【不正な2重価格表示は違法となる(判断基準や具体例)】

1 2重価格表示|定義・典型例
2 2重価格表示|意義・不都合
3 2重価格表示|同一商品|基本
4 2重価格表示|同一商品|同一性判断
5 2重価格表示|比較対照価格の正確性
6 おとり広告×2重価格表示|具体例
7 2重価格表示・不動産販売

1 2重価格表示|定義・典型例

セールス・広告では『2重価格表示』が使われることがあります。
本記事では2重価格表示の基本事項を説明します。
まずは2重価格表示の定義・典型例をまとめます。

<2重価格表示|定義・典型例>

あ 定義

事業者が自己の販売価格に比較対照価格を併記して表示する
比較対照価格は自己の販売価格よりも高い金額である
※価格表示ガイドライン平成18年1月4日公正取引委員会『第4』

い 典型例

『通常価格の30%引き』
『市価よりも30%安い』

2 2重価格表示|意義・不都合

2重価格表示はメリット・デメリットがあります。
悪質なものは法律で禁じられています。

<2重価格表示|意義・不都合>

あ 意義

次の事項の促進に資する→好ましい
ア 一般消費者の適正な商品選択イ 事業者間の価格競争

い 不都合

比較対照価格の内容が適正ではない場合
→一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与える
=有利誤認に該当する
※価格表示ガイドライン平成18年1月4日公正取引委員会『第4』

有利誤認の一般的な内容は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|景品表示法の基本(優良誤認・有利誤認と調査・指導・措置命令・罰則)

3 2重価格表示|同一商品|基本

比較対照価格は,広告の販売商品と同一であるはずです。
公正取引委員会のガイドラインの内容をまとめます。

<2重価格表示|同一商品|基本>

あ 同一商品の要請

比較対照価格は『販売商品』と『同一の商品』である必要がある
比較対照価格が『別の商品』である場合
→不当表示に該当するおそれがある

い 別の商品|例外

『別の商品』を同一事業者が実際に販売している場合
→比較対照価格として表示することは適法である
※価格表示ガイドライン平成18年1月4日公正取引委員会『第4』

4 2重価格表示|同一商品|同一性判断

比較対照価格とする商品と販売商品の『同一性』の判断基準をまとめます。

<2重価格表示|同一商品|同一性判断>

あ 商品の同一性の判断要素

銘柄,品質,規格など

い 衣料品|特殊性

例;衣料品など
色やサイズの違いがあっても同一の価格で販売される
→同一の商品として扱う

う 商品の個性の考慮

次の2つのカテゴリは『同一の商品』としては扱わない
ア 新品・通常品イ 中古品,汚れ物,キズ物,旧型・旧式の物

え 生鮮食料品|特殊性

例;野菜,鮮魚など
一般的には,商品の同一性を判断することが難しい
→原則として不当表示に該当する
※価格表示ガイドライン平成18年1月4日公正取引委員会『第4』

5 2重価格表示|比較対照価格の正確性

広告をする事業者が『自己の販売価格が安い』と強調する傾向があります。
そこで,比較対照価格が『虚偽』ではないが『あいまい』になる,というケースがあります。
比較対照価格の正確性について,ガイドラインで基準が作られています。

<2重価格表示|比較対照価格の正確性>

あ 比較対照価格|典型例

ア 過去の販売価格イ 希望小売価格ウ 競争事業者の販売価格

い 比較対照価格×正確性

比較対照価格は,事実に基づいて表示する必要がある
虚偽である場合
→不当表示に該当する

う 比較対照価格の根拠×正確性

比較対照価格の内容・前提事情を正確に表示する必要がある
価格の内容・前提事情の表示があいまいである場合
→不当表示に該当するおそれあり
※価格表示ガイドライン平成18年1月4日公正取引委員会『第4』

6 おとり広告×2重価格表示|具体例

不正な2重価格表示は『おとり広告』となります。
『おとり広告』は法律上の定義・分類ではありません。
法律上は『有利誤認』の1つ,という位置付けです。
ただし通達では『おとり広告』でグルーピングして基準が公表されています。
おとり広告の通達の中に,2重価格表示の具体例が示されています。
これをまとめます。

<おとり広告×2重価格表示|具体例>

あ 比較対照価格が不合理

比較対照価格として次の価格が用いられている
ア 実際の市価よりも高い価格が市価とするイ 架空のor既に撤廃されたメーカー希望小売価格ウ 実際の自店通常価格よりも高い価格を自店通常価格として用いる

い 自店通常価格の操作

自店通常価格がない
比較対照価格として任意の価格を『自店通常価格』として用いる

う 包含関係の不正確

消費税・容器料など込みでメーカー希望小売価格が設定されている
比較対照価格としてこれを用いる
当該店舗における販売価格が消費税・容器料など抜きで記載する
※平成5年4月28日事務局長通達第6号『第3』

7 2重価格表示・不動産販売

不動産の取引については,2重価格表示のルールがもっと細かく作られています。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|不動産売買の2重価格表示が解禁されている

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【おとり広告|優良誤認・有利誤認|運用基準】
【宅建業法による不動産広告の規制】

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