境界
- Q&A所有している土地の境界について,お隣さんと合意できていません。
関わり合いになりたくないので売却したいです。
問題ありますか。
- 一般的には,境界のすべてについて確定していないと売却は難しいでしょ
う。
仮に境界について,隣地所有者との間で合意に至っていない状態でその土地を購入したことを考えてみます。
買主は,改めて,隣地所有者と協議したり,場合によっては訴訟をする必要が出てきます。
そうしない限り,境界周辺は使えません。
塀を立てるのも難しいです。
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- Q&A境界が確定していないとその土地は売却できないのでしょうか。
- 境界が確定していない場合でも,理論的に売却は可能です。
ただし,買主にとっては,不確定のリスクがあることになります。
評価,つまり代金額は通常の場合よりも大幅に下がるのが通常です。
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- Q&A境界について,お隣さんと話し合っても平行線のままです。
どうしたら良いのでしょうか。
- 境界確定訴訟や筆界特定制度という手段が典型的です。
境界確定訴訟は,裁判所で証拠を元に,境界の正しい位置を確定するものです。
和解で終わることもありますし,判決で境界の位置を決めることもあります。
なお,和解の場合は,厳密には「所有権の境の位置を確認する」ということになります。
厳密な意味での「境界」は,一般の方(私人)が決められるものではない,とされているからです。
筆界特定制度は,法務局が境界(筆界)について調査し,位置を特定する制度です。
裁判よりは軽い手続きと言えます。
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- Q&A境界確定訴訟と筆界特定制度はどのように違いますか。
- 最も大きな違いは,結論の拘束力です。
境界確定訴訟の場合,その結論(判決や和解)は当事者を拘束します。
要は,判決が確定した場合,当事者が納得していなくてもこれは当然有効です。
これに基いて登記上の地積更正などをすることもできます。
筆界特定制度は,結論が出ても,当事者が納得しない場合,境界確定訴訟を提起できます。
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- Q&A境界確定訴訟と筆界特定制度のどちらを使ったら良いでしょうか。
- 対立が大きい場合は境界確定訴訟,ある程度の調整による解決が可能そう
であれば筆界特定制度がベターでしょう。
筆界特定制度は,手続きが訴訟よりも「軽い」と言えます。
実際の調査作業は,法務局(筆界特定登記官)が,筆界調査委員に外注する形になります。
実際の筆界特定委員には,測量士や土地家屋調査士が選任される例が一般的です。
このように,調査作業自体を法務局が中心になって進めてくれます。
一方,訴訟の場合,メインは当事者の主張です。
資料(証拠)を集めて裁判所に提出したり,どんな調査を裁判所に要請(申請)するか,当事者が主体的に行います。
いわゆる「対審構造」が取られているのです。
ただし,筆界特定制度は訴訟と違って,結論に「強制力」がありません。
結局,ある程度対立が激しい場合は,最初から「最終手段」である訴訟がベターです。
最初から双方が納得する可能性がある程度高い,という場合は筆界特定制度を利用するのも有意義でしょう。
なお,一般的な「民事調停」で所有権の境について話し合いベースで進める,という方法もあります。
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- Q&A境界確定を急ぐため,境界周辺の土地を「捨てる」というのはどうでしょうか。
- 以前「額縁分筆」が流行りました。現在はできなくなっています。
形式的に考えれば,こんな方法で「境界未確定」が解消されそうです。
<額縁分筆の方法>
未確定の境界の付近を例えば30センチ幅で帯のように切り取ります。
仮に4つの辺のすべてにわたって「帯」を作ると,「額縁」状態になります。
本体(=額縁の内側)をA,額縁部分をB,とします。
A・Bとも所有者は同一です。
当然,A・Bの間の境界については「確定」状態になります。
そこで,Aは「すべての境界について確定した状態」になります。
つまり売却できるようになります。
しかし,この「額縁登記」,後に紛争を残す代物としてダメ出しされる歴史をたどります。
「額縁」の外側の土地所有者が,額縁の内側(A部分)の所有を主張することがあったのです。
要は,「真の境界はAの中を通っている!」という主張です。
そうすると,A部分を購入した人が想定外に紛争に巻き込まれることになるのです。
境界は確定していると思って購入した人が境界の紛争に巻き込まれるわけです。
そこで,このような登記は現在はできなくなっています。
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- Q&A現在はどのようにして「額縁分筆」が防止されているのでしょうか。
- 原則として「残地求積」が廃止され,「全筆求積」が必要となっていま
す。
(※登記上「面積」のことを「地積」と言います。以下便宜的に「面積」で統一します)
<「残地求積」の場合>
分筆時に,内側部分(A)の面積を実際に測量して計算します。
額縁部分(B)の面積は元の面積マイナスAの面積,として計算します。
つまり,Bについては「実際の測量」を行いません。
<「全筆求積」の場合>
AもBも実際に測量します。
額縁部分Bを測量する場合,当然,測量する前提としての境界を特定する必要があります。
ここで,隣地所有者と境界位置について合意していないと,結局測量ができません。
面積が出せません。
そうすると分筆自体ができないのです。
このようにして,「面積計算方法の変更」により,「額縁分筆」が禁じられる結果となっているのです。
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- Q&A公簿売買にすれば境界不確定でも土地を売れるのではないでしょうか。
- 公簿売買と境界不確定は直接関係ありません。
公簿売買とは,実際の土地面積と関係なく,公簿(登記のことです)上の面積で「代金額を算定する」というものです。
境界が未確定だと,購入した人が境界付近に塀を立てられない,その後紛争に巻き込まれる,ということは何も解消されません。
代金算定方法がどのようなものであっても,一般的に境界不確定では土地は売却できない,ということに変わりはありません。
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日常的なお隣との関係
- Q&A
隣地で塀の工事をしているのですが,工事のために組まれた足場がうちの敷地に入っています。
やめさせることはできますか。
- 工事に必要な範囲の敷地の利用は,認めなければなりません。
土地の境界やその付近の障壁や建物の築造,修繕を円滑に行うためには,隣地の利用が必要不可欠な場合があります。その場合には,お互いに譲り合いの精神
で,敷地の利用を許さなければなりません。
- Q&A
隣の家の窓から自宅の敷地を眺めることができます。
みられることを防げないのでしょうか。
- 隣の家の窓が土地の境界から1メートル未満の位置にある場合は,目隠し
を設置するよう請求することができます。
逆に,ご自分の家の窓も境界から1メートル未満の位置にある場合は,目隠しを設置しなければなりません。
囲繞地通行権
- Q&A公道と接していない土地を持っています。
お隣の土地所有者と話し合っていますが,通らせてくれません。
どうしたら良いでしょうか。
- 隣地を通行する権利があると思われます。
状況によっては,調停や訴訟を利用すると良いでしょう。
公道と接していない土地は,実質的に意味がない(使えない)状態になります。
そこで,例外的な状況にない限り,公道に至るまでの間の他人所有地を通行する権利が認められています(民法210条~)。
囲繞地(いにょうち)通行権とか,隣地通行権,袋地通行権と言います。
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- 【民法(抜粋)】
(公道に至るための他の土地の通行権)
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2
池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
第二百十一条
前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなけ
ればならない。
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。
第二百十二条
