1 事業者は利潤最大化を追及する=マーケットメカニズムの前提
2 収益最大化→社会に提供する価値の最大化;最適化法則
3 最適化法則の例外=詐欺orラッダイト
4 職業選択の自由の実質は『精神的自由』=やりがい
5 『やりがい』・社会に提供した価値・収入は比例する|やりがい定理
6 やりがい定理の例外|ラッダイト・詐欺→やりがいと収入が比例しない
7 ネオ・ラッダイトの蟻地獄|無意識のポジション・シンク
8 『やりがい』・起業の成功可能性・参入障壁の関係

1 事業者は利潤最大化を追及する=マーケットメカニズムの前提

マーケットメカニズムは社会経済全体の最適化が実現する仕組みです。
詳しくはこちら|マーケットメカニズム|全体最適妨害=ネオ・ラッダイトを打ち破る5ルート
最適化のメカニズムの中での事業者の判断の法則をまとめます。

<マーケットメカニズムの前提|事業者の判断>

事業者(企業・個人事業主)は『利益』が最大となる方法を選択する
=『利潤の最大化』

特に起業しようとする方にとっては『利益の確保』の見込みが非常に重要な判断要素となります。
小規模なスタート(リーン・スタートアップ)においては『やりがい』という要素の影響が非常に大きいです。
ここでは以下『利益(収益)』や『やりがい』というものの定量的な考察をまとめます。

2 収益最大化→社会に提供する価値の最大化;最適化法則

(1)最適化法則|事業者の利益最大化→社会経済最適化

『利益=売上−コスト』という基本公式があります。
ここでは違う視点で『利益』を表してみます。

最適化法則|収益∝社会に提供する価値>

AとBは比例する
A=マーケットとの距離の近さ×影響の規模(=社会に提供した価値・便益)
B=利益(収入)
※注意 『∝』は,『正比例』を示す記号

まず,『社会に提供した価値』については2つの要素が影響を与えます。
マーケットとの距離が遠いと『社会への価値の提供』が薄くなります。
近いと『社会への価値提供』は濃くなります。
一方,商品・サービスを購入する消費者が多ければ『社会への価値の提供』が大きくなります。
そこでこの2つの要素を掛け算したものが『社会への提供価値』となるのです。

次に,収益・収入は『マーケット(社会)に提供した価値』に比例します。
このことから,個々の事業者が『収益最大化』を狙うと自動的に『社会への価値提供の最大化』になるのです。
感情論として『収益が大きい→金儲け→ネガティブイメージ』というものもあるかもしれません。
しかし,客観的に考えると収益は社会にとってプラスなのです。

3 最適化法則の例外=詐欺orラッダイト

上記『最適化法則』に反する,という現象もあり得ます。

<最適化法則が成り立たない|詐欺orラッダイト>

あ 最適化法則が成り立たない状況

『収入』と『社会に提供した価値』が比例しない
※上記『最適化法則』のAとBのことです。

い 最適化法則の例外ケース

次のいずれかである
ア 詐欺(的な)取引
イ ネオ・ラッダイト(部分最適)
→イメージ例;ロビー活動で作った合法ギルド

ラッダイトは『全体不利益&部分最適』につながる現象です。
元祖ラッダイト運動の現代版がネオ・ラッダイトと呼ばれるものです。
詳しくはこちら|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト

4 職業選択の自由の実質は『精神的自由』=やりがい

以上の説明の元になっているのは『営業の自由』です。
さらに『営業の自由』の元となっている『職業選択の自由』(憲法22条1項)の性質論に触れます。
というのは,事業活動,広く言えば『個人の仕事』は『やりがい』という気持ち的な部分と直結しているのです。
『やりがい』についての一定の法則(仮説)を説明します。

まず,前述のとおり『職業選択の自由』は,一般的に『経済的自由権』として分類されています。
しかし『精神的自由権』の性格も併存する,という解釈がなされています。
考えてみれば当然とも思えますが,憲法制定のプロセスからの説明もまとめておきます。

<職業選択の自由は『精神的自由権』という性格をも持つ>

あ 日本国憲法制定前のマッカーサー草案

Article 22
Academic freedom and choice of occupation are guaranteed.

