借地権の対抗要件
- Q&A【借地権の登記】
借地となっている土地の地主が土地(底地)を売却しました。
新たな土地所有者は借地人に対して明渡請求をできるのでしょうか。
- 借地の権利が「対抗要件」を備えている場合は明渡請求できません。
「借地」の内容が賃借権でも地上権でも,「登記」があれば新所有者が負けることになります。
<賃借権の場合>
法解釈の大原則では,「売買は賃貸借を破る」ということになっています。
そうすると次のようになります。
新所有者(買主)は,旧所有者の地位(賃貸人)を引き継がない→新所有者は賃借人を「不法占有者」とみなせる
しかし,「賃借権の登記」があれば「賃借権」が勝つことになります(民法605条)。
本来,賃借権は,法律的な性格(物権ではない)から,登記できる権利ではありません。
しかし,その重要性から,特別に「登記できる」と条文で特別措置が取られているのです。
<地上権の場合>
地上権と所有権は両方物権として「対抗関係」に立ちます。
登記を先に取得した方が勝つ,というルールになっています(民法177条)。
物権同士の場合,原則と例外,という複雑な構造ではなく,「登記で決める」という単純ルールなのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【土地賃借権の登記請求権】
私は借地をしていますが,「賃借権の登記」をしていません。
地主さんに登記をするようお願いすれば良いのでしょうか。
- 地主さんに賃借権登記をするよう請求する権利はありません。多分地主さ
んは断るでしょう。
賃借権は,特別措置として例外的に登記制度の仲間入りしました(民法605条)。
しかし,現実の場面において,地主が応じない限り登記はできません(共同申請主義)。
法律上,「登記請求権」がないのです。
実際にも,「賃借権の登記」というのは非常に特殊なレアケース以外ではお目にかかりません。
売買の場合,当たり前のように登記が行われますが,それとは別なのです。
<比較;売買の場合>
売買では,仮に売主が登記に応じなくても,「登記請求権」があるので,最悪判決をもらって強制的に登記することが可能です。
賃借権も登記できる,という優遇措置(民法605条)がありますが,結果的に優遇されたことにはならないのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【賃借権の登記の代用としての「建物登記」】
土地賃借権を保護する方法は賃借権登記以外にはないのでしょうか。
- 「建物」の登記があれば「賃借権の登記」と同じように保護されます。
借地借家法に救済措置があります(後掲)。
借地上の「建物」の登記,があれば,借地権は保護されるということになっています。
建物であれば,借地人自身の所有物ですので,地主とは関係なく単独で登記できます。
逆に,最低限建物の登記はしておかないとリスキー,ということができます。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【借地借家法】
10条1項(借地権の対抗力等)
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
- Q&A【建物登記は「表示登記」で足りる】
借地権保全のための建物の登記とは「所有権保存」のことでしょうか。
- 所有権(保存)の登記でも良いですが,「表示登記」だけでも大丈夫で
す。
所有権の登記はちょっと手間がかかります。
司法書士等に依頼する場合,その費用と,印紙代(登録免許税)がかかります。
その点,さらに救済措置として,「表示登記」でも借地権の保全(対抗要件)となるという判例があります(後掲)。
表示登記であれば,公的な費用はゼロです。
土地家屋調査士に依頼すれば手数料がかかりますが,所有権の登記よりも安いことが多いです。
また,法務局が職権で登記してくれることもあります。
建物の設計図,図面などを持って法務局に行けば,申請方法を教えてくれるはずです。
このようにして,借地権の対抗要件,は簡略化の歴史をたどったのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【最高裁判所 昭和50年2月13日(要旨)】
借地人が借地上に自己を所有者と記載した表示の登記のある建物を所有する場合は、建物保護に関する法律一条にいう登記したる建物を有するときにあたる。
※建物保護に関する法律1条,とは,現在の借地借家法10条1項と同じ内容です。
- Q&A【地上権でも「建物の登記」で足りる】
地上権については「地上権」そのものの「登記請求権」があります。
その場合でも救済措置としての「建物の登記」の条文が適用されるのですか。
- 実務上,適用されると考えられています。
確かに,ズバリ土地の登記に,「地上権登記」を行えば済むと言えます。
賃借権と違って「登記請求権」があります。
最悪でも判決を得て,借地人サイドで単独申請が可能です。
しかし,結論としては,賃借権と同様に,「建物の登記」での代用が効きます。
理由としては,借地借家法10条1項には「賃借権」という制限がありません。
文言解釈として,地上権も含まれるとしか考えられません。
また,「地上権者が地主に対して『地上権設定登記請求訴訟』を提起する」というのも非現実的である,という見解が強いです。
売買という取引とは違って,借地は長年の付き合いが前提です。
極力「対立,衝突しなくて済むように」という配慮があるのです。
結局,最初に規定された民法605条の「賃借権の登記」はほぼ誰も使いません。
幻のような存在と化しています。
→代表弁護士三平聡史のブログ

借地借家法の適用(土地賃貸借)
- Q&A【借地借家法の適用(土地賃貸借)】
借地借家法の適用がない土地賃貸借というのはあるのでしょうか。
その場合どのような違いがあるのですか。
- 「建物所有目的」の土地賃貸借は借地借家法が適用されるのが原則です。
ただし,例外として適用されない場合もあります。
適用されない場合,借地借家法による借主保護のルールが適用になりません。
まず前提として,土地賃貸借のうち,「建物所有目的」のものが借地借家法の対象となります(借地借家法2条1号)。
目的となる「建物」は,居住用・事業用ともに含みます。
借地借家法では,借主(賃借人)保護のルールが規定されています。
「建物所有目的」ではない場合は借地借家法の適用はありません。
<建物所有ではない典型例>
・駐車場
・資材置き場
・太陽光発電のパネル設置場所
・風力発電の風車設置場所
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [借地借家法]
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 借地権 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。
(略)
- Q&A【借地借家法による保護】
借地借家法の借主保護とはどのようなものでしょうか。
- 存続期間のルール,更新拒絶の制限,建物買取請求権などです。
契約期間(存続期間)が30年や20年以上と長めに設定されています(借地借家法3条,4条)。
また,期間が満了しても,実質的に「原則更新される」ことになっています。
具体的には,「更新拒絶」について,明渡料支払を含め,「正当事由」がない限り無効とされているのです(借地借家法6条)。
さらに,借地契約が終了する段階でも,借地人が建てた建物を地主が買い取ることを強制する「建物買取請求権」も,借地人の保護の一環として規定されていま
す(借地借家法13条)。
要は,一旦「借地」(借地借家法の適用を受ける)として発生してしまうと,土地は半永久的に戻ってこない,戻ってくるとしても,相当額の明渡料を払う必要
がある,というのが実情です。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【強行法規性】
土地賃貸借において,地主と賃借人で,「借地借家法は適用しない」と約束すれば適用されないのでしょうか。
- 借地借家法の適用を排除する当事者の合意は無効です。
借地借家法は,当事者の合意によって,借地人に不利な方向には変更できないことになっています(借地借家法9条,16条,21条)。
これを「強行法規(性)」と呼んでいます。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【借地借家法の適用除外】
どのような場合に,借地借家法が適用されないことになるのですか。
- 「建物所有目的」ではない,一時使用目的,定期借地などの場合,借地借
家法は適用されません。
土地賃貸借ではあるけれど,借地借家法が適用されない,という例外的なケースがあります。
正確には,借地借家法のすべてか,一部が適用されない,ということになります。
いずれのケースも,借地人保護のうち,非常に強い「更新拒絶の制限」は適用されません。
<借地借家法が適用されない場面>
・「建物所有目的」ではない(借地借家法2条1号)
駐車場や資材置き場が典型例です。
・賃料の支払がない
賃貸借契約ではなく使用貸借契約となります。
・定期借地契約(借地借家法22~24条)
定期借地契約の中で3タイプがあります。
・一時使用目的賃貸借(借地借家法25条)
なお,以前は,「借地借家法の適用を受けない」というニーズを満たすために,これらの例外に該当する工夫をしたり,それを否定する争いが絶えませんでし
た。
しかし,平成12年の借地借家法改正により,定期借地という制度が創設され,「無駄な争い」は根絶するに至りました。
ただ,契約に不備があるために,紛争に至るケースは,現在でもまだあります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【民法上の賃貸借契約の「期間」制限】