第二百十条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害
に対するものを除き、一年ごとにその償金を支払うことができる。
- Q&A【囲繞地通行権と通行地役権・賃借権との違い】
- 強制的なものか,協議で任意に設定したものか,という違いがあります。
通路部分の土地所有者と協議の上,任意の幅での通行権を設定することは勿論可能です。
この場合,「囲繞地通行権」として民法上決められている細かいルール(後述)は適用されません。
このように自由・任意に設定した通行権は,「通行地役権」や「賃借権」と呼ばれます(厳密に言えば,民法上の「囲繞地通行権」の内容を当事者同士で確認し
た,という言い方もできます)。
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- Q&A【通路の位置】
- 必要最小限,かつ,他の土地にとって損害が最小限の位置に定めることに
なります。
「やむを得ず」に認められる通行権です。
当然ながら,最小限度のものに決めることになっています(民法211条)。
なお,実務上は,以前から事実上通行していた経緯(実績)があればその実績維持(既成事実尊重)ということが多いです。
また,訴訟となり,判決で通路位置を決める場合は,通路となるべき土地の所有者の意向に沿った結論となることが多いです。
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- Q&A【通路の幅】
- 2メートル前後ということが多いです。
「必要最小限」をどのように考えるか,という問題です。
現在は自動車社会ですから,自動車が通れるような幅にすべきだ,という考えもあります。
しかし,元々が「他人所有地を強制的に使用する」という特殊な状態です。
自動車の通行が確保されることは稀です。
次のような特殊事情がない限り,ごく平均的には,2メートル前後の幅とされることが多いです。
<特殊事情>
・従前より自動車が通行していた経緯がある
・火災時の消火活動の面で,自動車が進入できないと大きな問題がある
→自動車の通行が確保される(幅4メートル前後)ということもあります。
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- Q&A【通行料】
- 通行の対価として料金(償金)を払う必要があります。
やむを得ない事情(地形)から,隣地所有者は所有地の一部を「貸す」状態になります。
対価(通行料)を払う義務があります(民法212条)。
1年払いで良い,ということも規定されています。
金額は,協議で決まれば勿論それで済みます。
仮に裁判所が決める場合は,近隣の相場に合わせることになります。
「通行料の相場」があまりない,ということも多いです。
その場合は,「土地賃貸借」の場合の賃料を参考にします。
要は,駐車場の料金を元に算定するということです。
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- Q&A【通行料の注意点】
- 長期間無償で通行していた場合は「将来も無償」となることがあります。
従前より無償で通行が許されていた通路については,「無償での通行地役権」があると扱われることがあります。
永続する事実状態の尊重,とか,既成事実重視,という理屈です。
法律解釈ではよく出てくる概念です。
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- Q&A【囲繞地通行権の特殊ケース】
- 特別な事情がある場合は,囲繞地通行権はノーマルと異なる場合がありま
す。
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- Q&A【1 分筆の場合】
共有地を分割した結果袋地が生じた場合
- 分割した他の一方の土地しか通行できません。
当然,共有者間の都合でのアクションです。
その結果としての負担を共有者外の者に与えることは不合理です。
逆に,共有者間では負担が生じることは「想定内」です。
また,明確に「想定内」なので,通行料(償金)も発生しません(民法213条1項)。
勿論,共有者間での分割協議の際に,取り決めがあれば,そのとおりになります。
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- Q&A【2 土地の一部譲渡】
土地の一部だけを譲渡→袋地が生じた場合
- 残余地に通行権が生じます。他の土地には生じません。
譲渡する前の,全体の所有者の都合で生じた袋地です。
第三者に負担を与えることはできません。
元所有者(譲渡人)にとって「想定内」のことです。
通行料(償金)も発生しません(民法213条2項)。
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- Q&A【3 複数の筆(土地)の一部譲渡】
複数の土地が一団となっていた→そのうち1筆だけを譲渡→袋地が生じた場合
- 残余地に通行権が生じます。他の土地には生じません。
土地が複数の筆に分かれていたということ以外は「2」と同じです。
そこで,民法213条2項が適用されることになっています(後掲判例)。
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- 【最高裁判所昭和44年11月13日(抜粋)】
所論は、甲地、乙地が訴外会社に売却される以前に、すでに分筆されていたというが、一筆の土地が分筆されても、同一人の所有に属する間は袋地を生ずるわけ
ではなく、分筆された一部が他の所有者に帰属するなどして、囲繞地の所有者と異なることによってはじめて袋地となるのであるから、かりに、所論の経緯が
あったとしても、原判決の右判断に違法はなく、論旨は採用しえない。
- Q&A【4 借地人による通行権の主張】
- 借地人も通行権の主張が可能です。
袋地の借地人が,正式・法的に,通路部分の土地所有者に通行権を主張(請求)できるかどうかという問題です。
<地上権の場合>
物権という性質→所有権と同類→通行権の主張可能 とされています。
<賃貸借の場合>
対抗力(賃借権登記または建物所有権登記)がある場合に限って→物件に近い性質→所有権と同類→通行権の主張可能 という裁判例が主流です。
ただ,仮に借地人自身の通行権の主張が不可能,と考えても,借地人が「地主(土地所有者)の持つ通行権」を代位行使する(民法423条),という方法で主
張できます。
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接道要件
- Q&A土地を購入する時に,境界部分で気にしなくてはならないことはありますか。
- 接道要件(接道義務)です。
建築基準法43条では,建物の建築をするための敷地は,「道路」に2メートル以上接していなくてはならないとされています。
つまり,道路から対象土地に入る際の「間口」が2メートル以上,とされているのです。
接道要件を満たさないと,土地を買っても家を建てられない,ということになってしまいます。
なお,例外的な場合の救済措置が取れることもあります。
また,アパート・マンション,店舗,工場などの規模が大きい建物の場合は,接道部分(間口)は2メートルよりも大きい長さが要求されます。
条例で決められているので,地域によって違います。
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- Q&A確かに,間口が狭いと不便ですが,住人が承諾すれば良いのではないですか。
- 住人が良くても,規制はかかっています。
と言いますのも,このルールの目的は,火災などの災害時に消火活動・救命活動をスムーズにすることなのです。
救急車その他の自動車や担架・救命器具をスムーズに住宅に運べなくてはならないのです。
逆に言えば,道路の反対側が広場になっていて,消火・救命活動がやりやすい場合は,接道要件が緩和されることもあります。
- Q&A接道要件における「道路」は小さい通路も含むのでしょうか。
- 大原則は幅4メートル以上のものが「道路」とされています。
「道路」の定義については建築基準法42条で定められています。
幅4メートル以上,というのが大原則ですが,例外も多いです。
条文は複雑なのですが,まとめると次のとおりです。
1 道路法による道路
いわゆる国道・県道・市道です。幅4メートル以上です。
2 都市計画法による開発許可を受けた道路
3 都市計画区域に入った時点で既に存在していた道路で幅4メートル以上のもの
4 道路位置指定を受けた道路
5 都道府県などが指定した道路
6 都市計画区域に入った時点で既に存在していた道路で幅1.8メートル以上のものであり,建築物が建ち並んでいるもの
- Q&A接道要件における「道路」に該当するかどうかはどうやって調べるのでしょうか。
- 市区町村役場の道路課(役所によっては「土木課」など)で確認します。
建築基準法42条の道路の定義は,複雑です。
