1 日照阻害による発電量減少リスク
2 日照阻害による発電量減少|法的責任の種類
3 太陽光発電の電圧が配電線電圧に『押し負ける』→物理的『売電NG』状態
4 『出力抑制』は5〜10%程度|系統安定のための人為的『売電NG』状態
5 バンク逆潮流の禁止|以前は『一律禁止』だった
6 バンク逆潮流の禁止→解消|平成25年5月通達改正
7 バンク逆潮流の許容→消費側機械の設計
8 電力会社が電力購入契約拒否→『接続義務』の明確化が望まれる

本記事では,太陽光発電に関する『売電が減少・できなくなる』リスクについて説明します。
太陽光発電の全般的なリスクの説明は別の記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|太陽光発電システム;日照阻害,販売,設置,運用トラブル予防策

1 日照阻害による発電量減少リスク

太陽光発電のリスクとして『日照阻害による発電量減少』があります。

<日照阻害による発電量減少|例>

南側に建物が建築された
南側に鉄道高架が建設された

従前の『日照権侵害』の新しい類型です。
違法性の判断には一般ん『日照権侵害』の基準が適用されます。
別項目;日照権;受忍限度;判断基準

太陽光パネルの設置が行なわれていると,日照確保の要請,が特に強まると考えられます。
従前の基準における『従前の利用状況』として,単なる建物よりも重視される傾向があります。

太陽光発電システムの設置後,その南側に建物が建築されると日照量が減り,売電金額の減少に直結します。
購入費用のローンを売電で回収する予定が実現できない,など致命的な影響となり得ます。

2 日照阻害による発電量減少|法的責任の種類

このようなケースでは,日照権侵害として建築差止や損害賠償請求を検討すべきです。
また,状況によっては太陽光発電システムの販売業者に対する賠償請求も考えられます。
今後,問題が増えてくると予想される分野です。
従来の『日当たりの良い場所で過ごしたいという人間の本能的な欲求』という枠組みを超えた問題です。

太陽光発電システムの保有者としては,日照が確保されるという期待が大前提です。
一方で加害建物の建築主としても,土地利用の一環,つまり所有権の一環として建物を建築する権利を持っています。
結局は,日照を確保する期待・権利をどこまで認めるべきかという理論になります。
現時点では裁判例の蓄積などはないです。

敢えて言えば,従来の日照権侵害の判断の枠組みを流用・踏襲するという流れになると予想されます。
日照阻害により発電量が減少したことによる法的責任の種類をまとめておきます。

<日照阻害→売電減少|責任を負う者>

あ 施工,販売業者

法的構成=瑕疵担保,説明義務違反

い 日照を阻害する者

法的構成=日照権侵害

3 太陽光発電の電圧が配電線電圧に『押し負ける』→物理的『売電NG』状態

物理的要因により『売電ができない状態』が生じることがあります。

<配電線電圧に『押し負ける』現象|原因の概要>

局所的な電力の供給過剰
→配電線電圧が(太陽光発電よりも)高まる
→太陽光発電からの電力(電流)受け取りが不可能となる

要するに1つのエリア(変電所の連系)内で『電力が過剰』となったら,太陽光発電の電力の『受取拒否』となる,という意味です。

4 『出力抑制』は5〜10%程度|系統安定のための人為的『売電NG』状態

実際の太陽光発電では,PCSの機能として一定の場合に『出力抑制』がかかります。
要するに『電力を供給しない』という状態になるのです。
物理的に押し負けた状態,と同じです。
この点,政府では『出力抑制の程度』について試算がなされています。

<出力抑制の予想>

系統安定のために,再生可能エネルギー電源に対する出力抑制の必要性が想定される
実施する出力抑制の予想=5〜10%程度
※エネルギー供給WG『現時点での取りまとめ』平成24年3月p38
外部サイト|エネルギー供給WG|現時点での取りまとめ

5 バンク逆潮流の禁止|以前は『一律禁止』だった

(1)系統内の電力需給アンバランス→『電圧押し負け』『出力抑制』

前述の『電圧押し負け』『出力抑制』が生じる原因が,系統内の電力の需給バランスです。
『供給』が『需要』よりも大き過ぎる,というアンバランスな状態のことです。
ここで『電力流通』の最小単位は『1つの変電所から通じている系統』です。
言わば『国内マーケット』と言えます。

