1 『預り金』の判断基準(まとめ)
2 預り金の定義と『定期積金』
3 預金同様の経済的性質の解釈論
4 『預り金』の判断基準(金融監督庁・4要素)
5 預金同様の経済的性質と現実のサービス
6 預り金・借入金・社債の意味
7 出資法における借入金・社債の扱い
8 会員制預託金と『預り金』からの除外

1 『預り金』の判断基準(まとめ)

出資法で『預り金』は禁止され,違反に対する罰則もあります。
詳しくはこちら|出資法の『預り金・出資金』規制の実務的なまとめ・解釈論の目次
実際には『預り金』に該当するかどうかの判断が難しいケースが多いです。
本記事では『預り金』の定義や判断基準の解釈を説明します。
まず,判断基準を最小限にまとめたものを示します。

<『預り金』の判断基準(まとめ・※1)>

あ 判例・2要素

次の2つに該当するもの
→預り金である
ア 元本保証
元本額orそれ以上の額を弁済期に返還することを合意した
イ 不特定多数
不特定多数の者から金銭を受け入れた
※最高裁昭和31年8月30日;旧貸金業取締法について

い 資金提供者の利便の扱い(概要)

要件の1つに『資金提供者の利便』を加える見解もある(後記※2)

要するに,元本保証と,資金提供者が不特定多数という2つの判断要素です。
しかし,この基準だと,一般的な社債まで含まれてしまうことになります。
このような特定の状況を考えると『資金提供者の利便』も判断要素に加えるべきでしょう。
逆に,社債という特定の状況以外では『あ』の2要素だけでも問題はないです。

2 預り金の定義と『定期積金』

『預り金』の定義の条文に『定期積金』という記載があります。
これと並べて規定される『預金・貯金』とは法的性質が異なります。
しかし経済的性質はすべて同じと言えます。
そこで,解釈としてはそれ以上複雑にはなりません。

<預り金の定義と『定期積金』>

あ 預り金の定義における『定期積金』

預り金の定義の中の例示として『定期積金』が規定されている
※出資法2条2項

い 定期積金の意味

期限を定めて一定金額の給付をなすことを約す
定期or一定の期間内において数回に金銭を受け入れる
※旧貯蓄銀行法1条4号参照

う 定期積金の法的性質

法的性質は『消費寄託』ではない
しかし現実には『積金合計額+利息相当額』の給付がある
→払込金の元利合計額に相当する
→経済的性質は預金と同様である

3 預金同様の経済的性質の解釈論

条文の定義を整理すると『預り金』とは,預金と同様の経済的性質のものを,不特定多数の者から受け入れることと規定されています。
『預金と同様の経済的性質』の内容の細かい解釈論をまとめます。

<預金同様の経済的性質の解釈論(※2)>

あ 預り金の定義における規定

次の内容の規定がある
『預金等の受入れと同様の経済的性質を有するもの』
※出資法2条2項2号

い 解釈論=判断基準

次の2つに該当するものを指す
ア 元本保証
元本ないしそれ以上の金額が保証される
イ 資金提供者の利便・目的
金銭が保管される性質・目的について
→主に資金提供者の便宜・利便のためである
※札幌地裁昭和50年11月12日;北日本相互経済互助会事件
※田宮重男『出資の受入,預り金及び金利等の取締等に関する法律の解説』金融方事務条39号p3
※柴原邦爾『出資法をめぐる法解釈上の諸問題』/『刑事法学の課題と展望』成文堂p364
※芝原邦爾『出資法をめぐる法解釈上の諸問題』『経済刑法研究 上』有斐閣p388
※津田実『出資の受入,預り金及び金利等の取締等に関する法律』法時6巻7号p29〜参照

これは『預金同様の経済的性質』の内容です。
『預り金』は,これに『不特定多数からの受入れ』が加わります。
上記解釈論を前提とすると,『預り金』の判断要素は『い』の2つに加えて『不特定多数』の3つということになります。
この点,解釈や整理の仕方によって2つ(上記※1),4つ(後記※3)というものもあります。

4 『預り金』の判断基準(金融監督庁・4要素)

『預り金』の判断基準について,金融監督庁のガイドラインにも記載があります。
実質的な内容は以上の見解・解釈と同じです。

<『預り金』の判断基準(金融監督庁・4要素・※3)>

あ ガイドラインの内容(引用)

出資法第2条について
(略)
(2)『預り金』とは、同条第2項において、預金等と同様の経済的性質を有するものとされており、次の4つの要件のすべてに該当するものとされている。
 1 不特定かつ多数の者が相手であること
 2 金銭の受け入れであること
 3 元本の返還が約されていること
 4 主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること

