【法律相談;予測は中立,攻撃はディレクショナル】5

法律相談では過去の裁判例を重視するのでしょうか。
私(相談者)に有利な解釈をしてくれるわけではないのですか。
「客観的な予測」と「有利な結果の獲得」は別です。
予測自体は客観的に,案件の遂行における主張,立証の組み立ては最大限有利になるよう検討を徹底します。

「客観的な予測」と「受任後の案件遂行時の主張の意欲,熱意」は別モノです。
「裁判例を尊重して中立的な判断をする」イコール「有利な主張をしない」ということではありません。
多くの裁判例などの法律解釈を把握していることは「有利な主張」「有利な結果獲得」につながることです。
順に説明します。

1 客観的な予測

裁判例等,過去に採用された法律解釈は,その後の裁判,交渉などの実務で採用される可能性が高いです。
言ってみれば「中立性を貫徹する裁判官の判断の予測をする」→「予測の際は中立性が前提」ということです。
ここで,「予測の精度を高める」ためには裁判例を中心とした法律調査が非常に有用です。
「客観的な予測」が高い精度でできないと,実際のアクション選択が適切に行えません。
なお,アクションを起こすか否か,という判断も含みます。
「可能性が低くても,その中で最大限,できる限りの主張,立証を行う」という判断もあり得ます。
ただ,↓のようなことはサービスとして不十分だと思います。
なお,弁護士職務基本規程において,予測を説明することは義務とされています(弁護士職務基本規程29条)。
明文化しなくても存在意義に関わる当然のことだと思います。

<予測が不十分という例>
「請求が認められるかどうかまったく予想が付きません。
 実現可能性はほぼ0%かもしれないし90%かも分かりません。
 この部分は判断しないで,とにかくご依頼いただければ遂行します」

2 受任後の案件遂行時の姿勢,方針

具体的な交渉や訴訟における主張,立証については,最大限依頼者に有利な方法を選択します。
「方向性を持つ」という意味で「攻撃(主張)はディレクショナル」とでも言う状態です。
これが法律家としての存在意義であり,法律家側からすればやりがいそのものです。

例えば,訴状,準備書面や内容証明による通知書の作成の際は,事前に,最大限有利な結果獲得につながる主張,立証を組み立てます。
ここで「客観的,中立な予測をする際に使った裁判例」をそのまま指摘することはありません。
裁判例,学説等のうち,より有利なものをピックアップしてこれを引用,利用します。
なお,この点,受任した事案によって,主張や引用する裁判例を「偏らせる」ことは認められています。
「品位保持」には反しないと解釈されています(弁護士職務基本規程6条)。
業務というか存在意義の本質なので当然の解釈でしょう。
中立な判断を貫徹する裁判官とは違うところです。

ここで,法律調査が十分にできている,ということが有利な流れになります。

<法律調査の徹底が有利な結果獲得につながるフロー>
「多くの裁判例,学説等の法律解釈を調査し,その結果を整理して使える状態としている」→有利な主張,立証→有利な結果獲得

条文

[弁護士職務基本規程]
第六条(名誉と信用)
弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める。

第二十九条(受任の際の説明等)
1 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。
2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。

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