【飲食店のぼったくり被害の救済(被害と警察の対応の実情・解決策)】

1 ぼったくりというレガシー犯罪を警察が黙認
2 民事的責任|損害賠償
3 刑事的責任|暴行罪・逮捕罪・恐喝罪・ぼったくり防止条例違反
4 警察の不当な対応|『民事不介入』という名の『介入』
5 警察官のサポート・解決に向けた具体策
6 店側の対応|一般的な『無銭飲食』
7 弁護士サイドのサポート=ビジネス化|bottakuri110

1 ぼったくりというレガシー犯罪を警察が黙認

ぼったくりの被害が現在も継続しています。
『民事不介入』という言い訳で警察が任務を放棄して,レガシー犯罪のサポートをしています。
ここでは『ぼったくり』の法律的な部分を説明します。

<ぼったくり|ビジネスモデル>

飲食店の顧客にメニュー・金額を明示しない
退店時に金額を告げる
異様に高額な金額である
一緒に警察(交番)に行く
警察が『民事不介入』と言いながら支払を要請する
店員は顧客を捕まえて帰れない状態にする
顧客が身体拘束から解放されるために支払に応じてしまう

<『ぼったくり』の語源|参考>

あ 基本構成

『ぼる』+『ったくり』

い パーツ
『ぼる』 『むさぼる』or『暴利』
『~ったくり』 『たぐる(手繰る)』=無理やりひっぱる

※諸説あります。

2 民事的責任|損害賠償

身体の拘束や不当な金額の要求により顧客は困惑します。
当然,違法性が高いので不法行為として損害賠償責任が生じます(民法709条,710条)。
実際には店側の当事者特定や財産の把握のハードルが高いです。
実現するかどうかは別問題です。

3 刑事的責任|暴行罪・逮捕罪・恐喝罪・ぼったくり防止条例違反

ぼったくりのプロセスのうち,いくつかの行為・行為全体について刑事責任が生じます。
要するに『犯罪』です。
これは『刑事裁判』うんぬんはあまり重要ではありません。
警察が逮捕や制止させるなどのサポートをできるかどうか,に直結しているのです(後述)。

(1)暴行罪;刑法208条

腕などの体の一部やベルト・着衣をつかむ・引っ張る,という『身体の接触による力学的な作用』(行為)は暴行罪にあたります。

<暴行罪|判例>

着衣をつかみ引っ張る行為 大判昭和8年4月15日
瞬時身体を拘束する行為 大判昭和7年2月29日

(2)逮捕罪(監禁罪);刑法220条

身体の拘束が一定時間ある場合は『逮捕罪(or監禁罪)』が成立します。
身体の一部をつかむ,というだけでも成立することがあります。

(3)恐喝罪;刑法249条

『脅迫or暴行』によって金銭の支払を要求することは恐喝罪に該当します。
代金を払わない段階でも『恐喝未遂罪』が成立します(刑法250条)。

(4)ぼったくり防止条例違反

例えば東京都の場合,ぼったくり防止条例が制定されています。

<東京都|ぼったくり防止条例>

あ 正式名称

性風俗営業等に係る不当な勧誘,料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例

い 規制の内容
料金等の表示義務 3条
不当な勧誘等の禁止 4条1項,2条の7
不当な取立の禁止 4条2項
う 違反の罰則;11条2項

法定刑=懲役6か月以下or罰金50万円以下

え 違反に対する行政処分;6条,7条

公安委員会が指示・営業停止命令を行う

(5)客引き防止条例

例えば新宿区の場合,客引き防止条例が施行されています。
一定の飲食店への客引き・客待ちが禁止されています。
しかしこれは『刑事罰』が設定されていません。
行政処分としての営業停止などが規定されているのです。

4 警察の不当な対応|『民事不介入』という名の『介入』

(1)『民事不介入』と言って『介入』

ぼったくり被害者が交番に行っても警察官は止めてくれません。
『民事不介入』と言います。
その上で『無銭飲食はダメだから話し合うように』と言います。
逆に『民事に介入・ぼったくりをサポート』するのです。
結局,警察官も一緒になって『家に帰してくれない』のです。
逮捕監禁罪の共同正犯,という状況が生じます。

(2)被害届・告訴提出→受理義務

まず,被害者が警察官に『被害届』や『告訴』をすることが考えられます。
告訴については,司法警察員には原則として受理義務があります。
また,条文上,口頭でも可能となっています。
詳しくはこちら|告訴・告発の基本|受理の拒否・民事不介入|虚偽告訴罪による反撃

(3)逮捕や介入の要請→応じない場合は国家賠償請求

警察官は犯罪行為を現認した場合や直前の犯罪行為が明白である場合は現行犯/準現行犯逮捕ができます。
条文上『義務』とは書いてありません。
しかし,この『職務』を行わないために被害が生じた,と言えることもあります。
この場合は,『公務員の行為』と『損害』に因果関係が認められれば国家賠償責任が生じます。

