不利益変更の禁止
- Q&A【不利益変更禁止の原則】
就業規則を変更して労働条件を労働者に不利にすることはできないのでしょうか。
- 「合理性」がない場合は労働条件の不利益変更は禁止されます。
労働者保護のルールの典型です。
既成事実の尊重,とも言えます。
賃金の減額など,労働者に不利益な変更は,無効とされます。
就業規則の変更などの手続きを経ても,変更した条項が無効となります。
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- Q&A【不利益変更が有効となる場合】
就業規則を従業員に不利な方向に変更することは無効なのでしょうか。
- 不利益変更について労働者全員の同意があるか「合理性」があれば有効と
なります。
不利益変更禁止はあくまでも「原則」です。
絶対的,ということはありません。
実際の可能性は高くはないですが,不利益変更が有効となることもあります。
<不利益変更が有効となる場合(いずれか)>
1 労働者全員の同意がある場合
2 変更に「合理性」がある場合
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不利益変更の合理性判断要素
- Q&A【不利益変更の「合理性」判断】
不利益変更が「合理的」かどうかはどのように判断するのでしょうか。
- 個別的な事情から判断します。
多くの裁判例が蓄積されています。
最近のものでは,第四銀行事件(最高裁判所平成9年2月28日)が有名です。
以下,判断基準,判断要素を示します。
<不利益変更が有効となる抽象的な基準>
「高度の必要性」に基づく「合理性」が必要
<「合理性」の有無についての判断要素>
1 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
2 使用者側の変更の必要性の内容・程度
3 変更後の就業規則の内容事態の相当性
4 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
5 労働組合との交渉の経緯
6 他の労働組合または他の従業員の対応
7 同種事項に関するわが国社会における一般的状況
以上のような要素を総合考慮して不利益変更が有効か無効かを判断します。
いずれにしましても,計算式のように簡単・画一的に結論が出るわけではありません。
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不利益変更の有効事例~成果主義導入~
- Q&A【不利益変更が有効となった具体例~成果主義~】
不利益変更の有効性判断で分かりやすいものはありますか。
- 成果主義導入が有効とされた裁判例があります。
分かりやすい具体例として,給与体系を固定制度→成果主義,と変更した例があります(後掲裁判例;ハクスイテック事件)。
成果主義自体は,各従業員の貢献した成果に応じた給与額とする制度であって,公平であって,また,従業員のモチベーションにもつながる素晴らしい制度で
す。
これ自体は良いのですが,従前の固定制度とのギャップが生まれます。
要は,成果の高い従業員にとっては「有利」なのですが,成果が低い従業員にとっては「不利」となります。
つまり,実際の給与額が下がるケース(従業員)も出てくるということです。
裁判所の判断を2点に絞って説明します。
<不利益変更に該当するか>
この裁判例の事案においては,8割もの従業員が実際に給与額がアップしていました。
しかし,少数とは言え,給与額が下がる従業員も当然存在します。
そこで,裁判所は「不利益変更に当たる」と判断しています。
この点,裁判所は,固定給与制度について,「普通以下の仕事しかしない者についても高額の賃金を補償することはむしろ公平を害する」とまで厳しく指摘して
います。
それでもなお,「給与減額が発生する」というところを重視して「不利益変更」として判断しています。
<合理性判断>
多くの事情を総合考慮して「合理性あり」→「変更は有効」と判断しています。
判断要素は次のとおりです。
・8割の従業員が給与アップとなる
・給与の減額となった場合は,差額分を調整給として支給する救済期間を設けた
・(以上より)不利益の程度は小さい
・能力,成果主義導入自体の合理性・必要性は認められる
・労働組合との合意ができている
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- 【大阪地方裁判所平成10年(ワ)第271号、平成11年(ワ)第2479号就業規則無効確認等請求(甲)、就業規則効力確認請求(乙)事件
平成12年2月28日(抜粋)】
3 争点(二)について
(一) まず、新給与規定を適用することにより生じる不利益の程度についてみるに、新給与規定における評価がCであった場合を前提とすれば、前述のよう
に、平成一八年までは、旧給与規定によるよりも賃金が減額することになるが、被告は、新給与規定の実施に伴い、平成一〇年一二月まで調整給を設定して、改
定時の賃金を下回らないようにし、平成一一年一月以降については、一年ないし一〇年分の賃金減額分の補償措置を設け、原告においては、同月において月額一
万三五三〇円の減額となったとし、一年を一七ヶ月として四年分九二万〇〇四〇円を支払った。そこで、平成一四年までは、賃金が実質的には減額することはな
いし、平成一五年一月以降については、若干減額することになるが、給与規定改定時の賃金とは大差ないし、平成一九年からは、増額に転じることとなる。新給
与規定における評価がB以上である場合には、賃金が減額することはない。評価がD以下の場合には、評価がCの場合より減額となるが、最下級の評価であるF
が続いた場合でも、月額賃金は三八万五〇〇〇円を下ることはない。
原告については、Bの評価がなされているから、同一格付の下ではD以下の評価となることは、特段のことがないかぎり、当面、考えにくい。
(二) 新給与規定は、能力主義、成果主義の賃金制度を導入するもので、評価が低い者については、不利益となるが、普通程度の評価の者については、補償
制度もあり、その不利益の程度は小さいというべきである。不利益といっても、賃金規定改定時の賃金とは大差なく、後述のような、被告の経営状態がいわゆる
赤字経営となっている時代には、賃金の増額を期待することはできないというべきであるし、普通以下の仕事しかしない者についても、高額の賃金を補償するこ
とはむしろ公平を害するものであり、合理性がない。そして、(証拠略)によれば、新給与規定の実施により、八割程度の従業員は、賃金が増額している。
このようにみてくれば、新給与規定への変更による不利益の程度は、さほど大きくはないというべきである。
(三) 原告は、新給与規定における職務基準、職能要件の規定の仕方が抽象的で不明確であること、格付けについても明確な基準がないこと、査定基準が不
明確であり、恣意的に運用されるおそれがあることなどを主張するが、職務基準、職能要件、また格付けの基準、査定基準のいずれについてもある程度抽象的に
なることは、その性質上やむを得ないものであり、右基準を検討しても新給与規定を不合理なものとまでいうことはできない。
(四) 被告においては、不動産投資等の失敗により、四五期、四六期といわゆる赤字経営となる(この点は当事者間に争いがない。)、収支改善のための措
置が必要となったのであるが、近時、我が国の企業についても、国際的な競争力を要求される時代となっており、労働生産性と結びつかない形の年功賃金制度は
合理性を失い、労働生産性を重視し、能力、成果に基づく賃金制度をとる必要性が高くなっていることは明白なところである。被告においては、営業部門のほ
か、原告の所属する研究部門においてもインセンティブ(成果還元)の制度を導入したが、これを支えるためにも、能力主義、成果主義の賃金制度を導入する必
要があったもので、被告には、賃金制度改定の高度の必要性があったといえる。
(五) そして、被告は、新給与規定の導入にあたり、労働組合(構成員は原告を含め二名)とは合意には至らなかったものの、実施までに制度の説明も含め
て五回、その後の交渉を含めれば重数回に及ぶ団体交渉を行っており、また、右組合に属しない従業員は、いずれも新賃金規定を受け入れるに至っている。原告
は、労働条件の変更については労働組合との合意を得て実施するという慣行があった旨主張するが、そのような慣行までは認めることができない。また、原告
は、就業規則変更の手続において労働者の意見聴取方法に瑕疵があると主張するが、労働基準法九〇条一項は、使用者に意見聴取主務を定めたに過ぎず、労働組
