【宅建業法の『媒介』の定義・解釈論・認定の傾向】

1 宅建業法の『媒介』の定義・解釈論・認定の傾向

不動産の取引に関与するサービスが発展しています。
『媒介』に該当すると宅建業法の規制対象となります。
詳しくはこちら|宅建業法|基本・『宅地建物取引業』定義
本記事では『媒介』の解釈や該当性について説明します。

2 「媒介」というネーミング

まずは「媒介」というネーミングですが、日常用語としては「仲介」ということが多いです。また、「あっせん」ということもあります。
宅建業法では規定が作られた時期の影響で「媒介」という、今では日常用語としてあまり使わない用語が採用されました。

「媒介」というネーミング

一般的には次のような呼称が使われる
ア 『媒介』 ※宅建業法2条2号
イ 『仲介』ウ 『あっせん』 ※岡本正治ほか『改訂版逐条解説宅地建物取引業法』大成出版社p68

条文上は『媒介』ですが、一般的には別の用語が使われています。

3 媒介の意味(定義)

『媒介』の定義について、条文には規定がありません。
裁判例による定義をまとめます。

媒介の意味(定義)

あ 逐条解説

媒介とは、他人間の法律行為の成立に尽力する行為をいう。
仲介、周旋・あっせんともいう。
売買・貸借の媒介は、契約当事者(売主・買借主)の間に立って売買、貸借の契約の成立に向けてあっせん尽力する事実行為をいう。
※岡本正治ほか著『逐条解説 宅地建物取引業法 3訂版』大成出版社2020年p73

い 裁判例

・・・同法二条二号の「媒介」とは売買当事者の一方の依頼をうけ、当事者間にあって契約の成立をあっせん尽力するすべての事実行為を指称するものと解する・・・
※東京高判昭和50年7月24日

これだけでは区別としてあまりハッキリしていません。

4 媒介行為の内容の具体例

媒介という行為の内容には、いろいろなものが含まれます。

媒介行為の内容の具体例

媒介行為は、例えば
取引の相手方や取引物件の探索、
物件情報の提供、
売却広告、
権利関係等の調査、
現地案内、
契約当事者の引き合わせ、
取引物件等に関する説明、
取引条件の交渉・調整、
契約締結の立ち会い等、
契約成立に至る尽力行為をいう
※岡本正治ほか著『逐条解説 宅地建物取引業法 3訂版』大成出版社2020年p73、74
※大阪高判昭和34年3月26日(同趣旨)
※大阪高判昭和44年12月16日(同趣旨)
※仙台高秋田支判昭和46年11月2日(同趣旨)
※東京高裁平成19年2月14日(同趣旨)

広い業務・行為が含まれています。
ただ、これらのうち1つだけで『媒介』になるとは限りません。

5 媒介に該当するかどうかの認定の大枠

『媒介』と認定される判断の傾向をまとめます。

媒介に該当するかどうかの認定の大枠

あ 基本

個々の業務の組み合わせによって判断される

い 方向性

業務が取引へ及ぼす影響が大きい場合
→『媒介』と認定される可能性が高くなる

う 情報提供行為・扱い

『情報提供』だけでは取引への影響が小さい
→『媒介』に該当しない

実際によく問題となるのは『情報提供のみ』というケースです。
これについては裁判例含めて、ある程度明確な見解があります。
詳しくはこちら|宅建業法|『媒介』×情報提供行為|タネ屋|競売物件紹介の特殊性
いずれにしても『媒介』は『トータル』で判定されると言えます。

6 媒介業務と助言などのサービスとの関係(考え方・引用)

国土交通省が宅建業法の解釈をまとめて『解釈・運用の考え方』として公表しています。
この中に『媒介』の内容の説明になっている部分があります。
『媒介』の解釈における大きなヒントですので、該当部分の全体を引用します。

媒介業務と助言などのサービスとの関係(考え方・引用)

7 不動産取引に関連する他の業務との関係について
宅地建物取引業者に対しては、媒介業務のみならず、金融機関、司法書士、土壌汚染調査機関等の不動産取引に関連する他の多くの専門家と協働する中で、消費者の意向を踏まえながら、不動産取引について全体的な流れを分かりやすく説明し、適切な助言を行い、総合的に調整する役割が期待されている。また、宅地建物取引業者自らも積極的に媒介業務以外の不動産取引に関連する業務の提供に努めることが期待されている。
なお、宅地建物取引業者自らが媒介業務以外の関連業務を行う場合には、媒介業務との区分を明確化するため、媒介契約とは別に、業務内容、報酬額等を明らかにした書面により契約を締結すること。
特に、宅地建物取引業者が不動産コンサルティング業務を行う場合には、媒介業務との区分を明確化するため、あらかじめ契約内容を十分に説明して依頼者の理解を得た上で契約を締結し、成果物は書面で交付すること。
※『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』第34条の2関係−7(p46)
外部サイト|国土交通省|宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

要するに、助言コンサルティング媒介業務には含まれないということを示しています。
それを前提にして、助言やコンサルティングのサービス内容と費用について、ユーザーの誤解が生まれないような工夫を要請しているのです。

7 媒介契約の法的性質(概要)

媒介契約の民事的な法的性質をまとめます。
宅建業法の法規制とは直接関係はありません。

媒介契約の法的性質(概要)

媒介契約の法的性質
→民法上の準委任である
※民法656条
※最高裁昭和44年6月26日ほか
詳しくはこちら|仲介契約の基本(元付/客付・準委任の扱い・誠実義務・善管注意義務)

8 保険業法の『代理・媒介』の解釈論(参考)

以上の説明は宅建業法の『媒介』に関するものでした。この点、保険業法にも『代理・媒介』の解釈があります。
違う法律では、同じ用語でも意味・解釈は異なります。しかし、共通することもあります。
いずれにしても参考になります。
保険業法の『代理・媒介』の判断基準については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|『保険募集』(代理・媒介)の判断基準(監督指針・パブコメ回答)

本記事では、宅建業法の『媒介』(いわゆる仲介業務)の内容について説明しました。
実際には多くの事情が考慮されるので、容易に判断できるものではありません。
実際に『媒介』に該当するかどうかという問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談(や調査)をご利用くださることをお勧めします。

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【建築基準法『旅館・ホテル』判断基準|基本】
【宅建業法|『代理』定義・内容|媒介との違い】

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