「借地」とならない場合は,契約期間は自由に設定できるのでしょうか。
- 最大で20年,となります。
借地借家法の適用を受けない賃貸借契約の場合,「30年以上」などの借地としてのルールは適用されません。
しかし,民法による期間制限は適用されます。
民法上,賃貸借契約は最長で20年とされています(民法604条)。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [民法]
(賃貸借の存続期間)
第六百四条 賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。
- Q&A【民法上の解約申し入れ】
「借地」とならない土地賃貸借の場合,期間を決めないとどうなりますか。
- 期間の定めのない賃貸借は,解約申し入れによって契約が終了します。
賃貸借契約で,期間を決めておかない,ということは認められます。
その場合,オーナー・賃借人のいずれかから,「解約申し入れ」をすることができます。
そして,「解約申し入れの通知」の後,土地ならば1年後(建物は3か月後)に契約が終了することになります(民法617条1項)。
なお,契約において,解約申し入れ期間を設定しておけば,その約定(特約)の方が優先となります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [民法]
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条
当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解
約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 一年
二 建物の賃貸借 三箇月
(略)

建物所有目的
- Q&A【建物の種類】
どんな建物が目的となっていても借地となるのですか。
- 居住用,事業用に関係なく「建物」の所有目的であれば,借地借家法の適用対象です。
居住用の建物は当然として,事業用の建物でも,「建物所有目的」の対象となります。
例えば,店舗・事務所・工場・倉庫などについても,「建物所有目的」に含まれることになります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【建物所有目的】
建物が建っている土地の賃貸借であれば,「借地」となるのでしょうか。
- 「建物所有」が主たる目的ではなく,従たる目的に過ぎない場合は,借地
借家法の適用はありません。
賃貸借の対象土地に,建物が建っていたとしても,それは付随的なものに過ぎない,という場合は,「建物所有目的」にはあたりません。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [最高裁判所第3小法廷昭和42年(オ)第293号建物収去土地明渡請求事件昭和42年12月5日(抜粋)]
借地法一条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」、とは、借地人の借地使用の主たる目的がその地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借
地人がその地上に建物を築造し、所有しようとする場合であつても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、右に該当しない
と解するのが相当である。
- Q&A【主たる目的の判断】
建物はあるけれど借地とならないのはどのような場合でしょうか。
- 判例などで,敷地の一部に建物がある業種について判断されています。
個別的な事情を元に,建物と事業全体の関係を詳細に検討しています。
当然,賃貸借の対象土地全体に占める建物敷地の面積割合が重要です。
しかし,それだけではなく,実際の使用形態を元に,主たる目的が事業自体なのか,それとも,建物所有も含むのか,ということを判断しています。
判例で判断されたものなどをまとめると次のとおりです。
<建物所有目的ではないと認められた例>
・バッティングセンター
・ゴルフ練習場(判例後掲)
・中古車販売店舗
<建物所有目的として認められた例>
・自動車教習所(判例後掲)
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [最高裁判所第3小法廷昭和42年(オ)第293号建物収去土地明渡請求事件昭和42年12月5日(抜粋)]
その目的は当事者間に争いがないように右土地をゴルフ練習場といて使用することにあつたというのであるから、これを社会の通念に照らして考えれば、その主
たる目的は、反対の特約がある等特段の事情のないかぎり、右土地自体をゴルフ練習場として直接利用することにあつたと解すべきであつて、たとえその借地人
たる被上告人Aが当初から右土地上に業としてゴルフ練習場を経営するのに必要な原判決判示のような事務所用等の建物を築造・所有することを計画していたと
しても、それは右土地自体をゴルフ練習場に利用するための従たる目的にすぎなかつたものといわなければならない。
- [最高裁判所第2小法廷昭和57年(オ)第361号建物収去土地明渡請求事件昭和58年9月9日(抜粋)]
右敷地面積の本件土地全体に対する割合は四・五パーセントである、というのである。
右事実関係のもとにおいては、契約当事者は単に自動車運転教習コースのみならず、自動車学校経営に必要な建物所有をも主たる目的として本件賃貸借契約を締
結したことが明らかであり、かつ、自動車学校の運営上、運転技術の実地練習のための教習コースとして相当規模の土地が必要であると同時に、交通法規等を教
習するための校舎、事務室等の建物が不可欠であり、その両者が一体となつてはじめて自動車学校経営の目的を達しうるのであるから、自動車学校経営のための
本件賃貸借は借地法一条にいわゆる建物の所有を目的とするものにあたり、本件土地全体について借地法の適用があるとした原審の判断は、正当として是認する
ことができ、原判決に所論の違法はない。

一時使用目的土地賃貸借
- Q&A【一時使用目的賃貸借】
自動車展示場として土地を3年契約で貸しました。
賃借人が簡易な事務所を建てています。
借地として契約期間は30年となってしまうのでしょうか。
- 「一時使用目的」として借地扱いにならない→3年契約として有効,と思われます。
土地の賃貸借契約の目的が「一時使用の目的」であることが明確であれば,借地借家法の適用はありません(借地借家法25条(借地法9条))。
つまり「借地」ということにはなりません。
そうすると,最低期間制限(30年)も適用になりません。
契約書で「3年」なら「3年間の契約」として有効となります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [借地借家法]
(一時使用目的の借地権)
第二十五条 第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。 - [借地法]
第9条 第2条乃至前条ノ規定ハ臨時設備其ノ他一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合ニハ之ヲ適用セス
- Q&A【一時使用目的の判断基準】
どのような場合に「一時使用目的」となるのでしょうか。契約書に「一時使用目的」と書いておけば良いのでしょうか。
- 「客観的」+「合理的」な理由が必要です。
借地借家法は,借主保護のための法律です。
仮に契約書の記載で簡単に「適用を排除」できるとすると,「適用排除」とする契約(書)が流行ってしまいましょう。
それでは意味がないので,借地借家法は契約(合意)で排除できないのが原則,とされています(強行法規性)。
つまり「一時使用目的」という目的がハッキリしている場合だけ,そのルールが適用されるのです。
<一時使用目的の適用条件>
短期間に限り賃貸借を存続させる,という合意について客観的・合理的な理由が存在する
<判断要素の例>
・土地の利用目的
・地上建物の種類、設備、構造
・賃貸期間
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [最高裁判所第1小法廷昭和42年(オ)第666号請求異議事件昭和43年3月28日(抜粋)]
その目的とされた土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等、諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意
が成立したと認められる客観的合理的な理由が存する場合にかぎり、右賃貸借が借地法九条にいう一時使用の賃貸借に該当するものと解すべく、(略)
- Q&A【臨時設備・仮設建物所有に目的を限定したケース】
暫定的な建物が存在する場合,借地と扱われてしまうのでしょうか。
- 背景事情等から,暫定的・一時的な建物,ということが分かる状態であれば,一時使用目的賃貸借となりましょう。
判例では,「医学就業中」限定という前提で土地を貸したケースについて,一時使用目的と認めたものがあります。
この事例においては,期間を3年としており,実際には更新や賃料(地代)増額もなされていました。
更新や賃料増額は,「契約期間を長期化する意図」があるという認定につながる方向です。
しかし,更新や賃料増額は一時使用目的を否定することにはならないと判断されました。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [最高裁判所第3小法廷昭和35年(オ)第1066号家屋収去土地明渡請求事件昭和37年2月6日(抜粋)]