合との団体交渉が重ねられ、また、他の従業員がこれを受け入れているという事実関係の下では、右形式違反をもって、就業規則変更を無効とすることはできな
い。
(六) 以上によれば、被告における新給与規定への変更は、高度な必要性に基づいた合理性があるということができる。

解雇権濫用の法理
- Q&A【解雇権濫用の法理】
態度の良くない社員を解雇しようと思っています。
どのような場合に,正式に解雇できるのでしょうか。
(※雇用期間の定めがない場合を前提としています)
- 客観的に合理的な理由,が必要です。
形式的に,従業員の態度が就業規則などで規定する「解雇の理由」に該当したとしても,解雇が有効にできるわけではありません。
解雇は,従業員やその家族への影響が非常に大きいので,一定の制限がかけられるのです。
当初は,昭和50年に,最高裁において「解雇権濫用」の理論が示されました(日本食塩製造事件;最高裁昭和50年4月25日;後掲)。
この理論を「解雇権濫用の法理」と呼びます。
<最高裁判例の要旨>
客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合
↓
権利の濫用として解雇が無効になる
その後,平成15年の労働基準法改正により,判例上の理論であった「解雇権濫用」が条文化されました。
さらにその後平成19年に労働契約法が制定されました。
この時,「解雇権濫用」が労働基準法→労働契約法,と移されました。
現在は条文としては,労働契約法16条に規定されている状態です。
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- [労働契約法]
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
- [最高裁判所第2小法廷昭和43年(オ)第499号雇傭関係存在確認請求事件昭和50年4月25日(抜粋)]
使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するの
が相当である。
- Q&A【解雇の有効性判断基準】
どのような場合に,解雇が無効となるのでしょうか。
- 多くの要素が考慮されます。目的・手続に不当な点がないかが重要です。
多くの裁判例で個別的な事情が考慮されています。
裁判例の判断内容をまとめると次のとおりです。
<解雇の有効性(解雇権濫用)の判断要素>
1 解雇に合理性や相当の理由が存在するか
2 解雇が不当な動機や目的からされたものではないか
3 解雇理由とされた非行・行動の程度と解雇処分とのバランスが取れているか
4 同種又は類似事案における取扱いとバランスが取れているか
5 一方の当事者である使用者側の対応が信義則上問題はないか(非常識なことはないか)
6 解雇は相当の手続きが踏まれたか
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- Q&A【解雇の合理性】
解雇の有効・無効を判断する際の「合理性」とはどのように判断されるのでしょうか。
- 多くの要素が考慮されます。
「解雇もやむを得ないな」と言える事情がないと無効(合理性なし)とされます。
多くの裁判例で考慮されている事情をまとめると,次のようになります。
<解雇の合理性の判断要素>
1 傷病等による労働能力の喪失・低下
2 労働者の能力不足・適格性の欠如
3 労働者の非違行為
4 使用者の業績悪化等の経営上の理由(整理解雇)
5 ユニオンショップ協定に基づく解雇
なお,平成15年の労働基準法改正により,「解雇の事由」を文書で明示しなくてはならなくなりました(労働基準法22条1,2項)。
まさに,訴訟などにおいて,合理性の判断材料とされます。
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- [労働基準法]
(退職時等の証明)
第二十二条
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含
む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
○2
労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅
滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職
の日以後、これを交付することを要しない。
(略)

整理解雇
- Q&A【整理解雇の合理性】
売上減少が続き,会社の規模を縮小しないとやっていけません。
従業員の解雇を考えています。
「解雇権の濫用」の問題と同じことでしょうか。
- 「整理解雇」として有効性が問題となります。
「解雇権濫用」のうちの1類型という位置付けです。
「整理解雇」については,判例上,オリジナルの有効性判断基準ができています。
<整理解雇の意味>
経営不振を理由として行われる人員削減
俗に言う「リストラ」です。
「雇用調整の最終手段」とも言えます。
整理解雇の局面では,「解雇しないと経費が押さえられず,事業の存続自体が危ない」という状態にあります。
当然,「事業が存続して初めて雇用を継続できる」という現実があります。
そこで,一般的な,従業員の成績不良による解雇,とは局面が大きく異なります。
実際に,整理解雇の有効性が裁判となっている例が多数蓄積されています。
判例によって,有効性判断基準が確立されています。
ただし,時代の流れにより,現在では「確立」した判断基準の扱いに「ぶれ」が生じています。
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整理解雇の4要件
- Q&A【整理解雇の4要件】
整理解雇が有効かどうかはどうやって判断するのでしょうか。
- 一定の要件を満たさないと,合理性がないものとして整理解雇は無効とな
ります。
裁判例において,整理解雇の4要件,として有効性判断基準が確立されました(裁判例後掲)。
<整理解雇の4要件>
1 整理解雇の必要性
2 整理解雇の回避努力義務
3 解雇する者の選定基準・選定の合理性
4 労使交渉等の手続の合理性
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- (大村野上事件)
[長崎地方裁判所大村支部昭和50年(モ)第41号地位保全仮処分異議事件昭和50年12月24日(抜粋)]
そして当裁判所は、当該整理解雇が権利濫用となるか否かは主として次の観点から考察してこれを判断すべきものと解する。即ち、第一に当該解雇を行わなけれ
ば企業の維持存続が危殆に瀕する程度にさし迫った必要性があることであり、第二に従業員の配置転換も一時帰休制或は希望退職者の募集等労働者によって解雇
よりもより苦痛の少い方策によって余剰労働力を吸収する努力がなされたことであり、第三に労働組合ないし労働者(代表)に対し事態を説明して了解を求め、
人員整理の時期、規模、方法等について労働者側の納得が得られるよう努力したことであり、第四に整理基準およびそれに基づく人選の仕方が客観的・合理的な
ものであることである。けだし以上の諸点を満す整理解雇であれば、他に特段の事情のない限り、使用者としては一応誠実に権利を行使したものと認め得るから
である。
- (東洋酸素仮処分事件)
[東京高等裁判所昭和51年(ネ)第1028号地位保全仮処分控訴事件昭和54年10月29日(抜粋)]
しかして、解雇が右就業規則にいう「やむを得ない事業の都合による」ものに該当するといえるか否かは、畢竟企業側及び労働者側の具体的実情を総合して解雇
に至るのもやむをえない客観的、合理的理由が存するか否かに帰するものであり、この見地に立つて考察すると、特定の事業部門の閉鎖に伴い右事業部門に勤務
する従業員を解雇するについて、それが「やむを得ない事業の都合」によるものと言い得るためには、第一に、右事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上
やむをえない必要に基づくものと認められる場合であること、第二に、右事業部門に勤務する従業員を同一又は遠隔でない他の事業場における他の事業部門の同
一又は類似職種に充当する余地がない場合、あるいは右配置転換を行つてもなお全企業的に見て剰員の発生が避けられない場合であつて、解雇が特定事業部門の
閉鎖を理由に使用者の恣意によつてなされるものでないこと、第三に、具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること、以上の三個
