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共有不動産の使用方法

Q&A【共有物の使用】
私Aと兄弟BCの3人が土地・建物を共有しています。
だれがここに住むかで意見が一致しません。
どうやって決めることになりますか。
持分の過半数の賛成で決まります。

共有物の使用方法,ということなので「管理」行為となります(民法252条本文)。
持分の過半数で決まることになります。
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[民法]
(共有物の管理)
第二百五十二条  共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
Q&A【共有物の管理方法決定プロセス】
共有の不動産に誰が居住するのか,どうやって決を取るのでしょうか。
決まりはありません。
直接集まったり話し合ったりしなくても,最終的に過半数の持分権者の賛成が取れれば良いのです。


これに関する判例などの公的な判断は見当たりません。
株主総会の意思決定については,しっかりした法的ルールが会社法上規定されています。
しかし,共有物の管理方法の協議,については条文上規定されていません。
最低限では,持分の過半数の者が賛成さえすれば,一部の共有者が協議に参加する機会すら与えられなくても,意思決定としては有効であると考えられます。
ただし,実際には,無用な争いのタネを残さないよう,すべての共有者が意見表明をできるようにすることが望ましいです。
必ずしも一堂に会さなくても,通知による意見表明を一斉に募る,という方法を実際に採用しています。
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Q&A【具体的使用方法の設定例】
使用方法を共有者で決める場合,どのような決め方があるのでしょうか。
土地であれば,等分して小さいエリアに分ける,とか,動産であれば一定 期間ごとに交代で使用する,などがあります。

よくあるルール設定例はもう少しあります。
<共有物の使用方法の設定例>
1人が使用し,他の共有者に使用対価を支払う
 賃貸借方式です
1人が使用し,一定期間は使用対価は発生しない
 使用貸借方式です
共有物自体を物理的に区分けし,各共有者が単独で使用する
 分筆と同様の結果となる方式です
一定期間ごとに交代して使用する
 動産の場合,このような方法が取られることがあります
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Q&A【使用方法の合意の承継】
共有者である兄(A)と話し合いをして,「私が建物を使用する(居住する)。対価は月額10万円」と決めました。
その後,Aが不動産の共有持分を第三者(B)に売却しました。
Bは「以前の約束は聞いてない。退去してくれ。退去しないなら月額20万円を払ってくれ」と私に要求しています。
兄との約束はもう無効なのでしょうか。
共有者間の使用方法の設定は,その後共有者となった者との間でも有効で す。

確かに,共有持分を購入したBにとっては,仮に「使用方法の合意」について知らなかったら不意打ちになります。
登記上明示されていれば別ですが,「使用方法の合意」は登記できません。
この点,「共有物不分割特約」は登記できるのとは対照的です(民法256条,不動産登記法59条6号)。
しかし一方で,元々の共有者からすれば,一旦合意した内容が,持分譲渡により簡単に覆されることも不合理です。
そこで,裁判例(後掲)においては,共有者間の合意内容は持分購入者(特定承継人)にも引き継がれると判断しました。
なお,理由の1つとして,条文上「共有者間の債権」は引き継がれるとされていることを挙げています(民法254条)。
結果的に,Bも,共有者間で以前合意した内容に拘束されます。
具体的には,Bは退去請求をできず,また,「10万円」以上の使用料の請求もできません。
なお,Bにとって,このような拘束が想定外である,という場合には,売却したAが「騙した」ことになります。
この場合は,BはAに対し,詐欺による売買契約の取消の主張や損害賠償請求を行うことができると思われます。
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[民法]
(共有物についての債権)
第二百五十四条  共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。

(共有物の分割請求)
第二百五十六条  各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
2  前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。
[不動産登記法]
(権利に関する登記の登記事項)
第五十九条  権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。
(略)
六  共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法 (明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項 ただし書(同法第二百六十四条 において準用する場合を含む。)の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同法第九百八条 の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定 め又は同法第九百七条第三項 の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、 その定め
(略)
[東京高等裁判所昭和56年(ネ)第1699号所有権移転登記請求控訴事件昭和57年11月17日(抜粋)]
しかして、右のごとき共有者間の共有物に関する使用収益、管理又は費用の分担についての定めは、その共有者の特定承継人に対しても当然承継されるものと解 すべきものである。けだし、共有物の使用収益、管理又は費用の分担に関する定めは、共有関係と相分離しえないものであり、共有者は、自己が持つていた以上 の権利を譲り渡すことができず、譲受人も、譲渡人が受けていたと同じ制限を受ける権利を取得するのが当然であるからである。民法二五四条は、右の当然の事 理を前提とし、更に具体的に発生した債権についても特定承継人に承継されることを規定しているのである。もし右述のように解しないと、共有者間の特約によ り負担を負う共有者の一人が、持分を譲渡することにより一方的にいつでもその特約を破棄したと同等の効果を生じさせうることになり、その不当であることは いうをまたないところである。なお右特約については公示方法がないので、持分の譲受人が不測の損害を受け、取引の安全を害することがないとはいえないが、 これは譲渡人の瑕疵担保責任、あるいは、共有者となつた譲受人による共有解消の問題として考慮すれば足りるものというべきである。 
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共有者間の明渡請求

Q&A【共有物全部についての使用権限】
特に共有者である兄弟間で協議なり,決を取るなどは一切なされていません。
独断で兄が共有不動産に入居してしまいました。
私としては退去するよう要求できますか。
明渡請求をストレートに行うことはできないでしょう。

本来は,入居する前に,「使用方法」として,具体的に誰が入居するのか,を協議によって(持分の過半数で決することによって)決めるべきでした。
このようなプロセスが欠けているからといって,即座に明渡請求が認められるかというと,判例では否定しています(最高裁判所昭和41年5月19日,最高裁 判所平成12年4月7日)。

理由としては,各所有者は,それぞれが,「共有物の全部」を使用する権限があるとされているからです(民法249条)。
この点,「自己の持分に応じた利用を妨げてはならない」という請求を認める古い判例はあります(大判大正11年2月20日)。
しかし,占有している共有者への明渡請求を認めるものではありません。
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[民法]
(共有物の使用)
第二百四十九条  各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
[最高裁判所第1小法廷昭和38年(オ)第1021号土地所有権確認等請求事件昭和41年5月19日(抜粋)]
思うに、共同相続に基づく共有者の一人であつて、その持分の価格が共有物の価格の過半数に満たない者(以下単に少数持分権者という)は、他の共有者の協議 を経ないで当然に共有物(本件建物)な単独で占有する権原を有するものでないことは、原判決の説示するとおりであるが、他方、他のすべての相続人らがその 共有持分を合計すると、その価格が共有物の価格の過半数をこえるからといつて(以下このような共有持分権者を多数持分権者という)、共有物を現に占有する 前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。けだし、このような場合、右の少数持分権者は自己の持分によつて、共有物を 使用収益する権原を有し、これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。
[最高裁判所第2小法廷平成9年(オ)第1876号建物収去土地明渡等本訴請求、土地所有権確認等反訴請求、土地持分移転登記手続等反訴請求 事件平成12年4月7日(抜粋)]
上告人が一郎の右持分を相続により取得したというのであれば、上告人は、同様に太郎及び花子の死亡に伴い本件各土地の持分を相続により取得した共有者であ る被上告人二郎及び同春子に対して本件各土地の地上建物の収去及び本件各土地の明渡しを当然には請求することができず(最高裁昭和三八年(オ)第一〇二一 号同四一年五月一九日第一小法廷判決・民集二〇巻五号九四七頁参照)、同二郎に本件各土地の登記済権利証の引渡しを請求することや同春子の所有する本件建 物一に居住している同松夫に対して退去を請求することもできないものというべきである。
Q&A【実力行使的に占有した共有者への明渡請求】
共有者である兄が建物に入居しました。
他の共有者である私や弟が強く反対していたのに,強引に入居したのです。
やはり退去は要求できないのでしょうか。
占有した態様が実力行使のような強引なものである場合,例外的に明渡請 求が認められることもあります。

占有者が共有者であることから,他の共有者が明渡請求を認められないのは,「共有者それぞれが使用する権限を持っている」ということの調整の結果です。
ある意味,やむを得ない,調整的結果なのです。
そこで,常軌を逸しているケースにまで,この結果を適用するとは限りません。
実力行使に等しい方法で占有を開始したケースについて,明渡請求を認めた裁判例があります(後掲)。
占有した共有者のは,共有持分という権利を「濫用」したものと認めています。
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[仙台高等裁判所平成2年(ネ)第466号建物明渡請求控訴事件平成4年1月27日(抜粋)]
(4)控訴人は、平成元年八月下旬頃、被控訴人恭子に架電して一方的に本件一の建物で生活をする旨を伝え、同年九月六日、同被控訴人に連絡することもなく 妻文代とともに同建物に赴き、翌七日及び八日にその荷物を同建物に運び入れた。控訴人は日蓮正宗に入信していたが亡國夫及び被控訴人恭子が浄土真宗に属す る寺の檀徒であったため、亡國夫を祀ってある仏壇を取り壊そうとした。このため、被控訴人恭子は仏壇屋に右仏壇を預けることを余儀無くされた。また、控訴 人は神棚を取り払い、亡國夫の遺影を取り去った。さらに、控訴人は、同建物から被控訴人恭子の同意も得ずに同被控訴人の生活用品や着物など家の外に出して しまい、物置の鍵も勝手に取替えた。
(5)控訴人が右の様な行動をとったため、被控訴人恭子は、平成元年九月一六日、本件一の建物を着の身着のまま出ざるを得なくなり、被控訴人和則を頼った が、同被控訴人も妻の母と同居しているため、現在は山形市内のアパートで一人で住んでいる。
 控訴人は、被控訴人恭子が本件一の建物を出た後、同建物の電話番号、表札、出入口の鍵を替え(この事実は当事者間に争いがない。)、また、この頃、本件 二の建物の鍵穴に物を詰め込み、出入口を閉鎖して被控訴人恭子の理容業の営業をできなくした。
  (二)右認定の事実によると、控訴人が本件一の建物の占有を取得した状況は、従前から長年月に亙り平穏に同建物を占有してきた他の共有持分権者である 被控訴人恭子及び同義則並びにこのような同建物の使用形態を容認している同和則と協議することなく、同恭子及び同義則を実力で排除するに等しいものであ り、控訴人に同建物の共有持分権があっても右は権利濫用と評価されてもやむを得ないものであって、このような事情が存在する場合においては多数持分権者で ある被控訴人らの少数持分権者である控訴人に対する同建物の明渡請求は許されると解するのが相当である。
Q&A【使用対価としての不当利得金/損害賠償請求】
先に入居した共有者に退去を要求できないとすれば,早く入居・占拠した者が有利ということになってしまいます。
何か対抗措置はないのでしょうか。
家賃に相当する金銭の請求がまずは考えられます。

共有者は「共有物の全部」を使用することが認められています。
その一方で「持分に応じた使用」という制限があります(民法249条)。
この2つが1つの条文に規定されているのです。
矛盾を感じるような規定です。
実際の例(判例)では,明渡請求は認めない,としつつ,家賃に相当する金銭を不当利得または損害賠償として認めるという判断をしています(最高裁平成12 年4月7日)。
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[最高裁判所第2小法廷平成9年(オ)第1876号建物収去土地明渡等本訴請求、土地所有権確認等反訴請求、土地持分移転登記手続等反訴請求 事件平成12年4月7日(抜粋)]
同二郎及び同春子が共有物である本件各土地の各一部を単独で占有することができる権原につき特段の主張、立証のない本件においては、上告人は、右占有によ り上告人の持分に応じた使用が妨げられているとして、右両名に対して、持分割合に応じて占有部分に係る地代相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請 求することはできるものと解すべきである。
Q&A【使用方法を定めた上での明渡請求】
無断で共有者の1人が共有不動産に入居した場合,退去を求める方法は一切ないのでしょうか。
使用方法として,別の共有者が使用する,ということを決定すれば,その 上で,現占有者に明渡請求をすることは可能でしょう。

共有者間の決議により,使用方法を定めれば,現在の共有者の無断占有について「一切権原がない」と主張できることになります。
共有者間での使用方法の決議は,持分の過半数の賛成が必要となります(民法262条本文)。
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Q&A【使用方法の「変更」→明渡請求】
1度兄Bが共有建物に入居することを共有者全員が認めていました。
その後,過半数(A・C)で入居者をA(私)に変更すれば,兄Bに退去を請求できるのでしょうか。
使用方法の変更,については,共有者全員の同意が必要と考えられます。