而して、原審確定の右事実関係の下においては、被上告人の長男が医学修業中であり、卒業後本件土地にて医家の業務を開始することを予定して居つたので、
地主であり、賃貸人である被上告人が、このことを考慮し、賃貸借の期間を右医業開始確定の時までとするため、本件土地上に建築せらるべき建物を戦災復旧用
建坪一五坪のバラック住宅と限定し、特に条件を一時使用とする旨を契約書に明記してなされた本件土地の賃貸借契約は、たとえ右医家開業の時期が明確に定つ
て居らなかつたため、一応、賃貸借期間を三年と定め、その後医業開始に至らなかつたので、その期間を更新し或はその間に賃料を増額した事迹があつたとして
も、これを一時使用のためのものとなすに妨げない。
- Q&A【土地・建物売却時のリースバック】
土地を売却したば,そこに取り壊し予定の建物があり,旧所有者が使っているようなケースでは,「借地」となってしまうのでしょうか。
- 一時使用目的賃貸借,と認められると思われます。
土地の売買契約後,実際に買主が土地を利用するまでにタイムラグがある,というケースもあります。
例えば,土地上に古い建物があり,取り壊しまでの一定期間だけ売主が住んでいる,という場合です。
このような場合,土地の売買契約は先行させ,その後一定期間は,買主が売主に「土地を貸す」ということが行われます。
売却とは逆方向に賃貸借が行われるので「リースバック」と呼ぶことがあります。
この賃貸借契約により,売主が所有する建物の占有権原を確保することになります。
実際に,同様のケースで,判例では,建物が取り壊し予定となっていることを重視し,このリースバックについて,一時使用目的であることを認定しました。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【土地が長期利用不可能というケース】
区画整理の対象地であるため,土地を長期間利用することはできません。
そこで,換地までの間限定で,土地を貸した場合,後から「借地」となってしまいますか。
- 「長期間の利用が不可能」→一時使用目的が明白,と考えられるでしょう。
区画整理など,公的なプロジェクトにより,長期間の利用が不可能であることが明白な土地があります。
このような場合は,その土地を賃貸しても,客観的に「長期間の利用は想定されていない」ということが明らかです。
原則として,「一時使用目的賃貸借」となります。
しかし一方,区画整理の具体的な内容によっては,土地の位置・形状が大幅には変わらないということもあります。
その場合,土地の賃貸借について「区画整理後も賃貸借が継続する」ということも想定できます。
そこで,一時使用目的とは認められず,その結果,借地として扱われる可能性もあります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [最高裁判所第1小法廷昭和30年(オ)第297号建物収去土地明渡請求事件昭和32年2月7日(抜粋)]
原判決は、訴外Aと被上告人との間の判示旧宅地の賃貸借は一時使用を目的とするものであることを認め、右賃貸借は、昭和二三年六月二三日右土地につき換地
予定地の指定通知がなされると同時に終了したものであり、従つて上告人が本件建物を競落した昭和二五年九月一二日当時、訴外Aは右土地の換地である本件土
地について借地権を有しなかつたものであることを認定し、また、右建物の競売手続において、建物の敷地について借地権あるものとして手続が進行せられたも
のであることを認むベき証拠はなく、建物の売買取引において特に取毀ち売却する旨の条件なきときは常に必ず敷地使用権あるものとして売却せられたものと認
むべき根拠もない旨を判示した。原審の右判断は、その挙示の証拠に照らし、これを是認することができる。
- Q&A【地主側に具体的土地利用計画があるケース】
地主としては,一定期間後に土地を自分で使用する計画があります。
そこで,短期間だけ土地を賃貸した場合,後から「借地」という扱いになるリスクはありませんか。
- 土地利用契約が具体化してあり,図面その他の資料で明らかであれば,一時使用目的ということは否定されないでしょう。
判例の理論では,短期間限定,ということが「客観的」であることが要求されています。
「地主側の計画」である場合は,これが具体化していて,かつ,賃借人も了解していることがポイントです。
逆に,賃借人が地主側の計画を知らなかった場合は,一時使用目的が認められないこともあります(最判昭和36年7月6日)。
要は,借地人サイドから見ると「後付けで利用計画を作った」ということになってしまうからです。
このようなケースにおいては,賃貸借契約締結当初より,一定期間後の土地利用計画を地主から賃借人に十分に説明し,かつ,賃貸借契約書にも,契約の概要を記載しておくとベストです。
このように,地主・賃借人が認識を共通にしていることが証拠になっていると,後から「知らない」などという見解の割れを防げるのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【裁判上の和解による賃貸借のケース(肯定)】
裁判で争った結果として,期間限定で土地を貸すことになりました。
この場合,一時使用目的と認められるのですよね。
- 裁判上の和解であれば「一時使用目的」と認められる可能性が高いでしょう。
裁判上の和解は,裁判官が関与して条項を作成し,調書として完成します。
つまり,裁判官が内容をチェックしているのです。
ここで,短期間限定の賃貸借として成立させた以上,後から新たに起こされた裁判で「短期間限定」という部分が否定されることは通常ないと言えます。
考えてみれば当然でしょう。
裁判官が「短期間限定」として認めた判断を,事後的に別の裁判官が覆すのは整合性が悪いので。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [最高裁判所第1小法廷昭和42年(オ)第666号請求異議事件昭和43年3月28日(抜粋)]
本件賃貸借は被上告人の上告人に対する建物収去土地明渡請求事件についての裁判上の和解において成立したというのであり、また、右賃貸借において期間が一
〇年と定められたのは、被上告人が右期間内に限り右土地を賃貸し、上告人がその期間内に限り、右土地を賃借し、その期間経過とともに地上建物を収去して土
地を明渡すことを約したに基づくということを認めるに難くなく、右の事実、および本件賃貸借成立にいたる経緯に照らせば、本件和解当事者である上告人と被
上告人は、期間の点につき借地法の規定の適用を受くべき契約を締結する意思がなかつたものと認め得るのである。しからば、本件賃貸借は一時使用のものであ
つたというべく(略)
- Q&A【裁判上の和解による賃貸借のケース(否定)】
裁判上の和解で土地の賃貸借を決めておけば,後から「借地」とされることは一切ないのでしょうか。
- 裁判上の和解による一時使用目的賃貸借が,後から別の裁判で覆された例があります。
この判例で,一時使用目的を否定した決め手は「期間が長い」ということです。
契約期間が22年とされていたのです。
さすがに長いので「短期間限定」という意図は見えない,と判断されたのです。
一般論として,裁判上の和解内容の効力が,事後的に否定されるということはレアケースです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [最高裁判所第3小法廷昭和44年(オ)第1141号請求異議事件昭和45年7月21日(抜粋)]
土地の賃貸借が借地法九条にいう一時使用の賃貸借に該当し、同法一一条の適用が排除されるものというためには、その対象とされた土地の利用目的、地上建物
の種類、設備、構造、賃貸期間等諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に、短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的理由が
存することを要するものである。そして、その期間が短期というのは、借地上に建物を所有する通常の場合を基準として、特にその期間が短かいことを意味する
ものにほかならないから、その期間は、少なくとも借地法自体が定める借地権の存続期間よりは相当短かいものにかぎられるものというべく、これが右存続期間
に達するような長期のものは、到底一時使用の賃貸借とはいえないものと解すべきである。けだし、本来借地法の認めるような長期間の賃貸借を、右にいう一時
使用の賃貸借として、同法一一条の規定を排除しうべきものとするならば、その存続期間においては同法の保護に値する借地権において、更新その他個々の強行
規定の適用を事前の合意により排除しうる結果となり、同法一一条の適用を不当に免れるおそれなしとしないからである。
したがつて、本件のように、賃貸借期間が二〇年と定められた場合においては、それが裁判上の和解によつて定められたとか、右契約締結前後の事情いかんな
どは、賃貸借期間満了の際、更新拒絶の正当事由があるか否かの判断にあたり、その一資料として考慮するのは格別、それらの事情のみから、右賃貸借を一時使
用のためのものと断ずることはできない。
- Q&A【当事者の強い合意による一時使用目的】
地主も賃借人も,借地借家法の適用は絶対に主張しないという前提で賃貸借契約を締結しました。
この場合,一時使用目的,として借地借家法の適用を排除できるのでしょうか。
- 当事者の合意,がいかに強くても,意思だけでは「一時使用目的」とは認められません。
実際に,契約書に「一時使用目的」ということが明記されているけれど,現実的な「短期限定の必要性・特殊性」が一切ない,というケースがあります。
