民事一四一号二八七頁、最高裁平成二年(オ)第一二一一号同六年六月二一日第三小法廷判決・民集四八巻四号一一〇一頁参
照)。けだし、民法一四七条が仮差押えを時効中断事由としているのは、それにより債権者が、権利の行使をしたといえるからであるところ、仮差押えの執行保
全の効力が存続する間は仮差押債権者による権利の行使が継続するものと解すべきだからであり、このように解したとしても、債務者は、本案の起訴命令や事情
変更による仮差押命令の取消しを求めることができるのであって、債務者にとって酷な結果になるともいえないからである。
また、民法一四七条が、仮差押えと裁判上の請求を別個の時効中断事由と規定しているところからすれば、仮差押えの被保全債権につき本案の勝訴判決が確定
したとしても、仮差押えによる時効中断の効力がこれに吸収されて消滅するものとは解し得ない。
- Q&A【仮差押をしても時効が中断しない場合】
- A 「取下げ」「取消」があると「何もなかった」状態になるので中断の効果も生じません。
・取下げた場合 ⇒ 初めから中断しなかったことになる
・取消された場合 ⇒ 初めから中断しなかったことになる
ただし,仮差押解放金の供託によって仮差押が取消されたときは,時効は中断しません(最判平6.6.21)。
「供託された解放金(供託金取戻請求権)が仮差押執行の目的物に代わるものとなる」というのが理由です。
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- Q&A【差押・仮差押が功を奏しなかった場合の時効中断の有無】
- A 最低限,「債務者への通知」まで達成すれば時効中断の効力は生じます。
(中断効生じる)
・差押える物がないために執行が不可能になっても,中断の効力を生じます(大判大15.3.25)。
・債権の差押え命令が第三債務者に送達されないということがあっても,債務者に送達されれば,中断の効力を生じます(大判昭2.12.3)。
(中断効生じない)
・債務者の住所が不明で執行ができなかった場合には,中断の効力を生じません(最判昭43.3.29)。
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- Q&A【時効中断のタイミング】
- A 差押や保全の種類によって微妙に異なります。
・原則 (仮)差押通知が債務者に送達された時
・不動産 上記送達と(仮)差押えの登記のいずれか早い時
・動産 執行官に対して動産執行の申立てをした時
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- Q&A【他人の手続に乗っかった場合】
- A 他の債権者が申し立てた執行手続きに参加することにより,中断の効力が生じることもあります。
・他の債権者の行った競売に執行力ある正本に基づいて配当要求を行った場合
→時効は中断します。
・その後,競売手続きが取り消された場合
→取り消しまでの中断効は継続します。
要は,「初めから中断しなかったこと」にはなりません。
・他の債権者の行った競売手続きにおいて,自分の持つ抵当権に基づいて配当要求を行った場合
→時効は中断しません(強制執行につき最判平1.10.13,抵当権実行につき最判平8.3.28)。
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- Q&A【その他】
- A 外部的要因で仮差押登記が抹消されても中断の効果は(抹消時点まで)は生じます。
・仮差押の目的不動産が第三者の申立による強制競売により競落され,仮差押の登記が抹消された場合
→「右抹消の時まで中断事由が存続したものというべきである」(最判昭59.3.9)
「法律の規定に従わないことにより取り消されたとき」には時効は中断しません(民法154条)。
これに対し,他の債権者の競売による仮差押の取消しは,「法律の規定に従わなかったこと」が原因ではないと考えられるからです。
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相続財産分離
- Q&A私(A)はBにお金を100万円貸していました。Bは不動産などの財産を多く持っていたので安心してい
ました。
最近Bが亡くなりました。Bの子Cが不動産などの財産を相続で承継したようです。
Cは借金が多いらしいので,その返済に使ってしまうことが心配です。
良い方法はありませんか。
- A 第1種相続財産分離という手続きを取ると良いです。
要するに,次のような状況を防ぐ手段です。
<相続財産混在で困ること>
相続された財産(Bが所有していた不動産)が相続人(C)財産と混ざる
→Cの債務(C自身の借金)で相続財産が失われる結果になる
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- Q&A相続財産分離の制度を利用するためには具体的にどうすればよいのでしょうか。
- A 家庭裁判所に申立をします。
正式名称は,「相続財産分離の請求」という手続きです(民法941条~)。
相続開始(被相続人が亡くなった時)から3か月以内に申立をしなくてはなりません(民法941条1項)。
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- Q&A相続財産分離の申立をした後は,どのように手続きが進みますか。
- A 配当加入申出公告→配当 という流れになります。
・配当加入申出公告
要するに,同じような立場,つまり被相続人Bに対して債権を持っている人は申し出るようにアナウンスをするのです。
通常は申出期間は2か月とされます(民法941条2項)。
