1 金商法・金融商品販売法と仮想通貨(総論)
2 『有価証券』の意義・定義
3 金商法と仮想通貨(基本)
4 金商法のデリバティブ規制と仮想通貨
5 金融商品販売法と仮想通貨

1 金商法・金融商品販売法と仮想通貨(総論)

一般的な金融商品や有価証券の取引に関する規制として,金商法(金融商品取引法)や金融商品販売法があります。
仮想通貨について,これらの規制が適用されるのではないか,という発想もあります。
本記事では,金商法や金融商品販売法の適用される対象の規定や解釈を説明した上で,仮想通貨への適用について検討します。

2 『有価証券』の意義・定義

金商法の定義に『有価証券』があります。当然これは,金商法の適用対象を判断する上で使われるものです。
ここでは,他の法律の『有価証券』の定義・意味も含めてまとめます。

<『有価証券』の意義・定義>

あ 金商法の『有価証券』

明確な定義としての条文上の規定はない
『有価証券』に該当するものが列挙されている
※金商法2条1項

い 位置付け

『有価証券』は『金融商品』の1つという位置付けである
→『デリバティブ取引の原資産』に該当する
※金商法2条24項

う 民事的な『有価証券』の一般的解釈

財産的価値を有する私権を標章する証券
※見解により多少異なる

え 刑事的な『有価証券』の解釈

権利が証券に表示され,権利の行使につき証券の占有を必要とするもの
※最高裁昭和32年7月25日

お 典型例=社債

権利者は『社債券』を所持する
発行会社に対して『元金・利息』の『償還(返還)請求権』を持っている

『ビットコイン』のように,仮想通貨の多くは『コイン』というネーミングがされています。また,イメージのイラストでは『コイン』の形が象徴として使われています。
しかし『ビットコインを拾う』というような『権利を表象する証券』はありません。結局,一般的には仮想通貨は『有価証券』には該当しないと考えられています。

3 金商法と仮想通貨(基本)

金商法のいろいろな規制が仮想通貨にも適用されるかどうかを検討します。

<金商法と仮想通貨(基本;※2)>

あ 『有価証券』該当性

仮想通貨は『有価証券』の内容の中に該当するものがない
→金商法の『有価証券』に該当しない
※金商法2条1項
※内閣総理大臣『答弁書』内閣参質186第28号;平成26年3月7日
詳しくはこちら|仮想通貨に関する公的見解(答弁書・中間報告・WG報告)

い 金融商品

仮想通貨について
→『金融商品』の定義に直接該当しない
※金商法24条
→金商法の規制は適用されない
例;業者登録,勧誘規制など

4 金商法のデリバティブ規制と仮想通貨

前記の検討は,仮想通貨そのものの取引についてのものです。
この点,仮想通貨を原資産とするデリバティブについては法的な扱いが大きく異なります。現時点でも金商法の適用の可能性があります。

<金商法のデリバティブ規制と仮想通貨>

あ デリバティブの規制の適用

仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引について
→次の概念に該当する可能性がある
『有価証券又はデリバティブ取引に係る権利以外の資産に対する投資』
該当する場合
→金融商品取引業者が扱う業務となる
規制の内容=適合性原則,証拠金など
※金商法第35条2項6号
※内閣総理大臣『答弁書』内閣参質186第28号;平成26年3月7日
詳しくはこちら|仮想通貨に関する公的見解(答弁書・中間報告・WG報告)

い 仮想通貨の取引への流用

一般的な仮想通貨の取引の法整備において
→後記※3の内容が参考となる

5 金融商品販売法と仮想通貨

金商法(金融商品取引法)とは別に金融商品販売法があります。現時点では金融商品販売法は仮想通貨の取引には適用されないと考えられます。ただし,今後の普及の状況次第で,適用されることになる可能性もあります。

<金融商品販売法と仮想通貨(※3)>

あ 『金融商品の販売』の定義

『譲渡性預金証書をもって表示される金銭債権』
※金融商品販売法2条1項6号

い 『譲渡性預金証書』の解釈

『ア・イ』に該当する支払手段の例示と解釈することもできる
ア 高度に流通がなされている
イ 弁済として広く受け入れられている

う 仮想通貨への今後の規制の可能性

特定の仮想通貨の市場における受容性の程度によって
政令で『金融商品』として定められる可能性はある

え 規制対象となった場合の主な規制内容

ア 顧客に対する説明義務
※金融商品販売法3条
イ 断定的判断の提供の禁止
※金融商品販売法4条
ウ 損害賠償責任
説明義務などの違反行為に対する責任である
※金融商品販売法5条
エ 勧誘の適正など
※金融商品販売法8条
※岡田仁志ほか『仮想通貨〜技術・法律・制度〜』東洋経済新報社p142