このような場合は,短期限定という客観的・合理的理由がない,ということになり,一時使用目的とは認められません。
契約開始当時は,地主・賃借人ともに意向は合致しているのでトラブルになることはないでしょう。
しかし,長期間が経過し,気持ちが変わってきたり,また,相続により当事者に変更が生じると,「借地権の主張」が不意に飛び出すこともあります。
土地の賃貸借があり,賃借人が土地上に建物を建てる,という場合は,十分に慎重に契約内容・契約書の確認・検討を行っておくべきです。
具体的には,現在は,定期借地契約,が整備されています。
この方式で契約すれば,後から解釈が割れるリスクを避けることができます。
逆に「一時使用目的賃貸借」は,利用する場面が一挙に減っています。
→代表弁護士三平聡史のブログ

借地と使用貸借
- Q&A【借地と使用貸借】
親子で土地の貸し借りをしていますが,地代などの支払はありません。借地になってしまうのですか。
- 「賃料」がない場合は,使用貸借契約となります。借地借家法の適用はありません。
借地借家法は,「賃貸借契約」(と地上権)が対象です。
賃料の支払がない場合は,「使用貸借契約」となります。
従って,借地借家法の適用はないことになります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【通常の必要費】
土地を兄に貸しています。「地代」という形ではもらっていませんが,固定資産税分を払ってもらっています。「賃料」として借地になってしまうのですか。
- 使用貸借契約の範囲内でしょう。
「使用貸借契約」は,「使用対価」の支払がない契約です。
では,固定資産税分の支払があれば,「使用対価」となって,使用貸借ではない(賃貸借契約である)のでしょうか。
このような「維持費」に類する負担は,「通常の必要費」として,使用貸借契約でも支払われることが予定されています(民法583条1項)。
ただし,「通常の必要費」については,固定資産税額のことである,という明文規定があるわけではありません。
他の事情によっては,「賃料」として賃貸借契約と認められる可能性がないわけではありません。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- [民法]
(借用物の費用の負担)
第五百九十五条 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
(略)
- Q&A【「賃料」の名目】
土地を貸しています。「地代」「賃料」とかではなく「お礼」として毎月一定の金額を受け取っています。賃貸借契約にはならないですよね。
- 受け取っている金銭の名目だけでは判断できません。
借地借家法の適用を逃れるために,「地代」「賃料」という名目を避ける方法が以前はよくみられました。
確かに「地代」「賃料」という名目であると,賃貸借契約と認められる1つの要素となります。
しかし,金銭支払の名目で賃貸借契約かどうか,つまり借地借家法の適用を受けるかどうかを判断するわけではありません。
その金額や経緯によって判断することになります。
「経緯」としては,次のような場合が「賃料」ではない(=賃貸借契約ではない=使用貸借契約である)と認められる典型例です。
<「賃料」ではないと判断される例>
元々親戚同士で土地を貸し借りしていた
対価を現金で支払うことはなく,お礼としてお歳暮・お中元が贈られていた
時代の流れとともに,商品ではなく商品券が贈られるようになった
最近では,現金が支払われるようになった
→代表弁護士三平聡史のブログ

地代 相場
- Q&A
地代の相場はどのくらいなのでしょうか。
- 平均的なところは,固定資産税(都市計画税)の3~4倍,くらいが目安
です。
あくまでも目安です。個別的な事情で大きく異なることもあります。
通常,地代が問題になるのは,以前からの借地でこれを変更するような場面です。
新たに借地を始める(借地権の設定とか言います)場合は,当事者間で決まるので問題になりません。
つまり,どちらかがイヤなら契約しない,ということになります。
このような,自由設定の賃料を「新規賃料」と呼び,以前からの借地については「継続賃料」と呼んでいます。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A
「継続賃料」について,どのような事情が考慮されるのでしょうか。
- 土地の租税の増減,土地価格の変動その他経済事情の変動,近隣の地代の
変動などです。
これらは借地借家法11条1項に規定されています。
一方,「不動産鑑定基準」では「契約の内容及び契約締結の経緯」,「賃料改定の経緯」が判断要素とされています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A
「継続賃料」の算定方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
- 差額分配法,利回り法,賃貸事例比較法,スライド法,土地残余法などが
あります。
非常に専門的な算定方法です。
なお,最後の1個は「鑑定評価基準」にはありません。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A
実際に,地代が争いになった場合,どのように金額が決まることになりますか。
- 協議で決まらない場合,裁判所が不動産鑑定士の出した評価額を元に決め
ることもあります。
最初に協議を行います。
規模が大きい場合は,双方が不動産鑑定士に鑑定(評価)を依頼して,その評価額を元に交渉することもあります。
協議でまとまらなければ,裁判所に申立をします。賃料増額請求や減額請求という形です。
賃料を決めるだけですので,ノーマルの訴訟と区別して「借地非訟」というカテゴリーに入ります。
裁判所では,中立の不動産鑑定士を選任して鑑定(評価)をしてもらい,これを参考に判断することになります。
実際には,そこまで行わずに,和解がまとまることも少なくありません。
また,判決だとしても,不動産鑑定士の評価をそのまま使わないこともあります。
その意味で「読みにくい」部分が多いと言えます。
このような事情もあって,固定資産税との比較による簡易な方法をベースに和解に至ることも多いのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A
地代相場からぶれる例はありますか。
- あります。個別的な事情で大きく「相場」からずれることがあります。
具体的には,「権利金の授受がない」「更新料の授受がない」というような事情が典型例です。
地代が,固定資産税・都市計画税の5~6倍となっている実例もみかけます。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A
権利金と地代はリンクしてくるのですか。
- 関係します。
権利金は,最近では授受があるのが通常です。
これがない場合,その分地代を高めにする,という考えになります。
ここはむしろ税務的な面が先行しています。
例えば親子間で土地を貸し借りしている場合で説明します。
土地が親所有,建物は子所有です。
毎月の地代を払っていながら権利金の支払がない,ということになると,「本来払うべき権利金を免除(贈与)してもらった」ということで,贈与したとみなさ
れて贈与税が課税されることがあります。
「権利金の認定課税」と言われるやり方です。
ただ,通常よりも地代が高いならば,「権利金の支払いがないのは当然」として「認定課税」はされません。
この「通常よりも高い地代」は,通達で「更地価格の約年6%」とされています。
賃料増減額請求権
- Q&A【賃料増減額請求】
※建物賃貸借・土地賃貸借で基本的に共通です。
私(家主(地主))が,家賃(地代)を上げたいと考えているけど,賃借人(借地人)が断固拒否しています。
どう考えても相場から低い家賃なので上げるべきだと思っています。
家賃を上げるべきかどうか,どのように考えるべきでしょうか。
- A 社会・経済事情の変動を広く考慮して増額すべきかどうかを判断します。
賃料を増額すべきかどうかの理論は科学的(法律的)に決まっています。
借地借家法11条(借地の場合),32条(借家の場合)に規定されています。
賃料増減額についてまとめると次のようになります。
<賃料増減額の判断要素>
1 不動産に対する租税その他の負担の増減
→公租公課,維持修繕費などの必要経費の変動
2 不動産の価格(評価額)の上昇若しくは低下
→客観的な対象不動産の評価額の変動(「賃料は不動産の『利回り』」という考え方)
3 その他の経済事情の変動
→物価指数,国民所得,賃金指数などの統計的データとのバランス
4 近傍同種の不動産賃料に比較して不相当となったとき
→近隣の「賃料相場」とのバランス
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【借地借家法11条(地代等増減請求権)】
1 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下
その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の
額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2
地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払う
ことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付し
てこれを支払わなければならない。
3
地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を