い ソース

金融監督庁
事務ガイドライン
『2-1 出資法第2条における金融監督庁の権限等』
『2-1-1(2)』
外部サイト|金融監督庁|事務ガイドライン

5 預金同様の経済的性質と現実のサービス

社会においては,実際のサービスが非常に多様化しています。サービスの内容の一貫として『金銭を預かる』という仕組みが含まれることもよくあります。
預り金と似ているが該当しない,という現実のサービスをまとめます。

<預金同様の経済的性質と現実のサービス>

あ 基本

『い・う』のサービスは『預金同様の経済的性質』ではない

い 金銭以外の給付

ユーザーから金銭を受領する
受領者は,同一金額に相当する物またはサービスで返還(給付)する

う 複合的サービス

ユーザーから金銭を受領する
受領者は,次の両方を行う
ア サービス・商品の提供
イ 受領した金銭の全額返還
いわゆる『預託金』である
例;ゴルフ会員権
特別法により適法化される(後記※4)

預り金は金銭で返還・給付することが要件となっています(前記)。金銭以外での給付では預り金に該当しません。要するにこれは,サービスの料金を前払いした状態と言えます。
次に,ゴルフ会員権のシステムでは,預託金という制度があります。
これが適法となる法的な枠組みについては後述します。

6 預り金・借入金・社債の意味

預り金についての条文の定義の説明に戻ります。
出資法2条2項2号には『社債,借入金その他いかなる名義をもってするかを問わず』という記載があります。
解釈論に入る前に,ここで出てくる『社債・借入金』と,大元の『預り金』の本来的な意味を整理します。

<預り金・借入金・社債の意味>

あ 預り金

消費寄託契約に基づく金銭の受入
『保管』が目的である=資金拠出者のための利便
※民法666条

い 借入金

消費貸借契約に基づく金銭の受入
※民法587〜592条

う 社債

消費貸借的なものである
本質は純粋な債権である
流通性が付与されている

7 出資法における借入金・社債の扱い

出資法における預り金の定義として『借入金・社債』が出てきます(前記)。
この定義における『借入金・社債』の意味・位置付けについてまとめます。
要するに,本来の『借入金・社債』は預り金に該当しないのです。ただ,名目だけが『借入金・社債』でも『預金と同じ経済的性質』であれば預り金に該当するということです。さらに,脱法行為の禁止の規定があります。
結局『預り金と同じ経済的性質』の周辺部分までが『預り金』に該当するということになります。

<出資法における借入金・社債の扱い>

あ 預り金との比較

借入金・社債は次のような性質がある
ア 元本保証
借入金・社債には,券面額の償還or元本の保証がある
→預り金と同じ
イ 主要な目的
借入金・社債は,資金受領者の利便のために行われる
→預り金とは異なる

い 『預り金』該当性の判断

借入金・社債の実態について
→預金と同じ経済的性質を持つ場合
→『預り金』に該当する
※出資法2条2項2号
※柴原邦爾『出資法をめぐる法解釈上の諸問題』/『刑事法学の課題と展望』成文堂p365

う 借入金・社債以外の名目

出資法2条2項2号の『借入金・社債』は例示である
→他の名目でも実質が預金と同じ経済的性質であれば『預り金』である
形式・名目に関わらないということである
※最高裁昭和31年8月30日;旧貸金業取締法について
※高橋幹男『最高裁判例解説刑事篇昭和31年度』法曹会p295参照

え 脱法行為の禁止との関係

『預り金』に該当しないとしても
『いかなる名義をもってするかを問わず』
『預り金の禁止を免れる行為』にも罰則が適用される
※出資法8条3項2号

8 会員制預託金と『預り金』からの除外

『預り金』の定義の解釈は複雑です(前記)。
そして,定義として『預り金』に該当しても特別法により適法化すると考えられている資金の受入れ方法もあります。ゴルフ会員権に関する預託金の受入れです。

<会員制預託金と『預り金』からの除外(※4)>

あ 特別法による適法化

ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律
→この規制が適用される会員契約に基づく預託金
→『預り金』には該当しない

い 脱法行為

『あ』の脱法行為と認められるもの
→出資法違反になる
※小田部胤明『出資の受入,預り金及び金利等の取締等に関する法律と判例の解説 増補第5版』東洋企画p190〜

う 詐欺罪との関係

ゴルフ会員権について
当初からゴルフ場の開設・預託金返還の意図がない場合
→詐欺罪が成立する
※茨城カントリークラブ会員権乱売事件・朝日新聞平成5年10月5日夕刊10面