5 警察官のサポート・解決に向けた具体策

(1)警察にサポートをお願いする方法

警察に止めてもらう,というためには以上の理論を元にアクションを起こす必要があります。

<警察官にサポートをお願いする方法論>

あ 証拠確保=スマホで動画撮影

店員に押されたり掴まれたりして帰れない状況
警察官に言っても対応してくれない状況

い 警察官への説明・宣言

ア 『告訴する』と明言するイ 『国家賠償請求をする』と明言するウ (介入しないことが)『誰の判断なのか』を質問するエ 警察官に警察手帳提示を要求し,撮影する

このような状況では,警察官には警察手帳提示義務がありますし,肖像権も主張できなくなります。
詳しくはこちら|肖像権の受忍限度の判断例|警察官の撮影
詳しくはこちら|警察手帳携帯義務・提示義務|逆職質の場合は否定的|警察救済的判例

(2)テクノロジーによる『批判』というソフト解決法

以上とは別に『警察官の不当行為』の改善を図る方法もあります。
YouTubeなどの動画投稿サイトに状況をうpして批判にさらす,という方法です。
法的な手続とはまったく関係ないソフトな方法です。
警察の運用改善も狙えますが,同時に,世論形成→自治体の条例制定,という動きにつながる可能性もあります。

(3)適正金額の提供

どのような方法を取るにしても,店側の『無銭飲食』という言いがかりは封じる方がベターです。
一般的な相場で通常と思われる金額を提供する,ということです。
『1時間5000円だけ,と聞いたので5000円を払います』の要領です。
当然店員は『30万円が正規料金です。受け取れません』と言います。
この場合は『弁済提供』『受領地帯(拒否)』ということになります(民法493条,413条)。
『払っていない』という口撃を防ぐことにつながります。
もちろん,言った言わないになりますので,録音(録画)しておくとベターです。

6 店側の対応|一般的な『無銭飲食』

ここから先は『ぼったくり』では該当しないですが,一般論として『無銭飲食』の法律的な説明です。
ただ『ぼったくり』でも店側が『無銭飲食』の主張をしてくるので,無関係ではありません。
とにかく以下は,『善良な飲食店で顧客が言いがかりをつけて代金を踏み倒す』というテーマを説明します。

(1)金銭の不払いでは身柄拘束はできない

まず,『金銭債務』がある者がその場を去ろうとしても『止める権限』は原則的にありません。
『預かったモノ』であれば,『返さない・預かったままにする』という制度はあります(留置権;民法295条)。
しかし,人間・身体,については当然適用されません。
『払ってもらえない者=債権者』としては,法的手続によって訴訟→差押,などの手段を取る必要があります。
相手の氏名・住所が分からない,ということは『後払い方式』を選択した時点で負っているリスクなのです。

(2)最初から無銭飲食狙いの場合→詐欺罪成立

ただし,『単なる不払い』を超えて『最初から代金を払うつもりがないのに注文した』という場合は別です。
『騙してサービス提供をさせた』ということになります。
詐欺罪という犯罪が成立します(刑法246条)。

(3)犯罪成立→私人による逮捕

犯罪,ということになると『身柄拘束』につながります。
実は『逮捕』は警察官の独占サービスではないのです。
『私人による逮捕』も認められています(刑事訴訟法213条)。
本来『逮捕罪』となるところが『私人による逮捕』のルールどおりであれば『逮捕罪』にはならないのです。
『私人による逮捕』でも,警察官と同様に『必要な限度での実力行使』が認められます(最高裁昭和50年4月3日)。
通常は怪我をする,つまり『傷害発生』レベルは違法となります。
もちろん,詐欺犯が暴れた場合はこれを制圧する範囲であれば一定の『反撃』も許されます。
通常よりも広く『正当防衛』を認めるのです(刑法35条,盗犯等防止法1条)。
ただし,犯罪者の暴れた程度・危険の程度と『反撃』のバランスは要求されます(最高裁平成6年6月30日)。

(4)私人による逮捕は警察に直ちに引き渡すのみ

詐欺犯については『逮捕』すること自体は可能なのですが『払うまで帰さない』はNGです。
逆に逮捕罪として店員が犯罪になります。
『私人による逮捕』後は『直ちに』警察官などに『引き渡す』必要があるのです(刑事訴訟法214条)。
警察官に引き渡した時点で『嫌疑がない』場合は,当然すぐに釈放されます。

(5)ぼったくりビジネスでの『言いがかり』に注意

ぼったくりのケースでは『当初から(常識的な代金を)払うつもりがないで入店した』ということではありません。
上記の『私人による逮捕』の対象外です。

不当なビジネスが成り立つと,模倣者(店舗)が増えます。
被害者が増えるのは当然として,善良なビジネス(店舗)の顧客を奪います。
そのエリアの善良な店舗もネガティブなイメージを持たれます。
結果的に『善良なビジネスを退場させる』ことにつながります。
自由競争を前提としたマーケットが大きく歪められるのです。
マーケットの公正な競争の実現・維持は強く望まれます。
詳しくはこちら|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト

7 弁護士サイドのサポート=ビジネス化|bottakuri110

ぼったくり被害は弁護士の介入により解決できる問題です。
そこで,弁護士有志で,対応に当たる団体を作る動きもあります。
毎日歌舞伎町交番付近で待機し,要請に応じて駆けつけるサービスが展開されています。
弁護士は,法律事務を法律による参入規制で独占しています(ネオ・ラッダイト;上記)。
社会のニーズに対応したサービス・ビジネスを構築するのは弁護士の使命と言えます。
外部サイト|ぼったくり被害110番|bottakuri110.jp

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