の要件を充足することを要し、特段の事情のない限り、それをもつて足りるものと解するのが相当である。
- Q&A【整理解雇の要件の緩和】
整理解雇の4要件が満たされないと解雇は無効となってしまうのでしょうか。
- 現在は,4要件を緩和する見解が主流となりつつあります。
当初は,整理解雇の4要件について,4つとも満たさないと解雇は無効,という厳格な考え方が採られていました(4要件説)。
しかし,その後,時代の流れにより,事業(会社)の合理化・効率化・国際的競争力の獲得といった要請が見直されてきました。
<事業の競争力についての近年の考え方>
あまり厳格に従業員保護に偏ると,事業の負担が不合理に増える
→国内の競争なら同じルールで問題ない
→しかし,国際的な事業の競争力で劣る結果になる
→国内の事業が衰えると,雇用確保という当初の目的に反する結果となる
なお,事業を合理化・効率化する,ということについては,具体的には次のような事業戦略のことを想定しています。
従業員の整理,というプロセスを含むものです。
<事業の効率化の例>
・特定の事業部門を閉鎖
・特定の事業(業務)をアウトソースにする
以上のように,時代の流れとともに,事業・経営の合理化・効率化という要請が高まっています。
そのような時代の変化を反映して,現在では,整理解雇の4要素について,必ずしも,「4つすべてが必要条件」と考えない見解を採る裁判例も増えてきていま
す。
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- Q&A【整理解雇の要件・最近の傾向】
最近の見解では,整理解雇の要件はどのように考えられているのでしょうか。
- 4要件を総合的に考える「総合判断説」が典型です。
4つの個々の要件を,必要条件ではなく,トータルで一定の必要性・許容性が認められれば有効とする,という考え方が最近の見解の主流です。
これを総合判断説,とか,4要素説,と呼んでいます。
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- (平和学園高校事件)
[東京高等裁判所平成14年(ネ)第2312号地位確認等請求控訴事件平成15年1月29日(抜粋)]
整埋解雇の適否を判断するに当たってはいわゆる整理解雇の4要件が重要な考慮要素になることは前記のとおりであるが 整理解雇も普通解雇の一類型であっ
て,ただ経営状況等の整理解雇に特有な事情が存することから 整理解雇の適否を判断するに当たっては,それらの事情を総合考慮しなければならないというも
のに過ぎないのであって,法律上整理解雇に固有の解雇事由が存するものとして,例えば,上記の4要件がすべて具備されなければ,整理解雇が解雇権の濫用に
なると解すべき根拠はないと考えられる。
- (山田紡績事件)
[名古屋高等裁判所平成17年(ネ)第306号労働契約上の地位確認等請求控訴平成18年1月17日(抜粋)]
本件解雇は整理解雇であって,整理解雇の有効性を判断するための4要素を具備していない本件解雇は解雇権の濫用として無効である。
なお,被控訴人らが指摘するように,労働基準法18条の2は,本件解雇後に制定施行されたもので,遡及適用もない。
(2)控訴人は,再生計画案提出時の経営状況に関して,その実情は破産状態であったし,現時点での経営状態も破産原因を内包していることに変わりはないと
主張するが,債務超過や破産状態であるか否かは,整理解雇の効力を判断するに当たり,4要素の一つである「人員削減の必要性」の一事情として考慮されるこ
とは当然としても,そのこと自体で,4要素の履践の要否や解雇の正当性の有無の判断を不要としたり,またその判断に直接影響を及ぼす事情ではなく,この点
に関する控訴人の主張も採用できない。
- Q&A【整理解雇の必要性】
「整理解雇の必要性」とはどんな内容ですか。
- 雇用主の経営の危機的状況のことです。
時代の流れによって,「厳格さ」に動きがあります。
当初は,厳格な解釈でしたが,次第に緩和されてきています。
<「整理解雇の必要性」の解釈>
(当初)
・解雇を行わなければ企業の維持存続が危機に瀕する程度に差し迫った必要性」(大村野上事件)
↓
(現在)
・高度な経営上の必要性で足りる(社会福祉法人大阪暁明館事件)
・企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づくもので足りる(東洋酸素仮処分事件)
要は,当初は,「解雇をする以外には倒産を避けられない」というような「最後の手段」であることが必要だったのです。
現在は,「解雇しなくても倒産まではしないけど,より効率を良くするため,不採算部門を廃業にする」ということでも解雇を有効とする流れなのです。
ただし,要件を緩和したケースでは,一般的に,他の要件の判断において厳格さが要求される傾向にあります。
総合的に(トータルで)判断する,ということなのです。
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- Q&A【整理解雇の回避努力義務】
「整理解雇の回避努力義務」,とはどのような内容でしょうか。
- 「解雇」以外の収支改善対策を実施する義務のことです。
「解雇」というのは極力最終手段であるべきです。
つまり,他の手段で解雇が避けられるのであれば,極力別の手段によるべきである,という考え方が採られています。
具体的な,収支改善のための「解雇」以外の手段を挙げます。
<「解雇」の回避努力の例>
・不要資産の処分
・各種経費の削減
・役員報酬の削減
・役員の削減
・外注業務を社内で遂行する
・残業規制
・賃金カット
・新規採用の中止
・一時帰休の実施(レイオフ)
・配転・出向の実施
・退職勧奨
・希望退職募集
これらの,解雇を回避する努力,については,すべてを行うことが必要,という意味ではありません。
ただし,容易に実行・検討可能なものは実施しておかないと,回避義務の実行が不十分,と判断される傾向にあります。
特に分かりやすい「希望退職募集」については,これを実施していないと「回避努力不十分」と判断されることが多いです。
ただし,絶対に必要,というわけではありません。
ややレアケースですが,希望退職募集をせずに行った整理解雇が有効と判断された裁判例もあります。
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- (静岡フジカラー事件)
[静岡地方裁判所平成13年(ワ)第892号、平成14年(ワ)第881号各労働契約上の地位確認等請求(甲事件、乙事件)平成16年5月20日(抜
粋)]
しかしながら,被告静岡フジカラーは,希望退職者募集によって社員を半減した場合には,その期は黒字化が可能であるとしても,退職者に対する退職金の支払
いが不可能であり,また,残った人員で事業を継続することが困難であること,さらに,次の期が赤字になれば,残された従業員の退職金の支払いが困難になる
と考えてこれを行わなかったと認められる(〈証拠略〉)ところ,前記のとおりの売上の減少傾向が続き,経営状態が悪化していたこと,実際に本件営業譲渡を
した後,不動産譲渡代金相当の貸付けを受けなければ従業員全員の退職金の支払いが不可能であったことなどからすれば,希望退職者募集による会社再建が不可
能と考えた被告静岡フジカラーの判断が不合理なものであったとはいえない。
(ウ)以上から,被告静岡フジカラーに解雇回避努力違反があったとはいえない。
- Q&A【解雇する者の選定基準・選定の合理性】
「解雇する者の選定基準・選定の合理性」とはどのような内容でしょうか。
- 整理解雇の対象者を選ぶ方法自体が合理的であるかどうか,という観点で
す。
当然ながら,解雇される者にとっては,人生に関わる大きな問題となり得ます。
そこで,解雇対象者の選定は,公平かつ客観的であり,誰もが納得できるものであることが必要とされます。
<解雇者の選定基準・選定の合理性>
・抽象的・主観的基準→NG
・客観的・主観が影響しない・全従業員を対象としている→OK
<具体的な基準(項目)例>
・勤務地→OK
・能力→OK
・勤務状況→OK
・雇用形態→OK
・年齢→△
・在籍期間→△
・適格性→△
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- Q&A【労使交渉等の手続の合理性】
「労使交渉等の手続の合理性」とはどのような内容でしょうか。
- 労働者側の意見を聞き,十分に検討する,というプロセスは非常に重視されます。
