1 オンライン賭博×賭博場開張図利罪|『賭博場』解釈
2 賭博場開帳図利罪×オンライン賭博|肯定説
3 賭博場開帳図利罪×オンライン賭博|否定説
4 賭博場開張図利罪×オンライン賭博|見解・分析
5 賭博場開張図利罪×電話方式|肯定|判例|事案
6 賭博場開張図利罪×電話方式|肯定|判例|裁判所の判断
7 賭博場開張図利罪×メール・LINE賭博|肯定|判例

1 オンライン賭博×賭博場開張図利罪|『賭博場』解釈

オンライン賭博の法解釈が問題になるケースは多いです。
その中で『胴元』への『賭博場開張図利罪』の適用というテーマがあります。
ハイテクとローテクを組み合わせたオンライン賭博が実際に検挙されました。
本記事では,その判例を紹介します。
最初に解釈論をまとめます。
事案内容はその後に紹介します。

<オンライン賭博×賭博場開張図利罪|『賭博場』解釈>

あ 構成要件|基本

犯人自らが主宰者となり『賭博場』を提供する
※刑法186条2項

い 『賭博場』|解釈

賭博を行う一定の場所or場所的設備
※福岡地裁平成27年10月28日

2 賭博場開帳図利罪×オンライン賭博|肯定説

オンライン賭博では『賭博場』があると言えるかどうかが曖昧です。
そのため,賭博場開張図利罪の成否について両方の見解があります。
まずは肯定する方向の判例を紹介します。

<賭博場開帳図利罪×オンライン賭博|肯定説>

賭場開帳図利罪が成立するためには
必ずしも賭博者を一定の場所に集合させることを要しない
※最高裁昭和48年2月28日

事案内容については後述します。

3 賭博場開帳図利罪×オンライン賭博|否定説

否定する方向の見解をまとめます。

<賭博場開帳図利罪×オンライン賭博|否定説>

あ 立法の背景×オンライン賭博

刑法186条2項は古典的な賭博を念頭に置いた規定である
現代では移動可能な電子通信機器が発達している
賭博罪の規定は,現代の賭博の実情に適合していない面がある

い 拡大解釈禁止

立法を経ずに解釈によって処罰を拡大することは許されない
※福岡地裁平成27年10月28日

『電子空間』を『賭博場』に含めることはしない,という解釈です。
この考え方自体は非常にシンプルです。
この裁判例の内容・事案については別に説明しています。
詳しくはこちら|オンライン賭博×賭博場開張図利罪|否定説|平成27年福岡地裁

4 賭博場開張図利罪×オンライン賭博|見解・分析

以上の説明で2つの見解を紹介しました。
しかし純粋に2つの別の解釈,とは言い切れないと思います。
ちょっと分析を進めます。

<賭博場開張図利罪×オンライン賭博|見解・分析>

あ 場所との結びつき・連続性

肯定・否定の見解があるように見える
しかし,実際には賭博の方式は単純ではない
『場所』との結びつきに濃い/薄いの『程度』がある
この程度は『連続的な量』であると言える

い 『賭博場』×判断要素

『場所との結びつき』によって
→『賭博場』と言えるか否かが決まる

このように考えることができるでしょう。
では,実際に,肯定した判例の判断内容を詳しく見て行きましょう。

5 賭博場開張図利罪×電話方式|肯定|判例|事案

上記の賭博場開張図利罪を肯定した判例の事案をまとめます。

<賭博場開張図利罪×電話方式|肯定|判例|事案>

あ 物理的設備

主犯者は,組事務所に次のツールを設置した
ア 電話・事務机
イ 特製の売上台帳・メモ類
ウ スポーツ新聞・プロ野球日程表など

い スタッフ

主犯者は,配下の組員4人に事務所で次の作業をさせた
ア 投票受付
電話で賭客の申込みを受けさせた
イ 集計
事務所外で受けた賭客の申込みを集計・整理させた
プロ野球試合の勝敗に基づいて,次の集計をさせた
集計内容=勝者に支払うべき賭金=勝金・徴収すべき寺銭

う 規模

4日間連続
賭客数=それぞれ数名〜十数名
ミニマムベット=1試合・1口1000円・1口以上
※最高裁昭和48年2月28日

6 賭博場開張図利罪×電話方式|肯定|判例|裁判所の判断

上記の事案から,裁判所は『場所との結びつき』を評価・判断しました。

<賭博場開張図利罪×電話方式|肯定|判例|裁判所の判断>

『野球賭博』開催の各所為について
組事務所を本拠として行われた
→賭博場開張図利罪が成立する
※最高裁昭和48年2月28日

7 賭博場開張図利罪×メール・LINE賭博|肯定|判例

時代は代わってメール・LINE全盛の世の中となりました。
賭博場開張図利罪の判断がなされた裁判例の概要をまとめます。

<賭博場開張図利罪×メール・LINE賭博|肯定|判例>

あ 事案

胴元は次の方法で賭けを行わせた
携帯メール・ラインで連絡を行う
自宅や近辺で集計表を作る
金銭の受け渡しをする

い 裁判所の判断

Aの行動範囲を『賭博場』として認めた
→賭博開帳図利罪の成立を認めた
※大阪地裁平成28年3月
※朝日新聞デジタル平成28年6月3日

これも『リアル作業の場所』が重視されているように思えます。
つまり,集計・金銭受け渡しという作業が『場所』と結びついているのです。
トータルで,賭けをした『場所』が特定できる,という判断なのです。