【住居表示と地番は違う;制度の歴史など】

法務局で,ある土地の登記情報を取り寄せようとしました。
すると,職員から「地番を記入して下さい」と言われました。
住所と地番で2種類あるのでしょうか。

1 住居表示地番は違う
2 住居表示の実施により,住所地番が一致しなくなる
3 住居表示と地番の対応はブルーマップで確認できる
4 住居表示本籍地番の制度の歴史

1 住居表示地番は違う

土地を特定するためには,土地の場所,を使います。
これが『地番』です。
人の住所・居所を特定するためには,存在する場所,を使います。
この場合は,『住居表示』を使います。
具体的に,例を使って示します。

<住居表示と地番;まとめ>

あ 住居表示(いわゆる『住所』)

例;○○町5-43-2
使われる場面(例);登記,固定資産税(納付書等),公図

い 地番

例;○○町1234番地
使われる場面(例);人の住所・居所(住民票),郵便物の宛先,宅配便の宛先

2 住居表示の実施により,住所地番が一致しなくなる

住居表示の実施が未施行であれば,『地番』と『住所』が一致しています。
明治時代以降の複雑な制度の変遷により,住所地居住地土地所在地が分かれ,管理が困難となってきました。
そこで,整理するために,住所地は,分かりやすく番号を振り直す作業,が行われました。
これが住居表示の実施です。
そして,それ以外に残されたのが,戸籍の本籍地や土地を示す地番なのです。

3 住居表示と地番の対応はブルーマップで確認できる

株式会社ゼンリンの『ブルーマップ』には,住所(住居表示)地番の双方が載っています。
地図中に,黒字で住所が,青字で地番が表示されているのです。
管轄法務局に備え付けれられているので,法務局に行けば無料で見ることができます。
もちろん,市販もされていますし,多くの図書館に所蔵されています。
登記を扱う司法書士事務所では,付近のブルーマップを用意していることが多いです。
最近は,オンラインでも閲覧できるので,冊子ではなく,オンラインで対応することもよくあります。

また,実際には,ほとんどの法務局が電話での問い合わせに応じています。
管轄法務局に電話して,『住所から地番を調べて欲しい』と言えば対応してくれます。

4 住居表示本籍地番の制度の歴史

住居表示本籍地番,は人や不動産を公的に管理する制度,ということが共通しています。
この管理制度が長い間に変わってきたのです。
制度の変遷を順にまとめるとこのようになります。

<住居表示,本籍,地番;制度の歴史>

あ 徴税上の番号→登記制度

明治初期
徴税目的で土地に番号が付された→地番として登記制度に引き継がれた。

い 戸籍スタート

国民の居住の実態を把握するため,住所地を基準とした戸籍が作られた。
戸籍に記載する住所地を地番で表記することにした。

う 寄留制度,本籍登場

近代化の発展→人の移動が活発となった。当初の想定を超えた。
戸籍上の住所地と実際の居住地が一致しない国民が増えた。
このような背景から,寄留制度が作られた。
戸籍上の住所地から離れて生活する国民は,戸籍簿とは別の寄留簿に登録された
→戸籍制度から住民登録の役割が切り離され,身分登録の役割のみが残された。
戸籍の単位として,観念上の存在としての本籍が登場した。

え 住民登録制

寄留制度の不備や戸籍と寄留の二元制度から,行政事務が煩雑化。
→寄留制度に代わるものとして住民登録制度が創られた。

お 住居表示実施

地番の配置に規則性がなかったため,住所=地番のままだと,住所の特定が困難であった
→住所に規則性をもたせるため,住居表示制度が創られた。

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