解雇というのは,合意による退職とは異なり,在職を希望する従業員でも強制的に退職させる手続きです。
当然,従業員は大きな影響を受けます。
それぞれの要望や解雇されたら困る事情について,十分に雇用主側に伝えることが要請されます。
雇用主側は,解雇という重大事項なので,説明を十分に行い,従業員からの納得をできるだけ得るよう,最大限の努力をすることが要請されます。
労働組合が存在する場合は,組合と雇用主側が協議するのが通常です。
小規模・労働組合が存在しない,という場合は,労働者の代表と協議するか,個別的に労働者と協議することになりましょう。
<労使交渉等の説明プロセスの具体例>
・決算書類等の経理資料の開示,説明
・人員整理の時期,規模,方法等について,雇用主側と労働者側の意見交換
・整理解雇についてのルール(解雇協議約款など)に沿った手続き(ある場合)
最近は,労使協定などとして,解雇時の手続きがルール化されていることも多いです。
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解雇無効→給与支払+慰謝料
- Q&A【解雇無効による給与支払義務】
解雇が無効となるとどうなるのでしょうか。
- 在籍していることになり,給与が遡って発生します。
解雇が無効になった場合,事後的ですが,継続して従業員として在籍していた,ということになります。
結局,「解雇」として扱い,給与の発生(支払)を止めた時点まで遡って,給与その他の手当を支給する必要が生じます。
この点,交渉や労働審判,訴訟などの紛争中であり,実際には「解雇の宣告」後は,従業員は勤務していないのが通常です。
ノーワークノーペイ,と言いたいところです。
しかし,勤務できなかったのは雇用主側が,不当・無効な「解雇の宣告」をしたことに起因するということにより,給与等は発生する,ということになります。
雇用主が「条件成就を故意に妨げた」として民法130条を(類推)適用することになるのです。
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- [民法]
(条件の成就の妨害)
第百三十条
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
- Q&A【不当解雇の慰謝料】
解雇が無効だった場合,給与以外に慰謝料は発生しないのですか。
- 状況によっては,賃金(給与)とは別に,慰謝料が追加で認められること
もあります。
結果的に,解雇(の宣告)が無効だった場合は,従業員はこれにより精神的苦痛を受けたとして,一定額の慰謝料が認められる裁判例が多くあります(ジャパン
タイムズ事件;裁判例後掲)。
傾向としては,解雇(の宣告)や解雇に至る経緯において,雇用主側の不当性が強い,悪質性が高い,という場合に認められます。
ただし,認められる場合にでも,慰謝料の金額自体はそれ程大きくならないのが一般的です。
というのは,解雇が無効と判断された時点で,紛争中の期間についての賃金(給与等)(に相当する金銭)が支払われることになるからです。
慰謝料というのはあくまでも「追加部分」と考えると分かりやすいです。
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- [東京地方裁判所平成15年(ワ)第13883号雇用関係地位確認等請求事件平成17年3月29日(抜粋)]
上記1のとおり,本件解雇は解雇権の濫用にあたり違法・無効であるから,これを行った被告の行為は不法行為を構成する。そして,被告における原告の勤続年
数,地位,経済的損失については未払賃金及び遅延損害金の支払いによって填補されること等諸般の事情を考慮すると,本件解雇により原告の被った精神的損害
の慰謝料としては20万円が相当である。

定年退職
- Q&A【定年退職】
定年に達したので従業員に退職してもらいます。
解雇と違って何か注意点・制限はないのでしょうか。
- 就業規則どおりであれば特に問題はありません。ただし,高年齢者雇用安
定法に注意すべきです。
就業規則や労働契約で定年を定めていれば,その年齢に達した時に退職となります。
ただし,高年齢者雇用安定法の改正が施行され,65歳までの定年の引き上げや「継続雇用制度」の導入が義務付けられています。
これらの制度趣旨に反する,として定年制度(継続雇用制度)自体が無効とされる例も増えつつありますので注意が必要です。
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高年齢者雇用安定法
- Q&A【高年齢者雇用安定法】
中小企業の経営者です。定年を65歳以上にするルールは適用されるのでしょうか。
- 定年を65歳以上にする,以外にも「継続雇用制度導入」なども可能で
す。
高年齢者雇用安定法のルールはちょっと複雑ですので,整理して説明します。
<事業主の雇用確保義務の具体的内容>
1 対象
定年として65歳未満が設定されている事業主
2 対応義務
次のいずれか
(1)定年の定めの廃止
(2)定年の引上げ(65歳以上)
(3)継続雇用制度を実施
3 実施義務の期限
平成18年4月1日
高年齢者雇用安定法改正の施工日です。
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継続雇用制度
- Q&A【継続雇用制度】
継続雇用制度とはどのようなものでしょうか。
- 勤務延長制度,再雇用制度,のいずれかです。
多くの会社では,定年年齢の引き上げの負担が重いため,継続雇用制度の導入を選択しています。
<継続雇用制度の内容>
次のいずれか
・勤務延長制度
定年になった従業員を退職させず,継続して雇用する制度
・再雇用制度
定年になった従業員を退職させ,改めて雇用する制度
結局,定年を引き上げたのと同じように感じますが,継続雇用制度では,対象者を絞ることができるのが大きな違いです。
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- Q&A【継続雇用制度の対象者】
継続雇用制度は全員が対象ではなくて良いのでしょうか。
対象者はどうやって決めることができるのでしょうか。
- 全員対象が原則です。しかし労使協定等により,基準を設定することができます。
1 全員対象
これが原則です。
65歳までの雇用を確保する,言い換えると,65歳までは退職させられない,という工連例者雇用安定法の趣旨そのものです。
2 労使協定
労使の間で納得・合意すれば,例外的に,「全員対象ではない」という制度も作れます。
なお,労働者側は,労働組合があれば労働組合,ない場合は,労働者の過半数代表ということになっています。
3 就業規則
現在(平成23年4月1日以降)は適用されません。
大企業が平成21年3月31日まで,中小企業は平成23年3月31日までの間は,暫定的に,就業規則での規定が可能でした。
つまり,「労働者側が納得しないため,労使協定が締結できない」というケースでも,事業主側で一方的に設定することが可能でした。
(逆に,あまりに不合理な場合は,「退職規程の適用」が認められないという裁判例も増えつつあります)
しかし,平成23年4月1日以降は,中小企業も含めて,すべての事業主について,「就業規則に基づく雇用継続制度」という特例は終了します。
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- Q&A【就業規則に基づく雇用継続制度】
雇用継続制度を就業規則で決めてある,という場合はどうしたら良いのでしょうか。
- 雇用継続制度を労使協定の中で締結するか,定年の引上げを実施するかの
いずれかをしないと違法になります。
就業規則に基づく雇用継続制度,の特例の期限が切れています。
そのままでは違法です。
<対応策>
1 労使協定締結
労使で協議を行い,労使協定を締結するのが1つの方法です。
当然,労働者側が承諾する内容でないと成立しないことになります。
場合によっては,従前の雇用継続制度のままでは労使協定が成立しないかもしれません。
2 定年の引上げ
元々,雇用継続制度実施以外に,「定年の定めの廃止」「定年の引き上げ」により,高年齢者雇用安定法の要請を満たします。
これらを新たに実施することも可能です。
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- Q&A【継続雇用制度の有効性】
継続雇用制度を設定しても無効になることがあるのでしょうか。
- 高年齢者雇用安定法の趣旨に反するとして「雇止め」が違法と判断される
ケースが増えています。
