1 被相続人名義の預貯金×弁護士会照会|概要・照会事項
2 被相続人名義の預貯金×弁護士会照会|開示の実情
3 第三者名義の預貯金×弁護士会照会|典型=債権者・夫婦間
4 第三者名義の預貯金×弁護士会照会|開示の実情
5 ゆうちょ銀行×弁護士会照会|開示の実情
6 消費者被害・犯罪の加害者特定×弁護士会照会|典型例・実情
7 預貯金の解約・払戻しに関する照会|書面の筆跡など
8 弁護士会照会×『口座名義人の同意』要否|判例
9 弁護士会照会|SMBCの協定|回答拒否→差押の『特定』緩和

1 被相続人名義の預貯金×弁護士会照会|概要・照会事項

相続・遺産分割のケースでは,被相続人名義の財産調査を行います。
弁護士会照会によって預貯金を調査することもあります。

<被相続人名義の預貯金×弁護士会照会|概要・照会事項>

あ 照会事項

ア 口座の有無
イ 口座番号
ウ 死亡日現在の残高
エ 一定期間の入出金状況=取引履歴

い 弁護士会照会の必要性が低い

『相続人』として『被相続人名義口座』の開示請求
→直接の開示請求が判例で認められている
→弁護士会照会を用いなくても済む
→弁護士会照会の利用自体が少ない

『相続人』の立場で『被相続人名義の口座』を調査することが認められています。
これを用いれば『弁護士会照会』を利用する必要はありません。
詳しくはこちら|被相続人の預金取引履歴を相続人が開示請求できる,解約済は見解が分かれる

2 被相続人名義の預貯金×弁護士会照会|開示の実情

被相続人名義の預貯金について弁護士会照会を行った時の開示の実情をまとめます。

<被相続人名義の預貯金×弁護士会照会|開示の実情>

あ 開示の実情|原則

原則的に開示がなされている

い 開示の実情|例外=開示拒否

次のようなケースで拒否事例がある
ア 5年を超える長期の履歴開示請求
イ 『典型的な相続人』以外からの請求
例;受遺者・遺留分権利者
ウ 払出手続書の開示
エ (他の)相続人の預金口座
これは拒否事例が多い
※『自由と正義15年1月』日本弁護士連合会p17〜
※『自由と正義11年12月』日本弁護士連合会p26〜

3 第三者名義の預貯金×弁護士会照会|典型=債権者・夫婦間

被相続人以外の第三者名義の預貯金を調査するケースもよくあります。

<第三者名義の預貯金×弁護士会照会|典型例>

あ 対象とする口座の名義

依頼者・被相続人以外の名義
依頼者と紹介対象の口座名義人に一定の法的関係がある(次項目)

い 開示請求をする立場|例

ア 金銭債権を有する場合
執行・保全の準備として相手方の口座を対象とする
イ 夫婦間・離婚事案の場合
財産分与請求の準備として配偶者名義の口座を対象とする

う 照会事項

預貯金口座の有無・現在残高

4 第三者名義の預貯金×弁護士会照会|開示の実情

第三者名義の預貯金について弁護士会照会を行った時の開示の実情をまとめます。

<第三者名義の預貯金×弁護士会照会|開示の実情>

あ 開示の実情

金融機関は,口座名義人の同意を得た上で回答する
『口座名義人の同意がない』を理由に拒否する事例がある

い 開示拒否の問題点|夫婦の場合

預金は夫婦の実質的共有財産である
→開示拒否は不当である

う 実務・近時の変化

ア 近時の傾向
確定判決・和解調書などの債務名義がある場合
→口座名義人の同意なしに回答する場合もある
イ 協力的な金融機関
・三菱東京UFJ銀行+その系列の地方銀行
・ゆうちょ銀行
※『自由と正義15年1月』日本弁護士連合会p17〜
※『自由と正義11年12月』日本弁護士連合会p26〜

5 ゆうちょ銀行×弁護士会照会|開示の実情

ゆうちょ銀行は弁護士会照会に不合理な対応をするケースがあります。

<ゆうちょ銀行×弁護士会照会|開示の実情>

あ 開示の実情

依頼者からの委任状・印鑑証明書の提示を求めるケースもある

い 不合理性

弁護士会が主体となった開示請求である
『照会を申し立てた弁護士』へのアプローチ自体
→本質的に誤った対応である
※『自由と正義11年12月』日本弁護士連合会p28〜

6 消費者被害・犯罪の加害者特定×弁護士会照会|典型例・実情

消費者被害や詐欺などの犯罪で『預金口座』の調査が必要になるケースもあります。
調査のために弁護士会照会が活用されています。

<消費者被害・犯罪の加害者特定×弁護士会照会|典型例・実情>

あ 前提事情

加害者の所在が不明
→預金口座から加害者を特定する発想がある

い 開示の実情

回答拒否事例がある
※『自由と正義11年12月』日本弁護士連合会p26〜

誤送金があった場合の金融機関・送金先名義人との関係は別の解釈があります。
詳しくはこちら|誤送金×回収|詐欺・単純ミス|組み戻し・仮差押・振り込め詐欺救済法

7 預貯金の解約・払戻しに関する照会|書面の筆跡など

預貯金口座の『内容』以外を調査するケースもあります。
払戻請求書の『筆跡』から払い戻した者を推測・特定する場面などです。

<解約・払戻の書類の筆跡×弁護士会照会>

あ 照会対象・照会事項

ア 対象口座
被相続人名義や依頼者名義の預貯金
イ 照会事項
・解約届・払戻請求書の筆跡
・解約・払戻時の本人確認資料の有無・筆跡
・委任状などの有無・筆跡

い 開示の実情

ア 被相続人名義の預貯金
回答がなされている
イ 被相続人以外の第三者名義の預貯金
拒否される傾向がある(後記)
※『自由と正義15年1月』日本弁護士連合会p17〜

8 弁護士会照会×『口座名義人の同意』要否|判例

弁護士会照会に対し金融機関が『名義人の同意』を前提にすることがあります。
このような対応は不合理であると指摘されてきました。
この問題について,公的なガイドラインが作られました。

<弁護士会照会×『口座名義人の同意』要否|判例>

あ 公的ガイドライン

金融分野における個人情報保護に関するガイドライン
平成21年11月20日金融庁告示63号
平成21年の改訂日である

い ガイドライン

弁護士会照会は『法令に基づく場合』である
名義人の同意なく情報の提供が可能である
※金融・個人情報ガイドライン5条3項

う 『名義人の同意を要する』約款×有効性

『同意を必要とする』という約款は無効である
※大阪高裁平成19年1月30日

9 弁護士会照会|SMBCの協定|回答拒否→差押の『特定』緩和

以上のように弁護士会照会を受けた銀行は対応の判断にリスク・コストがかかります。
そこで,弁護士会と三井住友銀行(SMBC)との間で協定としてルール化が行われています。
(別記事『SMBC・協定』;リンクは末尾に表示)

また,照会先が回答を拒否した場合別の手続で不利益を受けることがあります。
差押における『特定』の程度が緩和される,という扱いです。
これはちょっと複雑なので,別記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|預貯金の差押|特定の趣旨・範囲|支店特定不要説|特定方式