【行政の肥大化・官僚統治|コスト・ブロック現象|小規模事業・大企業】
1 行政肥大化→グレーゾーン生成機能
2 行政の不合理な措置・行為|種類
3 行政の不合理な行為|法的救済措置=行政訴訟
4 行政訴訟×ハードル|処分性|概要
5 コスト・ブロック現象|基本
6 コスト・ブロック現象|コスト内容
7 コスト・ブロック現象|典型|小規模事業
8 コスト・ブロック現象|典型|大企業
9 行政と事業者との密接な関係という実情(概要)
1 行政肥大化→グレーゾーン生成機能
日本の行政の特徴として『肥大化=官僚統治傾向』が指摘できます。
その結果,事業のグレーゾーンが作られるという現象が生じています。
<行政肥大化→グレーゾーン生成機能>
あ 行政→暴走傾向
『法令』の根拠・委任がない行政の措置・行為が多い(※1)
民主的プロセスを欠く
→不合理・不明確なものが生じやすい
い 不明確→グレーゾーン生成
効力が不明確なルール・処分の傾向が多く存在する
そのような事業ドメインについて,次のような現象が生じる
・大手企業・順法意識の強い企業→参入しない
・リスクテイカー→参入する
う ベンチャーの聖域
『グレーゾーンはベンチャーの聖域』という現象が生じる
詳しくはこちら|グレーゾーンはベンチャーの聖域|濃いグレー・薄いグレー|大企業バリアー
このように,産業全体に大きな影響を与えているのです。
2 行政の不合理な措置・行為|種類
事業に関する監督官庁(行政庁)は,実際にいろいろな形で監督しています。
その内容は,法令の根拠のあるものから,根拠のない,いわば非公式のものまで幅広いです。
<行政の不合理な措置・行為|種類(上記※1)>
あ 個別的な処分
次のような個別的な行政処分
ア 不許可処分イ 営業停止処分ウ 許可取消処分
い 地方自治体|条例制定
ア 条例として規定を作るイ 条例を変更・廃止する
う その他のルール制定
例;通達・ガイドライン・手引き
『あ』と『い』の中間的なものと言える
3 行政の不合理な行為|法的救済措置=行政訴訟
行政の監督行為が不当である場合には,これを是正する救済手段があります。
行政訴訟,つまり裁判所が行政の適法性をチェックするという機能です。
3権分立のシステムの根幹の1つです。
<行政の不合理な行為|救済措置=行政訴訟>
あ 前提理論|法の支配
行政の判断よりも裁判所の判断が優先される
最終的には裁判所が『優劣』を判断する
※憲法81条,前文
い 救済措置|典型例
裁判所が行政処分を取り消す
う 救済措置|前提
当事者が訴訟提起・遂行をする必要がある
条例や通達の『法律との優劣』に関しては別に説明しています。
要するに条例や通達の有効性ということです。
詳しくはこちら|条例による規制の限界|法律との関係・抵触|徳島市公安条例事件
詳しくはこちら|通達の意味・種類・法的性質(国民・企業・裁判所への法的拘束力)
4 行政訴訟×ハードル|処分性|概要
行政訴訟にはいくつかのハードルがあります。
まずは『処分性』という法律上のハードルをまとめます。
<行政訴訟×ハードル|処分性|概要>
あ 処分性の要件
行政訴訟には『処分性』が必要である
い 非公式措置×処分性
行政の非公式な措置は『処分性』が否定される
例;通達・ガイドライン・行政指導
→行政訴訟の対象にはならない
=却下となる
う 解釈論
原則論のままでは不合理である
→例外的に救済を認める範囲が拡がりつつある
詳しくはこちら|行政訴訟・取消訴訟|処分性|基本|処分の定義・給付請求との並立
5 コスト・ブロック現象|基本
理論的には行政の不合理な行為を是正する手段はあります(前記)。
しかし,現実には大きなハードルがあります。
コスト・ブロック現象の基本的部分をまとめます。
<コスト・ブロック現象|基本>
あ コスト→行政訴訟断念
行政訴訟提起・遂行には多くの『コスト』を要する(※2)
『コスト』は事業者が負担する
→事業者が訴訟提起を断念する方向性
い 行政の不当助長効果
行政の見解・行為を是正する機会が排除される
=行政の暴走・肥大化を抑制できない状態
適正化がコストの壁にブロックされてしまう現象です。
この現象が行政の暴挙を支える構造となっています。
壁となる『コスト』の内容は次に説明します。
6 コスト・ブロック現象|コスト内容
『コスト』の内容を整理します。
<コスト・ブロック現象|コスト内容(上記※2)>
あ 時間的コスト
解決までに一定の期間が必要となる
それまでの間の営業機会を喪失する
い 金銭的コスト
訴訟のために要する費用
ア 弁護士報酬イ 手続の実費
例;各種調査費用・訴状貼付印紙
う 精神的エナジー・コスト
対立状態に関わっていることによる精神的負担
え レピュテーション・コスト
レピュテーション・リスクを負担すること
詳しくはこちら|レピュテーション・リスク|村八分システム×無法地帯→官僚統治
7 コスト・ブロック現象|典型|小規模事業
コスト・ブロック現象が発現しやすい状況がいくつかあります。
まずは『小規模事業』について,発現メカニズムをまとめます。
<コスト・ブロック現象|典型|小規模事業>
あ 発現条件
予定する事業規模が小さい
い コスト・ブロック現象発現
『コスト』を負担するリスクが不相応に大きい
→行政訴訟提起を断念する傾向が強い
8 コスト・ブロック現象|典型|大企業
『大企業』タイプの発現メカニズムをまとめます。
<コスト・ブロック現象|典型|大企業>
あ 発現条件
事業主体がコンプライアンスを特に重視する企業である
例;上場企業・上場を予定する会社
い コスト・ブロック現象発現
レピュテーションリスクが大きい
→行政訴訟提起を断念する方向性
9 行政と事業者との密接な関係という実情(概要)
以上のように,行政が事業者に対して不当な妨害をした場合に,事業者が救済を受ける法的な手段は存在します。
しかし,現実的なハードル(ブロック)があるので機能しない傾向が強いのです。
そこで,事業者と監督官庁は(良い・悪いは別として)密接な関係を持つ実情があります。
このことは国会(委員会)のコメントとしても登場しています。
詳しくはこちら|ノーアクションレター制度とグレーゾーン解消制度の違い(比較)