1 タクシー業=旅客自動車運送事業|許可制の基本
2 自家用自動車の『有償運送』は違法
3 タクシー業の許可制|違憲という意見|裁判所も指摘する『ネオラッダイト』
4 タクシー業の許可制|ネオラッダイトの勝訴履歴
5 タクシー業=運送事業の定義の解釈|『不特定の旅客』←旧規定
6 『会員制』の運送サービス×『旅客自動車運送事業』
7 ドライバーと集客の分担→違法|仙台高裁昭和52年1月28日
8 無許可業者への下請をした冠婚葬祭業者→無罪|大阪地裁平成2年9月14日
9 『旅客』or『貨物』|福岡高裁昭和50年12月17日

本記事では,タクシー業の許可制の基本事項について説明します。
UBERなどの自家用車と乗客のマッチングサービス・料金規制を違法とする判例などは別記事にて説明しています。
詳しくはこちら|タクシー業の改革|みんなのUBERは無償だから無許可で適法vs国交省の見解
詳しくはこちら|タクシー料金『上限・下限』|公定幅運賃制度|裁判所が違法・無効と判断

1 タクシー業=旅客自動車運送事業|許可制の基本

タクシー業を運営するには『許可』が必要です。

<旅客自動車運送事業|定義>

あ 『旅客自動車運送事業』|定義;抜粋

『他人の需要に応じ,有償で,自動車を使用して旅客を運送する事業』
※道路運送法2条3項

い 分類|『特定』旅客自動車運送事業

ア 概要
発注者が特定されている
※道路運送法3条2号
イ 具体例
・特定の事業所の通勤用
・特定の教育機関の通学用
・特定施設の利用客の輸送

う 分類|『一般』旅客自動車運送事業

発注者が特定されていない
=『い』以外
※道路運送法3条1号

<旅客自動車運送事業|許可制度>

あ 『旅客自動車運送事業』|許可制度

国土交通大臣の許可を受けることが必要
※道路運送法4条1項,43条1項

い 罰則
無許可で行った事業 法定刑 道路運送法
一般旅客自動車運送事業 懲役3年以下or罰金300万円以下 96条1号
特定旅客自動車運送事業 懲役1年以下or罰金150万円以下 97条1号

要するにタクシー業を無許可で行うと違法,ということです。
タクシー業の許可を得ていない場合,自動車のナンバーが通常=自家用として『白色』です。
そこで違法タクシーのことを,俗に『白タク』と呼んでいます。

2 自家用自動車の『有償運送』は違法

前述の『旅客自動車運送事業』は,その定義上『事業』が対象です。
これは多くの『業法』で共通していることです。
『事業』ということは一定の規模の運営である,ということです。
詳しくはこちら|業法一般|『業』=反復継続意思+事業遂行レベル|不特定多数は1事情

そうすると『反復継続の意思』がない場合や『事業遂行規模』にない場合は規制の対象外となるはずです。
この点『有償での運送』については『事業』未満でも規制対象となっています。

<自家用自動車の有償運送>

あ 『自家用自動車』の定義

『事業用自動車』以外の自動車

い 『自家用自動車の運送』禁止

有償で運送の用に供してはならない

う 『自家用自動車の有償運送禁止』の例外

ア 災害のため緊急を要する場合
イ 『自家用有償旅客運送』について国交省の登録を得た場合
市町村・特別区・特定非営利活動法人が行う特定区域内の住民の運送
ウ 国土交通大臣の許可を得た場合
公共の福祉を確保するためやむを得ない場合
※道路運送法78条,79条

え 罰則|法定刑

懲役1年以下or罰金150万円以下
※道路運送法97条1号

お ポイント;旅客自動車運送事業との違い

次の要件がない
・『需要に応じて』
・『業(として)』

3 タクシー業の許可制|違憲という意見|裁判所も指摘する『ネオラッダイト』

タクシー業はなぜ許可制が取られているのか,という疑問は制度発足当初から議論がありました。
このような『業法』は一般に『職業選択の自由・経済活動の自由』という憲法に抵触する可能性があるのです(憲法22条1項,29条)。
このような根本的なことについては,判例上コメントが出ているのでこれを紹介します。

<タクシー業の許可制×合憲性・ネオラッダイト>

あ 道路運送法のタクシー業の許可制のデメリット

『既得権者の利益擁護的傾向,利用者の利便無視的傾向,汚職関係等の生ずる余地を持つ』

い 制度の擁護=制度趣旨

『これらはいずれも行政指導並びに運営面においてそれぞれ是正の道があ(る)』
『自由営業に委ねると一時的,局部的にはともかく全国的長期的な見地からみれば交通の無法状態に陥る危険が大である』

う 裁判所の判断

憲法に違反しない
※神戸地裁昭和42年11月29日

業法一般に『ユーザーの犠牲・既得権者の保護』というものがあります。
これを『ネオラッダイト』と呼んでいます。
詳しくはこちら|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト
この判例では,結論として『合憲』と判断しています。

4 タクシー業の許可制|ネオラッダイトの勝訴履歴

実は,タクシー業の許可制について『違憲』と主張する訴訟は多いのです。
特に制度発足当初は多くの新規勢力が法廷で闘いました。
最高裁まで進んだケースも多くあります。
コストのメーターは上がりまくりましたが,いずれも『合憲』という判断でした。

<タクシー業の許可制|『合憲』判例>

あ 戦歴

最高裁昭和62年10月1日
最高裁昭和41年5月31日
最高裁昭和39年12月22日
最高裁昭和39年3月13日
最高裁昭和39年1月30日
最高裁昭和38年12月4日