具体的には,「継続雇用制度」の1種として,「再雇用制度」を導入した場合,「再雇用」の対象を設定した就業規則や労使協定の有効性が否定される例が典型
例です。
高年齢者の雇止めについて,解雇権の濫用の理論を流用する(類推適用)裁判例が増えてきています(一例を後掲)。
要は,「再雇用制度」の適用が原則で,「再雇用されずに退職」が例外という考え方です。
ここで,雇止めが有効か無効か,という判断については,解雇権濫用と同じような判断方法が取られます。
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- 【境地地方裁判所 平成22年11月26日(抜粋)】
2 判断
(1) 本件雇止めについて解雇権濫用の法理が適用又は類推適用されるか(争点(1))について
ア 高年齢者雇用安定法は,定年を65歳に引き上げ,その効力を事業主と労働者間に当然に及ぼすものではなく,各事業主に努力義務を課すものであること,
被告が平成20年2月16日に制定した再雇用制度に関する就業規則41条では,従業員は,60歳の定年に達した後も,同条の定める継続雇用基準を満たす場
合に,原則1年単位で再雇用され,上限年齢(原告の場合は4歳)に至るまでは反復更新が予定されていたこと,原告は平成20年6月a日に60歳になって定
年を迎えたが,上記就業規則の定めに基づき,翌b日付けで平成21年6月15日までの間再雇用されたことに照らすと,原告と被告との間で締結された本件再
雇用契約が,64歳までの有期雇用であったと解することはできない。
イ ところで,被告は,就業規則41条4項が「再雇用に関する労働条件等については,個別に定める労働契約(労働条件通知書)によるものとする。」とし,
本件再雇用の契約書13条で会社の経営上の理由により契約更新が行われない場合を規定していることから,原告が主張するような定年後の継続雇用に対する合
理的期待が生じる余地はない旨主張する。
しかし,就業規則41条1項,4項を素直に読むと,4項のいう「労働条件等」とは,賃金や労働時間等,雇用の継続を前提とした労働条件等を意味するので
あって,再雇用契約の更新に関わる条件を意味するわけではないと解される。したがって,上記契約書13条の規定は,就業規則に違反し,無効である(労働契
約法12条)。
就業規則で,再雇用に関し,一定の基準を満たす者については「再雇用する。」と明記され,期間は1年毎ではあるが同じ基準により反復更新するとされ,その
後締結された本件協定でも,就業規則の内容が踏襲されている。そして,現に原告は上記再雇用の基準を満たす者として再雇用されていたのであるから,64歳
に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。
ウ そして,原告が60歳定年までの間,平成7年4月以降統合前のB社及び統合後の被告において期間の定めなく勤務してきたことを併せ考えると,本件再雇
用契約の実質は,期間の定めのない雇用契約に類似するものであって,このような雇用契約を使用者が有効に終了させるためには,解雇事由に該当することのほ
かに,それが解雇権の濫用に当たらないことが必要であると解される。
したがって,本件雇止めには,解雇権濫用法理の類推適用があるとするのが相当である。
(2) 本件雇止めが解雇権を濫用したものといえるか(争点2)について
ア 前記のとおり,本件雇止めについては,解雇権濫用法理の類推適用があると解するのが相当であるところ,被告は,原告の雇止めの理由として,「業績不振
のため」を挙げている。
そこで,原告に対する雇止めが解雇権の濫用に当たらないかを判断するに当たっては,本件雇止めが整理解雇の要件を満たすかどうかを検討する必要があるとこ
ろ,整理解雇については,人員整理の必要性があったか,解雇を回避する努力がなされたか,被解雇者の選定基準に合理性があるか,労働者や労働組合に対する
説明・協議が誠実になされたかという点を総合的に考慮して判断するのが相当である。
イ そこで,上の諸点を検討するに,まず,人員整理の必要性については,被告の売上高は,第37期(平成20年6月1日~平成21年5月31日)を第36
期(平成19年6月1日~平成20年5月31日)と比較すると,約1億2000万円減少しており,販売費及び一般管理費の削減等で営業損失の拡大はわずか
であるが,被告は,百貨店を主要取引先としてマネキンの貸出し等を主力業務とする親会社の子会社として,マネキンの製造,メンテナンス等を業とする会社で
あり,昨今の百貨店各店の業績からすると,原告を雇止めにした平成21年6月時点において,被告における今後の売上高の上昇が期待できる見込みに乏しく,
人員を削減すべき必要性を認めることができる。
しかしながら,解雇回避努力の点をみると,前記1で認定のとおり,平成21年6月にされた原告に対する本件雇止めより以前においては,平成20年12月に
西営業所の契約社員(O)の雇止め,平成21年2月に役員及び管理職の賃金カット,東営業所の派遣社員(S)の契約打切り,原告の雇止めと同じ時期に西営
業所の契約社員(F,E,H,G)をアルバイト又は顧問待遇に変更する措置を実施しているものの,西営業所の契約社員(O)については主として本人の資質
の問題で雇止めにされたものであるし,平成21年4月には,親会社に移籍する予定とはいえ新規に大学卒を採用している。そして,被告において一時帰休を実
施したのは平成21年7月,希望退職を募集したのは同年12月であって,こうした経緯からすると,被告において,本件雇止め以前にそれを回避すべき努力義
務を尽くしたということはできない。
また,選定基準の合理性の点についても,原告以外の再雇用労働者5人(F,E,H,G,I)は,身分がアルバイト等に変更になった者もいるが,再雇用が継
続されているのに,原告のみが雇止めになった理由について,被告において,5人が必要な理由を主張しているものの,必ずしも説得力のある理由とはいい難
い。
ウ 以上の検討からすると,本件雇止めについて,整理解雇の要件を満たしていると認めることはできず,被告の業績不振を理由とする本件雇止めは,解雇権の
濫用に当たり無効である。

定年引き上げ等奨励金
- Q&A【定年引き上げ等奨励金】
定年を引き上げるとなると,負担が結構厳しいです。手当等はないのでしょうか。
- 厚生労働省による,公的な給付金(奨励金)制度が用意されています。
規定の条件を満たせば,この奨励金給付を受けられます。
→定
年の引上げや定年の定めの廃止を実施した事業主の方への給付金(厚生労働省)
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退職の予告期間
- Q&A【退職の予告期間】
勤務先を退職しようと思っています。
どのくらい前に言えば良いのでしょうか。
- 賃金計算期間の前半に申し出れば,その賃金計算期間のラストの日で退職
となります。
雇用期間が「y年m月d日まで」と決まっている場合は,原則として途中での退職ということはできません。
あくまでも雇用期間の定めがない場合を前提とします。
まず,法律上,労働者側からは,2週間の予告期間を置けば,いつでも雇用契約の解約(退職)ができることになっています(民法627条1項)。
その一方で,「期間によって報酬を定めた場合」には,「当期の前半」に解約申入れ(退職を申し出ること)をすれば,「次期」に解約(退職)となります(民
法627条2項)。
一般的には,給与は月給制が原則とされています(労働基準法24条2項)。
そこで,給与の締め日を月末としている会社という前提で,例を示すと次のとおりになります。
<退職の申し出と最短退職日>
5月15日~6月15日までに退職を申し出た
→6月30日(の終業時)に退職
注意すべき点は,627条1項の「2週間」が適用されるのは,結局,「日払い」「週払い」など,給与が月単位ではない場合のみ,ということです。
弁護士,社労士でも誤解している方が多いので注意しましょう。
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- [民法]
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週
間を経過することによって終了する。
2
期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならな
い。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
- [労働基準法]
(賃金の支払)
第二十四条 (略)