使用方法について,持分の過半数の賛成で決議できるのは「それまで使用方法が決められていなかった場合」です。
既に使用方法が決議されている,という場合,つまり,その後変更する場合は,共有者全員の同意が必要という考え方が主流です(東京地裁昭和63年4月15 日)。
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[東京地方裁判所昭和60年(ワ)第3695号建物明渡請求事件昭和63年4月15日(抜粋)]
本件のように、少なくとも一旦決定された共有物の使用収益の方法を変更することは、共有者間の占有状態の変更として民法二五一条の「変更」にあたり、共有 者全員の同思によらなければならないと解するのが相当である。けだし、共有者の意思にしたがって既に共有物の使用をしている場合に、持分価格の過半数で、 その者の使用を排除するようなことを認めると、単に金銭的な補償では償われない損失を蒙る虞があるし、また分割請求では使用収益を奪われたことに対する代 償を得ることができないことが多いとみられるからである。 
Q&A【共有者間での明渡請求,金銭請求の特殊性】
私は,父所有の建物に同居していました。
父が亡くなり,兄弟の共有となりました。
他の兄弟から家賃分のお金を請求されています。
払わなくてはならないのでしょうか。
相続に関係する場合は,一定期間は明渡や金銭の請求が認められないこと が多いです。

実は,共有者間での使用に関する紛争は,相続が先行していることが多いです。
そして,「従前から無償で居住していた」「被相続人(父)から居住を許されていた」など,居住を正当化する事情が存在することが多いです。
この場合,「使用貸借契約」が存在すると考えたり,明渡請求は「権利濫用」に該当するとしたりして,他の共有者からの明渡請求や金銭の請求を認めないとい うケースが結構あります。
このような個別的な事情によって,形式的な法的解釈,にアレンジが加えられることがよくあります。
不確定要素が多いと言えます。
相続が絡む共有の問題については,慎重な検討が必要です。
つまり,条文的・形式的な法的解釈は非常に重要ですが,それを前提にして,「特殊事情」によってどのような影響があるかも十分に考える必要があるのです。
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Q&A【相続直後の共有不動産に使用貸借関係適用】
相続に関係する共有のケースで明渡や金銭請求が認められないという具体的な例はありますか。
判例上,相続直後の共有不動産について,使用貸借契約を認めたものがあ ります。

この判例(後掲)では,共有者間に,使用貸借契約を認めました。
その結果,明渡請求は認められず,また,使用料(賃料・家賃)といった金銭の請求も認められませんでした。
事前には,書面でも口頭でも「使用貸借契約」というものは締結されていませんでした。
それなのに使用貸借契約を認めた理由(前提)や無償使用を認めた範囲などは次のようなものです。
<使用貸借契約を認めた理由(前提)>
・相続開始前は被相続人の単独所有であった
・相続人の1人が,以前より被相続人と対象不動産に同居していた

<無償使用を認めた範囲>
・少なくとも,遺産分割協議が完了するまで
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[最高裁判所第3小法廷平成5年(オ)第1946号土地建物共有物分割等請求事件平成8年12月17日(抜粋)]
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の 相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこ れを無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の 地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。けだし、建物 が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことからすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を 与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。

[民法]
第597条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用 及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
Q&A【相続後の不動産使用方法のトラブル防止策】
相続後に,兄弟(相続人)の間で,不動産の使用についてトラブルになるのを防ぐ方法はありますか。
遺言や信託契約で移転先や使用方法(権限)を明記しておくことが,トラ ブル防止策の典型です。

<相続後の共有不動産トラブル防止策>
1 遺言により遺贈・分割方法の指定をしておく
2 信託により,相続後の不動産管理方法を規定しておく
3 生前に居住者との間で賃貸借契約を締結しておく

相続後に使用(居住)させる者に遺贈する,とか,相続させるということを遺言で書いておけば,そのとおりになります。
つまり,共有となり,共有者間で意見がバラバラになる,ということを避けられます。
ただし,遺留分の侵害があると,結局は減殺請求を行使されるリスクを残してしまいます。
また,信託契約を用いて,相続後の管理方法・居住者を決めておくこともできます。
さらに,生前より,居住者(推定相続人)との間で賃貸借契約を締結しておけば,相続後も,賃貸借契約は終了せず,居住を継続することが実現できます。
無償の使用貸借契約は相続により終了しますが,賃貸借契約は賃貸人の相続の際,終了せず,相続人に承継されるのです。
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変更・管理・保存行為

Q&A【共有物の変更・管理・保存行為】
共有者のうち過半数の賛成でできることと,全員一致ではないとできないことなど,どのように決まっているのですか。
「変更」は全員,「管理」は過半数,「保存」は単独でも可能,となって います。

民法の条文上,3つの類型が規定されています。
・変更(251条)→全員の同意
・管理(252条本文)→持分の過半数
・保存(252条但書)→各共有者単独

それぞれの意味については裁判例で解釈自体は確立しています。
さらに,具体的な対象となる取引等については,細かいところまで裁判例等で解釈がなされています。
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[民法]
(共有物の変更)
第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

(共有物の管理)
第二百五十二条  共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
Q&A【共有物の「変更」】
共有物の変更行為とはどのようなものですか。
物理的変化を伴う行為,法律的に処分する行為のこととされています。

具体例は次のとおりです。
<物理的変化を伴う行為>
田畑を宅地に造成する行為
 対象物の性質を変える程度である場合が『変更』にあたります。
建物の大規模な改修,建替え
山林の樹木伐採

<法律的な処分行為>
売買契約締結
売買契約の解除
用益物権(地上権)の設定
賃貸借契約締結のうち次のいずれか。
 1 民法602条(短期賃貸借;後掲)の期間を超える場合(東京高裁昭和50年9月29日)
 2 借地借家法の適用がある場合(原則)(東京地裁平成14年11月25日)
担保権の設定
使用収益方法の変更(東京地裁昭和63年4月15日)
大規模ビルを目的とするサブリース契約の賃料減額(東京地裁平成14年7月16日)

なお,「共有持分」を対象とした売買や担保権設定は,共有者単独で可能です。
共有持分の範囲内のことですから,当然ではあります。
あくまでも「変更」に該当するのは共有物全体(所有権全体)を対象とした処分行為ということです。
※近年では,「法律的な処分行為」は,「変更」とは別のものであるという見解が多くなっています。しかし結論としては,全共有者の同意が必要,ということ には変わりはありません。
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[民法]
(短期賃貸借)
第六百二条  処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超 えることができない。
一  樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二  前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三  建物の賃貸借 三年
四  動産の賃貸借 六箇月
[東京高等裁判所昭和43年(ネ)第2976号建物収去土地明渡請求控訴事件昭和50年9月29日(抜粋)]
共有物たる本件土地の賃貸借は、同土地に対するいわゆる管理行為にあたるものと解するのが相当であり、したがって、本件土地賃貸借については、民法第二五 二条の規定によりその共有者の持分の価格の過半数をもって決すべきものといわなければならず、しかもこれによる賃貸借は、処分権限のない者による賃貸借に あたることが明らかであるから同法第六〇二条第二号の規定によりその賃貸期間は五年を超えることが許されないものといわなければならない
[東京地方裁判所平成13年(ワ)第9500号建物賃料等請求事件平成14年11月25日(抜粋)]
(2) 一般に、共有物について賃貸借契約を締結する行為は、それが民法六〇二条の期間を超える場合には、共有者による当該目的物の使用、収益等を長期間 にわたって制約することとなり、事実上共有物の処分に近い効果をもたらすから、これを有効に行うには共有者全員の合意が必要であると解されるのに対し、同 条の期間を超えない場合には、処分の程度に至らず管理行為に該当するものとして、持分価格の過半数をもって決することができるというべきである。しかし、 仮に契約上の存続期間が同条の期間を超えないとしても、借地借家法等が適用される賃貸借契約においては、更新が原則とされ事実上契約関係が長期間にわたっ て継続する蓋然性が高く、したがって、共有者による使用、収益に及ぼす影響は、同条の期間を超える賃貸借契約と同視できると考えられる。したがって、借地 借家法等の適用がある賃貸借契約の締結も、原則として、共有者全員の合意なくしては有効に行い得ないというべきである。
[東京地方裁判所昭和60年(ワ)第3695号建物明渡請求事件昭和63年4月15日(抜粋)]
本件のように、少なくとも一旦決定された共有物の使用収益の方法を変更することは、共有者間の占有状態の変更として民法二五一条の「変更」にあたり、共有 者全員の同思によらなければならないと解するのが相当である。けだし、共有者の意思にしたがって既に共有物の使用をしている場合に、持分価格の過半数で、 その者の使用を排除するようなことを認めると、単に金銭的な補償では償われない損失を蒙る虞があるし、また分割請求では使用収益を奪われたことに対する代 償を得ることができないことが多いとみられるからである。
[東京地方裁判所平成11年(ワ)第22152号建物資料請求事件平成14年7月16日(抜粋)]
一般に共有物の賃貸借契約において賃料本稿の合意は、共有物の管理行為に該当し、賃貸人である共有者の過半数でこれをすることができるものと解される。
 しかしながら、民法六〇二条所定の期間を超える賃貸借契約(長期賃貸借)を締結することは、共有物の管理行為ではなく処分行為であり、共有者全員の同意 を要するものとされていること、本件のような大規模ビルを目的とするサブリース契約における賃貸借の合意においては、賃貸人である建物共有者の権利内容は 賃料収受権のみであるといっても過言ではないところ、賃料の変更は共有者の権利に対して重大な影響を与えるものと考えられること、本件賃貸借契約において は、前記のとおり、賃貸借の中途解約権が契約上否定され、その反面、賃貸人は賃貸借存続期間中一定額の賃料を得ることを期待しうる地位にあること、本件賃 貸借契約においては、賃料の変更につき、「賃料は、租税公課の大幅な改定、その他経済情勢に著しい変動があった場合、この契約締結後三年経過するごとに、 他権者Ⅱ及び被告が協議の上改定できる。」と定められており(第2の1(4)カ)、これは、賃料変更の合意については、賃貸人である共有者全員の同意を要 するとの内容を示したものと解すべきこと等を考慮すると、本件賃貸借契約において、賃貸人、賃借人間の合意により賃料を変更する場合には、賃貸人である共 有者の持分の過半数を有する者と賃借人の間における合意のみでは足りず、賃貸人である共有者全員の同意を得る必要があるものというべきである。
Q&A【共有物の「管理」】
過半数で決められる「管理行為」とはどのような行為が該当しますか。
共有物の使用,利用,改良を行う行為とされています。

共有物の使用,利用,改良行為をまとめて「管理(行為)」と考えます。
持分の過半数により決定することができます(民法252条本文)。
利用,改良行為については次のように解釈されています。

<利用・改良行為の解釈>
「利用」
→共有物の性質を変更せずに収益を上げる行為
「改良」
→共有物の交換価値を増加させる行為

実際のケースにおいては,使用,利用,改良の分類というよりも,「管理」に当たるかどうか,ということが重要です。
管理行為に該当する例を示します。

<管理行為の例>
目的物の使用方法の決定
共有物の賃貸借契約締結のうち,次の条件を満たすもの(裁判例前出)
 民法602条の期間を超えない かつ 借地借家法の適用がない
賃貸借契約の解除(最高裁昭和39年2月25日)
使用貸借契約の解除(最高裁昭和29年3月12日)
共有土地上の賃借権の譲渡に対する承諾(東京地裁平成8年9月18日)
共有不動産に設定された賃借権の賃料減額(東京地裁平成14年7月16日(前提として))
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Q&A【共有物の「保存」】
共有者が単独でも実行可能な「保存行為」とはどのようなものでしょうか。
現状維持+他の共有者に不利益が及ばないようにする行為のことです。

「保存行為」とは,物理的な現状を維持し,かつ,他の共有者に不利益が及ばない行為のことを言います。
要は,共有者全員の代表として(他の共有者に代わって)特定の1名が,不利益を避ける手当(行為)を行うことです。
そのような行為であれば,いちいち他の共有者の意見を打診する必要はないという意味で,単独で実行できることになっています。

具体例でご説明した方が早いでしょう。

<保存行為の例>
共有物の修繕
腐敗し易い物の売却(換価)
共有物の不法占有者に対する妨害排除請求(明渡請求)
無権限で登記名義を有する第三者に対する抹消登記請求
共有者全員への移転登記
 相続の際,遺産分割協議成立前に,相続人の1人が法定相続に基づく(全員分の)移転登記を行うことがよくあります
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共有物の費用負担

Q&A 共有不動産の管理費の負担はどうなるのでしょうか。
共有建物の維持管理費用,公租公課等の負担は,共有持分割合に応じて各 共有者が負担することになります(民法253条1項)。
Q&A私(A)と兄(B)とで共有になっている土地・建物があります。
管理会社に管理を依頼し,管理費を私が払っています。
兄に請求できますか。
お兄さんの共有持分割合に応じた分の負担を請求できます。

管理費は本来,共有持分に応じて分けて負担すべきです(民法253条1項)。
AはBの負担分を「立て替えている」状態です。
従って,その「立替分」について,AはBに請求できます。
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【民法253条1項】
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
Q&A(続き)固定資産税は私に全額の納付書が届きます。
私の持分割合2分の1だけを支払えば良いのでしょうか。
各共有者には全額の連帯納付義務があります。

