1 著作物不正利用への金銭の請求の法的性質
2 著作物の『使用料』の請求の法的扱い
3 著作物の不正利用の損害額(基本)
4 損害額算定で否定される傾向のもの
5 著作物の不正利用の加算金表示の法的扱い
6 著作物の不正利用と慰謝料
7 交渉による任意の金額の合意

1 著作物不正利用への金銭の請求の法的性質

著作物を不正に使用すると著作権侵害となります。いくつかの法的責任が生じます。
詳しくはこちら|著作権・著作者隣接権の侵害の法的責任(全体)と提案内容
本記事では,著作物の不正使用に対する金銭の請求について説明します。
まずは金銭の請求の法的性質についてまとめます。

<著作物不正利用への金銭の請求の法的性質>

あ 一般的な法的根拠

『ア・イ』のいずれかである
ア 不法行為による損害賠償請求
イ 不当利得返還請求

い 金額の算定方法

正規料金が基準となる(後記※3)
※著作権法114条3項

う 否定される請求権

次の請求内容は否定されるor否定される傾向が強い
ア 『使用料』の請求(後記※1)
イ 不正使用の加算金の請求(後記※2)
ウ 慰謝料(精神的損害;後記※4)

2 著作物の『使用料』の請求の法的扱い

著作物の利用については『使用料・料金』という言葉が使われます。
この利用が『不正』である場合は『使用料』は法的な扱いとしては合致しません。

<著作物の『使用料』の請求の法的扱い(※1)>

あ 一般的な『使用料』の意味

一般的な適法な著作物の使用について
使用料を合意することが多い
性質=著作権者が使用を許諾する対価
→『料金』『代金』と呼ばれるもの

い 著作物の不正利用と『使用料』

著作物の不正利用について
→『合意・許諾』がない
→『使用料の請求権』は生じていない

う 補足説明

不法行為の損害賠償請求は認められる
損害額の算定では『正規料金』が基準となる
金額としては違いはない
訴訟での扱いにおいて違いが現れる
著作権以外の権利侵害の裁判例が参考となる
詳しくはこちら|無人設備の利用による契約成立の判断(無断駐車の違約金)

3 著作物の不正利用の損害額(基本)

著作物の不正利用について経済面での責任・負担が生じないというわけではありません。不法行為による損害賠償請求権が生じます。
損害額の算定としては一般的に正規料金となります。つまり金額としては『使用料』と同じです。
ただし,法律的な請求権の種類は『使用料』ではありません。

<著作物の不正利用の損害額(基本;※3)>

あ 不正利用と損害賠償金

不正利用は『不法行為』に該当する
→損害賠償金(請求権)が発生する
※民法709条
不当利得返還請求権もあり得る
金額の算定は不法行為と同様である
※民法703条

い 損害額の算定(基本)

賠償する損害額の算定について
権利の行使によって受けるべき金額を損害額とする
=販売価格(一般的な使用料)に相当する金額
→正規料金が基準となる
※著作権法114条3項

う 正規料金の算定

ア 販売実績あり
被害者が日頃から写真(の使用)を販売している場合
→通常の料金設定を用いる
イ 販売実績なし
被害者が写真の販売をしていない場合
例;コンテストへの応募を継続している
→一般的な写真の販売業者の料金を用いる
例;アマナイメージズの料金設定
外部サイト|アマナイメージズ|料金表・WEBサイト(コマーシャル使用)

4 損害額算定で否定される傾向のもの

損害額の算定の基本的内容は前記のものです。これに関して,いろいろな発想があります。しかし前記のもの以外は否定される傾向が強いです。

<損害額算定で否定される傾向のもの>

あ 懲罰的ペナルティ

ア 一般的な解釈
損害賠償は懲罰的な趣旨を含めない
※最高裁平成9年7月11日
イ 著作物の不正利用の損害額算定
正規料金からの増額は認めない
※東京地裁平成13年5月16日;LECインスコ事件
詳しくはこちら|ソフトウェアの不正使用の損害額算定(LECインスコ事件)

い コスト積算方式

写真の撮影に要した費用を請求する発想について
例;撮影のために要した旅費・交通費
→一般的に認められない
販売価格(正規料金)が基準とされている(前記※3)

5 著作物の不正利用の加算金表示の法的扱い

著作者としては不正利用でも,善良なユーザーでも同じ金額しかもらえないのは納得できないという発想もあるでしょう。
しかし,不正利用については,金銭的な責任以外に,刑事責任も生じます。
詳しくはこちら|著作権・著作者隣接権の侵害の刑事責任(法定刑・量刑・告訴状)
不正利用者と善良なユーザーの法的扱いが『まったく同じ』ということはありません。
とはいっても,経済面で差を付けたいという希望もよくあります。そこで『不正使用の加算金(ペナルティ)を明示しておく,という工夫が考えられます。
ここから先の解釈はそう簡単ではありません。個別的な事情によりますが大きな方向性としては『加算金は認められない傾向』があります。

<著作物の不正利用の加算金表示の法的扱い(※2)>

あ 不正利用の加算金の表示

著作権者が『不正利用の加算金』を示すことがある
趣旨=ペナルティとしての割増の金額
例;ウェブサイト上の写真(著作物)の付近

い 法律的な扱い

不正使用者が『あ』の表示を承諾したと認定されない傾向がある
→『あ』の加算金は適用されないことになる

う 具体例(参考)

著作権以外の権利侵害のケース
無人駐車場への無断駐車について
掲示されていた『違約金』の請求を否定した

え 一般的な『約款』の拘束力(参考)

ア 約款の一般論
利用者が理解・承諾したとは限らない
→否定されることもある
意思の推定により有効とされることもある
※大判大正4年12月24日
イ 公的性格のある約款
行政庁の審査・公示がある約款について
→拘束力が肯定される傾向がある
<→★約款の拘束力

6 著作物の不正利用と慰謝料

著作物の不正使用についての慰謝料が認められることがあります。純粋な財産権である著作権とは別に精神的な権利である著作者人格権があるためです。
つまり,著作者人格権侵害については慰謝料が認められることもよくあります。

<著作物の不正利用と慰謝料(※4)>

あ 一般的原則

財産的損害について
→これに対応する賠償だけが認められる
詳しくはこちら|財産的損害×慰謝料の関係|一般論|原則=慰謝料なし|特殊事情→例外

い 著作物不正使用の財産的損害

正規料金が基準となる(上記※3)

う 慰謝料

財産ではなく精神的苦痛に対する損害賠償(慰謝料)について
著作者人格権侵害については
『い』とは別に(加算して)認められることがある
例;加害の態様が悪質である場合など(石垣写真事件)
詳しくはこちら|名誉回復措置請求の実例(市史事件・石垣写真事件)

7 交渉による任意の金額の合意

以上の解釈論は,文字どおり法律的な解釈です。裁判所が判断する場合の基準といえます。
この点,交渉によって当事者の両方が加算額や慰謝料を含む金額に納得し,合意することは可能ですし,実際に多いです。というのは,侵害した者は著作権法違反の刑事責任も負います。そこで『告訴などの刑事責任追及をしないこと』と引き換えに一定の経済的負担を受け入れることがあるのです。
ただし,交渉において『告訴』をアピールする仕方によっては,逆に『恐喝』という想定外の反撃を受けることがあります。注意が必要です。
詳しくはこちら|権利行使と脅迫罪・恐喝罪との区別(ユーザーユニオン事件)