1 選挙に関して『寄附すること』は禁止されている
2 当選→公職に在職中に『寄附すること』は禁止されている
3 選挙とは関係ない『公務員』も『寄附』が禁止されている
4 『寄附』の定義|『社交辞令の範囲』は除外される
5 『価値のスパイラル』|『うちわ』が話題になりネットオークションで価値高騰

本記事では選挙時や公務員の『寄附の禁止』について説明します。
インターネット時代の選挙活動の問題は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|公職選挙法|インターネット選挙運動解禁|メール使用・未成年者の投稿は違法

1 選挙に関して『寄附すること』は禁止されている

選挙はフェアでなくてはなりません。
そのため,多くの細かいルールがあります。
ルールの1つに『寄附の禁止』があります。
最初に概要をまとめておきます。

<『寄附』に関する公職選挙法のルール>

あ 『寄附』の定義;概要

金銭,物品その他の財産上の利益の供与又は交付
※公職選挙法179条2項

い 『寄附』に該当した場合の罰則
違反者 法定刑 条文(公職選挙法)
候補者・公職者 禁錮1年以下or罰金30万円以下 199条の2,249条の2第1項
候補者の関係会社 罰金50万円以下 199条の3,249条の3第1項
後援団体 罰金50万円以下 199条の5,249条の5第1項

2 当選→公職に在職中に『寄附すること』は禁止されている

<寄附禁止×公職在職中>

公職の在職中も『寄附禁止』が適用される
※公職選挙法199条の2第1項

選挙で当選して,公職中の者も『寄附禁止』の対象に含まれます。
このルールの趣旨は,公職の中立性を保つ,という趣旨です。
また,任期満了後に改めて『立候補→候補者になる』という可能性も考慮されています。

3 選挙とは関係ない『公務員』も『寄附』が禁止されている

『選挙』とは関係なく,就職した国家公務員・地方公務員についても寄附が禁止されています。
一般職公務員は『政治的中立性』が要請されます。
そこで『政治活動』が禁止されているのです。
政治活動の1つが『寄附』なのです。

<一般職公務員の寄附禁止>

あ 対象

一般職公務員
=『特別職』を除外した公務員

い 対象外=特別職

ア 就任について選挙を必要とする公務員
イ 裁判官・裁判所職員などの特殊な職種の公務員
※国家公務員法2条2項,3項,地方公務員法3条2項,3項

う 一般職公務員の寄附禁止

一般職公務員は寄附が禁止される
※国家公務員法102条,地方公務員法36条2項

え 罰則

『一般職公務員』の種類によって次のような法定刑がある

種類 国家公務員 地方公務員
法定刑 懲役3年以下or罰金100万円以下 (規定なし)
根拠 国家公務員法110条1項1号

地方公務員法ではストレートな罰則規定がありません。
もちろん,懲戒の対象として対処されるということはあります。

4 『寄附』の定義|『社交辞令の範囲』は除外される

<『寄附』の定義|既出>

金銭,物品その他の財産上の利益の供与又は交付
※公職選挙法179条2項

この規定では『渡されるモノ』が金銭に限定されていません。
『物品』・『財産上の利益』と,非常に幅広く規定されています。
実際に問題になるのが『価値』です。
『安いものを渡しても寄附として違反になるのか』ということです。
ここで参考となる別のルールを示します。

<選挙における『飲食物の提供』禁止ルール>

ア 『飲食物の提供』=違法
イ 『湯茶+付随的な菓子』=適法
※公職選挙法139条

あまりに『価値が少ない』ものは規制から除外する,という根本方針がよく分かる条文です。
『湯茶+付随的な菓子』の提供者が負担する経済的価値は菓子も入れると数十円〜100円程度でしょう。
この程度を超えると『違法』となるのです。

5 『価値のスパイラル』|『うちわ』が話題になりネットオークションで価値高騰

以前『うちわの配布』が『寄附』として公職選挙法違反になる,という主張が話題となりました。
対象物(うちわ状のもの)が『財産上の利益』に該当するかどうか,という判断で結論が決まります。
一般的に,簡易なうちわ状の物体,については購入単価が数十円です。
いくつかの考え方があります。

<『うちわ』×『寄附』論争>

あ 適法説

価値が低い→ゼロに等しいとして扱うべき

い 違法説

『数十円』という価値は『寄附』に該当する
『湯茶』は社交辞令として定着しているが『うちわ』はそうではない

現実社会としては,このような法的理論よりも別の意見が強いようです。
『そのような議論するリソース(人員・時間)がもったいない』
『うちわ製造産業が風評被害を受ける→損害賠償請求だ』※駄洒落かもしれません。
『いや,ネットオークションの取引価格が1万円に達した!すごい高い経済的価値だ!』
もともと選挙は『法規・予算を決める人を選ぶ』という政治運営の根本的システムです。
運営の準備段階で無駄にリソースを浪費せず,本質の運営に最大限リソースを投入すべきでしょう。