【不慣れな弁護士のミス→賠償責任|訴訟対応懈怠・弁護士の家族ぐるみ介入編】

1 裁判期日欠席しまくり→敗訴|悪行の限り判決
2 担当弁護士変更→訴訟の対応拒否→敗訴|共同受任弁護士の責任あり
3 弁護士と依頼者が家族ぐるみで『金銭貸し借り』含めた付き合い→報酬が曖昧に
4 弁護士費用の取り決めなし・昔ながらの尊大弁護士判決

弁護士のミスにより,依頼者・相談者に被害が生じたというケースを紹介します。
ユーザー(依頼者)としては,弁護士を選ぶことの重要性が分かります。
また弁護士にとっては『他山の石』として業務改良の一環とできます。
本記事では訴訟への対応をしない・弁護士の親族が案件に介入した,などの変わったケースを整理しました。

1 裁判期日欠席しまくり→敗訴|悪行の限り判決

弁護士の対応として考えられない,というケースです。

<尋問期日無断欠席+敗訴判決報告なし→悪行の限り判決>

あ スボラ対応

A弁護士は訴訟の委任を受けた
A弁護士は,本人尋問期日に無断欠席した
敗訴判決が送達されたのに,依頼者に報告しなかった
控訴期限経過により控訴できなくなった

い 依頼者への説明;鞍馬天狗

『本人尋問は私が関与していないまま終わった』
『放置しておけば良い。欠席判決みたいなもので,内容で負けたわけではない。別の形で訴えを起こして数倍にして取り戻せる』

う Xが提訴した

XはA弁護士に対して損害賠償などを請求する訴訟を提起した
請求内容=着手金100万円の返還+損害賠償

<裁判所の判断>

あ 評価

特段の事情がない限り,いったん訴訟委任を受けた弁護士は,出頭等を怠ることは許されない
仮に費用前払いがない場合でも,ことは理由にならない
出頭等に支障が生ずるやむを得ない場合は,裁判所に事情を説明して期日変更申請等の措置を講ずる義務がある

い 判決

250万円の賠償責任を認めた
※東京地裁平成4年4月28日

特に参考になる,教訓にする,というレベルの事案ではないです。

2 担当弁護士変更→訴訟の対応拒否→敗訴|共同受任弁護士の責任あり

弁護士が訴訟の対応をせずに敗訴に至ったケースです。
ここでは『共同受任をした弁護士』の責任が判断されています。

<複数弁護士の共同受任→一方が対応せず敗訴→他方にも責任発生>

あ 受任段階

受任者=弁護士法人ではない事務所のA・B弁護士
共同受任という形式
受任案件=債権回収の訴訟

い B弁護士の『退職』

当初は勤務弁護士のB弁護士が主任であった
B弁護士は当該法律事務所を退職した
依頼者との間で『辞任』などの手続を取らなかった

う 対応せず敗訴

A弁護士は4回の弁論準備手続に欠席+書面提出なし
→結審された
→請求棄却となった

<裁判所の判断>

あ 評価

『共同受任』弁護士は相互の『監視・是正・補完』の義務を負う
『事務所の退職』後であっても変わらない

い 判決|責任も共同

A・B弁護士両方の賠償責任を認める
※大阪地裁平成18年12月8日

『共同受任』の実態は『法律事務所として受任した』というものです。
法的には『複数の弁護士個人の共同受任』ということになるのです。
その結果『担当外のことにまで責任が生じる』ということになりました。
この点,弁護士法人の場合は『共同受任』とはなりません。
『想定外の事故の心配』をしなくて済みます。
これに関連する『背景事情』についてのコメントを紹介します。

<事案に対するコメント>

司法試験合格者の増大によって,司法修習を終えても勤務先法律事務所がないといういわゆる就職難が報道されている
※高中正彦『判例弁護過誤』弘文堂p139〜

弁護士が就職=事務所に所属する,という場面では『弁護士法人』か否かも関心を寄せるべきなのでしょう。

3 弁護士と依頼者が家族ぐるみで『金銭貸し借り』含めた付き合い→報酬が曖昧に

弁護士は当事者=依頼者と二人三脚でありつつ,一定の独立性があります。
というのが原則論なのですが『関係性』が入り乱れたケースを紹介します。

<弁護士が保証人を買って出た+息子を顧客会社の取締役に押し込む>

あ 資金調達が必要な状況

ア 当事者 ・Xの夫Z
・Z=Y社の代表取締役
Zは乙不動産を所有,東京都に買収を申し入れていた
Zが病気で入院した
Xが代表取締役となった
Y社の債権者=銀行・信金に対して,XとA弁護士が訪問し,返済猶予を申し入れた
買収の前提として抵当権を抹消する必要が生じた