4メートル以上だと簡単ですが,それ未満でも,救済措置的に「道路」と認める場合も結構あります。
具体的に調べるには,市区町村役場で確認します。
土地売買の際は必ず確認すべきです。
逆に,役所では日々確認する人がいるので,窓口でもスムーズに対応してくれます。
位置指定道路と通行権
- Q&A【建築基準法上の「道路」として扱われる「私道」】
- 「私道」が「位置指定」または「2項道路として指定」を受ければ「道
路」として扱われます。
いわゆる公道であれば,「道路」として扱われるのが原則です。
私道についてはちょっと注意が必要です。
見た目では,一般の人が自由に通行していても,「実は建築基準法上の『道路』ではない」ということもあります。
<建築基準法上の「道路」となる「私道」>
1 特定行政庁の「道路位置の指定」を受けている
→「位置指定道路」(建築基準法42条1項5号)
2 建築基準法42条2項の道路,として特定行政庁から指定を受けている
→「2項道路」(建築基準法42条2項)
※特定行政庁=都道府県知事または市区町村長
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- 【建築基準法(抜粋)】
42条1項5号
土地を建築物の敷地として利用するため、道路法 、都市計画法 、土地区画整理法 、都市再開発法 、新都市基盤整備法
、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 又は密集市街地整備法
によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの
42条2項
この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の
道路とみなし、(以下省略)
- Q&A【位置指定道路,2項道路となった私道の扱い】
- 道路して維持されます。所有者は建造物を建てられません。
当然,接道要件の前提としての「道路」となります。
位置指定道路,2項道路に接する土地所有者は建物を建築する上でメリットがあります。
一方で,私道の所有者は,その私道を道路として維持しなくてはならなくなります。
要は,私道上に建造物を建てるとかは禁止されるということです。
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- Q&A【位置指定道路,2項道路と通行権】
- 第三者は,その「私道」(位置指定道路,2項道路)について,「通行
権」(地役権など)を取得するわけではありません。
位置指定道路,2項道路には,その所有者でも建造物を建てられません。
見た目は「道」です。
第三者もその私道を意識せずに通行するでしょう。
しかし,それはあくまでも道路としての指定を受けたことの反射的な結果です。
通行者が「通行する権利」(通行地役権など)を持ったわけではありません。
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- Q&A私道(位置指定道路,2項道路)を第三者が通行するのを禁止できますか。
- 通行の差止や損害賠償請求が考えられますが,難しいこともあります。
例えば,次のような方法が考えられます。
・「関係者以外立ち入り禁止」という立て看板を掲げる
・自動改札のようなゲートを設置して,ICタグを持った関係者だけが通行できるようにする
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- Q&A私道(位置指定道路,2項道路)を第三者が通行するのを禁止できないこともあるのですか。
- 自由に通行できる状態が長期間継続している場合は,途中から通行を禁止
することはできなくなります。
長期間,自由に誰でも通行できる状態が続くと,通行者の日常生活に溶け込みます。
既成事実が優先という結果です。
私道所有者からではなく,通行者からの「妨害排除請求権」を正面から認めた最高裁判例があります(後掲)。
「日常生活上不可欠の利益」という言い方をしています。
要は「今まで使わせてくれたじゃないか。急にダメと言われても困るよ」という意味です。
逆方向に,かつ格言調に言えば,私道所有者は「黙っていると損をする」「恩をあだで返す(返される)」ということです。
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- 【最高裁判所平成8年12月18日(要旨)】
道路位置指定を受け現実に開設されている道路を公衆が通行することができるのは,本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず,その通行が妨害された者
であっても道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有しないのが原則。
しかし,現実に開設されている2項道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は,右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され,
又は妨害されるおそれがあるときは,敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り,敷
地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。

日照権
- Q&A【日照権】
我が家の南側は空き地で日当たり良好なのです。
しかし,高層マンション建設の計画があるそうです。
迷惑を被るので何か言えないのでしょうか。
- 日照権の侵害に該当すれば,建築の差止や損害賠償請求が可能です。
「日照権」というのは,法律・条文に明記されていませんが,多くの判例で認められています。
具体的な状況によって「日照権が侵害されている」と認められれば,建築が「侵害行為」として違法になります。
その場合は,建築自体を差し止める請求や損害賠償請求が可能となります。
最近は,太陽光発電システムを導入する建物が増えています。
日照確保の要請は従来の枠組みを超えてきています。
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- Q&A【日照権の法的根拠】
日照権は,条文に書いてないのに認められるのですか。
- 法的な根拠としては,物権的請求権,人格権などという解釈になりましょ
う。
多くの裁判例では,この「法的根拠」を説明しているものも,一切説明していないものもあります。
というのは,この「法的根拠」は,結論として建築差し止め・損害賠償請求を認めるかどうか,という結論に直結しません。
そこで,あまり議論の対象にならないのです。
法的根拠を整理しておきます。
<日照権の法的根拠>
1 物権的請求権説
日照を居住する権利,というものが「土地(や建物)の所有権の一環」として含まれる,という解釈です。
2 人格権説
これ自体が条文に規定(明記)されていない権利です。
しかし,存在することは当然の前提とされています。
人格権の内容としては,裁判例で,次のように説明されています。
<大阪高等裁判所昭和50年11月27日(抜粋)>
「個人の生命,身体,精神及び生活に関する利益は,各人の人格に本質的なもので,その総体を人格権という」
3 不法行為説
日照妨害という行為が違法性のある行為である,という解釈です。
そして,民法709条の不法行為を適用する,という説です。
この説では,「不法行為には『差止』という制度がない」というところが弱点です(民法722条,417条→金銭賠償のみ)。
4 環境権説,日照権説
ダイレクトに,環境権や日照権という新しい権利を認める考え方です。
環境権とは,「健康で快適な生活を維持する環境を享受する権利」という概要です。
また,もっと具体的に特定し,「日照を享受する権利」として「日照権」として認める考え方もあります。
この説については,根拠が不十分で,明確な「権利」とは言いにくい,という弱点があります。
裁判例の中で法的根拠を挙げるものは,概ね,物権的請求権説(1),人格権説(2)を採用しています(裁判例後掲)。
なお,太陽光発電が阻害され,発電→売電に被害が生じた,ということも今後は権利侵害の重要な内容としてクローズアップしてくると思われます。
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- [大阪地方裁判所堺支部平成5年(ワ)第954号建物一部撤去等請求事件平成8年12月18日]
およそ居住のための土地、建物については、十分な日照等快適な生活条件を確保することも所有権の重要な内容の一つであり、人格権の一内容として右の土地建
物に居住生活する者は、健康で快適な生活環境を確保する権利を有するものというべきである。したがって、居住のための土地、建物所有者は日照等の生活環境
等に対する違法な侵害行為により被った損害について不法行為に基づき損害賠償を求めることができるのはもちろんのこと、所有権または人格権に基づきその排
