1 データ消失|損害|種類
2 損害の範囲|相当因果関係理論|一般論
3 合意・約款による損害範囲の限定
4 データ消失事故|損害算定|分類
5 データ消失事故|過失相殺|基本
6 データ消失事故|過失相殺|過失割合
7 データ消失事故|損害算定事例・判例|まとめ

1 データ消失|損害|種類

本記事ではデータ消失による損害算定について説明します。
まずは,データ消失による損害の種類を整理します。

<データ消失|損害|種類>

あ データの市場価値

マーケットで取引の対象となっているデータ

い 復元・再構築費用

データの復元・システムの再構築のために要する費用

う 逸失利益

使用により利益を生じるデータの場合
→使用不可期間中の『利益減少額』
『営業損害』と呼ぶこともある

え 風評被害
お 精神的苦痛
か 弁護士費用

法的手続のために要した弁護士費用

2 損害の範囲|相当因果関係理論|一般論

上記の損害は関係する項目を網羅したものです。
賠償の責任が認められるかどうかは,別問題です。
まずは,一般的な『損害の範囲』の基本ルールを示しておきます。

<損害の範囲|相当因果関係理論|一般論>

賠償する損害の範囲
→行為・事故と相当因果関係のある損害
※民法416条

当然ですが,これは抽象的な基準です。

3 合意・約款による損害範囲の限定

実際のデータ消失事故では『損害範囲』が限定されていることもあります。
典型例は『サーバー利用』などの契約における約款です。
このような約款・合意は有効性が問題になることもあります。
(別記事『レンタルサーバー|約款に関する事項・典型例・有効性』;リンクは末尾に表示)

以下,原則的・一般的な損害算定の内容の説明に進みます。

4 データ消失事故|損害算定|分類

データ消失事故では法的責任が認められることあります。
そして,一定の損害について賠償責任が認められることになります。
損害の算定について,相場・標準額をまとめます。

<データ消失事故|損害算定|分類>

あ 事業・業務に常用するデータ

復元・再構築費用
逸失利益

い 事業・業務と個人的用途の混在

精神的苦痛
この中で『経済価値』をプラスアルファとする
標準額=100万円

う 個人的用途

精神的苦痛
要するに『想い出の品』の喪失と言える
標準額=10〜30万円

え 共通

弁護士費用
一定程度の業務・作業を要する場合に認められる

以上は実際の事例・判例を元に一般化したものです。
当然,個別的事情で大きく異なることもあります。

5 データ消失事故|過失相殺|基本

データ消失事故では『過失相殺』が適用されることが多いです。

<データ消失事故|過失相殺|基本>

あ 過失相殺|基本

被害者の過失が認められる場合
→賠償額を一定割合で減額する

い 被害者の過失|主な内容

バックアップをしていなかったこと

6 データ消失事故|過失相殺|過失割合

過失相殺における『過失割合』の相場・標準をまとめます。

<データ消失事故|過失相殺|過失割合>

あ 共用サーバー・クラウド

ア 典型例
共用サーバー・クラウドの利用
イ 過失割合
データ消失リスクの想定が可能である
→50%前後と算定されることが多い

い 物理的損傷

ア 典型例
・上のフロアからの水漏れ
・自動車突入事故
イ 過失割合
データ消失リスクの想定がほぼ不可能である
→被害者の過失が否定される傾向が強い

う 個人ユースの端末

ア 典型例
個人のパソコンについて業者がメンテナンスを行った
→業者の作業ミスによりデータが消失した
イ 過失割合
データ消失リスクの想定は困難である
=バックアップの必要性を感じないのが通常である
→被害者の過失が否定される傾向が強い

7 データ消失事故|損害算定事例・判例|まとめ

以上のまとめの元となっている事例・判例をまとめておきます。

<データ消失事故|損害算定事例・判例|まとめ>

あ メンテナンス作業ミス・データ消失事件
再構築費用
逸失利益

※東京地裁平成13年9月28日レンタルサーバーデータ消失事件
(別記事『メンテナンス作業ミス・データ消失事件』;リンクは末尾に表示)

い デオデオ・HDDデータ消失事件
データの市場価値
慰謝料 ◯→100万円
過失相殺 被害者の過失割合=50%
弁護士費用 ◯→5万円

※広島地裁平成11年2月24日デオデオ・HDDデータ消失事件
(別記事『デオデオ・HDDデータ消失事件』;リンクは末尾に表示)

う 自動車突入×データ消失事故
再構築費用
過失相殺
弁護士費用

※旭川地裁平成11年6月30日
(別記事『自動車突入・データ消失事故』;リンクは末尾に表示)