い 融資の保証人に弁護士がなった

W銀行から融資をして返済資金8060万円を得た
この融資に際して,A弁護士が連帯保証人となった

う 弁護士の息子を取締役に押し込む

A弁護士の息子C
AはCをY社の取締役にすることを進言した
CはY社の取締役となった

え 弁護士報酬が曖昧だった

明確な弁護士報酬の取り決めがなかった
AはY社宛に2100万円の報酬の請求をした→支払われた
その2か月後
1890万円の報酬を請求した→支払われた
A弁護士は勲4等瑞宝章の叙勲を受けた
→Xから『祝い』として5万円分の商品券を受け取った

<弁護士の妻が資金協力>

あ 不動産競売への入札

上記経緯の1年後
A弁護士はY社代理人として丙不動産の競売に入札した
→1億2400万円で落札した
代金納付では不足分3100万円が生じた
不動産取得税240万円の4分の1も資金不足であった

い 弁護士の妻が資金協力

これらをAの妻Bが拠出した
A弁護士はYに対して報酬として314万円を請求した→支払われた

う 弁護士報酬・貸付金返還のミックス状態

実質的な丙不動産の所有は『Bが4分の1』とする『確認書』に調印した
《形式的な方法》
金銭消費貸借契約書を作成した
・Y社がBに対し3160万円の借入債務を負担する
・これに対し年10%の利息を支払う
・Bが丙不動産の4分の1を買い取る権利がある

え 明渡請求の依頼

Y社からA弁護士が依頼を受けた
《依頼内容》
丙不動産の占有者への明渡請求(訴訟)→新規入居者との間の賃貸借契約締結

お 賃貸管理を独断で

賃料入金口座からA弁護士はBへの返済金を引き出していた
Xはこれを知らなかった
→知って驚いた+不信感を持った

<顧客・弁護士の対立>

あ 対立の表面化

XはJ弁護士に依頼した
《依頼内容》
Y社の預金通帳・印鑑・社判・丙不動産の登記済権利証の返還請求

A弁護士は拒絶した
Xは民事調停を申し立てた
A弁護士は拒絶した+Bが丙不動産を買い取る権利がある,と主張した

い 責任追及の提訴

X・Y社はA弁護士に対して訴訟を提起した
《主張・請求内容》
・既払いの弁護士報酬は暴利であるから無効→不当利得
・説明義務違反
請求額=3440万円

う A弁護士の反撃(反訴)

A弁護士は反訴
内容=報酬請求権791万円
《経済的利益》
乙不動産の売却により東京都から支払いを受けた金額4億3277万円
丙不動産の競落金額1億2400万円

<裁判所の判断>

あ 弁護士報酬の金額算定

A弁護士の主張する『経済的利益』は妥当ではない
報酬支払額3516万円は暴利→無効である
相当額は2000万円である
A弁護士の説明義務違反は認めない

い 判決

Y社の請求→1666万円を認容(既払い金を控除した)
反訴→棄却
※東京地裁平成20年6月19日

ここのアクションで問題があるものも多いです。
この訴訟では『弁護士の報酬の算定』だけが審理対象でした。
弁護士の報酬については,もともと『委任契約書』作成義務があります。
ルール通りに委任契約書を作成していれば,当然,報酬についても明確に特定されていたはずです。

4 弁護士費用の取り決めなし・昔ながらの尊大弁護士判決

昔は弁護士が尊大で『言い値』が普及していた時代もありました。
昔なつかしのセピア色のケースを紹介します。

<弁護士費用の取り決めなし|当時は尊大スタイルが流行りだった>

あ 事案

XはA弁護士に土地の売買に関する案件処理を依頼した
着手金・成功報酬の取り決めを明確に行っていなかった
A弁護士は代理人として土地売却代金を買主から受け取った
XとA弁護士の間で着手金・成功報酬の見解が違った

い Xの提訴

XはA弁護士に対して損害賠償を請求する訴訟を提起した

<裁判所の判断>

妥当な金額を評価・算定した
※東京地裁昭和41年12月17日

このように,取り決めがない以上は裁判所が『社会通念上妥当な金額』を算定することになります。
現在では『報酬額の取り決めがない』ということ自体はルール違反となっています。

<現在でのルール>

報酬・費用の説明義務 基本規程29条
委任契約書の作成義務 基本規程30条

事案の背景事情についてのコメントを紹介します。

<事案に対するコメント>

『当該弁護士のような尊大な姿勢での仕事の進め方は,弁護士人口が少なかった昭和37,8年当時は,さほど違和感がなかったのかもしれない』
※高中正彦『判例弁護過誤』弘文堂p191〜

今でもまだ少しは残っているようですが昔の『尊大スタイル』が背景にある判決でした。

<参考情報>

高中正彦『判例弁護過誤』弘文堂

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