1 ビットコイン=通貨説|一般的には採用されない
2 ビットコイン=通貨説|『自由貨幣』説
3 『自由貨幣』説の理由|民法402条の解釈が元になっている
4 『通貨』の解釈は政治・立法論である・法解釈は限界がある
5 ビットコイン×『有価証券』→該当しない
6 『債権』の一般的定義・解釈論|預貯金とビットコインの比較
7 ビットコイン=債権説|該当しない
8 ビットコイン=情報説|情報を介した『財産』には違いない

本記事ではビットコインの『法的性質』についての主要な見解を説明します。
法的性質の全体像は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|ビットコインの特徴・法的性質の基本|通貨高権・レガシー電子マネーとの比較

1 ビットコイン=通貨説|一般的には採用されない

ビットコインが『通貨』に該当するかどうかについての一般的見解を整理します。

<『通貨=法貨』の要件|一般的解釈>

あ 『通貨』の要件

強制通用力を持つ
=『法貨』という解釈

い ビットコインの該当性

ビットコインは『強制通用力』を持たない
→『通貨』には該当しない

政府見解も含めて『通貨』には該当しないという解釈です。
通貨高権との抵触も生じません。

2 ビットコイン=通貨説|『自由貨幣』説

(1)ビットコイン=自由貨幣説|概要

ビットコインの法的性質論の中には『自由貨幣』という概念もあります。

<見解|『自由貨幣』という概念→通貨高権に抵触の可能性>

あ 『自由貨幣』という概念

『債権者の承認+任意に受領→弁済の効果が生じる』

い 『自由貨幣』の性質論

『通貨』の性質が含まれている,と解釈する

う 『自由貨幣』×通貨高権

『自由貨幣』概念は『通貨高権』と抵触する可能性がある
※森田宏樹『電子マネーの法的構成(4)』p34〜

(2)自由貨幣説|『通貨』の要件

自由貨幣説では『通貨』を次のように解釈しています。

<『通貨』の要件|『自由貨幣』説>

あ 『通貨』の要件(自由貨幣説)

ア 支払単位の組み込まれた媒体である
イ 財産権としての排他性
ウ 転々流通性
エ 社会における通貨媒体としての信認

い ビットコイン×自由貨幣|該当性

ビットコインは『通貨(自由貨幣)』に該当する可能性がある
重要な判断要素=『普及の程度』
※森田宏樹『電子マネーをめぐる司法上の諸問題』金融法研究15号p74〜

3 『自由貨幣』説の理由|民法402条の解釈が元になっている

『自由貨幣』説の『通貨』の解釈するのは一般的な見解ではありません。
とは言っても,当然,その解釈のモト・理由があります。

<民法402条1項の解釈論×『自由貨幣』概念>

あ 条文;概要

金銭債権は債務者の選択した『各種の通貨』で弁済できる
ただし『特定の種類の通貨』の給付を合意した場合は合意が優先となる

い 『自由貨幣』概念との関係
自由貨幣の肯定/否定 条文解釈
否定説 無意味(当然の内容)となる
肯定説 『法貨』とは別の通貨=『自由貨幣』を前提としている

4 『通貨』の解釈は政治・立法論である・法解釈は限界がある

この解釈を前提とすると電子マネー・仮想通貨などの大部分が『貨幣』に含まれる方向性になります。
そうだとすると『通貨高権に抵触→発行・使用できない』ということになります。
なお,諸外国の中には『ビットコインの流通を禁止』しているケースもあります。
結局,当然ですが,政府・政治的な判断,ということになります。
本来,立法で政府・社会として判断すべきことです。
既存の法律解釈としては限界ですし,また,本来的ではないでしょう。
いずれにしても本記事では現行法解釈の範囲内で説明します。

5 ビットコイン×『有価証券』→該当しない

参考になる法律上の概念として『有価証券』があります。
これは『債権説』と関連しています。
まずは『有価証券』の基本事項をまとめます。

<『有価証券』の意義・定義>

あ 金商法の『有価証券』

条文上の明確な定義はない
ア 内容が列挙されている
※金商法2条1項
イ 『金融商品』の1つとして規定されている
※金商法2条24項
ウ 位置付け
『デリバティブ取引の原資産』該当性
→規制の対象となるかどうか,という判断の前提に過ぎない

い 民事的『有価証券』|一般的解釈

財産的価値を有する私権を標章する証券
※見解により多少異なる

う 刑事的『有価証券』

権利が証券に表示され,権利の行使につき証券の占有を必要とするもの
※最高裁昭和32年7月25日

『有価証券』の具体例を想定すると良い分かりやすくなります。

<有価証券×債権|『社債』の例>

権利者は『社債券』を所持する
発行会社に対して『元金・利息』の『償還(返還)請求権』を持っている

『ビットコイン』というネーミングやイメージイラストでは『コイン』の形が象徴です。
しかし『ビットコインを拾う』というような『権利を表象する証券』はありません。
次に『有価証券』を離れて,純粋に『債権』に該当するかどうかを考えます。

6 『債権』の一般的定義・解釈論|預貯金とビットコインの比較

(1)『債権』の一般的定義

ビットコインを『債権』として扱えるかどうかを検討します。
前提として『債権』の定義からまとめます。

<『債権』の一般的定義>

『ある者=債権者』が『特定の相手方=債務者』に対して一定の行為(給付)をするように請求できる権利

(2)預貯金とビットコインの比較

『債権』として代表的なものは『預貯金』です。
預貯金とビットコインを比較して整理します。

<『債権』該当性|預貯金・ビットコインの比較>

債権者 債務者 請求する給付
預金者 金融機関 預貯金の返還請求
ビットコイン所持者 (存在しない) (存在しない)

7 ビットコイン=債権説|該当しない

ビットコインが『債権』に該当するかどうかの判断をまとめます。

<ビットコイン×『債権』該当性>

あ 債権に該当しない根本的理由

『債務者』に相当する者がいない

い 『債務者不在』の根本的性質

特定の運営者・発行者がいない
=分散型システム
=中央集権型ではない

う 『債務者』みたいだけど違う

次のいずれも『関係者』ではあっても『債務を負う』立場にない
ア 中本哲史(なかもとさとし)氏
ビットコインの根本部分を作成したとされる人物
《同氏作成物》
・ビットコインプロトコル
・ソフトウェアBitcoin-Qt
イ P2Pシステムの参加者全員
ビットコインのシステム上『取引記録』は膨大な参加者が共有している

結局,現行法・解釈を前提にすると,ビットコインを『債権』『有価証券』として捉えることは困難です。

8 ビットコイン=情報説|情報を介した『財産』には違いない

ビットコインを『情報』として整理する見解もあります。

<ビットコイン|情報説>

あ 契約自由の原則との関係

『情報』の取引も認められる

い 物品の購入の分析

『情報=ビットコイン』と『商品』の『交換契約』となる
→『売買』の規定が準用される
→法的扱いは『売買』とニアリーイコールとなる
※民法586条

情報説,という解釈により具体的な法的扱いが決まる,というわけではありません。
少なくとも『情報を介した財産』という基本的解釈を前提として,個別的な解釈につながります。
この点裁判所は『財産権』として実質的に認めています。
(別記事『MTGOX事件』;リンクは末尾に表示)