民法上(253条1項),各共有者が共有持分に応じて固定資産税を分けて「負担する」ということになります。
しかし,それは共有者間の問題です。
対税務署では,連帯債務と同じ状態です(地方税法10条)。
結局,他の共有者が納税しない場合,仕方なく共有者のうち1人が納税せざるをえない,ということになります。
立て替えた状態になります。
勿論,その後,「立替分」についてを「未払共有者」に対して請求することはできます。
ただ,金額が大きいと,実際に請求して回収できるかどうかは分かりません。
この「連帯納付義務」は,以前より,徴税を偏重した,典型的な「悪法」と言われることもあります。
なお,「連帯納付」シリーズは次のとおりです。
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<連帯納付シリーズ>
・相続税→相続人間で連帯;相続税法34条1項
・贈与税→贈与者,受贈者で連帯;相続税法34条4項
・固定資産税→共有者間で連帯;地方税法10条 
【地方税法10条】
(連帯納税義務)
第十条  地方団体の徴収金の連帯納付義務又は連帯納入義務については、民法第四百三十二条 から第四百三十四条 まで、第四百三十七条及び第四百三十九条から第四百四十四条までの規定を準用する。
第十条の二  共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
2  共有物、共同使用物、共同事業又は共同行為に係る地方団体の徴収金は、特別徴収義務者である共有者、共同使用者、共同事業者又は共同行為者が連帯して納 入する義務を負う。 
Q&A(続き)共有不動産の固定資産税,管理費などを私(A)が立て替えて全額払っています。
兄(B)に立替分を請求していますが,一向に払ってくれません。
どうしたら良いでしょうか。
一定の金額を払うことを前提に,「Bの持分」を強制的に買い取る方法も あります。

勿論,一般的な債権回収方法として,訴訟や差押えなどの利用も可能です。
一方で,共有プロパーの回収方法も用意されています。
簡単に要件をまとめます。
1 共有物に関する費用の「立替分」をAがBに請求
2 1年間,Bは応じない
3 AはBに B持分に相当する評価額 を支払う(提供)
4 (3と同時に)「B持分を買い取る」旨の通知をする
以上によって,B持分はAに移転する,ということになります。
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【民法253条2項】
共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。 
Q&A(続き)B持分を買い取る金額はどのように決まるのでしょうか。
実勢相場・取引相場をベースにして,持分割合をかけて算定します。

実際には,この部分が「不確定要素」です。
一般的に,請求する側Aと受ける側Bで主張(評価額)が大きく異なる,ということが多いです。
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Q&A(続き)具体的に,どのようにしてB持分を強制的に買い取る方法を進めるのでしょうか。
「立替分」の請求,「買い取る」旨の通知は内容証明郵便を使うと良いで す。

後から,請求を受けたBが困って,「そんな請求や通知は受け取っていない」と反論することが考えられます。
そこで,請求や通知は証拠として残る内容証明郵便を用いるのが実務上の一般的手法です。
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Q&A(続き)強制的に相手方持分を買い取るということは共有物分割の全面的価額賠償でも同じではないです か。
負担不履行による持分取得,の方が不確定要素が少ないです。

共有物分割請求においては,具体的分割方法の1つとして「全面的価額賠償」という方法があります。
これは要するに「強制的に相手方の持分を買い取る」というものです。
この点,負担不履行による持分取得と同じです。
しかし,共有物分割請求の場合,相手方が別の分割方法(=現物分割,代金分割)を主張してくることがあります。
訴訟においても,裁判所がどの分割方法を採用するか,確定的に予測できないケースも多いです。
この点,負担不履行による持分取得,は,「他の方法」はありません。
この点で共有物分割請求より見通しが立てやすいです。
しかし,実務上,実は,負担不履行による持分取得,というのはレアです。
あまりよく知られていないということもありましょう。
しかし,条件さえ整ったケースでは,積極的に主要な作戦として用いるべきだと思います。
勿論,予備的に,共有物分割請求も併用する方が良いでしょう。
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共有不動産の賃貸借契約

Q&A【共有物の賃貸借契約】
兄弟ABCが3分の1ずつの持分で共有している土地があります。
友人が資材・機材を置く場所として貸して欲しいと言っています。
ABは賛成なのですが,Cが反対しています。
貸してあげることはできないのでしょうか。
過半数持分権者の賛成があれば賃貸借契約締結は可能です。

賛成のABの持分合計は3分の2です。
持分割合が過半数に達しています。
そこで,共有土地の賃貸借契約締結は可能です。
ただし,期間が5年まで,ということになります。
民法602条の期間(山林以外の土地は5年)を超える賃貸借契約は「変更」として,共有者全員の同意が必要となってしまうからです(民法251条;東京高 裁昭和50年9月29日)。
逆にこの期間を超えない賃貸借契約は,「管理」行為として持分割合過半数で決定することができるのです(民法252条本文)。
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Q&A【「管理」としての賃貸借契約の期間】
5年後までしか資材・機材置き場として使えないということでしょうか。
賃貸借契約の期間満了時に改めて持分の過半数が同意すれば賃貸借契約を 更新(再契約)することができます。

初回の賃貸借契約期間満了時に,再度5年間の賃貸借契約を締結することができます。
条件としては,初回の場合と同様に,持分割合の過半数の同意,です。
結果的に,賛成派が持分割合の過半数を持っていれば,延々と賃貸借契約を継続することが可能です。
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Q&A【共有者間での意思決定プロセス】
具体的に,Cへの説明や連絡はどのように行ったら良いのでしょうか。
Cには最低限通知しておくべきです。
賃貸借契約の「賃貸人」はABC全員を明記するとベストです。


共有不動産について賃貸借契約を締結する,ということは「管理行為」に該当します。
条文上,過半数で決する,ということだけしか規定されていません。
この点,特に協議や意見表明の機会を与えることすら不要,という考え方が主流です。
しかし,紛争の種を極力排除するために,次のような内容の通知をCにしておくと良いでしょう。
<使用方法決定の通知内容>
ABの同意によって,(ABC全員名義で)賃貸借契約を締結することにしました

さらに,決定する前の段階で,意見を聞くプロセスを書面で行っておくとベストです。
<意見を聞く書面の例>
共有土地について,Dとの間で,期間5年とした賃貸借契約を締結しようと考えています。
共有者全員から意見をうかがい,過半数で決定することにします。
Cの意見をn月m日までに書面でAまでお送り下さい。

勿論,結果的に,Cが反対の意思を書面で送ってきたとしても,ABが賛成である以上,「過半数」は達成→合法的に賃貸借契約締結が可能,となります。
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Q&A【共有不動産の賃貸借契約書】
共有者間の意思決定はしっかりとプロセスを踏んだとして,賃貸借契約書はどのように作れば良いのでしょうか。特に賃貸人をどうするのかが気になります。
賃貸借契約書には賃貸人として共有者全員(ABC)を明記しておくとベ ストです。

仮にCが反対していたとしても,「ABC全員の意思決定として」賃貸借契約締結を実行する,ということは了解していることになります。
まさに「過半数で決する」としている民法252条本文のルールそのものです。
賃貸借契約書にはABC全員を記載しておくべきです。
ここで,反対しているCを除外すると,次のような解釈が生まれるリスクがあります。
<共有者の一部を除外した賃貸借契約書のリスク>
共有者間での意思決定プロセスを欠いている,と解釈されるリスク
共有者の一部が独断で契約締結を実行した,と解釈されるリスク

なお,当然ですが,ABC全員を明記しても,署名・押印はABだけ,となります。
いわば,「貸主はABC全員です。だけど,代表として締結手続という事務作業についてはABが行います」という趣旨です。
より明確化を徹底するために,ABの署名には,「共有者ABC代表」と冠しておくとより良いでしょう。
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Q&A【反対する共有者の対抗措置】
共有土地を賃貸することに反対している者(C)としては,何か対抗策はないのでしょうか。
賃料(のうち持分割合分)の請求,共有物分割請求などの法的対抗策が考 えられます。

Cの立場からは,「賛成してもいないのに,賃貸を強行され,自分が使えない」という見方になりましょう。
勿論,法律は不公平を放置するわけではありません。
自分の持分が活用できない分,金銭の請求ができます。
理論的には,Cも「賃貸人」の1人に入っています。
そこで,賃料のうち共有持分割合分(この場合3分の1)を受け取る立場にあります。
例えば既にAが賃料を受け取っている場合は,Aに対し,不当利得返還金として請求することになります。
また,根本的に共有関係から離脱する方法として,共有物分割請求(民法258条)があります。
さらに,無償でも良いので共有から離脱する方法としては,共有持分の放棄(民法255条)も挙げられます。
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[民法]
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条  共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
(略)
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条  共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2  前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売 を命ずることができる。
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賃料債権・債務の(不)可分性

Q&A【賃料債権の可分性】
共有物の賃貸人の1人として,Cは賃借人に対して直接賃料を請求することはできないのですか。
共有持分割合分だけを賃借人に請求できる考え方もあります。
ただし,賃貸借契約の条項によっては直接請求ができない可能性もあります。


共有者の1人は,賃貸借契約の対象となっている共有物の賃料について,自らの持分割合を直接賃借人に請求できる,という解釈があります(最高裁判所平成 17年9月8日;後掲)。
これは,賃貸人が複数→賃料債権は可分→共有持分割合で各共有者が賃料債権を「分けて持っている」という解釈です。
しかし,この判例は,「元々賃貸借契約が存在→相続により旧賃貸人が死亡+新賃貸人が複数になった」というものです。
最初から賃貸人が複数存在する場合は,「賃貸借契約によって賃料支払方法が指定されている(優先される)」という解釈がされる可能性があります。
仮にCが賃借人に「賃料の3分の1相当額」を請求した場合,賃借人としては,そのとおりにすべきか否か,迷う状態になります(解釈が画一的ではない)。
そこで,賃借人は「債権者不確知」を原因として賃料を供託すべき状態となりましょう。
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[最高裁判所第1小法廷平成16年(受)第1222号預託金返還請求事件平成17年9月8日(抜粋)]
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した 結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと 解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定 的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。
Q&A【賃料債務の不可分性】
話は変わりますが,仮に賃借人が複数,という場合はどうなりますか。
(※「共有不動産」ではないですが,比較のためこの項目に配置します)
オーナー(賃貸人)が単数,賃借人が相続により複数になった,という事 例では,「各相続人(賃借人)は賃料全額の支払義務を負う」ということになります。

ちょっと古い判例ですが,結論として次のように解釈されています。
<判例の解釈>
オーナー(賃貸人)は複数の賃借人のうち,いずれに対しても全額の賃料請求が可能
(大判昭7.6.8,大判大11.11.24)

理由としては,「貸す」という債務が不可分→その対価である「賃料支払」も不可分,というものです。
簡単に説明を加えます。
オーナーからすれば,対象の不動産を賃貸人の人数分に切り分けて,それぞれの小エリアを各賃借人に貸すわけではありません。
そこで,逆に賃借人の債務である「賃料支払」についても切り分けることはしない,ということです。
結果的に,賃料債務は不可分である→誰に対しても全額を請求できる,ということになります(民法430条,432条)。
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[民法]
(不可分債務)
第四百三十条  前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。
(略)
(履行の請求)
第四百三十二条  数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請 求することができる。
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共有不動産の賃貸借契約(まとめ)

Q&A【共有不動産からの賃料分配】
共有不動産を賃貸している場合,賃料は誰が受け取るのでしょうか。
共有不動産から生じる賃料は,最終的に,共有持分割合に応じ,各共有者 が受け取ります。

共有物を対象とする賃貸借の賃料債権は可分とされています(最高裁平成17年9月8日;前出)。
そこで,各共有者が自己の持分割合に相当する金額を賃借人に請求できます。
ただし,賃貸借契約書での「支払方法」の指定によっては,契約書が優先となる場合もあります。
その場合,共有者のうち特定の者が賃料全額を賃借人から受け取り,他の共有者は受領者に対し,自己の持分割合分の金額を不当利得金として請求することにな ります。
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Q&A【共有不動産の賃貸借に関する意思決定方法】
私(A)と兄Bで2分の1ずつ土地を共有しています。貸地をする場合の話し合いではどうやって決めることになりますか。
決める内容によって,決定方法が変わります。

<賃貸借契約締結>
→持分の過半数が必要
民法602条の範囲内,かつ,借地借家法の適用がない賃貸借契約については,「管理行為」の1つとされています。
持分の過半数の賛成が必要です。
A・Bいずれも単独では決定できません。
上記条件に該当しない賃貸借契約は「変更行為」となり,共有者全員の同意が必要です。
いずれにしてもA・Bいずれも単独では決定できません。

<賃貸借解除(をすることの意思決定)>
→持分の過半数が必要
「管理行為」の1つとされています。
A・Bいずれも単独では決定できません。

<解除の意思表示の通知>
→単独で実行可能
仮に共有者間で「解除について決定」がなされた場合は,「解除の意思表示(通知)」自体はA・Bいずれかが単独で実行できます。
実行できるのは「通知」というアクションです。
解除の意思表示を通知する前提である,「解除する」という「意思決定」には,実行(解除通知発送)の実行権限は各共有者が全員持っているという解釈が主流 です。
勿論,先行する「解除することの意思決定」の際に,「Bが通知を発送する権限を持つ」と決めていれば,Aには通知発送の権限はないことになります。
この「解除する」という「意思決定」は持分の過半数の賛成が必要です。