い 当時の外務省の翻訳

学究上の自由及び職業の選択はこれを保障す
※佐藤達夫著『日本国憲法成立史』第3巻

このように草案段階で『学問の自由』と同じ条文とされていたのです。
職業選択の自由は『精神的自由権』という性格として分類されていたのです。
なお,その後,検討中に変更が加えられ,公布時には『学問の自由』(27条)とはセパレートにされました。

5 『やりがい』・社会に提供した価値・収入は比例する|やりがい定理

とにかく,職業や仕事は『個人レベルでのやりがい』に結びつくことは一般的に肯定されているのです。
ここで『やりがい』という感覚的なものを仮説・法則にしてみます。

<『やりがい』定理(仮説)|連動するパラメータ>

あ 定理1(影響度仮説)

やりがい ∝ 社会に提供した価値・便益(※2)
※注意 『∝』は,『正比例』を示す記号
※2 前述『最適化法則』の『A×B』のことです。

い 定理2(探究心仮説)

やりがい ∝ 自然の謎を解き明かす喜び

基本的には定量化が分かりやすい定理1が原則です。
物理学や細胞学における基礎研究は定理2が整合的です。
なお,これらの基礎研究は,応用・実用までの距離が長い一方,『役立つ範囲・規模が非常に広範』です。
定理1の算式でも『社会に提供した価値』は小さいということにはなりません。
業務内容の特殊性による『誤差』は小さいかもしれません。
なお,科学の研究では『マーケット・金銭よりも自然の謎を解き明かす喜びを重視すべき』という研究者の心得が,理研のSTAP問題の最終報告書で記載されています。
詳しくはこちら|理研の『調査の継続』への期待・罪を憎んで人を憎まず|最終報告書の行間を読む

6 やりがい定理の例外|ラッダイト・詐欺→やりがいと収入が比例しない

上記のとおり,『やりがい』と『収入』が比例するのが仮説でした。
ただし,前述の例外である『ラッダイト・詐欺』は例外です。
この2つは『社会に提供した価値』よりも過剰に『収益』がある,というものです。
逆に『収益』があったとしても『やりがい』につながりにくい,ということです。
ラッダイトは,『やりがい』少ないからやりたくないと思えます。

7 ネオ・ラッダイトの蟻地獄|無意識のポジション・シンク

ところで『ネオ・ラッダイト』運動を行う人は『自分はラッダイトだ』とは思わない場合も多いです。

<無意識のポジショントーク(シンク)>

あ ラッダイト運動者の思考回路

ライバルの新テクノロジーのマイナス点が過剰に目につく・感じる
→社会全体での利益の(定量的)検討を回避する

い 無意識な『検討回避』|例
ラッダイト例 ライバルを過剰にマイナス評価 本来の検討事項
既存タクシー業 ユーバーXのレイプ事件 既存タクシーとユーバーXの事故・事件被害・経済効果の総量
火力発電陣営 原発事故・放射能汚染 発電方式による事故・平常運転の被害の総量
既存運送・旅客業 自動運転車の事故 人間の運転と自動運転との事故被害の総量
う ラッダイト運動者の無意識な感覚|ポジションシンク

自分のサービスの方が優れている

このようにネオ・ラッダイトは,本人が無意識に保身に回るような傾向があります。
結果的に『有用な仕事(サービス)にリソースを投入する』『仕事を切り替える』という機会を奪ってしまうのです。
『ネオ・ラッダイトの蟻地獄』と言える現象です。

8 『やりがい』・起業の成功可能性・参入障壁の関係

前述の『やりがい』は『起業の成功可能性』と直結しています。
個人的な『やりがい』の感覚・感情が『参入障壁』の1つとなるのです。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|参入障壁|事業成功の鍵=へんてこ×がむしゃら・没頭レベルの『好き』