このアナウンスは,官報に「公告」として記載されます(民法941条3項)。
・配当
配当を受けるのは,被相続人Bの債権者です。
当然ですが,実際には,債権者として届出を行った者と,相続財産分離の申立(請求)をした者です。
債権額の合計が「相続財産」を超過する場合は,「債権額の割合に応じた」弁済しか受けられません(947条2項)。
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- Q&A手続き期間中に,相続人Cが相続財産を消費してしまうのではないでしょうか。
- A 相続人の財産管理に問題がある場合は,「相続財産管理人」が選任されます。
ルール上,相続財産管理の方法は次の2つがあります(民法943条)。
・相続人自身が管理する(家庭裁判所から管理を命じられる)方法
・相続財産管理人が選任され,この管理人が管理する方法
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- Q&A特に不動産については,相続人Cが売却したり,担保に入れるなど,勝手な行為が心配です。良い方法はあ
りませんか。
- A 債権者(財産分離請求者)単独で「相続財産分離」の登記ができます。これで勝手に処分できなくなります。
相続財産分離の登記がなされると,登記情報として「年月日相続財産分離」と記録されます。
財産分離請求をした債権者の単独で申請可能です(不動産登記法3条;「処分の制限」)。
なお,日付は相続財産分離の審判確定日です。
これによって,現実的には売却,担保設定などができなくなります。
厳密には処分できるのですが,事後的に無効となる(登記は抹消される)という意味です(民法945条)。 →代表弁護士三平聡史のブログ
- [不動産登記法]
(登記することができる権利等)
第三条 登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第二項及び第百五条第一号において同じ。)についてする。
(略) - <相続財産分離に関する条文(民法)>
(相続債権者又は受遺者の請求による財産分離)
第九百四十一条
相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が
相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。
2
家庭裁判所が前項の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこ
と及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
3 前項の規定による公告は、官報に掲載してする。
(財産分離の効力)
第九百四十二条
財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定により配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先立って弁済を受ける。
(財産分離の請求後の相続財産の管理)
第九百四十三条 財産分離の請求があったときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。
(財産分離の請求後の相続人による管理)
第九百四十四条
相続人は、単純承認をした後でも、財産分離の請求があったときは、以後、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理をしなければなら
ない。ただし、家庭裁判所が相続財産の管理人を選任したときは、この限りでない。
2 第六百四十五条から第六百四十七条まで並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。
(不動産についての財産分離の対抗要件)
第九百四十五条 財産分離は、不動産については、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
(物上代位の規定の準用)
第九百四十六条 第三百四条の規定は、財産分離の場合について準用する。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百四十七条 相続人は、第九百四十一条第一項及び第二項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
2
財産分離の請求があったときは、相続人は、第九百四十一条第二項の期間の満了後に、相続財産をもって、財産分離の請求又は配当加入の申出をした相続債権
者及び受遺者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。
3 第九百三十条から第九百三十四条までの規定は、前項の場合について準用する。
(相続人の固有財産からの弁済)
第九百四十八条
財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産をもって全部の弁済を受けることができなかった場合に限り、相続人の固有財産についてそ
の権利を行使することができる。この場合においては、相続人の債権者は、その者に先立って弁済を受けることができる。
(財産分離の請求の防止等)
第九百四十九条
相続人は、その固有財産をもって相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させ
ることができる。ただし、相続人の債権者が、これによって損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。