請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合
による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
- 【借地借家法32条(借賃増減請求権)】
1 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又
は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができ
る。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2
建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃
を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利
息を付してこれを支払わなければならない。
3
建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃
の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に
年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
- Q&A【継続賃料の鑑定】
具体的に,適正な賃料を算定するにはどうしたら良いのでしょうか。
- A 算定は容易ではありません。
正確に算定する場合は,不動産鑑定士による「鑑定評価」が必要となります。
借地借家法で定められている4つの要素について計算するのは単純ではありません。
不動産鑑定士が「継続賃料の鑑定」として評価(計算)する,というのが最も正式・正確です。
不動産鑑定士の鑑定では,「不動産鑑定理論」に基いた科学的な考察,算定がなされます。
しかし,当然ながら,計算上「主観要素」が入ります。
実際に,鑑定する不動産鑑定士によって結果が異なることは多いです。
現実的に,「継続賃料の鑑定」については,あまり扱っていない不動産鑑定士がほとんどです。
信頼できる不動産鑑定士に依頼することがポイントです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【継続賃料の簡易的算定】
適正な賃料について,不動産鑑定士に頼まなくても概算で計算できないでしょうか。
- A 概算であれば,「物価スライド方式」に近い算定方法で計算できます。
<簡易算定方法>
適正賃料(概算) = 直近の賃料設定(初回or増減額時) × その後の物価変動率
なお,「物価変動率」についても,より簡易に,対象不動産の固定資産税評価額の変動率を用いたり,路線価の変動率を用いることも便利です。
ただし,これはあくまでも,正式・正確な算定方法ではありません。
「簡易」「概算」「目安」という性質の算定方法です。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【物価スライド方式の特約】
賃貸借契約書に,最初から,「賃料は物価スライド方式で変動する」という約束を入れておけば賃料の増減額が明確になるのではないですか。
- A 非常に便利で公平だと思えます。
しかし,物価スライド方式の特約が「無効」とされるリスクもあります。
物価スライド方式は,客観的なデータを元に賃料を算定するというものです。
これ自体は,無用な主張の齟齬を防ぎ,主観を入れない科学的計算なので公平・公正だと思えます。
さらに,借地借家法に規定される「4要件で計算するべき」というのは強行法規ではありません(借地借家法16条,37条(強行法規)で,11条,32条は
除外されている)。
※強行法規=「法律上の規定を特約で排除できない」というルール
ただし,「不合理な程度が著しい」という極端な例では「公序良俗違反」(民法90条)などの一般的なルールにより無効とされる可能性があります。
裁判例でも,物価スライド方式の有効性が争われた例はありますが,概ね「有効」とされています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【賃料自動改定特約の有効性】
賃料の変動についての特約が無効とされる例はどのようなものでしょうか。
- A 増額の幅が大きいケース,増額があっても減額はないケースなどが無効とされる典型例です。
最高裁の判例を2つ挙げておきます。
<ケース1 最高裁平成15年6月12日(後掲)>
・当初の地代=更地評価額の8%相当額(高い)
・特約=「但し,本賃料は3年毎に見直すこととし,第1回目の見直し時は当初賃料の15%増,次回以降は3年毎に10%増額する。」
↓
この特約は無効であり,結果として,賃借人は「賃料減額請求」が可能
<ケース2 最高裁平成16年6月29日(後掲)>
・特約=「3年ごとに賃料の改定を行うものとし,改定後の賃料は,従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ,公租公課の増減額を加算又は控除した額とす
るが,消費者物価指数が下降したとしても,それに応じて賃料の減額をすることはない」
↓
この特約は無効であり,結果として,賃借人は「賃料減額請求」が可能
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【最高裁判所第1小法廷平成14年(受)第689号土地賃料改定請求事件平成15年6月12日(抜粋)】
(4) これを本件についてみると,本件各土地の地代がもともと本件各土地の価格の8%相当額の12分の1として定められたこと,また,本件賃貸借契約
が締結された昭和62年7月当時は,いわゆるバブル経済の崩壊前であって,本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていたことを併
せて考えると,土地の価格が将来的にも大幅な上昇を続けると見込まれるような経済情勢の下で,時の経過に従って地代の額が上昇していくことを前提として,
3年ごとに地代を10%増額するなどの内容を定めた本件増額特約は,そのような経済情勢の下においては,相当な地代改定基準を定めたものとして,その効力
を否定することはできない。しかし,土地の価格の動向が下落に転じた後の時点においては,上記の地代改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失
われることにより,本件増額特約によって地代の額を定めることは,借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなったというべきである。し
たがって,土地の価格の動向が既に下落に転じ,当初の半額以下になった平成9年7月1日の時点においては,本件増額特約の適用を争う上告人は,もはや同特
約に拘束されず,これを適用して地代増額の効果が生じたということはできない。また,このような事情の下では,同年12月24日の時点において,上告人
は,借地借家法11条1項に基づく地代減額請求権を行使することに妨げはないものというべきである。
- 【最高裁判所第3小法廷平成15年(受)第751号地代減額確認請求事件平成16年6月29日 (抜粋)】
本件各賃貸借契約の当事者は,本件特約が存することにより上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使を妨げられるものではないと解すべきである

賃料増減額請求(手続き)
- Q&A【調停前置主義】
家賃の増額について,賃借人と話し合いが付きません。
どうしたら良いでしょうか。
- A 賃料増額請求の調停を申し立てます。仮に調停で決裂した場合は訴訟を提起することができます。
賃料増額請求については,協議が整わない場合に,すぐに訴訟を提起することはできません。
まずは調停を申し立てることになっています。
これを「調停前置主義」と呼んでいます(民事調停法24条の2第1項)。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【民事調停法24条の2(地代借賃増減請求事件の調停の前置)】
1 借地借家法 (平成三年法律第九十号)第十一条 の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条
の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。
2
前項の事件について調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、受訴裁判所は、その事件を調停に付さなければならない。ただし、受訴裁判所が事
件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
- Q&A【賃料増減額の調停】
賃料増減額を求めて申し立てた調停はどのように進みますか。
- A 当事者双方が従前の経緯を説明し,また資料を提出し,調停委員が「仲介役」となって協議が進みます。
調停委員として2名が選任され,協議の「仲介」をしてくれます。
適切な資料の提出を促したり,事情を聴取したりします。
これで当事者が合意に至れば,調停成立となります。
調停調書に結果を記録して終了となります。
逆に,調停は,当事者の合意がないと成立しません。
調停委員は,当事者に説明・説得することはありましょう。
しかし,強制的(一方的)に見解を押し付けることはできません。
これは判決との違いです。
とにかく,当事者双方が合意しないと調停は不調となり,終了します。