結果的に,次のようになります。

意思決定はA・B2人で行う→通知というアクション(作業)自体はどちらか1人で良い

<不法占有者への明渡請求>
→単独で実行可能
「保存行為」の1つとされています。
A・Bいずれかが単独で不法占有者に対して明渡請求を行うことができます。

<借地権譲渡承諾>
→持分の過半数が必要
「管理行為」の1つとされています。
借地権譲渡によって新たな方が借地人になります。
借地のスタート,つまり賃貸借契約締結と同じ考え方です。
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共有不動産の借地権無断譲渡

Q&A【共有者の1名による独断での借地権譲渡承諾】
以前,A(私)・BでCに貸地をしました。ここまではA・Bで両方納得していました。
しかし,最近,BがAに無断で借地権譲渡(C→D)を承諾してしまいました。
Aはどんな対処法を取れますか。
無断譲渡として明渡請求ができます。
ただし,Dから建物買取請求権を行使される可能性もあります。


複雑な権利関係となります。
以下,原則的な解釈に基づく結論を,順に説明します。
なお,実際には,個別的な事情によって,多少イレギュラーな解釈がなされる可能性もあります。

<明渡請求>
→AからDに対する明渡請求が可能です。
確かに,DはCから借地権譲渡を受けたので,「借地権」を持っているように見えます。
しかし,借地権譲渡のためには地主の承諾が必要です(民法612条1項)。
土地が共有の場合は,地主が複数存在することになります。
その場合,持分の過半数が賛成しないと,正式な「承諾」にはなりません。
このケースではAが賛成していないので,Bだけでは過半数になりません。
そこで,結論としては「無承諾」の状態です。
そこで,Aから見るとDは,占有権原のない者,となります。
いわば不法占有者です。
不法占有者への明渡請求は,持分の過半数がなくても,共有者が単独で行えます。
結果的に,Aは単独でDに対して明渡請求を行うことができます。

<借地契約(賃貸借契約)の解除>
→A単独では借地契約の解除はできません。
借地契約の解除を決定するためには,土地の持分のうち過半数の賛成が必要です。
Aだけでは解除を決定することはできません。

<建物買取請求権>
→解除なし,だと,建物買取請求権を行使されることがあります。
借地権譲渡について,地主が承諾しない場合,借地人(借地権譲受人)は地主に対し,建物を買い取るよう請求することができます(借地借家法14条,借地法 10条)。
「無断譲渡」という,ちょっと非常識なことをした者を保護することになっているので,一見おかしな条文だと思えます。
この点,「無断譲渡」をされた地主として,対抗措置として「無断譲渡による解除」を行えば,借地権自体が消滅するので「建物買取請求権」を封じることがで きそうです。
しかし,判例では,解除したとしても,「無断譲渡の譲受人」までは「建物買取請求権」を行使できると判断しています(最高裁昭和39年6月26日;後 掲)。
解除をして封じることができるのは「無断譲渡の譲受人」がさらに借地権を譲渡した,という,さらに傍若無人な場合のみです。
なお,仮に賃貸借契約書に「建物買取請求権の行使はできない」と書いてあっても,その条項は無効です(借地借家法16条;強行法規性)。

<結論>
→A単独でできることは次のとおりになります。
明渡請求→○
解除→×
建物買取請求権を防ぐ→×(防げない)
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[借地借家法]
(第三者の建物買取請求権)
第十四条  第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転 貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求すること ができる。

(強行規定)
第十六条  第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。
[最高裁判所第2小法廷昭和37年(オ)第294号建物収去土地明渡請求事件昭和39年6月26日(抜粋)]
 借地法一〇条は、借地権譲渡につき土地賃貸人の承諾があれば適法に従来の借地権を取得しうる地位にある第三者が、賃貸人の不承諾のため借地権者となるこ とができない場合に、建物保護のために第三者に買取請求権を与えた規定である。従つて、同条の適用があるのは、賃貸人の承諾があるならば第三者において従 来の借地権を取得しうる場合、換言すれば借地権の存続中において第三者が建物等を取得した場合であることを要するものといわなければならない。原判決の引 用する第一審判決の確定した事実によると、本件土地の賃借人である上告人の所有する地上建物が滞納税金のため公売に付され、訴外Aがこれを買得したので、 本件土地の賃貸人Bは昭和二八年五月九日上告人に対し借地権の無断譲渡を理由として賃貸借契約を解除した後である同年九月Cが右地上建物の所有権を取得し たというのであるから、右Cに買取請求権の存しないことは原判示のとおりであつて、借地法一〇条の解釈を誤つたとの論旨は理由がない
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共有物分割

Q&A兄弟間で不動産を共有しています。
管理方法,家賃収入の分配でもめています。
どうしたら良いでしょうか。
共有状態の解消が決め手です。

共有不動産(土地・建物)は,多くの場面で制約があります。
勿論,共有者間で意見が一致していれば良いのですが,うまく意見が一致しないということがよくあります。
不動産は価値が大きい財産ですし,また,相続等により共有者の数が多くなることがあるので,意見の調整が難しくなることが多いのです。
根本的解決法としては「共有状態を解消する」ということになります。
共有状態が解消されれば、売却・賃貸・建物改修・建替えなどが自由に行えるようになります。
共有を解消することを「共有物分割」と言います。
Q&A共有物分割の具体的手続きはどのようなものでしょうか。
まずは協議を行い,まとまらない場合,提訴できます。

1 共有物分割協議(民法256条)
文字どおり,共有者全員で協議し,共有不動産を「分割」します。
実際には,共有者間の意見が割れて,この協議が暗礁に乗り上げることが多いです。
「分割」の具体的方法(種類)について案が出ても,全員が賛成しないと協議は成立しないのです。
2 共有物分割訴訟(民法258条1項)
ここで裁判所の出番です。
共有物分割協議が整わない場合は,裁判所に共有物分割訴訟を提起することができます。
裁判所は,個別的な事案の事情を総合的に考慮して,上記の3種類(現物分割,代金分割,代償分割)の中から適切な方法を決めて判決で言い渡します。
実際には,裁判官の和解勧告により,和解が成立することも多いです。
Q&A「共有物分割」によってどのように共有が解消されるのでしょうか。
共有解消の類型は3種類あります。

「分割」と言っても、物理的に切り取るという意味だとは限りません。
共有物分割によって,共有状態を解消する類型3種類をご説明します。
1 現物分割
文字どおり,現物,つまり不動産を物理的に分けることです。
土地の場合,線を引けば,土地を複数エリアに分けられます。単純に「分割」できます。
1個の建物の場合,通常は物理的に分けることはできません。
仮に面積が同じになるように分けても,形状,位置(接道)により有利・不利が生じることがあります。
2 換価分割
共有不動産を第三者に売却した上で,その売却代金を共有者で分ける方法です。
これであれば,「金額」を共有割合に応じて分けることになるので,有利・不利(不公平)は生じません。
ただし,第三者に渡ることになるので,代々承継した土地などについては取りにくい方法です。
3 代償分割
共有者のうち1名が対象不動産全部の所有権を得て,代わりに他の共有者に金銭(代金)を払う方法です。
この金銭のことを代償金と言います。
要は,共有持分を買い取る,という方法です。
この代償金の金額や,そもそも誰が対象不動産を獲得すべきか,というところでもめることもあります。

なお,共有物分割「訴訟」ではなく「協議」においては,「2」の方法は使えません。
「競売」という公的な手続きを用いるからです。
共有物分割協議では1・3方法を組み合わせることもあります。
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Q&A共有物の分割方法の組み合わせの具体例はどのようなものですか。
現物分割と代償分割の組み合わせはいくつもバリエーションがあります。

1 現物分割 + 価値の過不足を金銭で調整(対象土地は1個)
現物を分割し,その結果価値の過不足が生じた場合,「価値の差額分」を金銭で支払う方法です。
「一部価額賠償」と呼びます。
(最高裁判所 昭和62年4月22日)
2 隣接する複数個の共有土地について,一体として(まとめて)分割
複数個(筆)の共有土地が隣接しているので,物理的に見ると一団(一体となった)の土地ということになります。
複数の共有不動産をまとめて,共有物分割の対象とすることも可能とされています。
(最高裁判所 昭和45年11月6日)
3 離れて存在する複数個の不動産について,まとめて分割
複数の共有不動産を一括して分割することも可能とされています。
(最高裁判所 昭和62年4月22日)
4 原告サイドの共有状態だけが解消される(被告サイドの共有状態は維持)
これは共有者が多い場合です。
例えば,原告が2名で,被告(=共有関係の解消を望まない人)が8名,という場合,8名については,最後まで共有のままでも問題はない,ということです。
(最高裁判所 昭和62年4月22日)
5 被告サイドの共有状態だけが解消される(原告サイドの共有状態は維持)
4の逆です。
これも,共有者が多い場合に生じる形態です。
実質的・最終的に,原告サイドは,その内部で共有状態を解消する要請がなくなった,という場合にこの方法が取られることがあります。
(最高裁判所 平成4年1月24日)

以上のように,共有物分割では,交渉は当然として,訴訟の場合でも,各当事者の意向・状況を考慮して,柔軟な具体的解決法が取られます。
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Q&A共有物分割訴訟ではどのように解決方法を選ぶのでしょうか。
裁判所は,共有物の種類,性質,利用方法,当事者間の利益等の諸事情を 勘案します。

裁判所にはある程度の裁量が認められています。
例えば交通事故の損害賠償請求訴訟のように,数字的な計算だけで結論(分割方法)が決められるわけではないのです。
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Q&A 共有物分割訴訟では当事者の意見を反映してくれるのですか。
反映されます。裁判所は,利用状況や当事者の利益を考慮します。

具体的には当事者の希望,といった主観面です。
ただし,理論上は,裁判所は当事者の希望も含めて,あらゆる事情を元に判断するという構造になっています。
理論上は当事者全員が競売による代金分割を希望していても,現物分割の判決を出すこともできます。
実際に,裁判官が「このまま判決まで行った場合,双方の言い分と反して現物分割の判決を書くことになります」と予告してくれる,ということが経験上も何度 もあります。
逆に,その「予告」を振り切って,「当事者双方にとって不本意な判決」まで行くことは少ないです。
その前に,双方が適度に譲歩して和解が成立することが多いのです。
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Q&A 当事者全員が競売による代金分割を希望しているので,その内容で共有物分割協議を終わらせて,競売を行うことはできますか。
「競売」はできません。
不動産仲介業者を通して共有者全員で売却することはできます(共同売却)。

この点,非常に厳格・公正な裁判所の入札・開札システムを使いたいという考えもあるかもしれません。
裁判所の競売という「高級な公的サービス」は限定的な場合にのみ使うことができる,ということになっており,当事者間の協議のみによっては使えないことと されています。
一方,訴訟提起後に,裁判上の和解に至り,この和解内容として「競売する」ことを合意することも考えられます。
当事者の合意(協議結果)ではあるものの,裁判所も関与しておりますからグレーです。
実際に,肯定・否定の両方の裁判例があります。
結局は担当裁判官の見解次第ということになります。
ただし,実際には敢えて共同売却を避けて競売を強く求めるケースはレアです。
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全面的価額賠償(共有物分割)

Q&A私が長年居住している土地・建物が弟と共有になっています。
私としては,今後もこの土地・建物を持っていたいのです。
共有物分割訴訟でうまくこのような結果にできますか。
事情によっては,強制的に全面的に買い取る(単独所有にする)ことがで きます。

強制的に他の共有者から共有持分を買い取って単独所有にすることを「全面的価額賠償」と言います。
なお,このような金銭で相手方の持分を取得する方法は「全面的価額賠償」と呼ばれるものです。
これは条文(民法258条2項)には規定されていませんが,判例上認められています(最高裁平成8年10月31日,最高裁昭和62年4月22日)。
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Q&A全面的価額賠償はどのような場合に認められるのでしょうか。
ポイントは3つにまとめられます。

判例の挙げる要件は複雑ですが,ポイントをまとめると3つになります。
<全面的価額賠償の要件(ポイント)>
1 相当性
強制的に買い取る,ということ自体が合理的かどうか。
各当事者が対象不動産を使用する必要性の高さで判断されます。
2 買い取り金額の妥当性
客観的な評価額と整合しているかどうか,ということです。
3 資力
「2」の妥当な金額を実際に払えるかどうかです。
なお,ローンなどの融資を受けることを前提にすること自体は構いません。
勿論,融資の審査をパスする見込みがない場合は不利です。

なお,判例の挙げる要件をすべて拾うと次のとおりとなります。
<全面的価額賠償の要件(網羅版)>
1 共有物の性質及び形状
2 共有関係の発生原因
3 共有者の数及び持分の割合
4 共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値
5 分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無
6 当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められること
7 共有物の価格が適正に評価されていること
8 当該共有物を取得する者に支払能力があること
9 他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情があること
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Q&A全面的価額賠償が認められる例はどのようなものですか。
事例で示します。

