【映画,テレビ番組,ビデオゲームの動画は著作権が認められる】

1 映画著作物である,承諾の範囲を超えた上映は違法
2 テレビ番組の録画→動画サイトへの投稿は著作権法違反となる
3 ビデオゲームのプレイ録画はゲーム制作会社の著作物となる
4 ビデオゲームのプレイ動画は『使用許諾』の制度もある|任天堂NCP
5 ビデオゲームプレイ動画の公表は『引用』に該当すれば適法となる
6 ビデオ,アニメを素材にして創作したMADムービーは『改変』=『同一性保持権』の侵害となることもある

1 映画著作物である,承諾の範囲を超えた上映は違法

(1)通常の上映は承諾が必要

劇場用映画は,『映画の著作物』に該当します(著作権法2条3項)。

動画投稿サイトへのアップロード(投稿)は,著作権者の保有する複製権公衆送信権の侵害になります。

承諾がない以上,著作権法に違反し,民事,刑事上の責任が生じます。
また,承諾を得た後に,承諾の範囲を超えて利用した場合でも同様です。

(2)『個人的な使用』の例外規定は適用されない

一般的には,著作権法上,一定の『個人的な使用の範囲内』で,例外的に適法とされています(私的複製;著作権法30条1項)。

しかし,映画に限っては,この規定の適用が原則的に排除されています(映画盗撮防止法2条,4条)。

結局,映画を撮影すること自体が著作権法違反(複製権侵害)となる,ということです。

なお,封切後8か月経過した作品についてはさらに例外とされています(映画盗撮防止法4条2項)。

2 テレビ番組の録画→動画サイトへの投稿は著作権法違反となる

テレビ番組は,『映画の著作物』に該当します(著作権法2条3項)。
ここでの『映画』とは,シネマ,という意味ではなく,映像画像という趣旨で考えると分かりやすいです。
動画投稿サイトへの投稿は,著作権者の保有する複製権公衆送信権の侵害になります。
同時に,放送事業者が保有する複製権送信可能化権の侵害にも該当します。
テレビ番組については,地上波放送など,元々無料で流しているものもあります。
ただ,有償無償と,著作権の侵害は直接リンクしません。
承諾がない以上,著作権の侵害となります。
なお,録画した番組を後で自分が(個人的に)見るということは適法とされています(私的複製;著作権法30条1項)。

3 ビデオゲームのプレイ録画はゲーム制作会社の著作物となる

プレイしているゲームの画像を動画として記録したものは,『映画の著作物』に該当します(著作権法2条3項,10条1項7号)。
動画はプレイヤーの操作が創り出したと考えると,ゲーム制作会社ではなく,プレイヤーの著作物だ,と考えたくなります。
しかし,プレイ以前の設定として,キャラクター,背景その他のパーツの画像,動き方,音声,BGMなど,プレイ動画を分解すると,その大部分のパーツはゲーム制作会社が作った,と言えます。
そこで,プレイ動画の著作権はゲーム制作会社にあると考えられています(最高裁平成14年4月25日;判例1)。
結果的に,承諾なく動画配信サイトに投稿することは複製権公衆送信権送信可能化権自動公衆送信権などを侵害することになります(著作権法21条,23条1項)。

4 ビデオゲームのプレイ動画は『使用許諾』の制度もある|任天堂NCP

当然ですが,ゲーム制作会社の承諾があれば,ビデオゲームのプレイ動画の投稿は著作権侵害にはなりません。
現在,先進的な考えを取り入れている会社では,公式に投稿を承諾しているというところもあります。
任天堂が試験的に開始したシステムNCPについて紹介します。

<Nintendo Creators Program(NCP)>

任天堂への『登録』手続を行う
YouTubeへの投稿についての使用許諾が得られる
YouTube視聴による広告収入が投稿者・任天堂でシェア(分配)される
外部サイト|任天堂|Nintendo Creators Program

ゲームプレイ動画を投稿しようとする際は,ホームページ等で投稿の承諾について確認しておくと良いでしょう。

5 ビデオゲームプレイ動画の公表は『引用』に該当すれば適法となる

<発想>

対戦ゲームにおいて白熱する感動的なプレイが行われた
これを録画した動画について,感想戦として,多くのファンに知らせたい
オンライン上で公表したい

『引用』として著作権侵害には該当しないということになる可能性があります(著作権法32条1項)。
動画の中で,文字や音声として,ゲームそのものやプレイ内容について批評分析研究などがされている,という場合が『引用』に該当します。
ただ,ゲームプレイ動画そのものがメイン,という場合は,『引用』には該当しないことになります。
結局,『引用』に該当する=著作権侵害ではない,と言えるためには次のような前提が必要となります。

<『引用』該当性=著作権侵害ではない,の要件>

・批評,分析,研究がメイン
・ゲームプレイ動画自体はサブ

現実には,メインサブ(=主従関係)がハッキリしているかどうかの判断が難しいことも多いです。
逆に,著名なプロゲーマーが,レバー・ボタンの高度な操作を分析し,立派な研究となっている動画も散見されます。

6 ビデオ,アニメを素材にして創作したMADムービーは『改変』=『同一性保持権』の侵害となることもある

<発想>

ゲーム中の音声,BGM,画像,動画(アニメーション)を編集,合成して楽しいムービーを作った
これを多くの人に楽しんでもらいたい
動画サイトに投稿したい

いわゆるMADムービーです。
これは別に説明しています。
別項目|パロディーで原作のイメージ低下→同一性保持権侵害|『改変』

条文

[著作権法]
(定義)
第二条(略)
2(略)
3  この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
4~9(略)

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一~三(略)
2(略)

(引用)
第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2(略)

[映画の盗撮の防止に関する法律]
(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  上映 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第十七号に規定する上映をいう。
二  映画館等 映画館その他不特定又は多数の者に対して映画の上映を行う会場であって当該映画の上映を主催する者によりその入場が管理されているものをいう。
三  映画の盗撮 映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われる映画(映画館等における観衆から料金を受けて行われる上映に先立って観衆から料金を受けずに上映が行われるものを含み、著作権の目的となっているものに限る。以下単に「映画」という。)について、当該映画の影像の録画(著作権法第二条第一項第十四号に規定する録画をいう。)又は音声の録音(同項第十三号に規定する録音をいう。)をすること(当該映画の著作権者の許諾を得てする場合を除く。)をいう。

(映画の盗撮に関する著作権法の特例)
第四条  映画の盗撮については、著作権法第三十条第一項の規定は、適用せず、映画の盗撮を行った者に対する同法第百十九条第一項の規定の適用については、同項中「第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項」とあるのは、「第百十三条第三項」とする。
2  前項の規定は、最初に日本国内の映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われた日から起算して八月を経過した映画に係る映画の盗撮については、適用しない。

判例・参考情報

(判例1)
[最高裁判所第1小法廷平成13年(受)第952号著作権侵害行為差止請求事件平成14年4月25日]
本件各ゲームソフトが、著作権法二条三項に規定する「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」であり、同法一〇条一項七号所定の「映画の著作物」に当たるとした原審の判断は、正当として是認することができる。

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