1 刑事裁判×刑事記録→依頼者への開示
2 関連民事裁判×刑事記録→依頼者側への開示
3 刑事事件記録開示×弁護士・懲戒|処分内容
4 刑事事件記録開示×懲戒|残る違和感

1 刑事裁判×刑事記録→依頼者への開示

刑事裁判の記録については適正な管理が求められます。
(別記事『弁護士業務|事件記録・適正管理義務』;リンクは末尾に表示)
刑事記録の管理に関する弁護士の責任が問題となったケースを紹介します。
問題の1つが『依頼者への開示』でした。

<刑事裁判×刑事記録→依頼者への開示>

あ 刑事弁護|受任

Bが交通事故を起こし,被害者が死亡した
検察官に起訴された
弁護士2名が,被告人Bの刑事事件を受任した
弁護士2名をまとめてAと呼ぶ

い 刑事記録開示

弁護士Aは,検察官から刑事記録の開示を受けた

う 被告人への刑事記録開示

弁護士は被告人に刑事記録の一部の写しを郵送した
刑事裁判終了後3年間以上,返還を受けなかった
※『自由と正義』日本弁護士連合会2016年4月p105〜

2 関連民事裁判×刑事記録→依頼者側への開示

依頼を受けた刑事裁判とは別に民事裁判が係属しました。
これに関して『別の弁護士』に刑事記録が開示されました。
これも問題となりました。

<関連民事裁判×刑事記録→依頼者側への開示>

あ 関連する民事訴訟

前記交通事故の被害者の遺族として父親Cがいた
CはBに対して損害賠償請求訴訟を提起した
Bの代理人として弁護士Dが就任した

い 被告人側弁護士への刑事記録開示

弁護士Dは弁護士Aに対して,刑事記録を検討したいと要請した
弁護士Aは刑事記録すべてを弁護士Dに送付した
この際,秘密保持への配慮をしなかった
例;マスキングの処置など

う 放置

弁護士Aは,2年5か月以上にわたり放置した
=返還を受けなかった
※『自由と正義』日本弁護士連合会2016年4月p105〜

3 刑事事件記録開示×弁護士・懲戒|処分内容

以上の2つの行為について弁護士会が懲戒処分を行いました。

<刑事事件記録開示×弁護士・懲戒|処分内容>

あ 懲戒処分|結論

平成28年1月7日
横浜弁護士会
弁護士A・Eについて
→『戒告』の懲戒処分を行った

い 対象行為・評価

ア 日弁連会則違反
事件記録の保管管理義務規定に違反する
※弁護士職務基本規程18条
イ 品位失墜非行
弁護士としての品位を失うべき非行があった
※弁護士法56条1項
※『自由と正義』日本弁護士連合会2016年4月p105〜

4 刑事事件記録開示×懲戒|残る違和感

以上の事案は,一定のルール違反に該当すると言えるでしょう。
記録の適正管理が重要であることは間違いありません。
一方で『被告人』は刑事裁判の当事者です。
まったく関係ない者の商用利用に協力したわけではありません。
また,被告人は『防御権』の保護が徹底されるべきです。
刑事記録の開示については過度に否定的なものは好ましくありません。
ところで懲戒処分の理由として開示による実害は登場していません。
現実的な被害や強い危険性が生じたことの認定はありません。
不十分で,荒い判断だという印象を受けます。