1 相続税|小規模宅地特例|基本
2 相続税|小規模宅地特例|併用の可否
3 相続税|小規模宅地特例|併用パターン
4 相続税|小規模宅地特例×民泊
5 『貸付事業用宅地』・定義
6 『特定事業用宅地』・定義
7 特定同族会社事業用宅地・定義
8 特定事業用宅地|民泊×判別ポイント
9 小規模宅地特例|民泊×判別ポイント

1 相続税|小規模宅地特例|基本

相続税法にはいろいろな減税措置・制度があります。
本記事では『小規模宅地の特例』を説明します。
民泊との関係で扱いが不明確なところもあり,話題となりつつあります。
まずは小規模宅地特例の基本的なルールを整理します。

<相続税|小規模宅地特例|基本>

符号 『A』 『B』 『C』
宅地の利用区分 特定居住用宅地 特定事業用宅地 貸付事業用宅地
利用形態 自宅の敷地 貸付事業以外の事業 不動産の貸付事業
典型例 自宅 店舗 貸地・貸家
限度免責 330平方メートル 400平方メートル 200平方メートル
減額割合 8割引 8割引 5割引

※相続開始が平成27年1月1日〜のケースに適用される

このように土地の状況・利用形態によって減税効果が大きく違うのです。

2 相続税|小規模宅地特例|併用の可否

小規模宅地特例は土地の利用形態によって3種類に分かれています(上記)。
この3種類は『併用できるもの・できないもの』があります。
実際に大きな違いが生まれます。
まずは併用の可否についての基本ルールをまとめます。

<相続税|小規模宅地特例|併用の可否>

あ 『A・C』は1グループ

上記『A・C』は同一グループである
→一方を上限まで使うと他方は使えなくなる

い 『B』は独立

上記『B』は独立している
→『A・C』を使っていても『B』は上限まで使える
※租税特別措置法69条の4第2項
※租税特別措置法通達69の4−10

このルールだけではちょっと分かりにくいです。
次に,具体的なケースを挙げて説明します。

3 相続税|小規模宅地特例|併用パターン

小規模宅地特例の併用に関して具体例を説明します。

<相続税|小規模宅地特例|併用パターン>

あ 併用|具体例|超高効率減税パターン

次の『両方』について8割引を適用できる
→合計730平方メートルが8割引になる
・自宅敷地(A)330平方メートル
・貸付事業以外の事業の敷地(B)400平方メートル

い 併用|具体例|抵触パターン

次の『どちらか一方』だけ割引になる
・自宅敷地(A)330平方メートル・8割引
・貸付事業の敷地(C)200メートル・5割引

自宅敷地以外の『事業で使っている土地』が問題です。
事業用地の方が『貸付事業』なのか『一般的事業』なのかで結果が大きく違うのです。

4 相続税|小規模宅地特例×民泊

民泊が現在急速に普及しています。
民泊については,従来はなかった新しいサービスと言えます。
小規模宅地特例における扱いも不明確なところがあります。
まずは概要を示します。

<相続税|小規模宅地特例×民泊>

あ 民泊が『店舗・ホテル』と同様の場合

敷地は『特定事業用宅地』(上記B)となる
→自宅(A)で減税を使った場合でもさらに民泊敷地を減税可能
=民泊用建物の敷地は400平方メートル・評価額を8割引にできる

い 民泊が『貸家』と同様の場合

敷地は『貸付事業用宅地』(上記C)となる
→自宅(A)で減税を使った場合には民泊敷地は減税できない
=民泊用建物の敷地は評価額を下げられない

このように『特定事業』か『貸付事業』かの判断によって結果が大きく違います。
従来の事業である『賃貸』『店舗』であれば容易に判別することができます。
しかし民泊用建物の敷地についてはこの判別が曖昧です。
この判別の前提となるのは『貸付事業用宅地』『特定事業用宅地』の定義です。
施行令で明記されています。
順に説明します。

