1 出資法の『預り金』の規制内容
2 出資法の『預り金』該当性判断の注意点
3 『預り金』のセールス・約束内容の典型例
4 『預り金』に該当する資金受入れ名目の典型例
5 『出資金』『預り金』禁止違反の罰則
6 『出資金』『預り金』の区別
7 出資金・預り金の規制の基本的事項(概要)
8 出資金と預り金の細かい解釈論と区別(概要)
9 『不特定かつ多数の者』の解釈論(概要・共通)
10 『業として』の解釈論(概要・預り金のみ)
11 罪数と詐欺罪との関係の解釈論(概要・共通)
12 出資金・預り金の規制の立法趣旨(概要)

1 出資法の『預り金』の規制内容

いろいろな事業で,出資法の『出資金・預り金』の規制との抵触が問題となることがあります。これに関する解釈論はとても多く複雑で,適法性の判断が難しい傾向があります。
本記事では『預り金』の規制について,多くの解釈論を分析・整理して,実務で使いやすいように最小限にまとめます。
まずは『預り金』として規制される行為の条件を集約します。
すべてに該当するものが『預り金』に該当すると判断されます。

<出資法の『預り金』に該当する行為の条件(※1)>

あ 資金提供の勧誘+受入れ

不特定多数に対して資金提供の勧誘を行う
実際に金銭を受入れた

い 資金提供者への返還・元本保証がある(※2)

資金の元本が金銭で返還されることが保証される
マイナスになることはない

う 提供するのは金銭or代替物である

原則的には金銭である
しかし,有価証券も該当すると判断した裁判例もある

え 返還されるのは金銭である

返還内容がサービス・商品の場合は除外される

お 勧誘対象は不特定多数である

会員限定の場合は除外される
しかし,会員の流動性が高い場合は『不特定』と認定される

2 出資法の『預り金』該当性判断の注意点

出資金の『預り金』と認められる条件は前記※1のとおりです。判断する上での注意点がありますのでまとめます。

<出資法の『預り金』該当性判断の注意点>

あ 名目は関係ない

資金を受け入れる名目で回避されるわけではない
名目の例;出資金・借入金・融資・入会金など

い 資金提供者以外への給付・返還は除外される

資金提供者以外への給付が想定されるケースについて
→上記※2に該当しない
→『預り金』に該当しない
例;エスクロー
詳しくはこちら|エスクローの仕組み|出資法・資金決済法・信託業法との抵触

う 金融機関は適用除外

免許・認可を受けた金融機関には適用されない
例;銀行・信用金庫の預金など

3 『預り金』のセールス・約束内容の典型例

『預り金』に該当するかどうか検討・判断する際は,典型的な具体例が参考になります。典型的な『預り金』を受け入れる時のセールストークや約束する内容を紹介します。

<『預り金』のセールス・約束内容の典型例>

あ 利率確定型

1年間預ければ20%を付けて返します

い 業績連動型

事業の収益に応じて配当(返還)します
ただし,業績が悪くても出資金額未満にはなりません

4 『預り金』に該当する資金受入れ名目の典型例

一定の条件に該当する資金受入れは『預り金』である判断されます(前記※1)。
実際に『預り金』として認められた事例では多くの『名目』が使われています。名目の実際の具体例をまとめます。

<『預り金』に該当する資金受入れ名目の典型例>

あ 全体

多くの方が『預り金』認定を避ける努力をしてきた
大部分の方式について『預り金』と認定されてしまった

い 『預り金』と認定された名目

ア 借入金
消費貸借の性質がある受入れ方法であった
※名古屋高裁昭和56年11月16日
イ 出資金・融資金
※最高裁昭和31年8月30日;旧貸金業取締法について
ウ 利益分配金
※東京高裁昭和61年6月24日
エ 買戻特約付売買と賃貸借の賃料
※東京高裁昭和58年4月28日
オ 株式運用への出資金
※京都地裁平成5年9月20日
カ ネズミ講の入会金
※札幌地裁昭和50年11月12日;北日本相互経済互助会事件
キ 株主相互金融方式の貸付・払戻し
※東京高裁昭和30年7月14日・旧貸金業取締法について
※東京高裁昭和42年6月7日・旧貸金業取締法について