○2
賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める
賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
- Q&A【就業規則等と民法の優劣(退職予告期間)】
私の勤務している会社の就業規則や労働契約書では,「退職は30日前に申し出る」とされています。
「月の前半に申し出れば月末に退職」という民法のルールとどちらが正しいのでしょうか。
- 民法の規定が優先されると考えられています。
民法627条の規定と,就業規則・労働契約の規定の優先関係については,ズバリの公的判断(裁判例)は見当たりません。
学説・通説としては民法の規定を強行法規として捉えています(吾妻・債権各論中巻二p590,品川孝次「契約法(下巻)」p152)。
逆に言えば,就業規則が有効(優先)という解釈もゼロではありません。
結論としては,民法の規定の方が優先という解釈が強い,ということです。
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- Q&A【解雇予告期間との関係】
退職する場合には「30日前に予告する」と法律で決まっているのではないのですか。
- 雇用主からの解約(=解雇)については,労働基準法で30日前の予告が
義務付けられています。
労働者からの解約(退職)についてはこの規定は適用されません。
労働基準法20条において,解雇については30日前の予告が原則的に義務付けられています。
これはあくまでも雇用主からの労働契約の解約(=解雇)にだけ適用されます。
労働者からの解約(=退職)については適用されません。
労働基準法は,労働者の保護(=雇用主の拘束)が趣旨なので,このような方向性の規定となっています。
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- [労働基準法]
(解雇の予告)
第二十条
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上
の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基い
て解雇する場合においては、この限りでない。
(略)
- Q&A【実際の不都合→損害賠償】
就業規則などの「1か月前の退職申出」というルールは適用されないということであれば,これを無視してもまったく問題はないのでしょうか。
- 原則としては問題ありません。
ただし,実際の業務の引継等に支障が生じた場合は,損害賠償責任が生じることもあります。
まさに,労働・職場の問題特有の事情です。
継続的な環境・業務がそれまで存続していたわけです。
退職すること自体の決定については最大限尊重されます。
しかし,民法・就業規則などのルール以前に,実害を生じさせるのは問題です。
退職の際の態様次第では,損害賠償として責任を負うことがあります。
この意味では,就業規則・労働契約における,退職申出予告期間については,有効・無効という問題ではなく,「この程度の余裕を持たないと損害が生じるかも
しれない」という状況確認の意味は持っていると思われます。
具体的・現実的な状況を踏まえて,業務の引継等をしっかりと行い,勤務先に迷惑がかからないようにしておくべきです。
退職後は,職場に行かないことになります。
「損害が発生した」と会社から主張された場合,既に現場へのアクセスがしにくいので,防御しにくくなっているということもあります。
<まとめ>
民法の規定が優先ではあるが,就業規則・労働契約の退職予告期間はできる限り遵守した方が良い
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有期労働契約と退職
- Q&A【有期労働契約の期間途中における退職】
私は会社に勤務しています。
契約で,3年間という雇用期間になっています。
途中で退職することはできるのでしょうか。
- 条文上は原則として途中の退職はできません。「やむを得ない事由」が必
要とされます。
「雇用」というと「期間の定めがない」パターンが想定されることが多いです。
そこで,期間設定ありの場合でも,違いを意識せず,誤解されている方が多いです。
期間設定ありという類型は,「有期労働契約」「有期雇用」などと呼ばれます。
一般には,そのような契約の社員(従業員)のことを「契約社員」と呼ぶことも多いです。
有期労働契約の場合は,その決まった期間中は自由に退職することは許されません。
「決めた約束は守られる」という当然のルールです。
民法上も条文となっています(628条)。
そして,条文上,「やむを得ない事由」があれば解除(=退職)できる,とされています。
なお,有期労働契約の場合,「期間」は業種によって3年または5年が最大となります(労働基準法14条)。
例外的にこれを超過する期間とされている場合はまた別のルールがあります。
ただし,実際には,就業規則に「退職予告期間」が規定されている会社もあります。
その場合は,就業規則が優先ですので,規定どおりの予告期間を置けば,退職ができる,ということになります。
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- [民法]
(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その
事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
- Q&A【やむを得ない事由】
契約社員でも契約期間の途中で退職できるのはどのような場合でしょうか。
- 「やむを得ない事由」の典型例は従業員本人の病気・怪我です。
約束した契約期間を守らない,ということになりますので,例外的な事情が必要とされます。
従業員本人の病気や怪我により,「働きたくても働けない」という状況にあれば,「やむを得ない」として退職が許されることになるでしょう。
勿論,病気・怪我の程度によっては,一時的な休職や休暇の取得でしのげる,ということもあり得ましょう。
その場合は,退職が許されることにはなりません。
なお,実際には,「退職できる,できない」という問題を真正面から争うような場面はレアです。
と言いますのは,仮に理論的に退職が許されない,という場合でも,雇用主側が認めることがほとんどなのです。
退職を希望するということは,仕事・業務への意欲が欠けた状態だと思われます。
雇用主側としても敢えて「退職を断固として認めない」との主張を維持する実質的メリットが少ないのでしょう。
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- Q&A【5年以上の有期労働契約】
雇用期間が5年を超えるというのはどのような場合にあるのでしょうか。
- プロジェクト単位での業務単発での募集(雇用)という場合です。
5年を超える有期労働契約は一切NG,ということではありません。
「一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの」については,上限は適用されません(労働基準法14条)。
<厚生労働省労働基準局の解釈>
その事業が有期的事業であることが客観的に明らかである場合であって、その事業の終期までの期間を定めて契約する場合
一般に,プロジェクト単位・業務単発での雇用契約ということになります。
<有期労働契約の期間上限が適用されない場合の例>
6年間で完了する土木工事において,エンジニア(技師)を6年間の契約で雇う場合
<他の例>
・ダム,トンネル,橋梁工事
・コンピューターの特定システム開発
・展示会などのイベント事業
ただし,個別的な事業の内容によっては,必要期間が不明確(明らかではない),ということで,「一定の事業の完了に必要な期間を定める」には該当しないと
判断されるリスクも出てきます。
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- [労働基準法]
(契約期間等)
第十四条
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつて
は、五年)を超える期間について締結してはならない。
一
専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等
を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
(略)
