【ご依頼者へ;弁護士→依頼者の資料開示(報告義務)】1

相手方との代理人交渉を弁護士に依頼しました。
書面を中心に相手方とやり取りをしていると聞いています。
書面の内容を見せてもらうことはできるのでしょうか。
原則として書面(写し)は報告義務の対象です。ごく一部,例外もありえます。

依頼を受けた弁護士の行う代理人交渉は,文字どおり『代わりに』行うものです。
交渉内容・交渉過程について,依頼者に報告する義務があります。
※弁護士職務基本規程36条,民法645条
基本的には,交渉の状況を口頭なり,文面で要約して報告し,これに解説を加えるのが一般的です。
『交渉中の個々の表現,書面』が100%報告義務に含まれる,ということにはなりません。
その重要度に応じて,書面自体を依頼者にお見せする(写しをお渡しする)ことになります。

ただし,特に依頼者が要望した場合は,書面自体をお見せするべきでしょう。
ただし,一定の例外があります。

<依頼者への報告義務の例外>

・相手方との個別的合意により『依頼者本人に開示しない』ことを条件として開示を受けたもの
・特定の規定により『依頼者本人に開示しない』ことが前提とされているもの
 例;弁護士会照会により取得した情報のうち,事案解決に必要な範囲を超えるもの

一般的に,代理人交渉においては,利害が熾烈に対立していることが多いです。
相手方から,条件付きで資料の開示をしたい旨の提案がなされることもあります。
また,弁護士会照会のように『弁護士自身による開示請求』という制度もあります。
※弁護士法23条の2
これについて,日弁連の見解は,概ね次のようなものです。

<弁護士会照会により入手した資料の依頼者への開示の可否;日弁連見解>

原則=依頼者への開示・交付NG
例外=正当な理由があれば依頼者への開示OK
→『正当な理由』の例
=裁判所へ証拠として提出したもの

『書面自体を依頼者にはお見せできない』というのは,以上のような例外的な場合のみです。

なお,弁護士の資料の適正管理義務については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|弁護士業務|事件記録・適正管理義務|刑事訴訟法・日弁連会則

条文

[民法]
(受任者による報告)
第六百四十五条  受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

[弁護士職務基本規程]
第三十六条(事件処理の報告及び協議)
弁護士は、必要に応じ、依頼者に対して、事件の経過及び事件の帰趨に影響を及ぼす事項を報告し、依頼者と協議しながら事件の処理を進めなければならない。

[弁護士法]
(報告の請求)
第23条の2 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。
2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

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