除を求めることができるものというべきである。
- Q&A【日照権侵害の判断基準(受忍限度論)】
どの程度日当たりが悪くなったら建築差し止めや損害賠償を請求できるのですか。
- 「受忍限度」を超えた場合に,違法性が認められ,各請求が認められま
す。
隣地に僅かでも日陰ができたら違法,ということはありません。
では,違法となる程度ですが,「受忍限度論」という理論があります。
次のようなものです。
<受忍限度論>
権利の制限の程度が「社会生活上一般に受任すべき限度を超えた場合」に違法となる
簡単に言えば,「常識を超えた場合に違法となる」というものです。
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- [最高裁判所第3小法廷昭和43年(オ)第32号損害賠償事件昭和47年6月27日(抜粋)]
南側家屋の建築が北側家屋の日照、通風を妨げた場合は、もとより、それだけでただちに不法行為が成立するものではない。しかし、すべて権利の行使は、その
態様ないし結果において、社会観念上妥当と認められる範囲内でのみこれをなすことを要するのであつて、権利者の行為が社会的妥当性を欠き、これによつて生
じた損害が、社会生活上一般的に被害者において忍容するを相当とする程度を越えたと認められるときは、その権利の行使は、社会観念上妥当な範囲を逸脱した
ものというべく、いわゆる権利の濫用にわたるものであつて、違法性を帯び「不法行為の責任を生ぜしめるものといわなければならない。
- Q&A【受忍限度の判断基準】
どの程度,日照に影響がある場合に受忍限度を超えた,と認められるのでしょうか。
- 加害建物の建築基準法違反の有無,地域性,日照阻害の程度,が重要な要
素です。
実際に,日照阻害の受忍限度,を考える際には,多くの事情が考慮に含まれます。
大きな分類は次のとおりに整理されます。
<日照阻害の受忍限度判断要素>
1 加害建物の建築基準法違反の有無
実際には,建築基準法に適合している場合には,違法性が認められることは極端に少ないです。
2 地域性
都市計画法上の用途地域が主なものです。
典型例は,住居地域の方が,商業地域よりも日照が重視される→日照権侵害が認められやすい,というものです。
実際の土地利用状況も関係してきます。
3 日照阻害の程度
具体的な数値的データとしては,建築基準法で用いられるものを流用することが多いです。
<用いられる日照条件>
・冬至日の午前8時から午後4時における,被害建物南側開口部付近の日照状況(日影時間)
・春分・秋分時の日照状況(他の条件は同上)
また,地盤面より1.5メートル,など一定の高さを日影時間の基準とすることもあります。
4 その他
・加害,被害回避の可能性
加害建物側,被害建物側で,日照阻害を少なくする手段があるかどうか,ということです。
・加害,被害建物の用途
<具体例(一例)>
・加害建物が公共的な建物で建設の必要性が高い
・被害建物が幼稚園・病院であり,日照確保の必要性が高い
・加害建物と被害建物の先後関係
・加害建物建築に至る交渉経緯
加害側と被害側との説明・交渉(意見交換)→設計変更を行った,など,双方がどの程度相手方への配慮を行っているか,ということも重要な要素です。
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- Q&A【違法性段階説】
加害建物が建築基準法に違反していない場合,建築差止も損害賠償も認められないことが多いのでしょうか。
- 建築差し止めは棄却されつつ,損害賠償請求が認められるケースもありま
す。
建築差止については,建築中止→建築物撤去,ということを強制するものです。
当然,影響が非常に大きくなるのが通常です。
そこで,建築差止は,特に違法性が高い場合に限って認める,という傾向があります。
その一方,損害賠償請求は,その程度を金額で調整できます。
加害建物サイドでは,建築差止がされず,建築→運用(営業)ができる前提であれば,なおさら,一定額の負担を負うことも受け入れやすいという側面もありま
す。
裁判例においても,「建築差し止めは棄却+損害賠償請求認容」というものが結構あります(後掲)。
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- [東京地方裁判所平成3年(ワ)第7291号損害賠償請求事件平成7年2月3日(抜粋)]
そうすると、現段階において原告らによる被告建物の一部撤去請求を根拠づけるだけの受忍限度を超える侵害状態があるということはできない。
しかし、被告建物建築時における原告第一建物二階南西側和室に対する日照阻害の程度は(是正工事により多少改善されたものの)受忍限度を超えるものであっ
たというべきであり、被告関口らには、三階建て建物を建てる認識があった以上、右のような日照阻害が生じることについて少なくとも過失があったといえる。
(略)
そして、受忍限度を超える部分が原告第一建物の一部であることや被告関口らが是正工事を行っていること及び前述のような原告側の事情を考慮すれば、本件の
日照阻害による原告らの精神的損害は、原告一人につき一五万円が相当である。
- [東京高等裁判所平成14年(ネ)第897号、平成14年(ネ)第2600号損害賠償等請求控訴、同附帯控訴事件平成14年11月18日(抜
粋)]
以上の諸事情を考慮すると,被控訴人建物によって控訴人らが受ける日照被害は社会通念上受忍限度を超えるものと認められるものの,受忍限度の逸脱の程度が
著しいものとまではいえず,被控訴人らに対し被控訴人建物の一部撤去を求めることは,過剰な負担を強いることとなるので許されないというべきであり,控訴
人らの受ける日照被害に対する救済は金銭賠償によって償われるのが相当である。
- Q&A【紛争解決手段】
日照権が侵害されていて,話し合いでは折り合いがつかない場合,どういった方法がありますか。
- 建築紛争調整,建築確認に対する審査請求,仮処分,調停,訴訟,などの
メニューがあります。
建築問題プロパーの手段として,裁判所以外の解決手段もあります。
当然,裁判所を利用した手続きもあります。
<日照権侵害の解決手段>
1 建築紛争調整
都道府県において,「建築紛争の調整」などの名称の手続きを設けています。
「あっせん」や「調停」と呼ばれることもあります。
当然,裁判のように強制的な判断を下す,ということはありません。
専門家が介在して話し合いをするので,対立が熾烈でなければ,この手続きで解決に至ることもあります。
2 建築確認に対する審査請求
建築確認自体にミスがあったという場合は,審査請求によって,建築確認の撤回を要請する方法もあります(建築基準法94条)。
3 仮処分
建築禁止の仮処分などです。
暫定的な証拠・主張で,工事自体を止めてしまうものです。
一定の保証金が必要です。
また,事後的に,本案訴訟での請求が認められなかった場合は,逆に損害賠償請求を受ける可能性もあります。
仮処分申請は慎重に検討すべきです。
4 民事調停
裁判所で,調停委員を介して話し合いをする手段です。
裁判所によっては,専門委員として,建築のプロ(建築士・土地家屋調査士など)か話し合いに関与してくれることもあります。
5 訴訟
最終手段として,裁判所に強制的な判断を求めるものです。
建築が始まっているなど,急を要する程度によっては,積極的・スピーディーに提訴することも多いです。
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- [建築基準法]
(不服申立て)
第九十四条
建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、行政不服審査法第
三条第二項
に規定する処分庁又は不作為庁が、特定行政庁、建築主事又は建築監視員である場合にあつては当該市町村又は都道府県の建築審査会に、指定確認検査機関であ
る場合にあつては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第六条第一項(第八十七条第一項、第八十七条の二又は第八十八条第一項若しくは第二項
において準用する場合を含む。)の規定による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができ
る。
(略)

太陽光発電と日照権
- Q&A【太陽光発電と日照権】
太陽光発電システムを購入,設置しました。
その後,南側に高層マンションが建設される予定です。
購入費用を売電で回収する予定が崩れます。
どうしたら良いでしょうか。
- 日照権侵害として建築差止や損害賠償請求を検討すべきです。
また,状況によっては太陽光発電システムの販売業者に対する賠償請求も考えられます。
今後,問題が増えてくると予想される分野です。
従来の,「日当たりの良い場所で過ごしたい」という人間の本能的な欲求という枠組みを超えた問題です。