5 『貸付事業用宅地』・定義

『貸付事業用宅地』の定義をまとめます。

<『貸付事業用宅地』・定義>

あ 貸付事業

『事業』レベルに達している次の業種
ア 『不動産貸付業』
イ 『駐車場業』
ウ 『自転車駐車場業』

い 準事業

次のすべてに該当する行為
ア 『事業』レベルに達していない
イ 『不動産の貸付』に類する行為
ウ 相当の対価あり
エ 継続的
※租税特別措置法69条の4第3項4号
※租税特別措置法施行令40条の2第6項,1項

『貸付事業』と『準事業』の2つが含まれています。

6 『特定事業用宅地』・定義

『特定事業用宅地』の定義をまとめます。

<『特定事業用宅地』・定義>

あ 土地利用状況(※2)

一般的な『事業』の用に供していた宅地
『貸付事業用宅地』を除く
典型例=店舗・ホテル・事務所

い 事業主

被相続人

う 特例対象の相続人

ア 事業の後継者となる親族
イ 生計が同一であり,相続後にその宅地で事業を行う親族
※租税特別措置法69条の4第3項1号
※租税特別措置法施行令40条の2第6項,1項

この定義は単純です。
要するに『貸付事業用宅地』以外の事業が対象ということです。

7 特定同族会社事業用宅地・定義

特定事業用宅地は事業主が『被相続人自身』でした。
一方,被相続人以外が事業主でも同じ扱いとなる制度があります。
同族会社が事業主という場合です。
特定事業用宅地のちょっと変形版と言えます。

<特定同族会社事業用宅地・定義>

あ 土地利用状況

『特定事業用宅地』の定義と同じ(上記※2)

い 事業主

同族会社
次の両方に該当する会社Dのことである

う 同族会社|定義

被相続人+親族で会社Dの株式の過半数を有している
被相続人は会社Dに土地を貸し付けている

え 特例対象の相続人

同族会社の役員である親族

お 税務上扱い

『特定事業用宅地』と同じである

8 特定事業用宅地|民泊×判別ポイント

特定/特定同族会社事業用宅地では『事業主』が限定されています。
事業主が誰か,によって適用の有無が変わります。
民泊として建物を使用するケースでは判別が曖昧になることがあります。
これについてまとめます。

<特定事業用宅地|民泊×判別ポイント>

あ 一括代行×事業主判断

『一括代行』の場合
→『宿泊サービスの事業主』の判断が曖昧になる

い 判別ポイント

利益・損失を誰が負担・分担しているか
大きな投資的出費の判断を誰がしているか

え 判別|具体例

ア 一般的な代行サービスの利用
『事業主』はオーナーである
イ サブリース方式
E社が『固定額で借り上げる+宿泊サービスを提供する』方式の場合
→事業主はE社となる

民泊の管理・周辺サービスも発展してきています。
詳しくはこちら|民泊・周辺サービス|全体|管理・トラブル対応サービス
税務上の扱いが曖昧になるケースも増えると思われます。

9 小規模宅地特例|民泊×判別ポイント

民泊建物の敷地の判断が曖昧になることもあり得ます。
判別ポイントをまとめます。

<小規模宅地特例|民泊×判別ポイント>

あ 条文の規定|貸付事業用宅地の条件

次の2点に該当すると『貸付事業用宅地』となる
ア 『不動産の貸付』に『類する』と言える
イ 『継続的』と言える

い 特定事業用宅地の条件

『貸付事業用宅地』に該当しない

う 判別ポイント

宿泊サービス提供の頻度・規模が大きい場合
→『不動産の貸付』という性格が薄くなる
→特定事業用宅地という判定の方向性となる

宿泊サービス提供の頻度・規模が大きければ『貸付事業』ではなく『一般的な事業』となります。
要するに『賃貸』よりも『ホテル』に近くなる,という意味です。
『ホテル』に近づけば,上記のとおり大きな節税効果が得られるのです。
もちろん,他方で『旅館業法許可が必要』という方向性にもつながってしまいます。
ただし,相続税の小規模宅地特例の判断と『旅館業』の基準は同一ではありません。
『旅館業』は『事業的規模』が前提です。
一方,小規模宅地特例は『事業未満』も対象とされています(前記)。
理論的には『小規模宅地特例では『事業用』であるが『旅館業』ではない』という可能性もあると言えます。