【事例】
父Aと子Bがある建物に長期間居住していた
父Aが亡くなり,子Bと子Cが相続により当該建物を承継した
BとCは2分の1ずつの共有となった
Bは長年居住していた当該建物に今後も居住したい。Cは長年遠方に居住している。
Bには共有建物(及び敷地)の適正価格の2分の1をCに払う用意がある。
BはCにC持分売却を懇願したが,Cは断固拒否している。

判決:BはCに適正価格を支払うのと引き換えに,当該不動産のうちC持分を取得する(登記を得る)
この事例における判決では,
1 Bが当該建物を取得することが相当である
2 Bが買い取る価格が適正である
3 Bが2の金額を払う資力がある
という3つのポイントが重視されました。
結局,「強制買取」に成功したのです。
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Q&A 共有物分割訴訟で共有者の1人が他の共有持分を買い取る時の金額はどうやって決まるのですか。
実勢価格です。合意に達しない場合は中立の不動産鑑定士が鑑定を行いま す。

実際にはこの金額でもめることが多いです。この金額は,適正な相場の価格,であるとされています。固定資産税評価や路線価方式という簡単なものではないの です。
最初は各当事者が査定書を提出することがありますが,多くの場合は,評価額に開きが出てきます。
評価額の見解の違いが解消されなかった場合は,最終的には,裁判所が中立の不動産鑑定士を「鑑定人」として選任し,鑑定人が中立な立場で評価額を検討し, 鑑定書を作成することになります。
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区分所有と共有物分割

Q&A【区分所有を利用した共有建物の共有物分割】
1棟のビルがAB共有となっています。
部屋ごとに,AかBの単独所有にすることはできるのでしょうか。
区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)の適用により各専有部 分に ついてAかBの単独所有にできます。

本来,1つの物体,については,部分ごとに分けて所有者が違う,ということはできないはずです。
一物一権主義,というものです。
しかし,ビルやマンションのような大きな物体については,実際に,個々の部分(占有部分)が独立して使えるようになっています。
そこで,区分所有法によって,個々の専有部分ごとを所有権の対象(客体)とすることができます。
区分所有法の適用がある場合,登記も各専有部分で単独の登記ができることになります。
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Q&A【区分所有の対象建物】
どのような建物でも区分所有にできるのでしょうか。
構造上の独立性,利用上の独立性が必要です。

区分所有法の適用を受けるためには,対象となる建物自体について次のような条件が必要とされます(区分所有法1条)。
<区分所有の客観的要件>
・構造上の独立性
・利用上の独立性
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[区分所有法]
(建物の区分所有)
第一条  一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部 分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。 
Q&A【区分所有とした上での共有物分割(現物分割)】
ABの2人で1棟のビルを共有しています。
専有部分ごとにABで分けてそれぞれ単独所有したいです。
しかしBが一切話し合いに応じません。
どうしたら良いでしょうか。
共有物分割請求訴訟を提起すれば,判決で専有部分ごとに単独所有と でき る可能性があります。

「現物分割」の1種です。
土地であれば,線を引いて2つに分ければ,それぞれを単独所有とすることができます。
要は分筆するということです。
しかし,建物の場合,原則として,「分筆」のように部分ごとに分ける,ということができません。
現物分割はできないのが原則です。
しかし,区分所有とすれば,結果的に「1つの建物がバラバラになる」と言えます。
判決で「区分所有とした上で,それぞれの専有部分をA・Bに割り振る」ということも可能であると思われます。
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Q&A【区分所有の登記なしでの現物分割判決(否定例)】
登記上,区分所有になっていない建物について,判決で現物分割ができるのでしょうか。
登記上区分所有になっていなくても判決後に区分所有の登記をすれば 良い と思われます。
ただし,「区分所有にする」ということを否定した裁判例もあります。


この裁判例では,共有物分割に抵抗した被告が「建物の図面」を提出しませんでした。
そこで,裁判所は,「区分所有登記ができない」という理由で現物分割を採用しませんでした。
しかし,この裁判例には批判が強いです。
区分所有とするためには「建物図面が必要」という理論はありません。
「区分所有登記が必要」という理論もありません。
むしろ,判決により区分所有が確認されたら,そのとおりの登記が「判決を元にして」できるのです。
いずれにしても,この裁判例により,「区分所有による現物分割」が否定されたことにはならないと思われます。
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[東京地方裁判所平成17年(ワ)第25671号共有物分割等請求事件平成20年5月27日(抜粋)]
本件建物は,地下1階付き8階建て建物であり,その構造上,専有が可能な部分と共用部分とに分かれており,区分所有建物となり得るが,区分所有権の登記を するには,被告らが保有する本件建物の建築図面が必要であるのに,被告らがこれらの提出に応じないため,本件建物を区分所有する方法による現物分割が事実 上困難となっていることは前示のとおりである。したがって,本件建物の現物分割は,現状のままでは事実上困難といわざるを得ない。
Q&A【区分所有の登記なしでの現物分割判決(肯定)】
区分所有の登記ができなくても現物分割が認められることもあるのでしょうか。
十分にあります。

区分所有が成立するためには,登記などは関係なく,次のような要件が必要です。
<区分所有の成立要件>
(1)建物が構造上及び利用上独立した数区の部分からなる(客観的要件)
(2)区分所有する意思を外部に表明する(主観的要件)
  →この「意思表明」の一例
   ・区分所有登記の申請行為
   ・分譲マンション販売の広告

共有物分割請求訴訟の判決で区分所有とすることを明言すれば,(2)の意思表明に代わるものとなります。
建物の図面がない場合は,測量等を事後的に行えば済むことです。
少なくとも,区分所有法の条文・解釈において,「登記が前提条件」とされていることはありません。
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[区分所有法]
(定義)
第二条  この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
(略) 
Q&A【登記前の区分所有成立】
登記しなくても区分所有となる例はありますか。
一部(専有部分)を譲渡したり,担保権の設定などで,区分所有が成 立す ると解釈されています。

まず,1棟の建物(ビルやマンション)を単独所有していた場合でも,その後,一部(専有部分)を他者に譲渡した場合は,区分所有が成立します(大判昭和4 年2月15日
)。
つまり,区分所有の登記をする前であっても,区分所有が成立している,ということです。
同様に,区分所有の登記がなくても,一部(専有部分)に質権や抵当権を設定できると考えられています。
なお,区分所有法の条文上も,「元々1棟の単独所有でも区分所有が成立する」ことを前提とした条文があります(32条)。
いずれにしても,「区分所有の登記」は効力要件ではない,と解釈されているのです。
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[区分所有法]
(公正証書による規約の設定)
第三十二条  最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの 規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。
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形式的競売と担保権(住宅ローン)

Q&A【形式的競売における担保権の処理】
住宅ローンが残ったままです。
共有物分割で競売になったらどうなるのでしょうか。
売却代金から,優先的に担保権者(住宅ローン金融機関)に返済がされる 運用が主流です。

担保権が付いた状態で共有物分割による競売が行われた場合の処理の問題です。
担保権に基づく競売であれば,当然,売却代金から担保権者への弁済(配当)が優先して行われます。
しかし,共有物分割請求訴訟の判決に基づく競売は,担保権者が回収を要請しているものではありません。
このような特殊性があるので,一般の競売と区別して「形式的競売」と呼ぶこともあります。
形式的競売の際の担保権の処理について,実は,明確・確定的な決まりは現時点ではありません。
というのは,民事執行法上,形式的競売についてのルールは,「担保権の実行」を流用するということだけしか規定されていないからです(民事執行法195 条)。
考え方は2とおりあります。
<形式的競売の担保権の処理に関する説>
1 消除主義
担保権者への配当を行う。担保権は消滅する。
2 引受主義
担保権者への配当を行わない。担保権は存続する。
買受人が担保権の負担の付いた状態で購入する。
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[民事執行法]
(留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売)
第百九十五条  留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。

(不動産執行の規定の準用)
第百八十八条  第四十四条の規定は不動産担保権の実行について、前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第三目の規定は担 保不動産収益執行について準用する。 
Q&A【消除主義と引受主義の選択(判決段階)】
ローンの付いたままで共有物分割→競売,となった場合,ローンは残るのでしょうか。それとも抹消されるのでしょうか。
どちらの方式を採るかは,執行裁判所が判断する,ということになってい ます。

共有物分割請求訴訟で,代金分割(換価分割)という結論の判決が下されることがあります。
この場合,担保権が付いている場合,これを抹消する前提(消除主義)を採るか,存続する前提(引受主義)を採るかは,判決には書かれません。
その後,実際に競売の手続きを行うのは,判決を出した部署ではなく,別の部署です。
執行裁判所,と呼びます。
そして,肝心の,消除主義か引受主義か,どちらを採るかは執行裁判所が独自に判断をする,ということになっています(裁判例後掲)。
むしろ,判決では指定されない,という方が分かりやすいです。
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[東京高等裁判所昭和60年(ネ)第343号建物所有権移転登記手続、預り金請求控訴事件昭和61年3月24日(抜粋)]
なお、民法258条の規定による換価のための競売については、民事執行法第一九五条により担保権の実行としての競売の例によるものとされているが、目的物 件に設定されている抵当権が売却により消滅するものとすべきか否かは、本来、当該競売裁判所が同法の規定に基づき決定すべきものと解されるから、右抵当権 の消滅を前提としたその余の部分は不相当であって取消しを免れず、その限り(原判決が認容できないこと)において本件控訴は一部理由がある 
Q&A【消除主義と引受主義の選択(競売実行段階)】
実際に,共有物分割の競売を申し立てると,ローンはどのような扱いになるのでしょうか。
担保権者への配当を行い,担保権は消滅(抹消)する,という消除主義が 主流です。

少なくとも,東京地裁の執行センターでは,消除主義で運用されています。
勿論,これは条文などの明確なルールに基づくものではありません。
個別的事情,要請によって判断が異なる場合もありましょう。
実際に個別的事情を考慮して引受主義の採用を前提とした判決(裁判例)もあります(後掲)。
この裁判例においては,次のように考えられ,消除主義は採用されず,引受主義が採られました。
<引受主義を採った裁判例において考慮された特殊性>
1 被担保債権の債務者が被告であった
2 仮に形式的競売で担保権者への配当を行った場合(消除主義)の不都合性
 ア 被告の債務が減る
 イ 原告の配当が減る
 →不公平
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[京都地方裁判所平成21年(ワ)第909号共有物分割請求事件平成22年3月31日(抜粋)]
 1 争点(1)(本訴請求が権利の濫用に当たるか,あるいは訴えの利益を欠くか。について
   上記第2,1(4)(5)の事実によれば,本件土地のみについて共有物分割のための競売を申し立てたとしても,現時点の価格からすれば,競売手続が 無剰余取消しとなる可能性がある(民事執行法195条,188条,63条1項2号,2項本文)。しかし,優先債権者である本件根抵当権者が同意をすれば手 続は取り消されない(同法63条2項ただし書)し,原告らは本訴において本件土地について競売を命ずる判決を得たとしても,直ちにこれに基づく競売の申立 てをすべき義務を負うものではなく,将来的には,被担保債権がFの弁済により減少し,あるいは不動産市況の変化により,剰余金を受け取る可能性が残されて いるのであるから,近時の状況からすれば前記の取消しの可能性があるからといって,本訴請求が権利の濫用に当たる,あるいは訴えの利益を欠くということは できない。
(略)
2 争点(2)(全面的価格賠償の方法による共有物分割の適否)について
(略)
このように考えると,共有物分割の対象となる不動産の価格を検討するに当たって,その不動産に設定されている被担保債権額をどのように考慮するかについて は,第一に,その被担保債権に係る債務者の無資力のリスクの程度を検討すべきであり,考慮すべきリスクがあるとすれば,それを共有者の間でどのように負担 させるのが公平であるかという点からの検討も必要であるというべきである。
    これを本件についてみると,本件根抵当権の債務者はFであり,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,Fは,順調とはいえないまでも,本件根抵 当権の被担保債権に係る債務の弁済を継続しており,直ちに無資力に陥る状況にあるとは認められない。また,Fが無資力になるリスクがあるとしても,Fは被 告らの同族会社というべきものであって,そのリスクは被告らが負うのが公平であり,原告らに負わせるべきではない。
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オーバーローンと共有物分割

Q&A【オーバーローンと形式的競売】
住宅ローンがオーバーローンとなっています。
この状態で共有物分割での競売ができるのでしょうか。
原則として,無剰余差押の禁止に抵触し,競売できないと思われます。