太陽光発電システムの保有者としては,日照が確保されるという期待が大前提です。
一方で加害建物の建築主としても,土地利用の一環,つまり所有権の一環として建物を建築する権利を持っています。
結局は,「日照を確保する期待・権利をどこまで認めるべきか」という理論になります。
現時点では裁判例の蓄積などはないです。
敢えて言えば,従来の日照権侵害の判断の枠組みを流用・踏襲するという流れになると予想されます。
別の視点で,太陽光システムを販売した業者としては,一定のリスクを説明する義務が認められましょう。
つまり「太陽光発電が永続し,売電により資金を回収する」という期待に対し,「この回収が不能となるリスクが具体的にこのような場合として挙げられる」と
いう説明をすべきであるということです。
このような紛争が想定されるので,理想としては,建築基準法(やその施行令)の改正により,明文のルール化を進めることが望まれます。
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日照地役権
- Q&A【日照地役権による日照権の明確化】
法律改正など以外で,当事者間で日照の確保を明確にしておく予防策はないのですか。
- 南側の土地所有者との間でルールを設定し,地役権として登記しておくと
万全です。
理想としては,日照を阻害する可能性のある土地の所有者との間で,「建築の高さ制限」などを約束しておく方法があります。
さらにパーフェクトを極めるのであれば,その「約束」を合意書だけではなく,登記しておくと良いでしょう。
「建築物の高さ上限」を地役権として登記しておけば,仮に南側土地(承役地)所有者が,相続・売買などで変わっても「ルール」はそのまま存続します。
日照を確保した土地(要役地)の所有者が変わっても同様です。
登記していない場合,当事者(所有者)が変わると「ルールも排除される」という可能性があります。
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- [民法]
(地役権の内容)
第二百八十条
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序
に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
- Q&A【日照地役権の具体的設定例】
南側の土地所有者と「日照地役権」を設定する場合,どのような内容にすると良いのですか。
- 建築物の高さ制限や,土地のうち一定の部分への建築を禁止する,という
ような内容です。
対価として定期的な「地役権補償料」を伴うことが通例です。
当事者間の約束・合意ですので,自由度は高いです。
<地役権設定の例>
・単純な「高さ制限」
・土地の一部への工作物設置禁止
例えば北側5メートルには建物その他を一切建築しない,など
登記の方も,システムがきちんと対応しています。
土地の一部だけに制限を課する場合には,別紙として図面を登記に含めることも可能となっています。
このような特別扱いは地役権だけです。
地上権などは「一物一権主義」により,別紙の図面で一部を特定,という扱いはできません。
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眺望権
- Q&A【眺望権】
見晴らしの良い高層マンションを買って,居住しています。
近くに別の高層マンションが建築される予定になっています。
眺めが悪くなるので何とか止めたいです。
止められますか。
- 差止などの請求は特殊な事情がない限りできません。
眺望の権利・眺望の利益,というものは法的にはほとんど認められていません。
「日照権」の方がまだ認められやすいです。
確かにマンションは個人の貴重な財産です。
購入した時に「眺望」を重視していたことと思います。
しかし,だからといって,別の土地の所有者を拘束・制限することは通常はできません。
眺望権・眺望の利益が主張された裁判例はいくつかありますが,ストレートに「眺望権」を認めたものは皆無です。
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- Q&A【眺望地役権】
どのような場合に,眺望を阻害する建物の建築を止めることができるのでしょうか。
- 眺望地役権の設定を行った場合が分かりやすい例です。
一定の広さのエリアを同一業者が開発しているケースにおいて,「眺望地役権」が活用されることがあります。
これは,高層マンションからの「眺め」に関係する範囲,つまり,前面の一定範囲の土地について,「nメートル以上の建築物は建てない」というルールを設定
する方法です。
ただ,このルール(約束)は,そのままでは
「作った人(デベロッパー)には適用されるが,第三者(土地の購入者)には適用されない」
ということになります。
そこで,「眺望地役権の登記」を行うことにより,第三者にもこのルールが適用されることになります。
当然ですが,このルール(地役権)があれば,これに違反する建築を差し止めることができます。
裏を返せば,このようなルールがない以上,「眺望が悪くなる」リスクを常に抱えている,ということです。
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- 【民法】
(地役権の内容)
第二百八十条
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序
に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
- 【不動産登記法(抜粋)】
(地役権の登記の登記事項等)
第80条
承役地(民法第285条第1項に規定する承役地をいう。以下この条において同じ。)についてする地役権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほ
か、次のとおりとする。
- Q&A【購入時の説明義務違反による損害賠償・売買契約解除】
マンション購入時に,周囲に高層マンションが建築されることはない,と説明を受けていました。
その後,高層マンションが建築されることになりました。
分かっていたら買っていませんでした。
何か責任追及はできないのですか。
- 説明義務違反,として損害賠償や売買契約自体の解除が認められるケース
もあります。
「眺望」自体は法的に保護されないとしても,売買時における不当な説明自体は保護されません。
説明義務違反による売主や仲介業者の責任が主張された裁判例はいくつもあります。
<後掲裁判例>
売買契約解除が認められた裁判例→福岡地方裁判所平成18年2月2日
説明義務違反が認められなかった裁判例→大阪地方裁判所平成20年6月25日
結果としては,「眺望が確保されることを強調(セールス)したか」「眺望が阻害される可能性を説明したか」という事情によって判断が分かれています。
実際のトラブル事例では,そもそも,そのような説明・セールストークが証拠として残っているかどうかが非常に重要です。
よく登場する証拠としては,録音・メール・FAX・パンフレット,などがあります。
裏を返せば,これらがない場合は,立証の面で非常に困難が生じます。
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- 【福岡地方裁判所平成17年(ワ)第121号、平成17年(ワ)第496号違約金請求本訴事件、手付金返還等請求反訴事件平成18年2月2日
(抜粋)】
2 原告の債務不履行責任について
建築前にマンションを販売する場合においては,購入希望者は現物を見ることができないのであるから,売主は,購入希望者に対し,販売物件に関する重要な
事項について可能な限り正確な情報を提供して説明する義務があり,とりわけ,居室からの眺望をセールスポイントとしているマンションにおいては,眺望に関
係する情報は重要な事項ということができるから,可能な限り正確な情報を提供して説明する義務があるというべきである。そして,この説明義務が履行されな
かった場合に,説明義務が履行されていれば買主において契約を締結しなかったであろうと認められるときには,買主は売主の説明義務違反(債務不履行)を理
由に当該売買契約を解除することができると解すべきである。
これを本件についてみると,原告は,本件マンションの販売の際,海側の眺望をセールスポイントとして販売活動をしており,被告もこの点が気に入って5階
と眺望の差異がないことを確認して301号室の購入を検討していたのであるから,原告は,被告に対し,眺望に関し,可能な限り正確な情報を提供して説明す
べき義務があったというべきである。そして,上記認定の事実(前記争いのない事実等(5))によれば,301号室にとって,本件電柱及び送電線による眺望
の阻害は小さくないのであるから,原告は,本件電柱及び送電線が301号室の眺望に影響を与えることを具体的に説明すべき義務があったというべきであり,
原告がこの説明義務を怠ったのは売主の債務不履行に当たるというべきである。
