1 IT重説ガイドライン|不合理・疑問
2 IT重説ガイドライン|不合理性×ヒアリング
3 国土交通省・ヒアリング|非対面NG解釈論
4 重要事項説明|宅建業法の条文
5 非対面NG解釈論|不合理性
6 法解釈×判断権者|現実的コスト
7 IT重説ガイドライン・法的位置付け|不合理性

1 IT重説ガイドライン|不合理・疑問

IT重説は現在,ガイドラインによる社会実験が遂行されています。
これは『現行法ではIT重説=非対面の重要事項説明はNG』という解釈が前提となっています。
そしてガイドラインに従った場合だけ『OK(適法)』になる,という規定になっています。
詳しくはこちら|IT重説|基本|重要事項説明の非対面NG→解禁方向
ここまでの『前提・構造』は理論的に不合理であると指摘されています。
まずは不合理性・疑問点を特定します。

<IT重説ガイドライン|不合理・疑問>

あ 『非対面NG』について

『重要事項説明を非対面で行ってはならない』の法的根拠が不明である

い ガイドラインの法的位置付け

(非対面の重要事項説明がNGである前提で)
ガイドラインの方式に従うとOKとなる法的根拠が不明である

2 IT重説ガイドライン|不合理性×ヒアリング

ガイドラインその他の資料を精読しましたが上記疑問は解消されませんでした。
そこで,直接,この疑問のある解釈を示している部署に聞いてみました。

<IT重説ガイドライン|不合理性×ヒアリング>

当事務所においてヒアリングを行った
時期=平成28年2月
対象部署=国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課

このヒアリング結果を元に,解釈論について以下説明します。

3 国土交通省・ヒアリング|非対面NG解釈論

国交省の説明する『非対面NG』という解釈の理由をまとめました。

<国土交通省・ヒアリング|非対面NG解釈論>

あ 解釈の内容

国交省では,重要事項説明は対面で行うことと解釈している
法制局の職員からも同様の非公式コメントを聞いたことがある
この解釈は,公的な公開された記録・通達・法令としては存在しない

い 解釈の理由

宅建業法35条1項に『交付して説明』という文言がある
『交付した後に説明』とは書いてない
『電子的記録での代用を認める』とは書いてない

突っ込みどころ多数,という状況です。
順に検討・説明を進めてゆきます。

4 重要事項説明|宅建業法の条文

まずは関係する宅建業法の条文を挙げておきます。

<重要事項説明|宅建業法の条文>

重要事項が記載された『書面を交付して説明』
説明の相手方に対し,取引取引士証を『提示』
重要事項説明書には,取引取引士の記名・押印が必要
※宅地建物取引業法35条1項,35条4項,35条5項

5 非対面NG解釈論|不合理性

宅建業法の重説に関する条文から『非対面NG』という解釈に至るでしょうか。
ヒアリング結果と対応するようにまとめてみます。

<非対面NG解釈論|不合理性>

あ 宅建業法35条|文言

『交付した直後(同時)に説明』とは書いてない
→『交付した後に説明』を排除したとは読めない
『オフラインでの紙の書面』とは書いてない
→オンラインでの書面(情報)提供を否定したとは読めない
いずれも書いてない以上『どちらでも良い』と読むのが自然である

い 国語辞典『交付』

『交付』
[名](スル)
役所や機関などが、一定の手続きをふんだ人に金銭を供与したり書類などを発行したりすること。
『証明書を―する』
※デジタル大辞林 

う 他の法律・比較

ア オンライン書面|e-文書法など
『書面』としてオンラインのものを含む解釈は広がりつつある
詳しくはこちら|業務上のクラウド利用|個人情報保護法・会社法・上場関連規則・オンライン文書保存
イ 電子署名|不動産登記法など
『電子署名』を『押印』とする法制度も普及しつつある
ウ 交付|各種公的書面
各種の公的な『免状・証明書交付申請』
→郵送も含めて解釈・実際の運用がなされている

6 法解釈×判断権者|現実的コスト

以上のように現行法でも『IT重説はOK』という解釈も十分にあり得ると思います。
しかし,現実的には,事業者にとって,国交省の見解は厄介です。
安易に無視できるものではありません。
現実的な負担・コストについて『法解釈の判断権者』の構造から整理します。

<法解釈×判断権者|現実的コスト>

あ 一時的判断=行政

国土交通省が『行政処分』を行う
この判断の中に『法解釈』が含まれる

い 最終判断=裁判所

不当な行政処分が行われた場合
→処分を受けた方が『行政訴訟を提起』する
通常は『行政処分取消訴訟』である
裁判所が行政処分の適法性を審査する
この中で行政処分の前提となった法解釈も審査・判断される

う 構造上のポイント

被処分者は勝訴するまで行政処分を覆せない
被処分者は提訴のコストを負担する
コストの種類=時間・金銭・精神的エネルギー

7 IT重説ガイドライン・法的位置付け|不合理性

IT重説ガイドラインでは『非対面NG』が前提とされています(前記)。
その上で,一定の条件・範囲で非対面=IT重説がOK,と決められています。
法律的・理論的に,なぜOKとなるのか,については疑問です。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|IT重説ガイドライン・不合理性|法的位置付け・理論構成