【簡易宿所|多数人共用|脱法的個室運用×調査|男女相部屋回避】

1 多数人共用×個室|適法/脱法|基本
2 脱法的個室運用|具体例
3 多数人共用×宿泊拒否|基本
4 多数人共用×宿泊拒否|実務|男女相部屋回避
5 男女相部屋回避×条例
6 脱法的個室運用×許可申請・審査
7 脱法的個室運用×立ち入り調査

1 多数人共用×個室|適法/脱法|基本

簡易宿所営業では『個室』が多いと違法になります。
詳しくはこちら|簡易宿所|多数人共用|基本|相部屋・個室比率|半分を超える
今後,民泊での許可申請で問題となると思います。
脱法的手法が登場することも考えられます。
まずは適法/脱法の基本的部分をまとめます。

<多数人共用×個室|適法/脱法|基本>

あ 偶然個室状態→適法|具体例

偶然,2名用の部屋に1名だけが宿泊している
=1名分空きがある状態
→『多数人・共用』に反しない
=適法である

い 個室運用→脱法(※1)

許可申請では『2名用の部屋』として申告する
実際には『個室として=宿泊者1名のみ』に提供する
→『多数人・共用』に反する
=違法である
※平成28年4月大田区役所ヒアリング
※施行令改正・パブコメ・結果

2 脱法的個室運用|具体例

脱法的な個室としての運用となる例をまとめます。

<脱法的個室運用|具体例(上記※1)>

あ 明確的個室運用

最初から1人しか募集しない

い 仮装的個室運用

2人以上を募集する
1人の予約が確保できた時に次の対応をする
ア 募集を中止するイ 2人目の宿泊希望に対して拒否する(※2)

2人目の希望者への拒否が『個室として運用』したことになります。
ただし,これがちょっと複雑です。
次に説明します。

3 多数人共用×宿泊拒否|基本

宿泊希望の拒否に関しては,旅館業法に厳しいルールがあります。
これについて厚生労働省が見解を出しています。
まずは基本的事項をまとめます。

<多数人共用×宿泊拒否|基本(上記※2)>

あ パブリックコメント|疑問

共用の2人部屋について
1人の宿泊客がすでにいて,別に1人の宿泊希望があった場合
→宿泊を拒否ができるのか

い 厚生労働省見解|原則

宿泊を拒否できる事由は限定されている
これらの事由に該当しない限り拒否できない
『空き』がある以上はこのようになる
※施行令改正・パブコメ・結果

パブコメについては別記事で紹介しています。
詳しくはこちら|施行令改正・趣旨|違法状態の追認・公認|いろいろな方の見解

4 多数人共用×宿泊拒否|実務|男女相部屋回避

旅館業法のルールどおりに『拒否NG』とすると別の問題があります。
厚生労働省が指摘・説明する内容をまとめます。

<多数人共用×宿泊拒否|実務|男女相部屋回避>

あ 前提事情

共用の2人部屋について
2人目の宿泊希望があった場合

い 厚生労働省見解|実務

実際の運用では先客・後客の理解を得て対応する必要がある
例;男性客と女性客が相部屋となってしまう場合
※施行令改正・パブコメ・結果

この見解では『拒否が適法になる』かどうかがハッキリ分かりません。
事業者には『違法と認定されるリスク』が残る状態です。
『違法/適法が不明確な状況』は好ましくありません。
詳しくはこちら|シェアリング|ゲリラマーケット|基本|膨大×ミニマムコンプライアンス
地方自治体が独自にこの問題解消に取り組んでいるケースもあります。
次に説明します。

5 男女相部屋回避×条例

相部屋で宿泊拒否NGだと『男女相部屋』を回避できません(前述)。
これについて,条例で回避するという実例を紹介します。

<男女相部屋回避×条例>

あ 男女相部屋回避

自治体が男女の相部屋を回避する条例を定める例もある

い 条例|具体例

『男女の区画の区分』を義務付ける
※千代田区旅館業法施行条例10条1項5号

う 残る問題点|有効性

法令の趣旨と条例が整合しない
→条例の規定が無効となる可能性がある
詳しくはこちら|条例による規制の限界|法律との関係・抵触|徳島市公安条例事件

え 残る問題点|性別の判定

『性別』の評価・判断が明確にできないケースもある
例=性別変更の手術・法的手続
詳しくはこちら|性同一性障害による戸籍上の性別の変更と性分化疾患による性別の訂正

お 関連する問題点|ラブホテル建築規制条例

『異性の同伴』を想定する施設の場合
→自治体によっては規制に抵触する
詳しくはこちら|渋谷区ラブホテル建築規制条例|同意申請・調査・勧告・中止命令

いずれにしても,一定の法的問題が残ります。
これも,法整備の一環として解消すべき問題と思います。
以上の説明は法律の理論的なものでした。
実際の行政の審査や調査でどのように扱うか,は別問題です。
次に説明します。

6 脱法的個室運用×許可申請・審査

脱法的に『個室』として運用することは違法です(前述)。
実際に行政がどのようにこれを把握するのかを説明します。
まずは許可申請時点の審査についてまとめます。

<脱法的個室運用×許可申請・審査>

あ 申請×申告

次の事項は申告内容に含まれる
ア 具体的なベッドの数・位置 図面で示す
イ 宿泊可能な人数

い 現地調査

保健所のスタッフが現場を確認する
申請内容と異なる様子があった場合
→申請者に個々の点について確認する
※平成28年4月大田区役所ヒアリング

7 脱法的個室運用×立ち入り調査

行政の調査でも『現実の運用態様』を把握しています。

<脱法的個室運用×立ち入り調査>

あ 脱法的個室運用|典型例

許可申請上は『2つのベッド』が設置されている
現実には『1つのベッド』しか設置されていない
→違法である

い 調査方法

年に1度,保健所による抜き打ち立ち入り検査を実施している
詳しくはこちら|旅館業法|行政処分|調査権限・適合措置命令・営業停止・許可取消
※平成28年4月大田区役所ヒアリング

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【複数箇所の部屋×旅館業許可|一体性・多数人共用|用途混在】

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