1 業法によるサービス規制と人権侵害(基本)
2 タクシー業の許可制とネオラッダイト
3 タクシー業の許可制の合憲判例
4 運送サービスの工夫とタクシー業規制(概要)
5 自家用自動車の有償運送禁止の合憲性(参考)

1 業法によるサービス規制と人権侵害(基本)

タクシー業は許可制という参入規制があります。
なぜ許可制が取られているのか,という疑問・議論は制度発足当初からありました。
一般的な業法は憲法上の人権を制約するものです。そこで憲法違反であるという主張がなされるケースがあります。

<業法によるサービス規制と人権侵害(基本)>

あ 業法の規制と人権侵害

各種業法によるサービスの法規制について
職業選択の自由・経済活動の自由を侵害する可能性がある
※憲法22条1項,29条

い ネオラッダイト(※1)

一般的な業法について
→ユーザーの犠牲・既得権者の保護が生じる構造がある
これを『ネオラッダイト』と呼んでいる
詳しくはこちら|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト

タクシー業の許可制についても,裁判所で憲法違反という主張が展開されたことがありました。
以下,合憲性の判断について紹介します。

2 タクシー業の許可制とネオラッダイト

数多くの裁判例の中で,タクシー業の許可制の実害まで細かく検討し指摘したものがあります。

<タクシー業の許可制とネオラッダイト>

あ 許可制のデメリット

タクシー業の許可制について
『既得権者の利益擁護的傾向,利用者の利便無視的傾向,汚職関係等の生ずる余地を持つ』
いわゆるネオラッダイトのことである(前記※1)

い 制度趣旨

『これらはいずれも行政指導並びに運営面においてそれぞれ是正の道があ(る)』
『自由営業に委ねると一時的,局部的にはともかく全国的長期的な見地からみれば交通の無法状態に陥る危険が大である』

う 裁判所の判断

憲法に違反しない
※神戸地裁昭和42年11月29日

この裁判例は,ネオラッダイトという弊害を認めつつ,結論としては合憲と判断しています。

3 タクシー業の許可制の合憲判例

タクシー業の許可制の合憲性を判断した判例は前記以外にも数多くあります。
特に規制の制度が発足した当初は多くの新規勢力が法廷で闘いました。
最高裁まで進んだケースも多くあります。
コストのメーターは上がりまくりましたが,いずれも合憲という判断でした。

<タクシー業の許可制の合憲判例>

あ 戦歴

最高裁昭和62年10月1日
最高裁昭和41年5月31日
最高裁昭和39年12月22日
最高裁昭和39年3月13日
最高裁昭和39年1月30日
最高裁昭和38年12月4日

い 裁判所の判断

道路運送法の許可制は憲法に違反しない

4 運送サービスの工夫とタクシー業規制(概要)

前記の判例は,タクシー業の規制制度の合憲性というスケールの大きな,正面突破を狙った闘いでした。
一方,個別的なサービスモデルの工夫により規制と闘ったケースもあります。
奇襲作戦というようなものや,闘いから逃げる作戦というようなものがありました。
このような実例は別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|いろいろな運送サービスの実例と運送事業(タクシー業)への該当性

5 自家用自動車の有償運送禁止の合憲性(参考)

有料での自動車での運送が禁止されるのはタクシー業だけではありません。
事業的規模ではない自動車の有料での運送も禁止されているのです。
『自家用自動車の有償運送禁止』という規定のことです。
これについても,憲法違反であるという主張がなされたケースがあります。
結果的には裁判所が合憲であると判断しています。
詳しくはこちら|自家用自動車の有償運送の禁止