担保権者にも配当し,担保権が消滅するという前提(消除主義)の場合,オーバーローンだと,ローン債権の全額が弁済(配当)されません。
ローンの一部が残ることになります。
逆に,共有者で分配する原資がゼロとなります。
「不動産だと分けにくいので現金化して分けよう」という換価分割の意味がなくなります。
民事執行法上も似ている趣旨のルールがあります。
オーバーローンの物件については,配当を受けられる担保権者は申立ができますが,配当を受けられない(と予想される)債権者は差押が禁止されています(民 事執行法63条)。
結局,オーバーローンの場合は,共有物分割による形式的競売でも原則的に,「無剰余差押」として,競売申立ができない,ということになります。
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[民事執行法]
(剰余を生ずる見込みのない場合等の措置)
第六十三条  執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第四十七 条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
一  差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用である もの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
二  優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。
2  差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつ ては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に 定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、そ の期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える 場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意 を得たことを証明したときは、この限りでない。
一  差押債権者が不動産の買受人になることができる場合
     申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
二  差押債権者が不動産の買受人になることができない場合
     買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する 保証の提供
Q&A【オーバーローンでも形式的競売が可能な場合】
オーバーローンでも競売できるという例外はないのでしょうか。
消除主義を採用しない,担保権者の同意を取り付けた,という場合であれ ば競売申立ができます。

オーバーローンのため無剰余差押の禁止に抵触するのは,あくまでも消除主義を前提とするものです。
引受主義が採用されれば,理論上,競売申立はできるということになります。
担保権はそのまま存続する,つまり,純粋に所有者だけが変更する,ということになります。
ローン残債の金額は,他に影響を与えないということになるのです。
つまり,引受主義の場合,民事執行法63条は適用されないと考えられます。
次に,消除主義であったとしても,担保権者の同意を得れば,無剰余差押の禁止の規定は適用されません(民事執行法63条2項但書)。
「担保割れ確定」という不利益を受ける債権者が同意すれば問題ないからです。
(担保権者は元々オーバーローンでも競売申立ができます)
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Q&A【引受主義での形式的競売の特殊性】
担保権が残る前提で競売になったら一体どうなるのでしょうか。
買い手が付くのでしょうか。
引受主義で換価分割(代金分割)がなされたと仮定すると,共有者のうち 1人が入札し,安く買い取るチャンスです。

共有者の1人が安く不動産全部を取得できる可能性が高いと言えます。
このようなケースでは,入札する者の立場としては,非常に不確定要素が多いです。
実質的な負担が未確定です。
仮に,被担保債権のうち大部分が返済されないことになれば,競売で強制的に不動産を失い,手に入る剰余金も僅かかゼロとなることになり得ます。
ですから,入札者は関係者以外では居ないか,居ても入札額は著しく低いことになりましょう。
元々共有者であった者くらいしか入札しない,ということも十分に考えられます。
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全面的価額賠償と担保権

Q&A【全面的価額賠償における担保負担控除の有無】
ローンの付いている不動産が共有となっています。
全面的価額賠償となった場合の買取金額はローン分を差し引いた金額になるのでしょうか。
明確な決まりはありません。オーバーローンの事例で実質的に控除した裁 判例があります。

全面的価額賠償は,相手方の共有持分を強制的に買い取るのと同じことです。
そうすると,その「代金額」について,客観的な価値からローン残額分を控除すべきとも思えます。
この点について,結論として明確・統一的なものはありません。
そもそも,一般的に,担保の負担付のままで行われる不動産取引はほとんどありません。
「相場」と言える程度の市場もありません。
理論的に突き詰めれば,その担保権の債務者が完済すれば「担保負担付不動産の買主」の実質的な担保権の負担はゼロ,と言えます。
債務者の返済が不能となれば,「担保負担付不動産の買主」が代わりに弁済しない限りは担保権実行により,不動産が奪われることになります。
しかし,仮に競売で不動産が奪われたとしても,他にも担保がある場合は,「売られた(元)所有者」は「他の担保」を行使できる立場になることができます (法定代位;民法500条)。
とにかく,共有物分割による全面的価額賠償の場面で,担保権の負担を考慮(控除)するかしないかは一律に決まっていないのです。
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Q&A【担保分控除の有無の判断要素】
全面的価額賠償の場合に,担保権分を差し引くか差し引かないかはどうやって判断されるのでしょうか。
実質的に,取得した者が負担する程度・可能性によって判断します。

全面的価額賠償によって,相手方の共有持分を取得した者が,現実的に負担する(と予想される)内容は個別具体的な事情によって異なります。
<担保権に相当する金額を控除するか否かの判断要素>
・債務者の資力
 ・プラス・マイナスの財産
 ・収支状況
・担保権が実行された場合に所有者が法定代位により取得する担保権
 ・他の共同担保の内容・対象財産の価値
 ・保証人の有無・保証人の資力
・実質的に,共有持分の取得者が担保権を負担する合理性
 ・取得者自身が債務者であれば,担保権の負担は当然→控除しない,という傾向です。
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Q&A【離婚時のオーバーローン住宅→全面的価額賠償】
実質的な判断で,担保権を控除するかどうかを決めたという例はありますか。
離婚時のオーバーローン住宅の処理として,担保額の負担分を控除した金 額で全面的価額賠償を認めた裁判例があります。

この裁判例においては,「実質的に,共有持分の取得者が担保権を負担する合理性」について,個別的な事情を重視して判断しました。
<事例>
・離婚に伴う自宅建物の共有物分割請求訴訟
・建物=(元)夫婦(及びその親族)の共有
・土地の使用権原は「使用貸借契約」

次のような特殊事情によって,「担保権の負担を控除した金額での全面的価額賠償」による判決が言い渡されました。
<裁判例において考慮された特殊事情>
・土地の利用権が使用貸借である(弱い)
・被告が居住することはないこと
・仮に財産分与として考えた場合,原告が取得しても代償金は発生しないと考えられる

正確には,オーバーローンなので,「担保権の負担」を価値から控除するとゼロ(マイナス)になります。
しかし,共有の理論により,共有持分は一定の利用権限があります。
その意味で「ゼロ」ということにはならず,代償金として100万円だけを認めました。
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[東京地方裁判所平成16年(ワ)第14467号共有物分割請求事件平成18年6月15日(抜粋)]
 二 被告の全面的価格賠償の主張の当否について
 1 本件建物の固定資産評価額は954万300円であり,被担保債権残額は2200万円を超えている。また,本件土地は被告,花子,葉子の共有であり (争いがない),その固定資産評価額は1563万1570円である(以上につき乙五,六,八)。
 本件建物の敷地利用権は使用貸借にすぎないものと考えられる(原告も特に争っていない)。なお付言すれば,本件の事実関係では法定地上権も成立しないと 考えられる(最判平成6年12月20日民集48巻8号1470頁参照)。
 そうすると,本件建物を競売した場合に原被告に分割する剰余金が生じるとは考えにくい(むしろ,かなりのローン債務が残存するものと考えられる)。
 2 さらに,本件建物には花子,被告,葉子,原告と花子の子らが居住しており,原告と花子は離婚している(争いがない)し,原被告間にも熾烈な争いがあ ることは本件からも明らかであるから,原告がここに居住する可能性も現実問題としてはほとんどありえないと考えられる。
 3 以上のような事実関係の下では,本件建物の共有物分割の方法として全面的価格賠償によることは,価格賠償の金額が適性に評価され,被告がその資力を 有する場合には,相当な方法であると考えられる。
 4 この点につき,原告は,全面的価格賠償に当たって基準とする本件建物の価格は,抵当権の被担保債権を控除しない本件建物の時価と考えるべきであると 主張し,その根拠として,前記(ア),(イ)のとおり述べる。
 しかし,右(ア),(イ)の主張については,本件建物の処分によって抵当権の被担保債権が消滅あるいは減少することを前提としているが,全面的価格賠償 の場合についてはそのようなことはないし,また,右主張は,競売による代金分割の場合(前記のとおり原告に分割すべき剰余金も生じない)と比較して著しく 不均衡であることからしても,採ることができない(なお,原告の主張する本件建物の価格〔3461万9256円〕を基準にその主張に基づいて計算すると, 全面的価格賠償の金額〔1700万円を超える〕が原告主張の出費の金額〔1254万8000円〕を超えてしまうが,このことも,原告の主張自体の問題点を 示すものと言えよう)。
 むしろ,本件における利益状況は,花子を被告側の人間と考えるならば,被告主張のとおり,離婚財産分与の場合に近いのであり,その場合には,通常,不動 産の時価から債務額を控除した残額が財産分与に当たって考慮されるにとどまり,オーバーローンの場合,ことに本件のように不動産を取得する側が債務をも全 面的に負担する場合には,オーバーローンに係る不動産は財産分与に当たって考慮の対象とされないことを考慮すべきであろう。
 そうすると,本件における全面的価格賠償の適正な金額は,前記の原告持分割合を前提として本件建物について原告が有するところの潜在的利益を総合的に考 慮した金額とするほかないと思われるが,前記のとおり,原告がここに居住する可能性が現実問題としてはほとんどありえないことを考慮するならば,その金額 が,被告主張の100万円を超えることはないものと解される。
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オーバーローンの共有不動産の解決(まとめ)

Q&A【オーバーローン不動産の共有物分割請求訴訟】
オーバーローンになっている共有不動産があります。
共有者間で話し合いましたが決裂しました。
結局どうしたら良いのでしょうか。
共有者の1名が取得(買い取り)する希望があれば,共有物分割訴訟が有 力候補です。
誰も取得希望がないと共有物分割訴訟は実効性に欠けます。


まず,更地で接道義務の点を踏まえても複数の部分に分けられるということであれば,現物分割が可能です。
現物分割を目指して共有物分割訴訟を提起する方法は効果的でしょう。
優先順序からすると,次に,換価分割(代金分割)を考えることになります。
しかし,オーバーローンの場合,換価分割は大きな問題があります(別の解説;改めて口述します)。
先に,優先順序で言うとラストの全面的価額賠償を考えます。
まず,全面的価額賠償は,前提として,共有者のうち1名が「自分で買い取る」ことを希望(主張)している必要があります。
また,当然ですが,全面的価額賠償が採用されるためには,買い取る希望価格が適正妥当な金額であることも必要です。
<全面的価額賠償の扱い>
・買い取りを希望する共有者がいる
 1 買い取り希望額が適正
   →他の方法が困難なので,消去法的に採用され易い
 2 買い取り希望額が適正価格を下回っている
   →採用できない
・買い取りを希望する共有者がいない
 →採用できない
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Q&A【オーバーローン不動産→換価分割の判決】
オーバーローンの共有不動産の共有物分割で,現物分割も全面的価額賠償もダメ,という場合はどうなりますか。
換価分割(代金分割)の判決になると思われます。

共有物分割訴訟では,原則的に,何らかの結論を出して,判決にしなくてはなりません。
結論を出さない,「棄却の判決」は権利濫用を適用するようなレアケースだけです。
結局,現物分割も全面的価額賠償も現実的に採り得ない,という場合は,消去法的に,換価分割の判決となるはずです。
確かに,オーバーローンの不動産を競売(形式的競売)にかける,というのは非常に問題が大きいです。
ただし,「競売を申し立てた後の問題」よりも,「共有物分割訴訟で結論(判決)を出す」ことの方が優先です。
そこで,とりあえずは,「換価分割の判決」が出ることになるのです。
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Q&A【オーバーローンと形式的競売(まとめ)】
オーバーローンの共有不動産について,換価分割の判決が出た後はどうなるのですか。
競売が実際に遂行できない状態で終わる可能性が高いです。

オーバーローンの共有不動産について形式的競売を行った場合の問題点(結論)をまとめます。
<オーバーローン不動産の形式的競売における処理>
1 執行裁判所が消除主義を採る+担保権者の同意なし
→無剰余差押の禁止として競売申立について「手続の取消」で終わる(民事執行法63条)。
2 執行裁判所が消除主義を採る+担保権者の同意あり
→競売自体は遂行される。
 しかし,売却代金は全額が担保権者の配当に回り,共有者の手元には配当(剰余金交付)がなされない。
3 執行裁判所が引受主義を採る
→競売自体は遂行される。
 しかし,買受人は担保の負担を負う(引き受ける)ので,入札者が現れないと思われる。

結局,「2」の場合だけは競売が遂行され,買受人が現れることが期待できます。
その場合でも共有者は手元に代金が残ることにはなりません。
この状態は要するに,「担保権が実行された」状態と同じです。
ここで,担保権者の立場で考えると,元々「担保権実行のタイミング」については選択権があるわけです。
担保権者は競売に「同意」することは少ないと思われます。
<想定される担保権者と共有者とのやりとりの想定>
共有者:競売を承諾してくれませんか
担保権者:担保権実行のタイミング選択権を奪わないで下さい。滞納になった時に実行するかどうか考えますんで。
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Q&A【オーバーローン不動産→換価分割判決の実効性】
オーバーローンの不動産について,換価分割の判決を得ても意味はないのでしょうか。
あまり実効的な成果とは言えないでしょう。
将来,オーバーローンを脱した時には実用性が生じましょう。


