1 財産開示手続の過料の制裁と実効性(総論)
2 財産開示手続に関する過料の制裁
3 過料の制裁の発動に関する手続
4 過料の制裁に関する裁判所の判断の傾向
5 『過料』と『罰金・科料』の違い(参考)
6 財産開示手続の実効性(全体)
7 債権回収でも財産開示手続の活用の実例(概要)

1 財産開示手続の過料の制裁と実効性(総論)

裁判所が債務者の財産の開示を行う手続があります。
詳しくはこちら|裁判所による債務者の財産調査(財産開示手続の全体)
財産開示手続において,債務者が開示に応じないことも実際に多いです。これについては,一定のペナルティの規定があります。
本記事では,ペナルティとしての過料の制裁と,これに関連して,財産開示手続の実効性について説明します。

2 財産開示手続に関する過料の制裁

財産開示手続に債務者が応じない場合は過料の制裁の対象となります。まずは規定の内容をまとめます。

<財産開示手続に関する過料の制裁>

あ 債務者の対象行為

債務者が『ア〜エ』のいずれかに該当した
ア 出頭拒否
イ 宣誓拒否
ウ 開示拒否
エ 虚偽開示

い 罰則

30万円以下の過料
※民事執行法206条1項

う 管轄・裁量

執行裁判所が過料の判断を行う
裁判所の裁量がある
必ず決定されるわけではない
※民事執行法207条

3 過料の制裁の発動に関する手続

法律上は過料の制裁は裁判所の職権です。当事者が申し立てるというような手続は規定されていません。
しかし,実務では,債権者が裁判所に書面提出によって働きかける運用がなされています。

<過料の制裁の発動に関する手続>

あ 債権者からの働きかけ(基本)

債権者から執行裁判所に対して
債務者に対する過料の制裁を行う希望を意見として提出する
書面で提出することが望ましい
例;意見書・上申書

い 判断結果の連絡の要請

『あ』の書面に次の内容を記載しておく
→実務上,裁判所は債権者に知らせてくれる
記載内容=職権発動/不発動の結果を知らせて欲しい

う 東京地裁民事執行センターの運用

債権者からの意見(上申書)提出によって
過料の制裁を立件するか否かを審査する
債権者が希望すれば結果を通知する
※東京地方裁判所民事執行センター実務研究会『民事執行の実務 債権執行編(下)』p324

4 過料の制裁に関する裁判所の判断の傾向

過料の制裁は裁判所の裁量で判断されます(前記)。実際に過料が発動される傾向についてまとめます。

<過料の制裁に関する裁判所の判断の傾向>

あ 対貸金業者の実情

債務者が貸金業者の場合
→ほぼすべて20万円の過料が課されている
※『月報司法書士2016年11月』p26

い 債権者の欠席の影響

債権者が財産開示期日に出席しない場合
詳しくはこちら|裁判所による債務者の財産調査(財産開示手続の全体)
→過料制裁を発動しない運用もある
欠席が影響しないという運用も多い
※『月報司法書士2016年11月』p30

5 『過料』と『罰金・科料』の違い(参考)

ところで,過料は罰金・科料とは違います。法律的な性格・扱いの違いをまとめておきます。

<『過料』と『罰金・科料』の違い(参考)>

あ 罰金・科料=刑罰

『罰金・科料』について
→『刑罰』である
労役場留置の対象となる
強制労働のような制度である

い 過料

過料は『刑罰』ではない
労役場留置という代替措置はない

過料は刑罰ではないという性格からやや弱いといえるでしょう。

6 財産開示手続の実効性(全体)

財産開示手続自体の現実的な有用性についてまとめます。

<財産開示手続の実効性(全体)>

あ ペナルティの弱さ

債務者が開示に応じない場合のペナルティについて
→最大で『過料』に過ぎない
→実効性としては弱い

い 実務の統計

統計上20%程度は和解が成立している
和解内容=支払方法を協議して決める
和解が成立した場合
→通常,財産開示の申立自体は取り下げて終了となる

う コンプライアンスへの影響

ア 基本的事項
開示義務に反する・過料を課されることについて
→一定の社会的なデメリットにつながる
イ 社会的デメリットの例
・一般的なレピュテーションリスク
・資金に関する取引への影響
例;融資・助成金などを受ける際の制約
詳しくはこちら|レピュテーション・リスク|村八分システム×無法地帯→官僚統治

7 債権回収でも財産開示手続の活用の実例(概要)

債務者のコンプライアンスの意識・態度が強い場合は財産開示手続が回収実現につながることもあります(前記)。
逆に,評判などを気にしない個人や会社に対しては,回収の実現にはつながらない傾向があります。
これはあくまでも一般的な傾向です。債権者側の工夫や努力によって,財産開示手続を活かして回収を実現する実例もあります。
これについては別の記事で紹介します。
詳しくはこちら|債権回収での財産開示手続の工夫や活用の実例