1 人権保障|多数派・既得権者による不合理現象は想定内
2 人権保障|実現の具体的機構=人権規定+違憲立法審査権
3 業法・法規制|裁判所が『無効』にする|違憲審査基準
4 事業規制=経済的自由権の制約|違憲審査基準|実務
5 経済的自由権の制約×合憲性判断|大雑把な傾向

憲法の『人権』という制度と,業法の規制についての違憲審査基準について説明します。
違憲を主張する訴訟の判決などの終了の場面,社会への影響については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|違憲判決・法令無効→産業化・マーケット形成=実質的立法作用|具体例

1 人権保障|多数派・既得権者による不合理現象は想定内

法治国家としての根本的なシステムは『多数決』です。
合理的ではありますが,弊害もあります。
この『弊害』は,かつて歴史上繰り返し生じてきました。
そこで啓蒙思想を経て一定の『弊害防止システム』が確立されてきたのです。
『人権』という制度の基本的部分をまとめます。

<多数決の副作用→少数の権利保護=人権>

あ 意思決定の平等・公平→多数決

議会(国会)は公平である必要がある
→多数決を用いる

い 多数決の副作用

歴史的に『少数派の権利・利益』侵害が抑制できなかった
例;多数派・既得権者による不合理な立法→行政の施行

う 少数派の権利の保護

『人権規定』+『違憲立法審査権』
→一定の権利を議会・法律で『侵害できない』状態にする
※モンテスキュー『法の精神』;3権分立

2 人権保障|実現の具体的機構=人権規定+違憲立法審査権

『人権が保障される』というルールだけでは不十分です。
人権の保障=侵害されない,ということを実現するための具体的なメカニズムがあります。

<不可侵エリア確保=人権規定+違憲立法審査権>

あ 人権

ア 人権の意味
人間が人間として生まれながらに持っている社会的権利
=国家が侵害できない個人の権利
※日本国憲法11条
イ 人権の内容
憲法の条文に規定されている
=『人権カタログ』
※日本国憲法13条〜29条

い 違憲立法審査権

裁判所は『憲法・人権』に反する法律を無効にできる
※日本国憲法81条

3 業法・法規制|裁判所が『無効』にする|違憲審査基準

人権保障の最後の砦が『裁判所の違憲審査』です。
『違憲審査』自体が不合理であっては人権保障も不十分となります。
そこで『違憲審査基準』自体について多くの議論があります。
ここでは『違憲審査基準』のうち『経済的自由権の制約』に関するものをまとめます。
具体例としては『事業の規制』となる法律の合憲性の審査において使われる判断基準です。

<事業規制=経済的自由の制約|違憲審査基準|基本>

あ 経済的自由権の制約×違憲審査基準|目的2分論
規制目的 内容 審査基準の方向性
消極目的 国民の生命・安全を守る目的 厳しい→違憲の方向性
積極目的 社会政策的に弱者・少数者を保護する目的 緩やか→合憲の方向性
い 消極目的→『厳しい』審査基準

厳格な合理性の基準
=他の緩やかな規制では立法目的を十分達成できないときに限り合憲とする
※最高裁昭和50年4月30日;薬事法薬局距離制限規定違憲事件

う 積極目的→『緩やかな』審査基準

明白性の原則
=法律が著しく不合理であることが明白でない限り合憲とする
※最高裁昭和47年11月22日;小売市場距離制限合憲事件
※最高裁昭和30年1月26日;公衆浴場距離制限合憲事件

4 事業規制=経済的自由権の制約|違憲審査基準|実務

上記の目的2分論は,実務でストレートには使えないことが多いです。
実務での典型的な考え方をまとめます。

<事業規制=経済的自由権の制約|違憲審査基準|実務>

あ 『目的』の混在が多い

規制目的に『消極』『積極』の両方が混在することが多い
→『目的で2分する』ことが十分・明確にはできない

い 中間的な『審査基準』

判例では従来の分類の『中間』的な審査基準が取られる傾向が強まっている
『消極/積極目的』の比重によって『審査基準』を調整する
現在では『目的2分論』自体をdisる新人類的見解もある

5 経済的自由権の制約×合憲性判断|大雑把な傾向

経済的自由権の制約についての合憲性判断基準はちょっと複雑です(前述)。
ここでは内容(規制目的)による分類をせず,大雑把な傾向として簡単にまとめます。

<経済的自由権の制約×合憲性判断|大雑把な傾向>

あ 裁判所の判断の傾向

極端に合理性ない(ことが明白)でない限りは合憲
=裁判所が『無効』とする可能性は低い
=裁判所が『国会・既得業者をかばう』ような状態

い 国会の立法・法改正に委ねられた状態

国会で法律を改正しない限りはルールを『無効』にできない
→事業者のロビー活動による影響が大きい傾向
政治献金・天下り先確保・票田提供などを含む

う 裁判所の介入が消極的である理由

『国民の代表による意思決定・判断』は極力尊重する・妨害しない
→裁判所の介入は最小限に限られるべきである
※モンテスキュー『法の精神』;3権分立

このように『裁判所の介入』は非常に消極的なのです。
3権分立(権力分立)という根本的な国家のメカニズム上の方針なのです