そして,本件電柱及び送電線による眺望阻害の程度,被告は眺望を重視し,301号室と501号室のいずれかにするか決定する際,丙山から眺望には変わり
がないとの説明を受けたので301号室に決めたものであることなどからすると,原告が上記説明義務を履行していれば,被告は501号室を購入して301号
室を購入しなかったことが認められるから,被告は本件売買契約を解除することができるというべきである。
- 【大阪地方裁判所平成18年(ワ)第3755号損害賠償請求事件平成20年6月25日(抜粋)】
超高層マンションの高層階を購入した者からの眺望権主張が否定さる
したがって,眺望利益は,特定の場所がその場所からの眺望の点で格別の価値をもち,このような眺望利益の亨受を一つの重要な目的としてその場所に建物が建
築された場合のように,当該建物の所有者ないし占有者によるその建物からの眺望利益の亨受が社会観念上からも独自の利益として承認せられるべき重要性を有
するものと認められる場合に限って,法的に保護される権利となるものと考えられる。
(略)
以下に,被告近鉄不動産が上記のような真実に反する説明を行って本件売買契約を締結した(その結果,原告らにおいて,将来的にも良好な眺望が保証されるも
のと誤信して本件売買契約を締結した)という事実が存するか否かを検討する。
(略)
以上のとおり,被告近鉄不動産において,本件売買契約締結に先立ち,本件敷地に中高層建築物が建築されて眺望に変化が生じる可能性があることを十分に説
明していた事実が認められる。被告近鉄不動産において,本件敷地に原告らの眺望を阻害するような高層マンションが建つ可能性を説明せず,逆に,将来的にも
そうした事態は生じないであろうと保証し,あるいはそのような信頼を与えるかのような言動を用いて本件売買契約を締結した(その結果,原告らにおいて,将
来的にも良好な眺望が保証されるものと誤信して本件売買契約を締結した)という事実は認められない。
そうすると,上記のような被告近鉄不動産の説明義務違反ないし虚偽説明を前提として,被告らが原告らの眺望利益を違法に侵害した旨の原告らの主張は,そ
の余の点を検討するまでもなく,失当である。

景観訴訟
- Q&A【国立マンション訴訟】
個人の住居ではなく,町並みとして,眺めの良かった場所に大きな建築物ができることにより悪化してしまう場合,止めることはできませんか。
- 建築の差止はほぼ認められません。
国立マンション訴訟という有名な判例(後掲)があります。
建築の差止や損害賠償請求がすべて否定されています。
個人の所有住宅の場合よりも,「景観・眺望」の保護が低くなっていると言えます。
個人としての権利が侵害されているわけではなく,1地域全体の問題であるため,広い範囲での建築規制・開発計画という行政の判断が優先されるという考えが
根底にあるのです。
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- 【最高裁判所第1小法廷平成17年(受)第364号建築物撤去等請求事件平成18年3月30日】
良好な景観に近接する地域内に居住し,その恵沢を日常的に享受している者は,良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものと
いうべきであり,これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益(以下「景観利益」という。)は,法律上保護に値するものと解するのが相当である。
もっとも,この景観利益の内容は,景観の性質,態様等によって異なり得るものであるし,社会の変化に伴って変化する可能性のあるものでもあるところ,現
時点においては,私法上の権利といい得るような明確な実体を有するものとは認められず,景観利益を超えて「景観権」という権利性を有するものを認めること
はできない。
(略)
ある行為が景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには,少なくとも,その侵害行為が刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり,公序良
俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど,侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められると解するの
が相当である。
(略)
以上の諸点に照らすと,本件建物の建築は,行為の態様その他の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くものとは認め難く,上告人らの景観利
益を違法に侵害する行為に当たるということはできない。
- 【東京高等裁判所平成15年(ネ)第478号建築物撤去等請求控訴事件平成16年10月27日(上記の原審;抜粋)】
4 景観被害について
(1)当裁判所の判断の要旨
良好な景観は,我が国の国土や地域の豊かな生活環境等を形成し,国民及び地域住民全体に対して多大の恩恵を与える共通の資産であり,それが現在及び将来
にわたって整備,保全されるべきことはいうまでもないところであって,この良好な景観は適切な行政施策によって十分に保護されなければならない。しかし,
翻って個々の国民又は個々の地域住民が,独自に私法上の個別具体的な権利・利益としてこのような良好な景観を享受するものと解することはできない。もっと
も,特定の場所からの眺望が格別に重要な価値を有し,その眺望利益の享受が社会通念上客観的に生活利益として承認されるべきものと認められる場合には,法
的保護の対象になり得るものというべきであるが,1審原告らが主張する大学通りについての景観権ないし景観利益は,このような特定の場所から大学通りを眺
望する利益をいうものではなく,1審原告らが大学通りの景観について個別具体的な権利・利益を有する旨主張しているものと解されるところ,1審原告らにこ
のような権利・利益があるものとは認められないから,本件建物による1審原告らの景観被害を認めることはできない。

騒音・振動
- Q&A【騒音・振動】
近隣からの騒音や振動がひどい場合はどんな請求ができるのでしょうか。
- 騒音・振動の原因となる行為の差止や損害賠償請求があります。
騒音や振動を発する行為の程度によっては,法的な請求が認められます。
具体的には,差止請求や損害賠償請求となります。
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- Q&A【差止請求・損害賠償請求の法的根拠】
差止や損害賠償が認められるのは,どのような法律に基づくのですか。
- 法律上の明文はありません。人格的権利,という解釈が主流です。
次のような法的根拠が考えられます。
実際の裁判例ではあまり詳しく論じられないことが多いです。
結論にほとんど影響がないからです。
また,日照権の法的根拠と基本的に同様です。
<騒音・振動に対する差止請求・損害賠償請求の法的根拠>
1 物権的請求権説
2 人格権説
3 不法行為説
4 環境権説,日照権説
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- Q&A【差止請求・損害賠償請求の判断基準(受忍限度論)】
どの程度の騒音・振動であれば差止や損害賠償を請求できるのですか。
- 「受忍限度」を超えた場合に,違法性が認められ,各請求が認められ
ます。
当然,個人の生活,各業務の遂行において音や振動を発することは日常的に起こります。
一定の限度,を超えた場合にだけ,差止や損害賠償が認められます。
この「限度」は「受忍限度論」と言われるものです。
<受忍限度論>
権利の制限の程度が「社会生活上一般に受任すべき限度を超えた場合」に違法となる
要は,「常識を超えた場合に違法となる」というものです。
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- Q&A【受忍限度の判断基準】
どの程度の騒音・振動であれば,受忍限度を超えた,と認められるのでしょうか。
- 被害の内容,大きさ,公的規制との関係,などが主要な判断要素で
す。
実際に,騒音・振動の受忍限度,を考える際には,多くの事情が考慮に含まれます。
大きな分類は次のとおりに整理されます。
<騒音・振動の受忍限度判断要素>
1 被害の内容・程度
<例>(小←→大)
イライラする,電話で会話できない,睡眠できない,精神障害発症
2 公法上の規制との関係
環境基準が法律,条例で定められています。
本来,これらは公的規制であり,民事における適用を目的とされていません。
しかし実務的には,この基準が重視される傾向にあります。
3 地域性
4 先住性
加害側が後から接近した場合,「以前の環境」は保護される傾向が強くなります。
5 侵害行為の程度,態様
音量,継続時間,時間帯,音の種類(音質)などです。
6 被害者の状況
<典型例>
個人の居宅→基本的な生活環境の侵害