(相続人の債権者の請求による財産分離)
第九百五十条
相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、相続人の債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をするこ
とができる。
2
第三百四条、第九百二十五条、第九百二十七条から第九百三十四条まで、第九百四十三条から第九百四十五条まで及び第九百四十八条の規定は、前項の場合に
ついて準用する。ただし、第九百二十七条の公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がしなければならない。

遺贈と相続債権者の優劣
- Q&A【包括遺贈と相続債権者の優劣】
私(A)はBにお金を貸していました。Bが先日亡くなりました。遺言が出てきて,「遺産の全部をCに遺贈する」と書いてありました。当初,遺産(Bの財産)から返してもらえると思っていたけど,それは無理なのでしょうか。
- Cに対して,貸金返還請求を行えます。
遺言に「遺贈」と書いてありますが,「遺産すべて」となっています。
この場合は「包括遺贈」となります。
包括遺贈の場合は,一般的な相続人と同じ扱いになります(民法990条)。
そうすると,被相続人(B)が負っていた債務(借金)も包括受遺者(C)に承継されるのです。
債権者(A)はCの財産(この中に承継した遺産も含みます)を差し押さえることができます。
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- 【民法990条】
(包括受遺者の権利義務)
第九百九十条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
- Q&A【特定遺贈と相続債権者の優劣】
遺言内容が「遺産のうち甲不動産をCに遺贈する」と書いてあった場合はどうでしょうか。
- 原則として,Cには貸金返還請求できません。
Cへの遺贈登記が未了であれば,甲不動産の差押は可能です。
まず,このように遺贈の対象が「特定の財産」である場合は,「特定遺贈」となります。
そうすると「相続人と同じ扱い→債務も承継」が適用されません。
純粋に遺贈対象の財産だけを獲得する,という形になります。
結局この場合,甲不動産について熾烈な対立関係が生まれます。
債権者Aの差押 と 受遺者Cの取得 です。
どちらが優先するかは明確な答えがあります。
それは「登記の順序」です(民法177条;最高裁判所昭和39年3月6日)。
Cが遺贈の登記をするより先にAが甲不動産を差し押さえれば,結局不動産は競売になり,Aは配当により貸金を回収できることになります。
Cへの遺贈登記が既になされていた場合,差押はできません。
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- Q&A【遺贈と詐害行為取消権】
BからCへの遺贈登記が既にされていました。
しかし,この遺贈は妨害的な行為です。これを取り消すことはできないのですか。
- 詐害行為取消権は行使できないと思われます。
遺贈は家族法に基づく制度です。
家族法については,「詐害行為取消権」のような財産法の制度は,原則として適用されません。
少なくとも,これを認めた裁判例,文献は見当たりません。
以上のような性質論もそうですが,他の適切な救済手段がありますので,ますます適用する解釈にはなりにくいと思われます。
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- Q&A【相続財産分離】
貸金を回収する方法はあるのでしょうか。
- 相続人に請求する,(第1種)相続財産分離を利用する,という方法があります。
仮に唯一の相続財産が遺贈されたとしても,債権者AはBの相続人に対して請求することができるます。
相続人が無資力であり,回収が不可能ということであれば,相続財産分離によって受遺者に優先して相続財産からの弁済(配当)が受けられます(947条2項,931条)。
相続人がいない場合(相続放棄をした場合含む)は,相続財産管理人の選任を申し立てます。
そうすれば,受遺者より優先で弁済(配当)を受けることができます。
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相続財産管理人(相続人不存在)
- Q&A私(A)はBにお金を100万円貸していました。
Bは預金・不動産などの財産を多く持っていたので安心していました。
最近Bが亡くなりました。Bの子・兄弟はみな相続放棄をして,相続人が居ない状態です。
どうやってお金を返してもらえば良いのでしょうか。
- 相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てます。
財産はあっても,「亡くなった方の名義」のままでは,差押などができません。
相続人が居れば,承継した相続人を相手方として差押などができます。
しかし,相続人が居ない場合,「宙に浮いたまま」となるのです。
そこで,家庭裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらうのです。
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- Q&A相続財産管理人を相手方として差押をする必要がありますか。
- 差押の必要はありません。相続財産管理人が財産を債権者に配当することになります。
相続財産管理人は,「破産管財人」と似ている業務を行います。
財産を売却するなどして金銭に換えて,債権者に配当してくれるのです。
