1 捜査機関|データ×差押|基本
2 データの複写+媒体の差押
3 記録命令付差押|平成23年法改正|概要
4 サーバーのデータ取得×従来の不都合
5 記録命令付差押|基本
6 記録命令付差押|拒否への対応

1 捜査機関|データ×差押|基本

捜査の中で『データ=情報』はとても重要です。
当然すぎることです。
ところが法律上『情報』の扱いはちょっと特殊です。

<捜査機関|データ×差押|基本>

あ 情報の扱い|基本

情報そのもの
→『証拠物』には該当しない
→差押の対象物にはならない

い 記録媒体

電磁的記録の媒体は差押の対象になる
例;磁気テープ・ディスク
※最高裁平成10年5月1日

う 最近の傾向

パソコン・スマートフォンに記憶媒体が内蔵されている
→これらの端末を差し押さえる

テープやディスクであれば,捜査機関がまるごと獲得できます。
しかし,ITの発達でデータの格納方法が変わってきています。
捜査の方法を決める法律も改正によって対応してきています。

2 データの複写+媒体の差押

最近はクラウドが普及しています。
クラウド利用によって,データが端末の中にはないことが増えています。
データが保管されているのは,端末の外部です。
これに対応した捜査機関のデータ取得方法をまとめます。

<データの複写+媒体の差押>

あ 基本

次の『い・う』に該当する場合
→複写+差押(『え』)の方法を取ることができる

い 要件|差押対象物

差し押さえるべき物が電子計算機である
例;パソコン・スマートフォン

う 要件|外部記録媒体

当該電子計算機が電気通信回線で記録媒体に接続している
記録媒体に情報を記録してある
例;メールサーバー

え 差押方法|複写+差押

電磁的記録を当該電子計算機or他の記録媒体に複写する
電子計算機or他の記録媒体を差し押さえる

お 差押を行う者

ア 捜査機関
イ 裁判所
※刑事訴訟法218条2項,99条2項
※後藤昭ほか『新コンメンタール 刑事訴訟法 第2版』日本評論社p218

3 記録命令付差押|平成23年法改正|概要

ITの進化によって捜査において不都合が生じるようになりました。
そこで,法改正で捜査手法が強化されました。
まずは概要をまとめます。

<記録命令付差押|平成23年法改正|概要>

あ 法令の不備

従来は『情報』の差押に不都合があった(後記※1)
=ITの普及に法整備が追いついていない状態

い 法改正

平成23年に刑事訴訟法が改正された
『記録命令付差押』の制度が新設された(後記※2)

4 サーバーのデータ取得×従来の不都合

サーバーのデータを捜査機関が取得する際,不都合がありました。

<サーバーのデータ取得×従来の不都合(※1)>

あ 前提事情

立証で必要不可欠な情報が外部サーバーに保管されている
例;レンタルサーバー・クラウド方式
捜査機関はこれを取得したい

い 従来の方法

『媒体物』を差し押さえる

う 問題点

無関係の情報が大量に含まれる
サーバー事業者の業務に大きな支障が生じる

5 記録命令付差押|基本

平成23年の法改正で『記録命令付差押』が新設されました。
この手続の内容をまとめます。

<記録命令付差押|基本(※2)>

あ 概要

対象者に『情報を記録媒体に記録する』ことを命じる
情報が記録された記録媒体を差し押さえる

い 対象者

電磁的記録を利用する権限を有する者
例;電磁的記録を保管する者
具体例;プロバイダー・レンタルサーバー事業者

う 記録命令

必要な電磁的記録を記録媒体に記録or印刷させる

え 差押

当該記録媒体を差し押さえる

お 差押を行う者

ア 捜査機関
イ 裁判所
※刑事訴訟法218条1項,99条の2

6 記録命令付差押|拒否への対応

記録命令付差押の手続には『拒否への罰則』がありません。
実際には『拒否』は生じないために敢えて設定されていないのです。

<記録命令付差押|拒否への対応>

あ 罰則

記録命令に応じなかった場合
→法律上の罰則はない

い 現実

仮にサーバー管理者が記録命令を拒否した場合
→『媒体物』の差押が行われることになる
→サーバー管理者は非常に大きな損失を受ける
→通常拒否することは生じない
※後藤昭ほか『新コンメンタール 刑事訴訟法 第2版』日本評論社p224

サーバーのデータを捜査機関が取得することが容易になっているのです。
なお,盲点として『国外拠点』のサーバーが挙げられます。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|捜査権限強化×マーケットへの影響|シェアリングエコノミー・国外限定