1 テクノロジー進化・多様化→『上空侵犯』の解釈論
2 住居侵入罪|地上から離れた『上空』は該当しない
3 住居侵入罪|『人間』以外は成立しない|ドローン・ロボット・アンドロイド
4 ドローン・ロボットが『侵入』→犯罪の可能性|業務妨害罪・傷害罪など
5 ノーマル『鉄道』敷地への侵入・妨害系犯罪
6 『新幹線』敷地への侵入・妨害系犯罪
7 皇居侵入罪→廃止された|住居侵入罪・業務妨害罪などによりカバー
8 ドローンの悪用・誤用×軽犯罪法違反|該当することが多い
9 ドローン・ロボットが『侵入』→犯罪の可能性|傷害罪以外は『故意犯』のみ

本記事では『ドローン・ロボット』の『侵入』『上空侵犯』の違法性について説明します。
一般的な=人間による『建物の屋上・バルコニーなどへの侵入』については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|住居・建造物侵入罪|侵入の対象|屋根・屋上・ベランダ・バルコニー

1 テクノロジー進化・多様化→『上空侵犯』の解釈論

無人ドローンやロボット・アンドロイドのテクノロジーがものすごい勢いで進化しています。
多くの『古い社会に最適化された法律』とのギャップが多くの場面で生じています。
その1つが『上空侵犯』です。
民事的な問題・行政的な『規制』との抵触もあります。
詳しくはこちら|無人ドローン運用に必要な許認可とケアすべき法律問題
本記事では『刑事的問題』について説明します。
主に『私的・公的エリアへの侵入』や『生活やイベントの妨害』を対象とする犯罪類型です。

2 住居侵入罪|地上から離れた『上空』は該当しない

建造物の『上空を飛行・浮遊する』という態様について説明します。
住居・建造物侵入罪の条文の基本的解釈として『人の事実上の支配』(への侵入)が前提となっています。
『上空の空間』については,『事実上の支配』という意味や『邸宅』の言葉とはかけ離れています。
結局『上空侵犯』では住居・建造物侵入罪には該当しないと思われます。

3 住居侵入罪|『人間』以外は成立しない|ドローン・ロボット・アンドロイド

住居・建造物の敷地内へ『人間以外』が侵入した,というケースについて別の視点から説明します。
屋上・庭にドローンが入った・落ちた,というものが典型です。

<住居侵入罪×『侵入したモノ』>

『侵入者=人間』が前提となっている
『人間の手を離れているモノ』は対象外
(仮に)人工知能を持ったマシン(ロボット・アンドロイド)でも該当しない

このように『人間の手を離れたマシン』は『住居侵入罪』を『犯す』ことにならないのです。
もちろん,ドローンの飛行準備をしている段階でヒトが『侵入』して住居侵入罪が成立することはあり得ます(後述)。
次に『ドローンの飛行』が抵触する別の犯罪について説明します。

4 ドローン・ロボットが『侵入』→犯罪の可能性|業務妨害罪・傷害罪など

ドローン・ロボットを意図的に『侵入』させる行為が該当する可能性のある犯罪をまとめます。

<ドローン・ロボットの『侵入』×犯罪|罪名>

罪名 構成要件(違法行為) 法定刑 刑法
威力業務妨害罪 『人の業務を妨害した』 懲役3年以下or罰金50万円以下 234条
公務執行妨害罪 『職務中の公務員に対して暴行を加えた』 懲役or禁錮3年以下or罰金50万円以下 95条1項
傷害罪 『人の身体を傷害した』 懲役15年以下or罰金50万円以下 204条
暴行罪 『暴行を加えたが人を傷害するに至らなかった』 懲役2年以下or罰金30万円以下 208条
器物損壊罪 『他人の物を損壊した/動物を傷害した』 懲役3年以下or罰金30万円以下 261条
建造物損壊罪 『他人の建造物を損壊した』 懲役5年以下 260条
文化財保護法違反 『重要文化財を損壊・毀損した』 懲役or禁錮5年以下or罰金30万円以下 文化財保護法195条1項
(盗撮系) (条例によって異なる;リンクは後記)

文化財保護法については別記事で説明しています。
(別記事『文化財保護法』;リンクは末尾に表示)
『盗撮』については迷惑防止条例違反などの違法行為となります。
詳しくはこちら|盗撮・迷惑防止条例|東京都・神奈川県の条文規定・定義・罰則

5 ノーマル『鉄道』敷地への侵入・妨害系犯罪

場所によっては『侵入・妨害』が個別的法律で規制されています。
その典型例の1つが『鉄道』に関するエリアです。
最初に『新幹線以外』の通常の鉄道に関する法律をまとめます。