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- Q&A債権者が多く,相続財産で返済しきれない場合はどうなりますか。
- 按分配当となります。全額は弁済されないことになります。
相続財産管理人が財産換価,債権額の集計をして,債権額の割合に応じて弁済します(民法957条2項,929条)。
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- Q&A債権者への配当後,財産が余ったらどうなりますか。
- 特別縁故者への付与,他の共有者への持分移転,国庫帰属,のどれかになります。
順序してしては,次のとおりです。
1 特別縁故者への付与(民法958条の3)
主に内妻など,「相続人」には該当しないけど,被相続人との関係が濃厚であったという人が該当します。
2 他の共有者への持分移転(民法255条)
共有物についてだけ適用されます。
3 国庫帰属(民法959条)
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- Q&A相続財産管理人の手続きはどんな流れですか。
- 債権者,受遺者,特別縁故者などの申出を催告するため公告でアナウンスします。フルコースだと手続き全体で1年以上を要します。
<相続財産管理人の主な手続きフロー>
1 家庭裁判所が,相続財産管理人選任の審判を行う。
2 相続財産管理人が選任されたことを知らせるための公告をします。
↓2か月経過
3 相続財産管理人は,相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告をします。
↓2か月経過
4 家庭裁判所は,相続人を捜すため,6か月以上の期間を定めて公告をします。
→期間満了までに相続人が現れなければ,相続人がいないことが確定します。
5 特別縁故者に対する相続財産分与の申立てがされることがあります。
6 財産管理人は,裁判官の許可を得て,被相続人の不動産や株を売却し,金銭に換えます。
7 財産管理人は,債権者や受遺者への支払,特別縁故者への相続財産分与を行います。
8 相続財産が残った場合は,共有者への持分移転や相続財産を国に引き継いで手続が終了します。
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- 【条文】<相続財産管理人に関する条文(民法)>
- (相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の管理人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
(不在者の財産の管理人に関する規定の準用)
第九百五十三条
第二十七条から第二十九条までの規定は、前条第一項の相続財産の管理人(以下この章において単に「相続財産の管理人」という。)について準用する。
(相続財産の管理人の報告)
第九百五十四条 相続財産の管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、その請求をした者に相続財産の状況を報告しなければならない。
(相続財産法人の不成立)
第九百五十五条
相続人のあることが明らかになったときは、第九百五十一条の法人は、成立しなかったものとみなす。ただし、相続財産の管理人がその権限内でした行為の効
力を妨げない。
(相続財産の管理人の代理権の消滅)
第九百五十六条 相続財産の管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2 前項の場合には、相続財産の管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条
第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者
及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2
第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用す
る。
(相続人の捜索の公告)
第九百五十八条
前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば
一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条の二
前条の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の管理人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使する
ことができない。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の三
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故
があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

訴訟遂行のノウハウ
- Q&A訴訟はどのように進むのでしょうか。
やはり証拠の出し合いとか証人尋問でぶつかり合うのでしょうか。
- 実際には,和解協議や裁判官からの和解勧告など,話し合いがもたれることがほとんどです。
判決を出すということを前提とすると,書類の証拠や,証人尋問が非常に重要です。
しかし,実際の訴訟においては,そのような調査,審理,と併行して,和解に向けた話し合いが持たれることが多いです。