- Q&A【5年以上の有期労働契約における退職ルール】
5年以上の有期労働契約の場合は,期間途中でも退職できるのですか。
- 5年経過後であれば,3か月の予告期間を置いた上で,いつでも退職でき
ます。
有期労働契約が5年以上,という例外的な場合にも,原則どおり「期間中は退職NG」とすると,拘束期間として長過ぎるということになります。
そこで,期間が5年以上の場合は,5年経過後であれば,退職できるとされています。
ただし,予告期間として3か月が必要ということになっています(民法626条)。
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- [民法]
(期間の定めのある雇用の解除)
第六百二十六条
雇用の期間が五年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除を
することができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、十年とする。
2 前項の規定により契約の解除をしようとするときは、三箇月前にその予告をしなければならない。

退職強要→撤回
- Q&A【退職届(解約告知)の効力発生時期】
一旦退職届を出しました。その後,カッコ悪いですが,やっぱり退職しないで働き続けたいと思い直しました。
撤回できないのでしょうか。
- 退職の意思表示が使用者(側)に到達した後は,撤回はできません。
退職届は,退職の意思表示のことです。
一般に,意思表示は,受領権限のある者に到達したら効果を発生します(民法97条1項参照)。
退職の意思表示(退職届)の受領権者とは,人事の権限を任せられている人も含みます。
中小企業で社長が直接担当している場合は,社長となります。
人事の担当者がいれば,その方が受領権限を持っていることになります。
そして,受領権限を持つ者が退職届を受領すれば,そこで一定の時期に退職する,という効果が生じます。
なお,専門的には,「後日,退職という具体的効果が生じる」という意味で,意思表示の中で「解約告知」というカテゴリーに入ります。
いずれにしても,効力が発生した以上は,無条件に撤回することはできないことになります。
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- [民法]
(隔地者に対する意思表示)
第九十七条 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
(略)
- Q&A【瑕疵ある意思表示としての退職申出】
確かに,退職届を書いて提出しました。
しかし,「書かないとクビにする」と言われて書いたので不本意でした。
それでも撤回できないのでしょうか。
- 退職届を書いた時の状況から,強要された,という場合は,撤回できるこ
ともあります。
実際によく問題になるのが,業務上のミスなどを指摘した上で,解雇をほのめかせて,退職届へのサインを求める,というものです。
勿論,業務懈怠やミスなどの程度が大きいとか悪質なものであれば,懲戒解雇ができます。
そして,従業員のためを思って,形式的に「自主的な退職」とする扱いをする,ということはあり得ます。
それ自体は,現実的な良い方法だと思います。
しかし,実際には「懲戒解雇」には該当しない場合は,問題があります。
というのは,従業員としては,「どっちみち解雇になり,会社に居られない」ということが判断の元になっているわけです。
そして,この判断の元が「誤り」ということになるからです。
つまり,解雇されると誤解したことが原因で退職届にサインをした,ということです。
法律的には,このような誤解を元にした意思表示について,一定の救済手段が用意されています。
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- Q&A【退職の撤回方法】
退職を強要された場合は,どのようにしたら撤回できるのでしょうか。
- 詐欺,強迫として「取消」を主張するか,錯誤による無効を主張すること
になります。
具体的な,退職の意思表示の撤回に関する規定は次のとおりとなります。
<退職を無効とする規定>
・詐欺取消(民法96条)
誤った説明により誤解が生じ,その結果不本意な意思表示をしたというケースのことです。
この場合,「取消」の意思表示を行う必要があります。
・強迫(民法96条)
(刑法の「脅迫」とは別の漢字を使います)
強要された意思表示がされた場合です。
「取消」の意思表示を行う必要があります。
・錯誤(民法95条)
判断の重要な部分に勘違いがあった場合に,これを無効とする規定です。
「取消」というアクションは不要です。
実際には,重複して該当するということが多いと思います。
具体的アクションとしては,雇用主(会社)に対し,「取消」や「無効」ということを記載した書面を送付することになります。
証拠として後に残るように,内容証明郵便で発送しておくとベターです。
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- [民法]
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
(略)
(錯誤)
第九十五条
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することがで
きない。
- Q&A【退職の撤回を認めた裁判例】
退職届が無効となったケースはどのようなものがありますか。
- 石見交通事件,学校法人徳心学園(横浜高校)事件,昭和電線電纜事件な
どが有名です。
実際に裁判例として有名なものをご紹介します。
いずれも,懲戒解雇の可能性が実際にはなかった,ということが共通です。
まさにこれが「誤った判断」の主要な要因です。
勿論,「懲戒解雇の事由はないけど自主退職する」ということは通常あり得ることです。
逆に言えば,そのような時には退職の理由などをハッキリさせておいた方がベターです。
事後的に「退職を強要された」という主張をされることを防ぐ効果があるからです。
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- (石見交通事件;強迫による取消)
[松江地方裁判所益田支部昭和40年(ワ)第62号、昭和42年(ワ)第2号解雇無効確認等請求事件昭和44年11月18日(抜粋)]
退職の強要は前叙、同原告の祖母からうけた抗議に対する私怨からでたものであるといわざるを得ない。以上認定の事実によれば、原告Aには被告会社から解雇
される正当な理由は何らないものというべく、かゝる根拠のない事実にもとづいて被告会社が原告Aから雇傭契約解約の意思表示を得たことは明らかに不当であ
り、これを前叙のとおり強迫によつて得たことはまさに違法であつて、結局同原告が被告会社の代理人訴外Dに対してなした解約の意思表示は取り消しうべきも
のであるといわなければならない。
- (学校法人徳心学園(横浜高校)事件;錯誤無効)
[横浜地方裁判所平成7年(ヨ)第380号地位保全仮処分申立事件平成7年11月8日(抜粋)]
したがって、債権者には懲戒解雇出はなく、懲戒解雇の可能性かなかったのに、債権者は、平野校務主任の説論により懲戒解雇になると誤信して本件退職願を提
出したのであって、その退職の申込みの意思表示には動機の錯誤があるというべきで、これが債務者側に表示されていたことは明らかであるから、要素の錯誤と
なり、本件合意退職は無効である。
- (昭和電線電纜事件;錯誤無効)
[横浜地方裁判所川崎支部平成14年(ワ)第851号地位確認等請求事件平成16年5月28日(抜粋)]
原告が本件退職合意承諾の意思表示をした時点で,原告には解雇事由は存在せず,したがって原告が被告から解雇処分を受けるべき理由がなかったのに,原告は
Aの本件退職勧奨等により,被告が原告を解雇処分に及ぶことが確実であり,これを避けるためには自己都合退職をする以外に方法がなく,退職願を提出しなけ
れば解雇処分にされると誤信した結果,本件退職合意承諾の意思表示をしたと認めるのが相当であるから,本件退職合意承諾の意思表示にはその動機に錯誤が
あったものというべきである。(略)原告の本件退職合意承諾の意思表示には法律行為の要素に錯誤があったこと(ママ)なる。
以上によれば,原告のした本件退職合意承諾の意思表示は法律行為の要素に錯誤があったから,本件退職合意は無効である。

休職
- Q&A【傷病休職】
欠勤・早退・遅刻が激しい従業員が居ます。客観的にどのような対処法が考えられますか。
