1 出資金と預り金の根本的な差異
2 出資金と預り金の現実面の類似性
3 出資金と預り金の実務における判別
4 出資金と預り金の区別に関する基準・見解

1 出資金と預り金の根本的な差異

出資法には『出資金』と『預り金』に関する規制・罰則があります。
詳しくはこちら|出資法の『出資金・預り金』の規制の規定内容と基本的解釈
この2つは現実的に重複することが多いです。
本記事では,出資金と預り金の区別について説明します。
ただし結局法的な扱いに実質的な違いはありません。また実務ではほぼすべて『預り金』として扱っています。そのため,実務ではこの,区別の理論が役立つということはありません。
まずは,出資金と預り金の根本的・性質的な違いをまとめます。

<出資金と預り金の根本的な差異>

あ 出資金

ア 一般的な意味
元本の返還が保証されない
契約締結時点における権利の状態
イ 法的な権利関係
事業の成功を停止条件とした条件付返還請求権

い 預り金

ア 一般的な意味
元本の返還が保証される
契約締結時点における権利の状態
イ 法的な権利関係
元本返還請求権
既に発生している

2 出資金と預り金の現実面の類似性

上記のように,出資金と預り金は理論的には別のものです。しかし,現実には重複するところが多いです。類似性についてまとめます。

<出資金と預り金の現実面の類似性>

あ 経済的機能

出資金・預り金ともに次の経済的機能を持つ
ア 資金提供者の目的・期待
資金提供者は,元本の返還+利益配当を期待して金銭を拠出する
イ 資金需要者の勧誘・表現
資金を求める者は,元本の返還・利益の配当の確実性を説明・表現する
ウ 想定外の場面における状態
資金受領者が支払能力を失った場合
→資金提供者の期待が裏切られる

い 罰則

出資金・預り金の法規制は刑罰では差がない

3 出資金と預り金の実務における判別

出資金と預り金は,現実には重複することが多いです(前記)。
結局,実務ではほぼすべて『預り金』として扱っています。実務での扱いと他の見解をまとめます。

<出資金と預り金の実務における判別>

あ 実際の状況

出資金なのか預り金なのかという判断について
法律的な解釈論・見解にはバラエティがある(後記※1)
→実際には,明確に判別できない場合が多い

い 実務の傾向

実務ではほぼすべて『預り金』として扱っている
2つの規制の罰則は同一である
→この区別を厳密に判断する実益もない

う 反対の見解

出資金と預り金は根本的に異なるという見解もある
※栗田哲男『利殖商法と出資法』立教法学p111〜
外部サイト|栗田哲男『利殖商法と出資法』立教法学

4 出資金と預り金の区別に関する基準・見解

実務では預り金として扱うのが一般的です。そのため,出資金と預り金の厳密な区別・基準については考えなくても良いと言えます。
ただし,学説・見解としては当然,この2つの区別に関する解釈論があります。これについてまとめます。

<出資金と預り金の区別に関する基準・見解(※1)>

あ 資金提供者意思基準説

次の事情によって判断する
ア 共同事業のための金銭の提供であるか
イ 資金提供者が共同事業を行う事業形態か
共同事業への参加意思の有無が重要である
※柴原邦爾『出資法と大衆の資産形成』法時58巻10号p94

い 総合的判断説

次の事情から当事者の意思を合理的に推測する
ア 事業の主体
共同事業的なものか否か
イ その他諸般の事情
※吉田淳一『出資の受入,預り金及び金利等の取締等に関する法律の概要』捜研17巻10号p40
※吉田淳一『出資の受入,預り金及び金利等の取締等に関する法律の運用と問題点』警論22巻2号p51

う 資金提供者意思基準説

ア 判断基準
当事者がどのように認識していたか
特に,資金提供者が資金の性格についてどのように認識していたか
イ 判別内容
条件が成就した場合に初めて元本が返還される認識が積極的に認められる場合
→出資金である
それ以外の場合はすべて預り金である
※栗田哲男『利殖商法と出資法』(前記)p112

え 集金者意思基準説

ア 判断基準
集金者の意思・客観的要素によって区別する
資金拠出者の意思は判断に必要な条件ではない
契約形態・形式は問わない
この見解が通説的見解である
※中空壽雅『テナントから出資金の名目で預り金を受入れた行為と出資法2条』p133参照
※真島信英『出資法第2条における預り金の禁止』亜細亜法学43巻2号p110
イ 出資金と判別される事情
集金者に共同事業の意思がある
その計画・実態が共同事業の性質を有する
ウ 預り金と判別される事情
共同事業の意思がない
集金者が,資金を思うがままに運用する
※神山敏雄『日本の経済犯罪』日本評論社p100