オーバーローンの共有不動産については,形式的競売をしてもあまり効果的な結果は生じません。
敢えて言えば,将来意味が出てくる可能性はあります。
つまり,将来,被担保債権の弁済が進み,残債務額が減り,不動産の価値を下回れば,「オーバーローン」の状態を脱します。
その時点で形式的競売を申し立てれば,「無剰余差押の禁止」が適用されることにはなりません。
一般論として,判決には有効期限,という制限はありません。
競売申立において,執行裁判所が,原則どおり消除主義を採る場合は,「剰余」はゼロではないけど僅かだけ,ということになりましょう。
そうすると,共有者への配当(剰余金交付)も僅か,ということになりましょう。
いずれにしてもあまり実効性はない,と言えましょう。
結論として,「判決はもらえるけど,それを元に競売することはできない」という状態になる可能性が高いということです。
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Q&A【共有物分割請求訴訟→相手方との駆け引き】
共有物分割訴訟を提起すれば,他の共有者が買い取り希望を出してくる,可能性にかけて提訴するというのはどうでしょうか。
その作戦も実効性が強くないと思われます。

確かに,一般の(オーバーローンではない)共有物分割の案件においては,提訴した場合に,相手方が買い取り(全面的価額賠償)の希望を出してくることを想 定する場合もあります。
典型例は,その共有不動産に相手方が居住しているような場合で,その不動産が競売→人手に渡る,ということを避けたいと強く希望するのが一般的だからで す。
しかし,オーバーローンの場合,共有物分割訴訟やその後の形式的競売の理論について詳しく知っていれば,この一般論が通用しません。
つまり,「どうせ判決になっても人手に渡ることにはならない」と思って,戦略的に,敢えて「買い取り(全面的価額賠償)の希望を出さない」という流れにな りがちだからです。
結局,共有物分割訴訟を提起すること自体にあまり意義がない,ということが言えます。
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Q&A【オーバーローン不動産の共有物分割の実効性(まとめ)】
オーバーローンの場合,共有物分割による解決は意味がない,ということでしょうか。
現物分割可能,買い取り希望者がいる,という場合は実効性が高いです。

以上の,共有物分割の実効性が低い,という結論は次のような条件が前提となっています。
前提が違う場合は原則どおり,共有物分割訴訟による解決の実効性は高いです。
<オーバーローンでも共有物分割訴訟の実効性が高い場合>
・現物分割が可能
・共有者のいずれかが買い取り(全面的価額賠償)を希望している
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Q&A【オーバーローン不動産と共有持分放棄】
共有物分割の裁判以外で共有から脱する方法はないのでしょうか。
共有持分放棄という手段もあります。
ただ,被担保債権についての債務者(保証人含む)となっている場合は,あまり意味がないでしょう。


共有物分割,という手段以外に,共有関係から脱する手段としては,共有持分放棄(民法255条)があります。
一方的に,放棄する,旨の通知を出すことにより,自分の持分を他の共有者に渡すことになるのです。
オーバーローンの共有不動産の場合,実質的な価値がなく,固定資産税等の負担をするマイナス面だけが残る,ということもあります。
その場合は,共有持分放棄により共有関係からの離脱が実現します。
ただし,担保権の被担保債権について,(連帯)債務者や保証人になっているなど,債務を負っている場合は,共有関係から離脱しても,「債務が解消した」こ とにはなりません。
むしろ,仮に後日,不動産の売却により弁済がなされた場合,他の共有者から「求償請求」を主張されるリスクを残すことになります。
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共有物分割禁止特約

Q&A 共有物分割禁止特約って何ですか。
一定期間,共有物分割請求を封印する約束のことです。

共有不動産は管理の煩雑さから,解消することが好ましいとは言えますが,一方で,共有のままにしておきたい場面もあります。
争いを避けるため,敢えて現状の共有状態にしておくということです。
休戦条約とでもいいましょうか。
具体例では,賃貸ビルが共有となっている場合,そのままの状態であれば,賃料収入(から経費を控除した利益)を共有者で分配することになります。一定期間 は賃料収入の発生を維持したいということもあります。
さらに,そのビルの一部(1室)に共有者の1人が居住しているので,第三者の手に渡らないようにしたい,というケースだとなおさら「分割請求を封印した い」ということになりましょう。
このような場合に,共有者間で共有物分割請求をしない,ということを合意しておきます。これを「分割禁止特約」と言います。
なお,この「分割禁止期間」は最長5年,更新可能,と規定されています(民法256条1項但書,2項)。
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共有持分放棄

Q&A【共有持分放棄】
ある土地が私Aと兄弟BCの共有になっています。
一部は貸地になっていて少しは地代収入がありますが,大部分は荒れ地です。
結局,固定資産税と収入が同じくらいです。
共有から抜けることはできませんか。
共有持分放棄という手段が使えます。

一般的に,共有関係を解消する手段は「共有物分割請求」です。
しかし,共有物分割請求の場合,協議がうまくまとまらなかったり,訴訟を提起しても,希望どおりの結論にならないことがあります。
例えば,売却して代金を分けることを希望しても,現物分割となることもあります。
(現物分割の例=物理的に土地を複数エリアに分筆して各自の単独所有にする)
この点,共有持分放棄であれば,文字どおり,一方的な放棄です。
持分放棄をした者の持分が,他の共有者に付け加わることになります。
具体的には,「共有持分を放棄する」という通知を出せば,その者の共有持分は消えて,その分,他の共有者の持分が追加される,ということになります。
実際に行う場合は,記録(証拠)として残すために,内容証明郵便を用いると良いでしょう。
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[民法]
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条  共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
Q&A【台帳課税主義(固定資産税等)】
共有持分放棄の通知を出しましたが,他の共有者BCが登記をしてくれません。
結局,登記上は私Aを含めてABCの名義となったままです。
固定資産税は私にも課税されるのでしょうか。
課税されます。

確かに,登記だけ遅れていて,「所有権」(共有持分権)は法律上・理論上移転しているのだから,不当な感じがします。
しかし,税金の世界では,非常に形式的・杓子定規なところがあります。
「台帳課税主義」という考え方が採られています。
不動産の場合,登記上の名義がある人,が課税されることになると法律上規定されているのです(地方税法343条2項)。
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[地方税法]
(固定資産税の納税義務者等)
第三百四十三条  固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下固 定資産税について同様とする。)に課する。
2  前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については、当該家屋に 係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項 の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されてい る個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第 三百四十八条第一項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
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共有不動産の固定資産税

Q&A【固定資産税の連帯納付義務】
ABCで不動産を共有しています。
固定資産税は誰が払うべきなのでしょうか。
共有者で分担すべきです。ただし,市町村に対しては連帯納付義務が あります。

共有不動産の固定資産税や都市計画税については,共有者間で,共有物の負担として持分割合で分担することになります(民法253条1項)。
しかし,市町村との関係では,共有者全員が全額についての連帯納付義務を負います。
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[民法]
(共有物に関する負担)
第二百五十三条  各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
[地方税法]
第十条の二  共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
(略) 
Q&A【共有物の代表者指定(変更)届】
市に対して,共有物の代表者の指定届を出しておけば,他の共有者は税金の請求は来ないということですか。
共有者全員が連帯納付義務を負うことに変わりはありません。

連帯納付義務者(共有者)の代表者指定(変更)届,という制度が各市町村であるはずです。
これは,あくまでも事務的に,固定資産税・都市計画税の納付書を送付する宛先・宛名を指定するものです。
納税の義務自体は,共有者全員で連帯して負っていることに変わりはありません。
具体的には,仮に「代表者」が納付しないままでいると,他の共有者が固定資産税の全額分の請求を受けたり,財産の差押を受けたりすることがあるということ です。
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登記引取請求権

Q&A【登記引取請求権】
共有持分放棄の通知をした後,共有者BCへの移転登記を実現するにはどうしたら良いでしょうか。
登記引取請求訴訟を提起して判決を取得すれば,A単独で移転登記ができます。

通常は,登記を渡してくれないから「登記移転請求」を行うことがよくあります。
共有持分放棄,の場合は,元々「自分の持分を相手に渡す(押しつける)」というベクトルです。
そこで,「登記を強制的に渡す請求」ということになります。
以前は,解釈上認められるかどうかが不明でした。
しかし,最高裁判例(後掲)が出た後は,一律に認められるようになっています。
また,この訴訟自体は,基本的には「共有持分放棄の通知」を立証すれば良いだけです。
内容証明郵便などでしっかりと記録化されていれば,シンプル・スピーディーな審理となりましょう。
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[最高裁判所第2小法廷昭和33年(オ)第1128号所有権移転登記抹消登記手続等請求事件昭和36年11月24日(抜粋)]
真実の権利関係に合致しない登記があるときは、その登記の当事者の一方は他の当事者に対し、いずれも登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請 求権を有するとともに、他の当事者は右登記請求に応じて登記を真実に合致せしめることに協力する義務を負うものというべきである。
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共有持分放棄と贈与税

Q&A【共有持分放棄と贈与税】
共有持分放棄で,持分を他の共有者に渡すことができました。
何か税金はかからないのでしょうか。
持分を受け取った側に贈与税が課税されます。持分放棄をし た側も連帯納付義務を負います。

一方的な通知(意思表示)によって,結果的に(見掛け上),「持分が動いた」と言えます。
そして,これは売買のような代金(対価)がありません。
つまり,「無償で財産が動いた」ということになります。
そうすると,税務上は「贈与と同じ」という扱いを受けます(みなし贈与;相続税法9条,国税庁の解釈)。
結局,贈与税の課税対象になります。
そうすると,財産を取得した者に贈与税が課税されます。
そして,財産を渡した者(=共有持分放棄を行った者)も連帯納付義務を負います(相続税法34条4項)。
ですから,共有持分放棄を行おうとする場合,事前に,非課税枠などを元に,課税額が生じるかどうかをしっかりとシミュレートしておくべきなのです。
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[相続税法]
第9条 第5条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を 受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金 額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受け る者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その 贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。

(連帯納付の義務等)
第34条 (略)
4 財産を贈与した者は、当該贈与により財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額に当該財産の価額が当該贈与税の課税価格に算入された財産の 価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額として政令で定める金額に相当する贈与税について、当該財産の価額に相当する金額を限度として、連帯納付の責 めに任ずる。
[国税庁の解釈]
(共有持分の放棄)
9-12 共有に属する財産の共有者の1人が、その持分を放棄(相続の放棄を除く。)したとき、又は死亡した場合においてその者の相続人がないときは、そ の者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得したものとして取り扱うものとする。
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相続時の遺産分割との関連

Q&A 遺産分割の話し合いがつきません。
遺産分割調停(審判)と共有物分割訴訟のどちらの手続きを取るべきですか。
遺産分割未了であれば,まずは遺産分割調停や訴訟を行うこ とになり ま す。

遺産分割未了の状態の共有は,「遺産共有」と言われています。
要は,暫定的な共有状態であり,その後,遺産分割協議(や調停・審判)によって,内容が変わる可能性がある,という意味です。
ですから,遺産分割専用の手続きである遺産分割調停(審判)の方が,共有物分割訴訟よりも優先されるのです。
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Q&A遺言に「A不動産を長男と次男に2分の1ずつ相続させる」と記載されています。
長男・次男で話し合いが決裂しています。
どうすれば共有を解消できますか。
共有物分割訴訟が典型的な解決方法です。

既に,遺言により,遺産分割は終了しています。
遺産分割調停や審判ではなく,共有物分割という方法になります。
管轄は,家庭裁判所ではなく,地方裁判所(原則)となります。
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Q&A 遺産分割未了の状態で,相続人の1人が遺産の不動産持分を第三者に売却してしまいました。
この場合,遺産分割調停(審判)はできますか。
遺産分割調停・審判はできません。共有物分割訴訟は可能で す。