い 裁判所の判断

道路運送法の許可制は憲法に違反しない

タクシー業に関する法廷での闘いは『制度の合憲性』というスケールの大きなものだけではありません。
個別的なビジネスモデルの工夫と国交省(背景=ネオラッダイト)という闘いも繰り広げられています。
正面からの闘い・奇襲作戦などがありますので,以下紹介します。

5 タクシー業=運送事業の定義の解釈|『不特定の旅客』←旧規定

タクシー業は『要許可』ですが,定義から外れれば『許可不要』となります。
簡単に言うと『旅客が不特定多数』でなければ,タクシー業から除外されます。
この部分の解釈を示した判例を紹介します。

<道路運送法『一般自動車運送事業』>

あ 『一般自動車運送事業』の解釈

『一般乗用旅客自動車運送事業』を含む

い 『一般乗用旅客自動車運送事業』の解釈

常時不特定の他人の需要(運送要求)に応じ,反覆継続の目的で,有償で自動車を使用して人の運送行為をする事業
※道路運送法4条1項(当時)
※長崎地裁佐世保支部昭和62年9月24日

なお,この時期以降,法改正が重ねられています。
現行法では『他人の需要』という表記ですが『常時・不特定』などの用語がありません。
『他人』という文言の解釈次第です。
いずれにしてもこの部分については,現在の方が『規制=要許可』の範囲が広いと言えます。

6 『会員制』の運送サービス×『旅客自動車運送事業』

自動車での運送サービスを『会員制』にすると,解釈が違っています。
『旅客自動車運送事業』に該当しない,という方向性になるのです。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|会員制・組合方式運送サービス×タクシー業該当性|判断基準=実質的独立性

7 ドライバーと集客の分担→違法|仙台高裁昭和52年1月28日

ドライバーと『集客』を別の事業者が分担した,というケースもあります。
ここでドライバーの視点では『需要に応じた運送』には該当しない,という発想もあります。
『ユーザーの発注=需要』に,直接的には対応していないからです。
しかし,裁判所は次のように判断しました。

<『間接的な依頼』についての判断>

『事業者が利用者(荷主)から直接依頼を受けてはいない』という場合でも『需要に応じた運送』に該当する

要するに『集客が間接的』だった,というだけでは許可制を逃れられない,ということです。
この判例のケースで,実際に考慮された事情について整理しておきます。

<間接依頼×運送サービス|事案内容>

あ 『運送事業』否定方向の事情

A運輸株式会社の下請として,荷物を運んでいた
他の顧客・発注者の荷物の輸送はしていなかった

い 『運送事業』肯定方向の事情

貨物運送ルートは不定であった
例;大阪から東京・東京から長野・仙台から名古屋
支払額はA運輸が荷主から受領する運送賃のおおよそ9割であった
=約1割の天引
従業員の雇用・自動車の所有・管理・経費負担は下請業者であった

う 裁判所の判断

『一般区域貨物自動車運送事業』に該当する

8 無許可業者への下請をした冠婚葬祭業者→無罪|大阪地裁平成2年9月14日

ちょっと変わったケースとして『無許可の運送サービス業者』への下請けという判例があります。
無許可の運送サービスを行った業者が違法になるのは当然として『送客をした業者』の違法性が審理されました。
まずは『運送事業』を『行った』と言えるかどうか,という解釈論からまとめます。

<『運送事業』の主体|裁判所の解釈論>

あ 構成要件

運送事業を経営する

い 『事業主』の解釈

自己の計算においてその事業を経営する者

う 『事業主』の判断要素|例

ア 収支の帰属
イ 運行管理
ウ 労務管理

このように基準を明確化した上で,事案の内容について審査しました。

<無許可業者への下請をした冠婚葬祭業者→無罪>

あ 事案

冠婚葬祭事業者である互助会法人が無許可の下請業者にマイクロバスによる有償の旅客運送を委託
冠婚葬祭の参列者の運送についての専属的下請業者

い 裁判所の評価

ア 資本上の関係はなかった
イ 下請業者の管理が広く及んでいた
・車両の所有・管理
・従業員の雇用
・経費の支出
・交通事故の事後処理
・冠婚葬祭業者が顧客から自社サービス費用とは別に『旅費』を徴収していた

う 裁判所の判断(結論)

冠婚葬祭業者は『事業主』ではない→無罪
※大阪地裁平成2年9月14日

結論として『冠婚葬祭業者』は『運送事業を行った』とは言えない,ということになりました。
なお『幇助や教唆』という間接的な関与による犯罪,が成り立つかどうかは審査されていません。
実際にビジネスモデルを構築する際は注意が必要です。
詳しくはこちら|幇助犯・教唆犯|犯罪の手助け・そそのかしだけでも犯罪になる

9 『旅客』or『貨物』|福岡高裁昭和50年12月17日

以上の理論的な闘いは『正攻法』と言えるものです。
次に『奇襲作戦』の戦歴も紹介します。
乗客の『手荷物』に着目し,『旅客業ではなく貨物業である』という主張を展開したものです。

<旅客or貨物事件>

あ 事案

ア 1回目の『運送』
旅客1名+手持ちの紙袋2個
かまぼこ約7本入りの紙袋+みかん三斤入りの紙袋
イ 2回目の『運送』
旅客2名+手持ちの紙袋1個
重さ約3.5斤(2.1kgw)程度の物が入つた紙袋
ウ 営業中のターゲット
運転者は,町の中を流して営業中いつも上記程度の荷物を持った人を運送していた

い 裁判所の判断

いずれも『旅客』の運送に該当する
※福岡高裁昭和50年12月17日

奇襲による困惑→突破,を狙った作戦でした。
高裁までは進んだのでしたが,敗戦となりました。