- 欠勤の理由によっては休職,またその程度によっては解雇と
いう手段があ
ります。
まず,従業員の落ち度による場合は,当然,就業規則に則り,各種ペナルティを課すことができます。
単純な寝坊による遅刻などが典型例です。
このような場合は,職場の秩序維持という意味では,適切なペナルティを課すのは雇用主の義務とも考えられます。
次に,従業員に落ち度がない場合はどうでしょうか。
精神疾患,持病などが典型例です。
この場合は,「傷病休職」を適用するのが通例です。
その期間によっては,「解雇」「退職」とできるよう就業規則や労使協定で定めておくと良いです。
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- Q&A【傷病に関する虚偽申告】
従業員に持病があるとは聞いていませんでした。
それでもペナルティは課せられないのでしょうか。
- 勿論,採用時に虚偽申告があれば,解雇を含めた対処が可能
ということは
あります。
採用時に,明確に心身のコンディションについて質問して,回答・説明した内容が虚偽であれば,当然,「従業員の落ち度」と言えます。
内容によっては解雇を含めて懲戒処分の対象となります。
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- Q&A【心身コンディションに関するプライバシーへの配慮】
欠勤の理由について,従業員に聞いて良いのでしょうか。
プライバシーに配慮しなくて良いのでしょうか。
- 雇用主が従業員の心身のコンディションを把握するのは義務
の1つです。
必要な範囲で聞くことは問題ありません。
就業規則に,心身の故障についての申告について規定しておくの
がベストで
す。
実際に,従業員の心身のコンディションによって,業務遂行に影響が出るわけです。
雇用主が把握しておくのは当然です。
また,仮に従業員のコンディションによっては,休職その他の適切な措置を取る義務もあります。
例えば,逆に従業員過度のストレスを抱えていることを気付かず,症状が悪化した場合,雇用主として責任を追及されることもあります。
従業員のコンディションの把握は権利というよりも義務と言えます。
より明確化するために,就業規則に,心身の故障による欠勤時に診断書を提出するルールを明記しておくのがベストです。
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休職中の給与・社会保険費
- Q&A【休職中の給与・社会保険費】
休職期間の給与や社会保険などの負担はどうなりますか。
- 傷病休職については,給与支払の義務はありません。
社会保険の負担は継続します。
これを従業員に求めることもできます。
念のため,休業期間の金銭的な扱いについては,就業規則に明記しておくと良いです。
社会保険については,雇用主が負担することは続きます。
いわば「立て替えている」状態になります。
法律的には,この分を従業員に求めることは可能です。
これもやはり,就業規則に明記しておくと良いです。
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休職期間の設定
- Q&A【休職期間の設定】
心身の故障による欠勤の際の休職期間はどのように決めると良いでしょうか。
- 個別的な事情による調整が可能なようにしておくとベターで
す。
まさに,従業員の個別的な事情によって,どのように扱いたいか,は変わってくるでしょう。
要は,「重要な人材だから何年でも待っていたい」と思うか,「他の人を雇って安定的に業務を進めて欲しい」と思うか,です。
雇用主としても,業務を円滑に進めるということは非常に重要です。
社会的にも,職場のメンバーからの要請という意味からも。
そこで,就業規則上,傷病休職の期間は柔軟性を持たせておくと良いです。
一定期間を規定しつつ,延長も可能なようにしておくのです。
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- Q&A【休職期間の設定例】
具体的な休職期間の例はどのようなものですか。
- 3~6か月という規定が多いです。また,勤続年数によって
変動するとい
う決め方もあります。
個別的な事情によって,延長できるようにしておくと都合が良いこともあります。
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休職期間満了時の「退職」と「解雇」
- Q&A【「退職」と「解雇」の違い】
休職期間満了時に「退職」と「解雇」で何か違うのですか。
- 「解雇」だと,解雇予告手続,解雇権濫用の法理の適用があ
ることになり
ます。
「解雇」の場合,どんなに就業規則や労使協定があっても,「解雇無効」と主張されるリスクが残ります。
自動的に「退職」するルールになっていれば,解雇予告手続は不要ですし,また,解雇権濫用の法理の適用もありません(東京地裁昭和30年9月22日)。
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- Q&A【退職適用時の注意点】
休職期間満了による「退職」について注意すべきことはありますか。
- 医師の診断書提出を求めるとベターです。また,公平に運用
すべきです。
「退職」という扱いについては,万が一にも,事後的に争いになることを防止すると良いです。
具体的には,医師の診断書提出を就業規則でルール化しておくことです。
細かいですが,雇用主指定の医師による診断書をもらえるようにしておくのも1つのアイデアです。
というのは,争いになる点の典型例は,「復職できた可能性」だからです。
また,医師によって診断内容が異なると言うことも少なくないのです。
次に,「別の従業員については,休職期間を長期間延長している」という主張をされるケースもあります。
このような場合は,「休職→退職 というルールが形骸化している」として効力がないと判断される裁判例もあります。
個別的な事情により休職期間を延長させるのは良いルールですが,運用には気を付けないといけません。
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職務発明
- Q&A【職務発明】
会社として研究を長期間継続した結果,画期的な技術を発明するに至りました。
この権利は従業員・会社どちらになるのでしょうか。
- A 会社は無償でその技術を用いることができます。
ただし,注意が必要です。
まず,「職務発明」であることが大前提です。
次に,会社は,その技術を使って製品を製造するなどの形で利用ができます(通常実施権;特許法35条1項)。
しかし,そのままでは,他社とライセンス契約を結んでライセンス料をもらう,などの形での利用はできません。
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- Q&A【職務発明の定義】
どのような技術が「職務発明」となるのでしょうか。
- A 会社に勤務している従業員が,会社の業務として,研究・開発した結果完成した発明のことです(特許法35条1項)。
外部で研究の業務について委託を受けた独立の機関とはまったく異なります。
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- Q&A【会社が発明を使用する方法】
会社が他社とのライセンスなど,自由に発明された技術を使うにはどうしたら良いのですか。
- 従業員から発明に関する権利を買い取れば,自由に技術を利
用できます。
最初から,「将来の職務発明に関する権利を買い取る予約」をしておくことも可能です(特許法35条2項)。
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- Q&A【相当の対価】
会社の設備・コスト(給与も含む)を使って発明したのに,さらに「権利買取代金」を払うのは不合理ではないですか。
- 現行の特許法では,「相当の対価」として合理的な算定をす
ることになっ
ています(特許法35条3~5項)。
つまり,会社側の設備・人件費といった投資と,本人の能力が寄与している程度を両方とも考慮して「相当の対価」(特許法35条3項)が算定されます。
条文上は,「その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情」を考慮すると規
定されています(特許法35条5項)。
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