これらの裁判例などの実例については,別に説明しています。
詳しくはこちら|資金受入れの名目と『預り金』判断に関する事例
詳しくはこちら|買戻特約付売買と『預り金』判断に関する裁判例
詳しくはこちら|ネズミ講の入会金名目と『預り金』判断に関する裁判例
なお,『預り金』に該当するかどうかの判断は前記※1の条件です。『名目で判断する』わけではありません。これらの名目で資金を受入れたら必ず預り金に該当するわけではありません。

5 『出資金』『預り金』禁止違反の罰則

出資法の出資金・預り金の規制に違反した場合には刑事罰が適用されます。2つとも同じ法定刑です。

<『出資金』『預り金』禁止違反の罰則>

あ 法定刑

懲役3年以下or罰金300万円以下
併科あり
※出資法8条3項

い 両罰規定

罰金刑について
→両罰規定あり
※出資法9条1項3号

6 『出資金』『預り金』の区別

出資法には『預り金』とは別に『出資金』の規制もあります。実際にこの2つはとても似ていて,重複することも多いです。そして法定刑もまったく同じです(前記)。
この点,実務での考え方は単純です。要するに『預り金』だけを考えれば良いのです。

<『出資金』『預り金』の区別>

あ 出資金の制限

元本保証のある『出資金』も禁止されている
※出資法1条

い 2種類の罪の関係

『出資金』と『預り金』は実際には酷似している
→実務ではほぼすべて『預り金』として扱っている
2種類の罪は法定刑が同じである
→現実的に有利/不利の影響はない

預り金の規制に関して,実務的に必要な範囲でまとめたものは以上です。
このテーマに関する細かい解釈論はとても多くあります。細かい解釈論については別に詳しく説明しています。以下,解釈論の項目とリンクをまとめます。

7 出資金・預り金の規制の基本的事項(概要)

出資金・預り金の規制の条文の規定や解釈のうち基礎的なものは次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|出資法の『出資金・預り金』の規制の規定内容と基本的解釈

8 出資金と預り金の細かい解釈論と区別(概要)

出資金と預り金の定義には細かい解釈論があります。
さらに,この2つはとても似ているので,区別・判別する基準についても,複数の細かい見解があります。これらについては次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|出資法の『出資金』の定義の解釈論と意味や本質
詳しくはこちら|『出資金』に関する元本保証・既遂時期・脱法行為の解釈論
詳しくはこちら|出資法の『預り金』の定義の基本的な解釈論
詳しくはこちら|『出資金』と『預り金』の類似性と判別・区別の基準

9 『不特定かつ多数の者』の解釈論(概要・共通)

出資金・預り金ともに,資金受入れの対象者が『不特定かつ多数』であるものだけが規制の対象です。この『不特定・多数』については実際に判定が問題となることが多いです。『不特定・多数』の解釈論については次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|出資法の『不特定かつ多数の者』の解釈論
また,一定のメンバーに限定されている場合に『特定』か『不特定』かの判定が問題となるケースも多いです。実際に裁判所が判断したケースについては次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|資金受入れの対象者の限定と『不特定多数』の判断に関する事例

10 『業として』の解釈論(概要・預り金のみ)

預り金の規制は,『業として』の資金受入れが規制対象です。『業』の解釈論自体はありますが,実際の取引について,明確に判断・判定できないことも多いです。『業として』の解釈論については次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|出資法の『預り金』規制の『業として』の解釈論

11 罪数と詐欺罪との関係の解釈論(概要・共通)

出資金・預り金の規制の違反は刑事罰が適用されます。通常,多数の資金提供者が存在しますので,成立する罪の数が問題となります。
また,勧誘方法・手段が詐欺罪に該当するケースもあります。
罪の数や詐欺罪との関係については次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|『出資金・預り金』規制の罪数と詐欺罪との関係

12 出資金・預り金の規制の立法趣旨(概要)

出資金・預り金の規制についての立法趣旨は,他の解釈で参照・利用することがあります。また立法の経緯として旧貸金業取締法と大きく関係しています。これも,現在の出資法の解釈の中で関係することがあります。このような立法趣旨などは次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|出資法の『出資金・預り金』規制の立法趣旨と旧貸金業取締法との関係