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- Q&A訴訟の中で,どの程度話し合いがあるのでしょうか。
- 訴訟の内容・性質,担当する裁判官の考えや原告,被告の意見によって大きく変わってきます。
訴訟の進め方については裁判官に大きな裁量があります。
これを「訴訟指揮」と言ったりします。
より具体的には,裁判官としても,和解をトライする意味があるかどうかを考えます。
訴訟の内容や当事者(原告や被告)の意向によって,どのタイミングで和解を打診するのか,あるいはしないのか,を決めることになります。
ですから,裁判官が当事者(原告や被告の代理人)に,進め方について意見を聞いてくるのが通常です。
逆に,代理人弁護士から,進め方について積極的に意見を述べることもあります。
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- Q&A弁護士サイドから訴訟の中の和解を有利に進めることはできますか。
- 弁護士のやり方で結論に影響を与えることも十分にあります。
判決は,証拠の積み上げで出来上がるものですが,和解協議はそのような「厳密な証拠評価・事実認定」と直結しません。
ですから,現実に,和解協議の進め方によって結論が異なるということは十分にあり得ます。
逆に言えば,和解協議というのは非常にデリケートなのです。
典型的,というか単純で分かりやすい例を挙げておきます。
【和解協議を有利に進めるための工夫例】
・書証によって裁判官に,当方に有利な心証を持ってもらい,そのタイミングで和解協議を要請する
・相手方が虚偽の主張をした場合,すぐには反論せず,より主張を具体化させた段階で,これを否定する証拠(弾劾証拠)を提出→裁判官が当方に有利な心証を
もってもらい,そのタイミングで和解協議を要請する
・当方に不利な証拠が相手方より提出されると予測される→和解協議による早期解決を要請する
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- Q&A裁判官から不利な和解勧告案が出された場合,断れるのでしょうか。
- 断ることは自由です。
和解勧告案を断るのは自由です。
「和解」というのは双方が納得・合意して初めて成立するのです。
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- Q&A裁判官から不利な和解勧告案が出された場合,どのように対応すべきでしょうか。
- 原則としては,きちんと理由を説明した上で断るべきです。
断ることは可能なのですが,内容を大して考慮せずに断るのは得策ではありません。
「頑固だ」「解決への協力の態度に欠ける」と受け取られるおそれがあります。
いわゆる「心証が悪い」ということです。
勿論,仮に判決まで行ったとして,裁判官はそのような「態度」「イメーヂ」で判断するわけではないはずです。
しかし,実際に,どのような事情がどの程度影響を与えるか,についての科学的検証は不可能です。
少なくとも代理人として弁護士が遂行している場合,プロフェッショナルとしては,多少でも不利になる可能性があることは極力避けるべきだと思います。
なお,当初は「こんなに見解が違ったら和解なんて成立しないな」と思っていても,真面目に和解案について検討することにより,結果的に和解が成立した,と
いう例も多くあります。
いろんな意味で,裁判官による和解勧告案は真面目に検討して,どのような回答にしても誠実に説明すべきです。
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- Q&A裁判所の和解勧告案に応じた方が良い,ということはないのでしょうか。
- 裁判所の心証を踏まえた和解勧告案であれば応じた方が良いことが多いです。
書証提出や証人尋問がほとんど終わった段階では,裁判官が「心証」を開示することがあります。
つまり,「判決を出すとした場合の内容」を説明することです。
証拠・証言が出揃っているので判断できる状態にあるのです。
この場合は,仮に和解勧告案を断ったとしても,同じ内容の判決が出る可能性が高いです。
「断れば避けられる」ということにはなりません。
ただし,本当に不当な内容であれば,判決が出された後に控訴することまで視野に入れた上で断ることも検討すべきです。
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- Q&A控訴審では,和解勧告案に対する対応は違うのでしょうか。
- 和解案を拒否→判決言渡 となった場合に上告ができるかどうかを慎重に考えるべきです。
控訴と異なり,上告はその理由が非常に制限されています。
一般的に言えば,上告は審理に入ってくれること自体が非常に少ないです。
大半は審理前に棄却されます。
「実質的な最終審」と言われます。
控訴審まで進んでいるということは,当然,第1審(原審)で審理が一通り終わっているはずです。
そこで,控訴審で裁判官(裁判所)からの和解勧告案というのは,仮に決裂した場合に言い渡される判決と同じ内容である可能性が高いです。
その意味で,控訴審の和解勧告案は「ミニ判決」とも言うべきものです。
実際上「応じざるを得ない」という状況に近いとも言えます。
分かりやすい例としては,青色ダイオード職務発明事件の控訴審があります。
被控訴人(原告)が和解案に応じて,和解が成立しました。
その直後の記者会見で原告は,「裁判所はダメだ」と批判されていました。
「納得したから和解が成立したのに,なぜ不満を言っているのだろう」という声を当時よく聞きました。
その回答(理由)は上記のような構造なのです。
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