いわゆる決裂のことです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【賃料増減額請求訴訟】
賃料増減額の調停が成立しなかった場合はどうしたら良いでしょうか。
- A 賃料増減額の訴訟を提起します。
調停が不調となった場合は,訴訟(正式裁判)を提起できます。
訴訟の場合,各当事者は,資料(証拠)を提出し,きちんとした説明(主張)を行います。
裁判所としては,提出された証拠を元に判断します。
その上で,最終的には「判決」として正式な判断を下します。
実際には,裁判官が当事者に説明・説得し,合意(和解)が成立することも多いです。
いずれにせよ,「協議がまとまらないから何も結論が出ない」ということはありません。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【賃料増額請求手続中の暫定措置】
オーナーから増額請求をされています。
賃借人が応じず,調停・訴訟となりました。
調停・訴訟中は以前の賃料を払っていて良いのでしょうか。
- A 従来の賃料でも大丈夫です。
賃料増額請求訴訟の判決が確定するまでは,「増額」が認められるかどうか不明です。
そこで,増額請求を受けている(確定していない)間は,「適当と認める額」を支払えば良い,と規定されています(借地借家法11条2項,32条2項)。
ただ,事後的に確定した賃料が,「適当と認めて実際に支払っていた金額」よりも高かった場合は,結果的に「不足していた」ことになります。
不足額を払わなくてはならないのは当然として,追加でペナルティを払う必要があります。
不足額に追加されるペナルティは,「不足額に年1割で計算した利息」となっています。
なお,調停や和解が成立した場合は,この「不足額の処理」まで決めているはずです。
不足額が単独で問題になることはありません。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【借地借家法11条2項】
地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うこ
とをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付して
これを支払わなければならない。
【借地借家法32条2項】
建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を
支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息
を付してこれを支払わなければならない。
- Q&A【賃料減額請求手続中の暫定措置】
賃借人から賃料減額請求をしています。オーナーが応じず,調停・訴訟が進んでいます。この間に賃借人が支払う賃料額は減額した金額で良いのでしょうか。
- A 従前の金額(減額しない金額)を払う必要があります。
賃料減額請求訴訟の判決が確定するまでは,「減額」が認められるかどうか不明です。
そこで,減額が判決で確定するまでの間は,オーナーは「適当と認める額」を「請求できる」ことになっています(借地借家法11条3項,32条3項)。
ただ,事後的に確定した賃料が,「適当と認めて実際に支払っていた金額」よりも低かった場合は,結果的に「オーナーがもらい過ぎていた」ことになります。
超過分を返還しなくてはならないのは当然として,追加でペナルティを払う必要があります。
返還金に追加されるペナルティは,「超過額に年1割で計算した利息」となっています。
なお,調停・和解が成立した場合は,その中で「超過額の処理」も取り決めがされているはずです。
超過額が単独で問題になることはありません。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【借地借家法11条3項】
地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請
求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合に
よる受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
【借地借家法32条3項】
建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の
支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年
一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
- Q&A【誤った法解釈により賃貸借契約が解除されたケース】
賃料減額請求の調停・訴訟中に,賃借人が自ら適当と思う「減額後の金額(賃料)」を払っていました。
どうなりますか。
- A オーナーから賃貸借契約の解除をされるリスクがあります。
賃料減額請求をされ,最終的に判決が確定するまでの間は,オーナーの請求額,を支払う必要があります。
たまに,法律の解釈を誤って,「減額後の賃料額」しか払わないというケースがあります。
その場合,一般的な「賃料の(一部)不払」となります。
従って,その程度によっては,賃貸借契約の解除,をされてしまいます。
実際に,相談を受けた弁護士が誤ったアドヴァイスをしたために賃貸借契約の解除が認められ,弁護士の責任問題となったというニュースがありました(大阪地
方裁判所 平成19年(ワ)第7730号;和解で終了している)。
→代表弁護士三平聡史のブログ

権利金
- Q&A
Q 権利金とは何ですか。
- A 土地の賃貸借契約を締結する際,賃借人が賃貸人(地主)に払う金銭のことです。
趣旨としては,借地権を設定する対価,とか,地代の前払いという性格などと言われています。
法的には,賃貸借契約の終了時に地主が賃借人に返還する義務はありません。
- Q&A
明渡料は権利金の返還とは違うのですか。
- A 理論としては別物です。
一般に,借地の明渡においては,明渡料として多額の金銭が支払われることが多いです。
これは「借地権の価格」がベースとされています(別の考え方もあります)。
結果的に同じような金額になるので,「権利金を返した」というような見た目になります。
しかし,法的には「権利金」と「明渡料」は別のものです。
- Q&A
権利金の相場はどの程度でしょうか。
- A 大雑把に言えば,更地価格の6~9割の範囲に入ることが多いです。
地域によって異なります。
- Q&A
土地を貸す時,権利金のやり取りをしなければならないのでしょうか。
- A 権利金を授受する義務はありません。
ただし,一般的に,土地賃貸借契約終了で明渡をする時には,明渡料として多額の金銭が支払われることが多いです。
終了時に多額の金銭を払うのであれば,開始時に同程度の金銭を受け取る,というのがフェアーだと思われます。
認定課税
- Q&A
親子間での土地の貸し借りなので,敢えて権利金のやりとりはしていません。
問題ありますでしょうか。
- A 税務上,思わぬ課税をされることに注意すべきです。
土地の所有者(貸主)が,「もらうべき権利金をもらわなかった」という考え方になり,贈与税や相続税が課せられるリスクがあります。
土地所有者が法人の場合は,権利金相当額の収入があるとして「認定課税」が行われることがあります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
無償返還に関する届出書
- Q&A
親子間での土地貸借で権利金を省略した場合の税務的対策はありますか。
- A 地代の金額を「相当の地代」と設定するか,「土地の無償返還に関する届出書」を税務署(長)に提出すると思わぬ課税を防ぎます。
「相当の地代」とは,更地価格の6%が目安とされています(法令137,法基通13-1-2,13-1-8,平元.3直法2-2)。
要は,権利金カットする代わりに相場より高めの地代にしている,バランス取れている,という趣旨です。
また,将来土地を返還する際,「無償で返還する」,つまり,明渡料のやり取りをしない,ということを土地の借主・地主の連名で税務署長に提出する方法もあ
ります(法法22,法令137,法基通13-1-1,13-1-2,13-1-7,平元.3直法2-2)。
これは,もっと根本的な関係性に着目しています。
権利金と同じくらいの金額を,明渡の際に明渡料として払うのが相場
→明渡料がないのであれば,これとリンクする権利金がなくてもバランスが取れている,
という趣旨です。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A貸地について「無償返還の届出」を税務署にしました。
その後相続で借地人が変わっていますが,まだ「無償返還」の約束は有効なのでしょうか。
- A 有効です。
確かに,「無償返還の届出」は,税金対策が目的です。
当事者同士ではまた別の解釈になるという発想もよくあります。
特に,相続その他の経緯によって当事者が当初から変わっているケースでは発想としては分かります。
しかし,裁判例の傾向としては,まず,「別の解釈」は認めていません。
裁判例を末尾に引用します。
なお,この裁判例は,直接当事者間における「無償返還」が争われたものではありません。
相続税申告における土地評価が更地という前提になる,というものです(正確には↓)。
・底地評価(借地権割合70%を控除)→NG
・自用地評価→OK
その判決文の一部で,私法上の効果が判断されているのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【東京地方裁判所 平成20年7月23日(抜粋)】
(5) 原告は,さらに,仮に本件届出書に係る無償返還合意が有効であっても,その基礎となる特殊な関係は一身専属的で相続性がない旨主張する。
