【遺伝子情報と個人情報保護法(個人情報該当性・遺伝情報保護ガイドライン)】

1 経済産業省|遺伝情報保護ガイドライン
2 遺伝子情報そのもの→『個人情報』には該当しない
3 遺伝子・ゲノム検査結果×個人情報該当性|基本
4 遺伝子・ゲノム検査結果×個人情報該当性|連結可能性
5 遺伝子検査機関×個人情報保護法|情報管理
6 遺伝子検査機関×個人情報保護法|情報開示
7 個人遺伝情報取扱審査委員会|設置要請・役割

1 経済産業省|遺伝情報保護ガイドライン

遺伝子・ゲノムなどの検査が普及しつつあります。
遺伝情報の扱いについては『個人情報保護法』が適用されます(後述)。
さらに経済産業省でガイドラインも作られています。

<経済産業省|遺伝情報保護ガイドライン>

あ 正式名称

経済産業分野のうち個人遺伝情報を用いた事業分野における個人情報保護ガイドライン

い 作成時期・機関

平成16年12月
経済産業省
外部サイト|経済産業省|遺伝情報保護ガイドライン

以下,個人情報保護法や遺伝情報保護ガイドラインについて説明します。

2 遺伝子情報そのもの→『個人情報』には該当しない

まず『遺伝子情報そのもの』が『個人情報』に該当するかどうかをまとめます。

<遺伝子情報そのもの×『個人情報』該当性>

あ 遺伝子・DNA情報×『照合の精度』

DNA・塩基配列は組み合わせの数が膨大である
→同一のDNAを持つヒトが複数存在する可能性は事実上ゼロと言える
→『2つの遺伝子情報』の同一性判断の精度は非常に高い
→俗称=『DNAは究極の個人情報』

い 遺伝子情報×照合|実用例

刑事事件の捜査・親子関係の鑑定など

う 個人の識別・特定

1つの『遺伝子情報そのもの』から個人を識別・特定すること
→事実上不可能

え 遺伝子情報×『個人情報』該当性

『遺伝子情報そのもの』は『個人情報』に該当しない

以上の判断は『遺伝子情報そのもの』という前提です。
遺伝子検査の現場では『遺伝子情報だけ』で管理されるわけではありません。
この場合の法的扱いについては次に説明します。

3 遺伝子・ゲノム検査結果×個人情報該当性|基本

遺伝子やゲノム検査結果としての『情報』の法的な扱いについてまとめます。

<遺伝子・ゲノム検査結果×個人情報該当性|基本>

あ 前提事情|遺伝子データの匿名化

検査結果の遺伝子データそのものには『氏名』が記録されていない
代わりに記号・符号が付けられて管理されている
『匿名化情報』と呼ばれる

い 『個人情報』該当性

『匿名化情報と個人の対応表』が『検査機関内』にある場合
→遺伝子データと個人の識別が『連結可能』である
=『連結可能匿名化』と呼ばれる
→『個人情報』に該当する
※個人情報保護法2条1項

『個人情報』の定義の基本部分については別記事でまとめてあります。
詳しくはこちら|『個人情報』の定義(個人識別符号・容易照合性の意味)と具体例

4 遺伝子・ゲノム検査結果×個人情報該当性|連結可能性

通常は遺伝情報に『名前を買いて』管理するわけではありません。
記号・符号を付けて『匿名』で管理されます。
『匿名』の場合には『連結可能性』によって『個人情報』かどうかが決まります。

<遺伝子・ゲノム検査結果×個人情報該当性|連結可能性>

あ 照合による識別容易性=連結可能性|判断基準

『匿名化情報と個人の対応表』の管理・アクセス権限
この設定・設計によって『識別容易性』か否かが判断される

い 現実的運用システム

『匿名化された遺伝子データ』と『個人』の対応表の管理
→通常はデータベースシステム上のテーブルとしてサーバー上に保管される

う システム×『識別容易性』判断要素

データベースが接続されているネットワークの範囲・アクセス権限設定
→この設定・設計により『識別が容易』かどうかが判断される
※遺伝情報保護ガイドライン

5 遺伝子検査機関×個人情報保護法|情報管理

遺伝子検査機関は個人情報保護法の適用対象となります。
具体的な規制内容のうち『情報管理』に関する概要をまとめます。

<遺伝子検査機関×個人情報保護法|情報管理>

あ 利用目的による制限

利用目的の達成に必要な範囲を超えた個人遺伝情報
→取り扱わない
※個人情報保護法16条1項

い センシティブ情報

センシティブ情報は取り扱わない
例;信教,犯罪,保健医療,人種など

う 個人遺伝情報の取得方法

インフォームド・コンセント
=本人への説明+同意取得,を徹底する
DNA鑑定・親子鑑定については文書により対面で同意をとる
※個人情報保護法17,18条

え 安全管理措置

遺伝データの匿名化を行う
遺伝データ・その他の情報全般について適切な安全管理措置を講じる
※個人情報保護法20条

6 遺伝子検査機関×個人情報保護法|情報開示

遺伝子検査機関に適用される規制のうち『情報開示』に関するものをまとめます。

<遺伝子検査機関×個人情報保護法|情報開示>

あ 第三者提供の制限

第三者への提供・オプトアウトを行わない
※個人情報保護法23条
詳しくはこちら|個人情報保護法の規制(個人情報の第三者提供禁止・訂正や利用停止の請求)

あ 本人への開示

ア 遺伝カウンセリング 遺伝カウンセリングの方法を遵守する
イ DNA鑑定・親子鑑定 法的効果について情報の提供・助言を行う
親子鑑定においては,個人・家族の福祉を重んじるよう留意する

い 代理人による開示請求

本人への直接開示を認める
※個人情報保護法28条
※遺伝情報保護ガイドライン

7 個人遺伝情報取扱審査委員会|設置要請・役割

遺伝子検査機関は中立・公平な審査機関の設定が要請されています。

<個人遺伝情報取扱審査委員会>

あ 設置の要請

個人遺伝情報取扱事業者は次の機関を設置するor外部に委託する
『個人遺伝情報取扱審査委員会』

い 基本的役割

個人遺伝情報を用いた事業実施の適否を審査する

う 構成・運営の中立性

独立の立場・多元的な視点・様々な立場からの委員
→公正・中立的な審査を行えるよう適切に構成し運営する

え 多面的な審査

科学的・倫理的・法的・社会的・技術的観点に基いて審査する

お 意見表明

個人遺伝情報取扱事業者に対して文書により意見を述べることができる
※遺伝情報保護ガイドライン

本記事では,遺伝情報の扱いについての法的規制について説明しました。
実際に遺伝情報を扱う際には,多くの面から検討し,法的規制に抵触しないことは当然として,遺伝子を持つ本人に迷惑がかからないようにしっかりと情報管理の設計をすることが必要です。
実際に遺伝情報の管理に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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