企業活動→従業者の健康被害,営業の妨害
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- Q&A【違法性段階説】
騒音・振動が環境基準に収まっている場合,差止も損害賠償も認められないことが多いのでしょうか。
- 差止は認めないけれど,損害賠償請求は認めるという裁判例もありま
す。
差止については,加害側の営業・事業の中止と直結するものです。
当然,影響が非常に大きくなることもあります。
そこで,差止は,特に違法性が高い場合に限定される傾向があります。
その一方,損害賠償請求は,その程度を金額で調整できます。
差止よりは認められやすいという傾向があります。
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- [大阪地方裁判所昭和59年(ワ)第3083号損害賠償等請求事件昭和62年4月17日(抜粋)]
差止請求の可否は、損害防止の困難さの程度、それに要する費用、防止義務者に与える影響等を考慮のうえ、損害賠償の可否の判断に比しより慎重に行わなけれ
ばならない。

環境基準・公的規制
- Q&A【環境基準】
騒音の損害賠償などで参考とされる「環境基準」とはどのようなものですか。
- 政府が,騒音その他の環境に関し,「維持することが望ましい目標」
を数値化したものです。
国や地方自治体が個々の規制,施策を行う際の参考となる基準を政府(環境省)が定めています。
具体的には,大気,水(水質),土壌,騒音について,「望ましい基準」を政府が定めるというルールが環境基本法で制定されています(16条)。
そして,この法律を受けて,通達において,具体的な基準が数値として規定されています。
この具体化された数値としての基準を「環境基準」と呼んでいます。
騒音の環境基準は通達(平成17年5月2日環告45)において示されています。
地域を4種類に分け,かつ,昼間と夜間で分け,それぞれ「デシベル」という単位で基準値が定められています。
なお,「環境基準」はこれに違反した場合の罰則などは規定されていません。
あくまでも,他の法律・条例制定や個別的施策の決定プロセスで参考とされるためのものです。
結果的に,個別的な騒音の差止・損害賠償において,裁判所でも重要な参考情報として活用されています。
<騒音に関する環境基準(基準値)>
昼間 50~60デシベル
夜間 40~50デシベル
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- [環境基本法]
第三節 環境基準
第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維
持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2 前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指
定に関する事務は、二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって政令で定めるものにあっては政府が、それ以外の地域又は水域にあってはその地域又
は水域が属する都道府県の知事が、それぞれ行うものとする。
3 第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。
4 政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下「公害の防止に関する施策」という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、
第一項の基準が確保されるように努めなければならない。
- Q&A【騒音・振動の公的規制】
騒音・振動については公的な規制はどのようなものがありますか。
- 騒音規制法,振動規制法と条例が重要なものです。
騒音・振動については,各地域の実情によって規制内容を調整する必要があります。
事業活動と,周囲の方(個人・会社)への影響の両方のバランスを取らなくてはなりません。
小さな単位での地域(コミュニティ)の実情を反映させる必要があるのです。
そこで,騒音規制法,振動規制法ともに,詳細な規制内容は条例に委任しています(騒音規制法3,4条,振動規制法4条1項)。
各自治体は,これに対応して条例で基準を定めています。
エリアによって異なりますが,騒音・振動ともにデシベルという単位で規定されています。
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- [騒音規制法]
(地域の指定)
第三条
都道府県知事は、住居が集合している地域、病院又は学校の周辺の地域その他の騒音を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認める地域
を、特定工場等において発生する騒音及び特定建設作業に伴つて発生する騒音について規制する地域として指定しなければならない。
(略)
(規制基準の設定)
第四条
都道府県知事は、前条第一項の規定により地域を指定するときは、環境大臣が特定工場等において発生する騒音について規制する必要の程度に応じて昼間、夜
間その他の時間の区分及び区域の区分ごとに定める基準の範囲内において、当該地域について、これらの区分に対応する時間及び区域の区分ごとの規制基準を定
めなければならない。
(略)
- [振動規制法]
(地域の指定)
第三条
都道府県知事は、住居が集合している地域、病院又は学校の周辺の地域その他の地域で振動を防止することにより住民の生活環境を保全する必要があると認め
るものを指定しなければならない。
(略)
(規制基準の設定)
第四条
都道府県知事は、前条第一項の規定による指定をするときは、環境大臣が特定工場等において発生する振動について規制する必要の程度に応じて昼間、夜間そ
の他の時間の区分及び区域の区分ごとに定める基準の範囲内において、当該指定に係る地域について、これらの区分に対応する時間及び区域の区分ごとの規制基
準を定めなければならない。
- Q&A【公的規制と違法性の関係】
公的規制を超えると損害賠償などが認められるということなのでしょうか。
- 本来,公的規制と民事上の請求は別です。
ただし,実際にはパラレルに考えられることが多いです。
公的規制は,事業者(個人や会社)と国や地方自治体との間のルールです。
民事(私人同士)に適用されることは目的とはなっていません。
しかし,騒音・振動の裁判例などの実務においては,結果的に民事でも公的規制が「重視」されます(裁判例後掲)。
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- [仙台高等裁判所昭和60年(ネ)第356号損害賠償請求控訴事件平成5年12月20日(抜粋)]
規制基準及び環境基準との関係であるが、公法上の規制と私法上の救済とでは、趣旨、目的が同一ではないから、公的基準に反したからといって直ちに私法上の
違法性が肯定されるものではない。しかし、公的基準は、生活環境保全のための重要な基準であるから、特に騒音を発生させている者に有利な事情のない限り、
公的基準を超える場合は受忍限度を超え、違法と認むべきである。

騒音・振動に関する実例・裁判例
- Q&A【騒音・振動が問題となる典型的ケース】
どのような場合に,騒音・振動が問題になるのでしょうか。
- 工場稼働,建物建設,建物(内部)改修,深夜飲食店等(カラオケ店
等)などが典型例です。
それぞれのケースについては,騒音・振動が問題となる可能性が常にあります。
事業・業務を行う方(会社)は,公的規制をよく理解し,かつ,近隣への影響にも十分配慮しておく必要があります。
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- Q&A【工場騒音・振動に関するする裁判例】
工場騒音・振動に対する差止や損害賠償が請求された具体的ケースはどのようなものがありますか。
- 工場騒音・振動に関する裁判例を紹介します。
個別的な事情が考慮されています。
ただし,多くの裁判例をまとめますと,客観的な数値となっている環境基準,公的規制(条例)が重視されていることが分かります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [仙台高等裁判所昭和60年(ネ)第356号損害賠償請求控訴事件平成5年12月20日(抜粋)]
そこで、工場騒音が受忍限度を超えているかどうかについて判断する。
前認定によれば、屋内における騒音レベル五五ホンを屋外における騒音レベルに換算すると、六五ホン程度であるところ、被控訴会社工場が増築された昭和四
八年二月以降、最終的に騒音防止設備が整えられた昭和五一年一月三一日以前においては、屋外において六五ホンを超え、したがって、屋内における騒音レベル
五五ホンを基準とする受忍限度を超えたことがあったことが明らかである。