遺産分割未了の場合は,原則として遺産分割調停(審判)を行うべきです。
しかし,既に相続人以外の第三者が関わっている場合は,「遺産分割」ではなくなります。
そうすると,一般の共有関係解消の手続きである「共有物分割訴訟」の手続きを利用することになります(判例は末尾に引用)。
なお,相続人の1人が第三者に譲渡したものが「共有持分」ではなく「相続分」であった場合は,譲渡後も「遺産共有」状態になります。
従って,第三者も含めて「遺産分割調停(審判)」を行うことになります。
間違えやすいので注意が必要です。
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【最高裁判所 昭和50年11月7日(抜粋)】
 しかし、共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法二四九条以下に規定する共有としての性質を有すると解するのが相当であつて (最高裁昭和二八年(オ)第一六三号同三〇年五月三一日第三小法廷判決・民集九巻六号七九三頁参照)、共同相続人の一人から遺産を構成する特定不動産につ いて同人の有する共有持分権を譲り受けた第三者は、適法にその権利を取得することができ(最高裁昭和三五年(オ)第一一九七号同三八年二月二二日第二小法 廷判決・民集一七巻一号二三五頁参照)、他の共同相続人とともに右不動産を共同所有する関係にたつが、右共同所有関係が民法二四九条以下の共有としての性 質を有するものであることはいうまでもない。そして、第三者が右共同所有関係の解消を求める方法として裁判上とるべき手続は、民法九〇七条に基づく遺産分 割審判ではなく、民法二五八条に基づく共有物分割訴訟であると解するのが相当である。けだし、共同相続人の一人が特定不動産について有する共有持分権を第 三者に譲渡した場合、当該譲渡部分は遺産分割の対象から逸出するものと解すべきであるから、第三者がその譲り受けた持分権に基づいてする分割手続を遺産分 割審判としなければならないものではない。のみならず、遺産分割審判は、遺産全体の価値を総合的に把握し、これを共同相続人の具体的相続分に応じ民法九〇 六条所定の基準に従つて分割することを目的とするものであるから、本来共同相続人という身分関係にある者または包括受遺者等相続人と同視しうる関係にある 者の申立に基づき、これらの者を当事者とし、原則として遺産の全部について進められるべきものであるところ、第三者が共同所有関係の解消を求める手続を遺 産分割審判とした場合には、第三者の権利保護のためには第三者にも遺産分割の申立権を与え、かつ、同人を当事者として手続に関与させることが必要となる が、共同相続人に対して全遺産を対象とし前叙の基準に従いつつこれを全体として合目的的に分割すべきであつて、その方法も多様であるのに対し、第三者に対 しては当該不動産の物理的一部分を分与することを原則とすべきものである等、それぞれ分割の対象、基準及び方法を異にするから、これらはかならずしも同一 手続によつて処理されることを必要とするものでも、またこれを適当とするものでもなく、さらに、第三者に対し右のような遺産分割審判手続上の地位を与える ことは前叙遺産分割の本旨にそわず、同審判手続を複雑にし、共同相続人側に手続上の負担をかけることになるうえ、第三者に対しても、その取得した権利とは なんら関係のない他の遺産を含めた分割手続の全てに関与したうえでなければ分割を受けることができないという著しい負担をかけることがありうる。これに対 して、共有物分割訴訟は対象物を当該不動産に限定するものであるから、第三者の分割目的を達成するために適切であるということができるうえ、当該不動産の うち共同相続人の一人が第三者に譲渡した持分部分を除いた残余持分部分は、なお遺産分割の対象とされるべきものであり、第三者が右持分権に基づいて当該不 動産につき提起した共有物分割訴訟は、ひつきよう、当該不動産を第三者に対する分与部分と持分譲渡人を除いた他の共同相続人に対する分与部分とに分割する ことを目的とするものであつて、右分割判決によつて共同相続人に分与された部分は、なお共同相続人間の遺産分割の対象になるものと解すべきであるから、右 分割判決が共同相続人の有する遺産分割上の権利を害することはないということができる。このような両手続の目的、性質等を対比し、かつ、第三者と共同相続 人の利益の調和をはかるとの見地からすれば、本件分割手続としては共有物分割訴訟をもつて相当とすべきである。
Q&A 借地上の建物所有者(借地人)Aが亡くなり,子B,Cが相続により2分の1ずつ承継しました。
しかしその後,BとCで話し合って,Bだけが承継することにしました。
地主が「無断での借地権譲渡だから解除だ!」と言っています。
解除されてしまうのでしょうか。
解除は無効だと思われます。

建物についてA→B・Cという所有権移転登記がなされたとしましょう。
この場合,「借地権の登記」はありませんが,建物所有権とセット(付随する)とされていますので,借地権もA→B・Cと移転したことになります。
これについては「借地権の無断譲渡」には当たりません。
相続による承継は,「包括的承継」つまり,人物ごと入れ替わった,というように考えられているのです。
要は売買や贈与とは違う,ということです。
次に,C持分→B という動きはどうでしょうか。
これは合意により移転しているので,「贈与」みたいな動きとも見えます。
そうすると,「借地権の無断譲渡」とも思えます。しかし,遺産分割協議は相続開始に遡ると規定されています(民法909条本文)。
そうすると,「当初から」Bが単独で相続した,ということになると考えられるのです。
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共有不動産の物納不適格

Q&A 相続税の納税として共有不動産を物納しようとしたら断られました。
なぜでしょうか。
権利関係が複雑なので「物納適格」から外れるのです。

相続人の1人が金銭以外の財産で納税することを「物納」と言いますが,物納は,権利関係が複雑であると受け付けられません。
「物納不適格」と呼んでいます。
ところで,相続税は個々の相続人に課税されます。
個々の相続人が物納する対象が「共有不動産の持分」ということになると,国(国税)と他の共有者(相続人)が共有の状態となりますので権利関係が非常に複 雑になります。
そのため,共有不動産は物納不適格とされています。
共有状態が解消され,単独所有となれば物納要件を満たし,物納可能となり得ます。
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離婚・財産分与と共有物分割

Q&A【財産分与と共有物分割】
夫婦で共有となっている自宅があります。
離婚の話とは別に共有の解消を進めることはできますか。
原則として,離婚とは関係なく,共有物分割請求(訴訟)が可能です。

理論上,離婚や離婚に伴う財産分与,と,共有物分割請求は別の手続きです。
どちらを先にすべき,というルールはありません。
(この点,遺産分割と共有物分割,の2つの手続きでは,遺産分割が優先するという判例があります。注意が必要です)
ただし,夫婦間で共有物分割請求をする,ということは夫婦間の関係が相当悪化しているはずです。
このような背景を考えると,「離婚,財産分与を優先すべきだ」とも思えます。
しかし,状況によっては,「共有物分割を優先すべき」ということもあり得ます。
そこで,財産分与,共有物分割には優劣を付けないと考えることになります(裁判例後掲)。
<財産分与と共有物分割の優劣>
→原則として,どちらが優先,ということはない。いずれの手続き利用も可能。
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[東京地方裁判所平成20年(ワ)第17730号共有物分割請求事件平成20年11月18日(抜粋)]
1 被告は,夫婦共同財産についての清算は,財産分与の審判の申立て又は人事訴訟手続によるものであって,夫婦が共有持分を有する共有財産がある場合にも 共有物分割請求訴訟を提起することは許されないと主張するが,そのように解すべき法律上の根拠はなく,被告の主張は採用することができない。
Q&A【財産分与・共有物分割の選択】
離婚・財産分与という手続きと,共有物分割請求という手続きのどちらを選ぶかはどうやって決めれば良いのでしょうか。
通常は離婚・財産分与の手続きを取るべきです。

一般的には,夫婦の関係が悪化している場合,夫婦間の全体的な清算(=離婚)を優先させる方が解決として妥当です。
夫婦共有財産(実質的な共有財産)のすべてについて,協議や審理が行われ,その処理が決められることになります。
仮に共有物分割請求を先行させた場合,対象となる財産は特定の財産(不動産)のみです。
それ以外の財産については,改めて財産分与が必要となるからです。

しかし,仲が悪くても離婚できない,という場合があります。
典型例は「有責配偶者が離婚を求めていても他方(相手方)が離婚を拒否している」というようなケースです。
この場合には,離婚請求自体が認められないのが原則となります。
当然,離婚が前提となる財産分与もなされないことになります。
そこで,共有物分割請求だけ先行させる,というニーズが生じるのです。
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Q&A【権利濫用による共有物分割請求の棄却】
夫婦仲が険悪で離婚したいと思っています。
夫婦共有の財産に妻が住んでいます。
私(夫)から,共有物分割請求を提訴できるのでしょうか。
原則として,提訴可能です。
しかし,状況によっては,権利濫用として認められないこともあります。


財産分与,共有物分割請求はどちらも選べる,というのが原則です。
しかし,共有物分割請求を選択することが,著しく不当と言えるようなケースでは,権利濫用として共有物分割請求自体が認められないこともあります(請求棄却;裁判例後掲)。
この裁判例では,個別的な事情から,ということが考慮されています。
<裁判例において権利濫用の根拠とされた事情と判断>
・妻・長女を対象不動産に置き去りにしている
・妻は収入に乏しい
・長女は精神疾患である
・夫が妻に支払っている婚姻費用分担金がゼロまたは少ない金額である
・抵当権が設定されている→形式的競売によって得られる金額は多くない(消除主義が前提)
 →「負債整理」という夫の主張は不合理

・夫から妻への攻撃的な意図がある
・共有物分割を認めた場合,妻(・長女)を苦境に陥れることになる

<まとめ>
夫婦間の共有財産
→財産分与(離婚)によるべき。
 離婚請求ができない特殊事情があれば,共有物分割請求を選択すべき。
 しかし,「権利濫用」を慎重にケアすべき。
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[大阪高等裁判所平成17年(ネ)第279号共有物分割請求控訴事件平成17年6月9日(抜粋)]
四 権利の濫用の主張の当否(争点(3))について
     (1) 民法二五六条の規定する共有物分割請求権は、各共有者に目的物を自由に支配させ、その経済的効用を十分に発揮させるため、近代市民社会における 原則的所有形態である単独所有への移行を可能にするものであり、共有の本質的属性として、持分権の処分の自由とともに、十分尊重に値する財産上の権利であ る(最高裁判所大法廷昭和六二年四月二二日判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)。
     しかし、各共有者の分割の自由を貫徹させることが当該共有関係の目的、性質等に照らして著しく不合理であり、分割請求権の行使が権利の濫用に当たると認めるべき場合があることはいうまでもない。
     (2) 以上の観点に立って本件について、被控訴人の分割請求権の行使が権利の濫用に当たるか否かについて検討する。
     控訴人が指摘するとおり、本件不動産は、被控訴人が控訴人との婚姻後に取得した夫婦の実質的共有財産であり、しかも現実に自宅として夫婦及びその間の子 らが居住してきた住宅であり、現状においては被控訴人が別居しているとはいえ、控訴人及び長女春子が現に居住し続けているものであるから、本来は、離婚の 際の財産分与手続にその処理が委ねられるべきであり、仮に、同手続に委ねられた場合には、他の実質的共有財産と併せてその帰趨が決せられることになり、前 記認定に係る、資産状況及び控訴人の現状からすると、本件不動産については、控訴人が単独で取得することになる可能性も高いと考えられるが、これを共有物 分割手続で処理する限りは、そのような選択の余地はなく、被控訴人が共有物分割請求という形式を選択すること自体、控訴人による本件不動産の単独取得の可 能性を奪うことになる。
     そして、前記認定のとおり、被控訴人は、離婚調停の申立て自体は経由しているものの、いまだ離婚訴訟の提起すらしておらず、現に夫婦関係が継続している のであるから、本来、被控訴人には、同居・協力・扶助の義務(民法七五二条)があり、その一環として、控訴人及び病気の長女春子の居所を確保することも被 控訴人の義務に属するものというべきである。ところが、被控訴人は、病気のために収入が減少傾向にあるとはいうものの、依然として相当額の収入を得ている にもかかわらず、これらの義務を一方的に放棄して、控訴人や精神疾患に罹患した長女の春子をいわば置き去りにするようにして別居した上、これまで婚姻費用 の分担すらほとんど行わず、婚姻費用分担の調停成立後も平成一六年九月以降は、月額わずか三万円という少額しか支払わないなど、控訴人を苦境に陥れてお り、その結果、控訴人は、経済的に困窮した状況で、しかも自らも体調が不調であるにもかかわらず、一人で春子の看護に当たることを余儀なくされている。そ の上、本件の分割請求が認められ、本件不動産が競売に付されると、控訴人や春子は、本件不動産からの退去を余儀なくされ、春子の病状を悪化させる可能性が あるほか、本件不動産には前記認定のように抵当権が設定されているため、分割時にその清算をすることになり、控訴人と春子の住居を確保した上で、二人の生 計を維持できるほどの分割金が得られるわけでもないし、控訴人は、既に満六〇歳を過ぎた女性であり、しかも原田病や神経症のため通院治療を受けていて、今 後、稼働して満足な収入を得ることは困難であるから、経済的にも控訴人は一層苦境に陥ることになる。
     これに対し、被控訴人は、現在、進行した前立腺癌に罹患し、その治療などのため、収入が減少傾向にあり、借入金の返済が徐々に困難になっていることか ら、余命を考慮して、負債を整理するため、本件不動産の分割請求をしているものである旨主張している。
     被控訴人の病状からして、上記のような考えを持つこと自体は理解できないでもないが、前記認定事実によっても、その主張自体からも、現時点で、金融機関 から競売の申立てを受けているわけでもなく、直ちに本件不動産を処分しなければならないような経済状態にあるとは認め難いし、仮に、そのような必要がある としても、事務所不動産を先に売却して、事務所自体は他から賃借することも考えられるのであって、どうしても負債整理のために本件不動産を早期に売却しな ければならない理由も認められない。また、上記のような困難な状況にある妻である控訴人や子供らの強い反対を押し切り、控訴人らを苦境に陥れてまで負債整 理を行わなければならない必然性も見出し難い。
     (3) 以上の諸事情を総合勘案すると、被控訴人の分割の自由を貫徹させることは、本件不動産の共有関係の目的、性質等に照らして著しく不合理であり、 分割の必要性と分割の結果もたらされる状況との対比からしても、被控訴人の本件共有物分割請求権の行使は、権利の濫用に当たるものというべきである。
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