しかしながら,①上記(2)のとおり,本件賃貸借契約の締結に際し,土地所有者から借地人に対し何ら経済的価値が移転しておらず,前記2(2)イ
(イ)及び(ウ)にいう借地人に帰属すべき利益もなかったという経済的実態が,本件届出書の提出により,その時点における状況として明らかにされており,
また,②上記(3)のとおり,本件届出書に係る無償返還届出は,認定課税の回避という課税上の利益を享受するための公法上の行為として課税庁に対して行わ
れ,現にこれを享受し得る効果を伴うものとして有効に成立していると認められる以上,当該届出に係る無償返還合意における一部当事者の私法上の地位が相続
によりAから原告及びGに承継されたことによって,上記①の経済的実態が左右されるものではなく,また,上記②の届出の税法上の効果が影響を受けるもので
もないので,上記主張は理由がない。
- Q&A貸地について「無償返還の届出」が提出されています。
更新拒絶をして土地明渡を請求する場合,明渡料は
「無償」となるのですか。
- A 明渡料は低廉でしょうけど,無償とはなりにくいです。
「無償返還の届出」がなされていても,地代が払われている以上,借地として扱われます。
そうすると,期間満了時には,正当事由がない限りは更新されます。
更新を止める場合は,特殊な事情がない限りは正当事由が認められることは少ないです。
正当事由が弱い分,言いかえると「不足分」を金銭で付け足すことになります(正当事由の補完としての明渡料)。
ただし,明渡料の算定としては,一般的な場合(=借地権価格をベースとする)とは異なり,大幅に低廉になるはずです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
借地権の無断譲渡
- Q&A【借地権の無断譲渡】
私は土地を借りて(賃貸借契約),その上に自分の所有している家があります。
引っ越そうと思うのですが,この家は売りに出せるのでしょうか。
- A 借地権の譲渡に当たります。地主の承諾が必要です。
借地上の建物は,当然の前提として,「借地権」が必要です。
この場合,借地権は建物の「従たる権利」ということになります(民法87条2項類推解釈)。
従って,建物を売却した場合,自動的に,借地権もセットとなって移転します(譲渡されたことになります)。
ところで,賃借権については,譲渡・転貸の際に賃貸人(地主)の承諾が必要です(民法612条)
承諾がないまま賃借権(借地権)を譲渡・転貸した場合は,賃貸借契約を解除されることがあります。
つまり,地主の承諾を得ずに借地上の建物を売却した場合は借地契約を解除されるおそれがあるのです。
(なお,賃貸借契約ではなく,「地上権」の場合は異なります)
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【借地上の建物の賃貸】
借地上の建物に住まなくなったので,第三者に賃貸しても良いのでしょうか。
- A 地主の承諾なく,建物を賃貸できます。
借地上の建物を賃貸して第三者が居住したとしても,「土地」自体を第三者に確定的に渡したとは評価できません。
そこで,「借地権(賃借権)の譲渡・転貸」ということにはなりません。
結局,特に地主の承諾なく建物を第三者に賃貸することができるのです。
当然,地主から借地契約を解除されることもありません。
→代表弁護士三平聡史のブログ
「建物の賃貸禁止」特約の効力
- Q&A【「建物の賃貸禁止」特約の効力】
借地の契約書に「借地上の建物の居住者は借地人自身に限る」という条項があります。
この場合は建物を第三者に賃貸できないのでしょうか。
- A 「信頼関係が破壊されない」状態であれば建物を賃貸しても問題ないとされることもあります。
借地に関しては,特約のうち,借地人に不利なものは一定の範囲で無効とされます(借地借家法9条)。
「合理的客観的理由」があれば有効とされています。
また,仮にその特約が有効であっても,特約違反があった時点で,地主から主張する借地契約解除の効力が否定されることも少なくありません(信頼関係破壊理
論)。
裁判例の趨勢としては,特約自体は有効として,契約解除の効力を大幅に制限する傾向が強いです(参考裁判例後掲)。
実際には個別的な事例によって判断が決まります。
主な判断要素は次のとおりです。
<解除が否定される例>
・借地人の親族が居住
→想定される範囲内だから
・実際の建物の使用状況に大きな変化がない
→地主に不利益が少ないから
・第三者が入居することについて借地人側に合理的理由がある
→借地人を保護する必要性が高いから
・第三者の入居について地主が拒否する理由に合理性がない
→地主に不利益が少ないから
・特約の設定自体に合理性がない
→特約自体が無効とされるから
→代表弁護士三平聡史のブログ
- 【借地借家法9条】
(強行規定)
この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。
- 【浦和地方裁判所昭和52年(ワ)第727号執行文付与に対する異議事件昭和58年1月18日(抜粋)】
建物所有を目的とする土地賃貸借契約においては、借地人は一般に、借地上に自己が所有する建物を他に賃貸することは建物所有権に基づいて自由になし得ると
ころであつて、借地人が借地上の自己所有建物を土地の賃貸人の承諾を得ないで第三者に賃貸して使用させたとしても、その故をもつて借地の無断譲渡転貸とし
て土地の賃貸人が土地賃貸借契約を解除することはできないと解される。しかし、借地人が借地上の自己所有建物を他に賃貸して使用させることは、建物の使用
を介して間接的な形においてではあつても、建物の敷地の使用・占有を必然的に伴うものであることに みると、賃貸人と賃借人の合意により、借地上の建物を
他に賃貸することを特約で禁止することは、それが賃貸借期間の全部にわたるものであつても、そのような特約をなす合理的客観的理由が存する場合には許され
ないものではないと解するのが相当である。そして、調停において、右のような特約が合意されるとともに、右特約に違反した場合には土地の賃貸人において土
地賃貸借契約を解除することができ、そのときは賃借人は土地を明渡さなければならないとの条項が定められても、賃貸借契約が当事者間の信頼関係を基礎とす
る継続的債権関係であることに照らすと、右条項は、賃借人が土地上の建物を他に賃貸したすべての場合に当然に解除が効力を生じるものと解すべきものではな
く、形式的には右特約に違反しても、賃貸人と賃借人との信頼関係を破壊するに至らない特別の事情のある場合には、右条項に基づく賃貸借契約の解除は効力を
生じないものと解すべきであるから、このような制約の存することを前提とする以上右条項を無効とすべき理由はない。

借地権譲渡承諾料 相場
- Q&A借地権譲渡の際,承諾料が必要なのでしょうか。
- A 売買などで借地権が他の人に移る場合は,承諾料を支払うのが一般的です。
借地権の譲渡については,地主の承諾がないと,借地契約が解除されます(民法612条1項)。
そこで,承諾をしてもらうことの対価として,承諾料を払うことが行われています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A借地権譲渡の承諾料はどの程度が相場でしょうか。
- A 借地権価格の10%程度です。
なお,「借地権」の評価額としては,一般的には,売買代金を用いる場合や公示時価を用いる場合があります。
「承諾料」の呼び名としては,「名義書換料」「名義変更料」と言うこともあります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
借地権譲渡許可申立事件(借地非訟)
- Q&A地主と借地人で承諾料について合意できなかった場合,どうしたら良いでしょうか。
- A 裁判所に「承諾に代わる裁判」を求めて申立をします。
要は,裁判所に承諾料の金額を決めてもらうという制度です。
「借地非訟事件」の1つです。
裁判所が決定を出す場合は,借地権の10%という相場を用いて算定することが多いです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
介入権
- Q&A【介入権】
譲渡の承諾料の金額次第では,私(地主)が借地権を買い取った方が良いと思います。
対抗措置はありますか。
- A 優先的に買い取る権利(介入権)があります。
介入権を行使する場面は,評価額が判明して,地主の予想よりも低い場合が典型例です。
一般の借地権売却や競売において,地主が「第三者に売るのを承諾するくらいならば自分自身が買い取りたい」と考えることがあります。
勿論,裁判が始まる前の交渉段階で,スムーズに話が進めば自然と地主が借地権を買い取る(買い戻す)ことになったはずです。
しかし,一般的には,地主が借地権を買い取る場合でも,金額で折り合いがつかない場合があります。
その結果として,借地人としては,第三者に売却した方が高く売れる,という流れになることがあるのです。
まさにこのような状態で地主・借地人間で協議が決裂した場合が,譲渡許可の申立に至る典型例です。
譲渡許可の非訟事件手続きの中では,主に承諾料の金額を定めることが主要な作業となります。
その大前提として,借地の評価額が重要です。
審理としては,借地の評価を進めます。
その中で,借地の評価がある程度低く出た場合,地主としては,「承諾料をもらうよりは自分で買い取った方が良い」と考えることもあります。
その場合,地主は最優先で「買い取る」ことができるのです。
この「介入権」ですが,裁判所の取扱としては,1つの「申立」として扱います。
形式的には1つの「手続き(事件)」とされます。