(1)ヒト→軌道侵入系|危険発生

電車の軌道に人が侵入することについての犯罪があります。
まず『危険が発生した』場合には重い罪が成立します。

<鉄道一般×侵入|危険発生>

あ 構成要件

汽車or電車の往来の危険を生じさせた
方法=鉄道・標識の損壊or『その他の方法』

い 法定刑

2年以上の有期懲役
※刑法125条1項

(2)ヒト→軌道侵入系|侵入のみ

軌道に人が侵入したこと自体が犯罪となる可能性もあります。

<ノーマル鉄道×侵入系>

あ 構成要件

鉄道軌道内へ立ち入った
条文上は『停車場其ノ他鉄道地内ニ妄ニ立入リタル者』

い 法定刑

科料=1000円以上1万円未満
条文上は『10円以下』となっている
→罰金等臨時特措法2条3項で修正されている
※鉄道営業法37条,刑法17条

『侵入』は『ヒト』だけを対象としています。
例えばドローンの飛行前の準備でヒトが軌道内へ立ち入った場合などに成立します。

(3)ドローン飛行系

<ノーマル鉄道×飛行系>

あ 構成要件

列車に向かって瓦石等を投擲した

い 法定刑

科料=1000円以上1万円未満
※鉄道営業法40条,刑法17条

ドローンも『瓦石等』『投擲』に該当するかどうかの解釈論があります。
意図的に衝突させたような場合は類似性が高い→該当する,という解釈もあり得るでしょう。

6 『新幹線』敷地への侵入・妨害系犯罪

『新幹線』についてはノーマル鉄道より保護が強化されています。

(1)ヒト→軌道侵入系

<新幹線×侵入系>

あ 構成要件

新幹線鉄道の線路内に立ち入った

い 法定刑

懲役1年以下or罰金5万円以下
※新幹線特例法3条2号

本来は撮り鉄対策と言える規定でした。
詳しくはこちら|著作権侵害に対する法的請求とそれ以外の解決法;基本
しかし現在では,ドローン飛行準備でヒトが侵入→該当する,という可能性も出てきました。

(2)ドローン飛行系

<新幹線×妨害系>

あ 構成要件

次のいずれにも該当する場合
ア 列車の運行の妨害となる方法
イ 物件を新幹線鉄道の線路上に置いたorこれに類する行為をした
『線路上』=軌道の中心線の両側3メートルの範囲内

い 法定刑

懲役1年以下or罰金5万円以下
※新幹線特例法3条1号

7 皇居侵入罪→廃止された|住居侵入罪・業務妨害罪などによりカバー

かつては『皇居侵入罪』という罪名がありました。
皇居やその関係施設は,他の場所よりも『侵入』に対する罰が加重されていたのです。
現在では既に廃止されています。
結論として,一般的な住居侵入罪・業務妨害罪・軽犯罪法違反などが適用される,という状態です。

<『皇居侵入罪』→既に廃止>

あ 皇居侵入罪の性格

皇居専用の『侵入罪』
『住居侵入罪』の加重類型であった

い 廃止

昭和22年に廃止された

う 条文;刑法131条(廃止前)

故ナク皇居,禁苑,離宮又ハ行在所ニ侵入シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス
神宮又ハ皇陵ニ侵入シタル者亦同シ

8 ドローンの悪用・誤用×軽犯罪法違反|該当することが多い

以上のような刑法・特別法の刑事罰は一定のハードルがあります。
逆にいえば『悪用に対応しきれていない』と言えることも生じることがあります。
この点『軽犯罪法』は,文字どおり『軽い』行為も罰則対象として規定しています。
ドローンの運用について,通常の犯罪『未満』でも該当する可能性があるものをまとめます。

<軽犯罪法×侵入・妨害系>

あ 物を投げる・発射する系;1条11号

相当の注意をしないで,他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ,注ぎ,又は発射した者

い セレモニー妨害系;1条24号

公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者

う 『業務妨害罪』未満系;1条31号

他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者

え 『住居侵入罪』未満系;1条32号

入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者
→『人間が入る』意味であり『マシーンの侵入』は該当しない

お 法定刑;以上のいずれも

拘留or科料

拘留 刑事施設への拘置1日以上30日未満 刑法16条
科料 1000円以上1万円未満 刑法17条

9 ドローン・ロボットが『侵入』→犯罪の可能性|傷害罪以外は『故意犯』のみ

ドローンやロボットなどの『人間以外』の『動き』が犯罪に該当することもあります。
このようなマシンを人が操作し,その結果被害が生じたような場合です。
『犯罪』の特徴として『一定のハードルの高さ』があります。
要するに『過失犯』は原則として成立しない,というものです。
ただし『傷害罪』つまり人が怪我をした場合は『故意なし=過失』でも成立します。

<ドローン・ロボットの『侵入』×犯罪|故意/過失>

あ 『傷害罪』以外→『故意』犯のみ

『過失』による犯罪はない

い 『傷害罪』→『過失』でも成立する
罪名 法定刑 刑法
過失傷害罪 罰金30万円以下or科料 209条
業務上過失傷害罪 懲役or禁錮5年以下or罰金100万円以下 211条
う 特別法による例外

『重要文化財』における『施設の命令』違反
→罰則として過料が規定されている
(別記事『文化財保護法』;リンクは末尾に表示)