(2)系統外への電力受け渡し|バンク逆潮流の禁止

1つの『系統』で『電力供給』が大き過ぎる時に,別の系統で『供給不足』ということもあります。
当然『過剰分を不足エリアに渡す』と合理的です。
『余剰電力の融通(やり取り)』と言えます。
例えると『A国からB国に品物を輸出する貿易』というような発想です。
電気(電力)の移動の場合はちょっとリスキーです。

<エリア(連系)外への電力移動|バンク逆潮流>

あ 変電所の『逆流』=バンク逆潮流

『電力過剰』エリアの変電所から『逆向き=エリア外方向』に電流を流す

い 変電所の(正方向の)通過

『電力不足』エリアの変電所が『正方向=エリア内方向』に電流を流す

バンク逆潮流は正常な動きではありません。
一定のリスクがあります。

<バンク逆潮流のリスク>

ア 火災などの災害発生リスク
イ 電源品質の低下リスク

そこで,経済産業省のルールで『バンク逆潮流』は禁止されていました。
そのため,局所的な『電力過剰』により『太陽光発電の電力の受取拒否』が頻発するようになりました。
バンク逆潮流を許容する必要性が高まってきました。

6 バンク逆潮流の禁止→解消|平成25年5月通達改正

平成25年5月に,経済産業省でルールが改正され,一定の範囲でバンク逆潮流が許容されることとなりました。
一定の範囲内で,別エリア間の電力の融通→太陽光発電の電力受取拒否の回避,ができるようになっています。

<バンク逆潮流|ルール改正>

あ ルールの形式

電気事業法39条1項,56条2項
→経済産業省|電気設備に関する技術基準を定める省令18条2項,20条
→経済産業省|電気設備の技術基準の解釈228条(高圧連系時の施設要件)
いわば『孫請け』で成文化されている

い ルールの内容|平成25年5月31日改正の前後

変電所での『逆流』(バンク逆潮流)が『可能』となった
ア 改正前
高圧の電力系統に分散型電源を連系する場合は,分散型電源を連系する配電用変電所の配電用変圧器において,”常
に”逆向きの潮流を生じさせないこと。

イ 改正後
高圧の電力系統に分散型電源を連系する場合は,分散型電源を連系する配電用変電所の配電用変圧器において,逆向きの潮流を生じさせないこと。
ただし,当該配電用変電所に保護装置を施設する等の方法により分散型電源と電力系統との協調をとることができる場合は,この限りではない。

7 バンク逆潮流の許容→消費側機械の設計

バンク逆潮流は無制限に行えるわけではありません。
経産省の通達(前述)では『分散型電源と電力系統との協調』が条件となっています。
これはバンク逆潮流のリスクのうち『電源品質の低下』を回避すること,と言えます。
バンク逆潮流を認めるために回避すべき『電源品質の低下』についてまとめます。

<バンク逆潮流|『電源品質の低下』リスクの内容>

あ 周波数変動(位相の乱れ)
い 電圧変動

今後は,周波数・電圧変動に耐えられる機械等の開発・普及も望まれます。
消費側の『要求水準を下げる』という意味です。
電力供給側と消費側の両方の設計の最適化により,産業・社会全体での効率化・低コストが実現されることが好ましいでしょう。

8 電力会社が電力購入契約拒否→『接続義務』の明確化が望まれる

太陽光発電設備を設置する前提として『電力会社との売電契約』が必要です。
再エネ特措法では,一般的な『接続義務』が規定されています。
しかし,現実には『接続拒否』も生じています。
この部分に関する法律上の規定をまとめます。

<接続義務の規定>

あ 条文上の拒否事由

『当該電気事業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき』
※再エネ特措法5条1項2号

い 立証責任

条文上記載されていない

実際には『接続拒否』が正当・妥当なものなのかどうか,が非常に重要となります。
法律上,もう少し明確にしてあると合理的です。

<接続義務の明確化|例>

『接続拒否事由に該当する』ことの立証責任を『電気事業者』と規定(明記)する

<参考情報>

高橋滋『震災・原発事故と環境法』民事法研究会p62〜