実質的には,譲渡承諾の申立(非訟手続き)の一環となっています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
借地人相続時の「名義書換料」
- Q&A名義変更料については,売買の場合と相続の場合で違うのでしょうか。
- A 相続の場合は,「名義変更料」を払う必要はありません。
売買の場合は,地主の承諾がないと,借地契約が解除されることがあります(民法612条1項)。
しかし,相続の場合は,地主が承諾しなくても借地契約はそのまま継続する,つまり解除されないのです。
地主に承諾をお願いする,という関係にはないのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
建て替え承諾料 相場
- Q&A借地上の建物を再築する際,承諾料が必要なのでしょうか。
- A 承諾料を支払うのが一般的です。
地主の承諾がない場合,一旦従前の建物を解体した時点で,借地契約が終了してしまうのが原則です。
仮に,再築が地主に無断でできるとすると,事実上,半永久的に借地契約が終わらない,ということになってしまいます。
建物再築によって,建物の寿命が大きく延びます。
結果的に,「借地」の寿命も大きく延びることになります。
そこで,建物再築には地主の承諾が必要とされているのです。
実際は,建物再築の承諾に対する対価として承諾料を払うことが行われています。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A借地上の建物を建て替える際の承諾料はどの程度が相場でしょうか。
- A 更地価格の2~5%程度です。
なお,東京では,次のような標準的な条件での借地については,3%という決定例が多いです。
典型例は次のようになります。
【3%が適用されやすい例】
・建物の用途・規模が従前とほぼ同一
・過去に特別な一時金のやり取りがない
・今後当面の間,借地契約が終了する見込みがない
・従前の賃料が平均的(適正)であった
【高めになる例】
・床面積が増加
・用途が変更される
【低めになる例】
・改築が建物全体の一部にとどまる
→代表弁護士三平聡史のブログ
借地上の建物の大規模修繕
- Q&A借地上の建物を再築するのではなく,修繕するだけの場合はどうでしょうか。
- A その規模や契約書の内容によって違います。
一般的には,借地の契約書に「大規模な修繕は地主の承諾を得なくてはならない」という条項があることが多いです。
その場合,修繕でも,その規模が大きく,再築と同じような状態であれば,「再築」として扱われ,地主の承諾が必要ということになります。
つまり,再築と同じ程ではないが,一般的・平均的な修繕よりも規模が大きい,という場合に,地主の承諾が必要となります。
借地上の建物の増築
- Q&A借地上の建物を増築する場合,地主の承諾が必要でしょうか。
- A 原則として必要です。
一般的な借地の契約書には「増築には地主の承諾を得なくてはならない」という条項があることが多いです。
このような条項の趣旨は,増築の場合,床面積が増えることを意識したものです。
地主が従前想定していた土地の使い方とは変わってきます。
建物全体としての寿命も延びることになりましょう。
そこで,地主の承諾を必要としているのです。
上記のような条項(特約)がある場合,この条項は有効です。
従って,増築の際は地主の承諾が必要となります。
増改築許可申立事件(非訟事件)
- Q&A地主と借地人で建て替え承諾料について合意できなかった場合,どうしたら良いでしょうか。
- A 裁判所に「承諾に代わる裁判」を求めて申立をします。
要は,裁判所に承諾料の金額を決めてもらうという制度です。
「借地非訟事件」の1つです。
裁判所は,相場を基準にした算定をすることになります。
更新料 相場
- Q&A借地契約更新の時に更新料を払わないといけないのでしょうか。
- A 契約書に更新料支払の条項があれば支払うべきです。条項がなければ支払義務もないと思われます。
正確には,条項がなかったとしても,「更新料支払の慣習」があれば支払義務があることになります。
しかし,裁判例では,「更新料支払の慣習」を正面から認めた例はほぼありません。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A更新料を支払う場合,どのくらいの金額が相場なのでしょうか。
- A ごく平均的なものは,借地権価格の5%程度です。更地価格の3~5%で算定することもあります。
契約書の条項に,更新料の算定方法まで記載されていれば,このとおりに算定することになります。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A地主と借地人で更新料について合意できなかった場合,どうしたら良いでしょうか。
- A 借地人としては,供託するという方法も考えられます。
地主としては,更新料支払請求,賃料増額請求や借地契約の解除という主張が考えられます。
更新料については,裁判所が金額を算定してくれる「借地非訟手続」は用意されていません。
法律上,地主の承諾が必要な場面ではないからです。
地主からは,正面から更新料の支払請求を裁判所に申し立てることもできます。
非訟事件ではなく,正式な「訴訟」として,です。
ただし,契約書に明記していない場合は,認められない可能性が高いです。
その場合でも,更新料がもらえない代わりに賃料を増額する請求ができることもあります。
更新料の支払が条項に書いてあるのに払わない場合は,これを理由にして借地契約の解除を主張することもできます。
ただ,一般的・平均的には,借地契約の終了や土地明渡請求が認められる実例は少ないです。
借地人の立場からは,更新料支払を拒絶すると,最悪の場合,地主から土地明渡請求が提訴される可能性があるのです。
仮にそうなると,結論(判決)の見通しはともかく,時間・費用的コストが多大にかかります。
そのような面倒を回避するために,結果的に更新料が払われるケースが多いのです。
→代表弁護士三平聡史のブログ
借地非訟事件
- Q&A【借地非訟事件の種類】
借地に関して,本来は地主と協議して決めるはずなのに,協議が決裂したら裁判所が代わりに許可をくれる制度はどのようなものがありますか。
- A 細かく分類すると5種類あります。大きな分類では3タイプです。
<大きな分類>
・借地の条件変更
・借地上の建物の建て替え
・借地権の譲渡
<細かい分類>
1 借地条件変更申立事件(条件変更事件;借地借家法17条)
「条件」の例としては「借地上の建物は,木造建物に限る」といったものが典型です。
例えば,この建物を鉄筋のビルに建て替えたい場合,「借地条件」を変更する必要があります。
地主との協議が成立しない場合,借地人は裁判所に借地条件変更の裁判を申し立てることができます。
2 増改築許可申立事件(増改築事件;借地借家法18条)
ほとんどの借地契約には,「借地上の建物の建替え・増築・改築(修繕)等をする場合には土地所有者の承諾が必要である」という規定(特約)があります。
ここで,特約どおりに地主の承諾をもらおうと申し入れても地主が承諾しないということがあります。
実際には承諾料の金額について合意に達しないということが多いです。
こんな場合に,借地人は裁判所に,「土地所有者の承諾に代わる増改築の許可の裁判」を申し立てることができます。
3 賃借権譲渡許可申立事件(譲渡事件;借地借家法19条)
一般の借地契約は「賃貸借契約」であることがほとんどです。
従って,借地人が借地上の建物を譲渡する場合には,譲渡について土地所有者の承諾が必要です(民法612条)。
地主の承諾が得られない場合,借地人は,「土地所有者の承諾に代わる許可の裁判」を申し立てることができます。
4 競売または公売に伴う土地賃借権譲受許可申立事件(公競売事件;借地借家法20条)
裁判所の競売手続で借地上の建物を買い受けた人は,借地権も一緒に取得することになります(従たる権利;民法87条2項類推)。
これも一種の「借地権」の譲渡,に近い状態です。
やはり,借地権の譲受けについて土地所有者の承諾が必要です(民法612条)。
そこで,競落人が地主の承諾を得られない場合,「競売に伴う賃借権譲受許可の申立」をすることができます。
5 借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立事件(介入権事件;借地借家法19条3項,20条2項)
上記3(譲渡事件)と4(公競売事件)の場合,地主には借地権を借地上の建物と一緒に優先的に買い取ることができる権利があります。
これを「介入権」と呼んでいます。
→代表弁護士三平聡史のブログ
- Q&A【借地非訟事件の意義】
他の賃貸借契約などの取引ではこのような「非訟事件手続き」はないのに,借地の場合は制度があるのはなぜでしょう。
- A 長期にわたる継続的契約であり,かつ,対象物の価値が大きいからです。
借地・貸地に関しては,借地人が建物を所有し,居住したり,建物を賃貸することにより建物を活用します。
地主・借地人との協議が行き詰まり,不動産の活用が実際にストップしてしまうと非常に不経済です。
そこで,一定の場合については,裁判所が地主に代わって許可を出す,という制度があります。
これを「借地非訟事件」と呼んでいます。「訴訟」とは違う概念です。
「非訟事件」という意味ですが,専門的には「裁判所の裁量的判断により,権利義務の具体的内容の形成を目的とする事件」とされています(最高裁判所昭和
40年6月30日)。
簡単に言えば,「借地権が存在するか否か」という「権利の有無」,ではなく,承諾する対価(承諾料)をいくらにするか,という「内容」を「裁量」をもって
判断する,ということです。
ごく簡略化して言えば,「非訟事件」というのは「ミニ裁判」とも言えます。
→代表弁護士三平聡史のブログ