しかし、前認定によれば、右時点以降においては、受忍限度を超えてはいない。
- [大阪地方裁判所昭和59年(ワ)第3083号損害賠償等請求事件昭和62年4月17日(抜粋)]
被告工場の排出する振動は、原告が本件建物に入居した当初から排出基準内にとどまっており、被告本人尋問の結果により主たる振動発生源と認められる餅つき
機の稼働は、隔日の午前八時以降の二時間ないし二時間三○分程度に限られているのであるから、右程度の振動をもって、社会生活上受忍限度を超えるものと認
めることはできない。
2 次に、被告工場の排出する騒音についてみるに、本件地域が住宅用地域であること、本件建物が騒音発生源たる機械の集中している被告工場の増築部分に
極めて近接していること、原告が本件建物に入居した当初の騒音測定値七五ホンは、《証拠略》によれば、条例施行規則の定める大阪国際空港及び八尾空港の敷
地における排出基準をも上回る高数値であること、被告は、遅くとも被告工場増築後は、右程度の騒音を排出していたものと推測されるところ、昭和五八年七月
七日に大阪市東住吉保健所から改善指示を受けるまで何ら騒音防止の配慮をしていなかったこと、原告は、被告工場からの騒音を知らずに本件土地・建物を買い
受けたものであり、その騒音を知らなかったことにつき過失ありと認めるに足りる事情は窺われないことが認められるのであり、これらの事情に対し、被告の一
応の努力により騒音が六九ホン程度に減少したこと、被告が原告の本件建物入居以前から被告工場での操業を行っていること、本件建物の建築が被告工場の増築
後になされたものであること、被告が原告を除く近隣住民から被告工場の排出騒音について苦情を受けたことがないことなどの事情を考慮しても、なお、条例施
行規則の定める朝五〇ホン、昼間五五ホンを超える騒音については、本件建物において社会生活を営むうえで受忍すべき限度を超えたものであるというべきであ
る。
したがって、被告は、原告に対し、昭和五八年六月一日から本件口頭弁論終結の日の属する月の末日である昭和六一年五月三一日までの騒音については不法行
為に基づく損害賠償義務を免れない。
- Q&A【建物建設工事に関するする裁判例】
建物建設工事に伴う騒音に対する差止や損害賠償が請求された具体的ケースはどのようなものがありますか。
- 建物建設工事の騒音に関する裁判例を紹介します。
・東京地方裁判所平成9年11月18日
個別的な特殊事情を考慮しつつも,条例による規制を重要な参考数値として用いています。
<特殊事情>
・被害者が深夜のタクシードライバーである
→被害者側の事情(職業選択)であるが,日中の騒音を睡眠妨害と認めた
・加害者は,代替の居住場所の提供を提案した
→提案を拒否した後の違法性は否定された
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [東京地方裁判所平成7年(ワ)第25744号損害賠償請求事件平成9年11月18日(抜粋)]
2 右認定した事実によれば、被告会社は、本件工事期間中、防音シートを設置した後においても、概ね午前八時ころから常時六〇デシベル程度、ときには八〇
デシベルを超え、稀に九〇デシベルに至る騒音を発生させており、右騒音は、原告居室の窓を閉め切ったとしても一〇デシベル程度減少するだけである。
東京都公害防止条例が、前記のとおり、午前八時から午後五時までは五〇デシベルを超える騒音を発生させることを禁止しているところに鑑みると、右のよう
な騒音レベルは就寝に必要な静謐を害するに足りるものであり、原告は、深夜業に従事して、午前一〇時ころまで就寝する生活を送っていたものであるから、本
件工事により午前八時以降相当程度の睡眠妨害を受けていたものと認めるのが相当である。
3 そこで、右認定事実に基づき、被告会社が発生させた右のような騒音による被害が、一般社会生活上受忍すべき限度を超えるものかどうかについて検討す
る。
(略)
(三) さらに、原告は本件工事の当時六〇歳であり、加齢による身体の衰えと相俟って騒音による睡眠妨害が身体に多大な影響を与える状況であった。
(四) 一方、本件工事はほぼ午前八時から開始されているところ、本件工事が発生させる騒音により原告の睡眠が妨害されるのは、原告が深夜業に従事
することを選択したことによるものであり、本件において原告に被害が発生するのは原告側の事情による部分があることは否定できない。
(略)
4 以上の諸点を総合すると、工事が開始された平成七年四月一七日から原告が瀬田のアパートに入居することが可能となったと認められる同年六月一二日
までの期間に限っては、被告会社から原告の騒音被害を軽減するに足りる適切な措置が採られておらず、原告は一方的に本件工事による前記のような騒音にさら
されていたものと認められるから、右の期間中に原告の被った騒音被害は、深夜業に従事していたという原告側の事情その他右に説示した諸事情を考慮に入れて
もなお、社会生活上受忍限度を超えるものであったといわざるを得ない。
- Q&A【深夜飲食店等に関するする裁判例】
深夜のカラオケ店などに対する差止や損害賠償が請求された具体的ケースはどのようなものがありますか。
- 深夜のカラオケボックスの騒音に関する裁判例を紹介します。
・名古屋地方裁判所平成6年8月5日
仮処分において,騒音を発生するカラオケ装置の使用の差止が認められた珍しい決定です。
差止が認められたのは,深夜(午後11時以降翌日の午前6時まで)の時間帯限定です。
については,受忍限度を超えるものとして,差止が認められました。
深夜の時間帯については,愛知県の条例の基準である40デシベルを流用しています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [名古屋地方裁判所平成6年(ヨ)第655号カラオケ装置使用禁止等仮処分命令申立事件平成6年8月5日(抜粋)]
主 文
一 債務者A及び同Bは、午後一一時から翌日の午前六時までの間、別紙物件目録一の建物(以下「本件建物」という。)において、カラオケ装置を自ら使用
し、若しくは第三者をして使用させてはならない。
二 債務者A及び同Bは、午後一〇時から翌日の午前六時までの間、別紙物件目録二の土地(以下「債権者宅敷地」という。)内に、本件建物のカラオケボック
ス営業によって生じる騒音を、四〇デシベルを超えて侵入させてはならない。
(略)
1 本件物の空調機の騒音について
前記認定事実によれば、本件建物の空調機の音が、別紙図面二のA地点では常時約六二デシベル、B地点では常時約五七デシべル、C地点では常時約五四デシ
ベルであリ、債権者が債権者宅内部での騒音を測定したところ、南側サッシ戸を開けた状態では四八ないし四九デシベル、南側サッシ戸を閉めて施錠した状態で
は三七ないし三九デシベルであったこと(もっとも、債権者宅内部での騒音のうち本件建物の空調機による騒音がどの程度のものであるかは明らかではな
い。)、本件建物につき株式会社メッカがカラオケボックス営業から撤退した後に、債務者木下らにおいて本件建物につき防音工事を行ったものの、なお、空調
機の騒音を上回るカラオケ音が発生することがあることが認められる。
このように、本件建物の空調機から発生する騒音は条例に定められた四〇デシベルの基準をはるかに超えるものであり、午後一〇時以降、このような騒音が本
件建物の営業時間か終了するまで連続して絶え間なく発生することを考慮すると、本件建物の空調機から発生する騒音は、午後一〇時から翌日の午前六時までの
間については、受忍限度を超えているというべきである。債権者は、時間帯をとわず債権者宅敷地に四〇デシベルを超える騒音を侵入させてはならないとの申立
てをしているが、午前六時(同時刻までに本件建物の営業が終了することについては争いがない。)から本件建物の営業が開始するまでの時間帯においては、債
権者に対する空調機による騒音害は発生しないし、本件建物の営業開始後午後一〇時までの時間帯は、一般的な睡眠時間でもなく、また債務者らの営業の自由も
一方では保護されるべきものであるから、本件建物の空調機から発生する騒音が認定のとおりのものであることを考慮しても、いまだ受忍限度を超えていると認
めることはできない。
(略)
2 カラオケ騒音について
前記認定のとおり、本件建物から発生するカラオケの音は、本件建物に設置されている空調機から発生する騒音のレベルを超えないこともあるが、ボリューム
等によっては、空調機の騒音を上回る騒音に達していることが認められる。そして、測定したのは一日であるものの、同様の状態は、ひんぱんにあり、とりわけ
週末は、平日に比べると営業を終了するのが遅くなるため、騒音が発生する時間も長くなっている。
右の事実からすれば、本件建物から発生するカラオケの音量は、四〇デシベルの基準を上回るものと認められる。そして、本件建物においては、カラオケの音
が外部に漏れないようになっているとは到底認められず、また、午後一一時以降翌日の午前六時までの間もその使用を許すのでは、債権者の受忍の限度を超えて
いると認められる。

