1 控訴・上告は『2段階書面提出』システムがある
2 控訴・上告では『理由書』『趣意書』の提出期限がバラバラ
3 民事訴訟|控訴の申立手続|理由書の提出期限は厳格ではない
4 民事訴訟|上告の申立手続|理由書の提出期限切れ→即却下
5 家事審判|抗告の申立手続|理由書の提出期限切れ→主張弱まる
6 刑事訴訟|控訴・上告の申立手続|趣意書の提出期限切れ→即棄却
7 少年事件|抗告申立手続|2段階書面提出システムではない
8 控訴・上告などの『期限切れ』→『弁護士のミス』でも救済されない

1 控訴・上告は『2段階書面提出』システムがある

控訴・上告では『期限』に要注意です。
控訴・上告のシステムは2段階の書面提出が設定されています。
刑事・民事で多少違いますが,2段階,という枠組みは同じです。

<控訴・上告の2段階書面提出システム>

あ 控訴状・上告状・上告受理申立書

最初の『確定阻止』という位置付けと言える
原則的な期限=原審判決言渡から2週間

い 理由書・趣意書

『原審の不服部分の指摘』というメインの内容である
手続きによる違いが大きい(後述)

2 控訴・上告では『理由書』『趣意書』の提出期限がバラバラ

2段階目の『理由書』『趣意書』についてはバラエティに富んでいます。
弁護士でも間違えるケースがたまに『事故』となって生じています。
最初に全体像をまとめておきます。

<控訴・上告の『理由の書面』提出期限|まとめ>

カテゴリ 控訴の理由 提出期間 期限切れ 上告の理由 提出期間 期限切れ
民事 控訴理由書 50日 規定なし 上告理由書 50日 却下決定
刑事 控訴趣意書 個別設定 棄却決定 上告趣意書 個別設定 棄却決定

次に,手続ごとのルールをまとめます。

3 民事訴訟|控訴の申立手続|理由書の提出期限は厳格ではない

民事訴訟の『控訴の申立』の手続を整理します。

<民事訴訟|控訴の申立手続>

あ 控訴状提出

期限=判決送達後2週間内
※民事訴訟法285条,286条

い 控訴理由書提出

ア 期限
控訴提起後50日以内
※民事訴訟規則182条
イ 期限切れ
条文上は規定なし

理由書の提出期限が規則上明記されています。
しかし『期限切れ』の時の『棄却』『却下』などの規定がありません。
少なくとも『1日遅れた』ことが理由で『その後の手続がシャットアウト』ということはありません。
弁護士としては『厳格ではない』という感覚をもってしまっている人も多いようです。

4 民事訴訟|上告の申立手続|理由書の提出期限切れ→即却下

民事訴訟の『上告』については2種類に分けられます。
不服の内容によって『上告申立』と『上告受理申立』があるのです。
ただ,申し立てるフローについては同様です。
申し立てる手続についてまとめます。

<民事訴訟|上告の申立手続>

あ 上告状or上告受理申立書提出

判決送達後2週間内
※民事訴訟法285条,313条,314条,318条5項

い 上告理由書提出

ア 期限
上告提起通知書の送達から50日
※民事訴訟法315条1項,318条5項,民事訴訟規則194条
イ 期限切れ
却下決定
※民事訴訟法315条,316条,318条5項

内容的にメインとなるのは『上告理由書』です。
提出期限が規則上明記されています。
さらに『期限切れ』の場合は『却下決定』となることも法律上明記されています。
弁護士によっては『控訴』と同じように『多少遅れても督促されるだけだろう』と誤解してしまうケースもあるようです。
その場合『期限から1日遅れた時点』で『却下』を食らって驚くことになります。
それ以降の手続がシャットアウトされる結果になります。
民事訴訟の『控訴』と『上告』では『理由書提出期限』の部分で大きな違いがあるのです。

5 家事審判|抗告の申立手続|理由書の提出期限切れ→主張弱まる

家事審判についての不服申立方法は『即時抗告』です。
即時抗告についても申立書・理由書の2段階提出方式となっています。

<家事審判|抗告の申立手続>

あ 抗告状提出

審判の告知を受けた時から2週間内
※家事事件手続法86条

い 抗告理由書提出

ア 期限
抗告提起後2週間
※家事事件手続規則 55条1項
イ 期限切れ
直接の規定はない
『理由の主張が不十分→抗告棄却』となる可能性が高まる

理由書提出の期限切れの直接的なペナルティ規定はありません。
ただし,当然ですが,クリティカルな不利益を受けるのが通常です。

6 刑事訴訟|控訴・上告の申立手続|趣意書の提出期限切れ→即棄却

刑事訴訟では『控訴』と『上告』の手続は基本的に同様です。

<刑事訴訟|控訴・上告の申立手続>

あ 控訴申立書・上告申立書提出

期限=言渡から14日間
※刑事訴訟法373条,374条,414条

い 控訴趣意書・上告趣意書提出

ア 提出期限
個別的に裁判所が決定する
※刑事訴訟法376条1項,刑事訴訟規則236条
イ 期限切れ
棄却決定
※刑事訴訟法386条1項1号,414条

不服内容を記載する書面は『趣意書』と呼ばれます。
提出期限は条文・規則上特定されていません。
個別的に裁判所が指定します。
指定された『期限』が切れてしまうと,即『棄却決定』となります。
それ以降の手続はシャットアウトされるのです。

以上のように,控訴・上告の申立の場面では民事・刑事含めて似ているけど違うのです。
これが,ぼんやり弁護士に誤解を生じさせて,悲劇に結びつくケースもあるようです。
これについては別記事で説明しています(リンクは後記)。

7 少年事件|抗告申立手続|2段階書面提出システムではない

少年事件は,刑事事件と似ているけどちょっと違います。
少年事件では原則的に『判決』ではなく『審判』として判断が下されます。
審判に対する不服申立は『控訴』ではなく『抗告』です。
ここでも刑事訴訟と似ているばかりに誤解する弁護士が後を絶ちません。
整理しておきます。

<少年事件|抗告申立手続>

あ 『抗告申立書』提出

審判から2週間
※少年法規則43条2項

い 内容

『理由』も含める
『後日理由書を提出する』制度ではない

民事・刑事訴訟の控訴・上告では常識となっている『2段階書面提出システム』ではないのです。
民事・刑事訴訟に慣れている弁護士だと誤解する傾向があります。
民事・刑事同様に,抗告申立書は最小限の記載にとどめ,ゆっくり後日『理由書』で詳しい主張を提出する,という誤りです。
この場合,原則としては,期限後の書面の提出が認められない,ということになってしまうのです。
少年事件の抗告では,2週間以内に詳しい主張も整理・完成させる必要があるのです。

8 控訴・上告などの『期限切れ』→『弁護士のミス』でも救済されない

控訴・上告やその他の手続で『期限』のルールはいろいろと設定されています。
代理人弁護士が付いている場合『弁護士のミス』と言えるケースも多いです。
『依頼者(本人)には落ち度なし』なので,救済措置があっても良いと思えます。
しかし,判例では否定的です。

<代理人の過失による期限の経過>

訴訟代理人の過失により上訴期限が経過してしまった
→上訴の追完は認められない
※最高裁昭和33年9月30日

要するに『依頼者(本人)』は『弁護士の選択にミスがあった』→救済しないという価値判断です。
当事者本人は『依頼する弁護士をしっかりと選ぶ』ことが重要なのです。
(ポジショントークに聞こえるかもしれませんが)
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