【公道・上空の『移動物体』への法規制|セグウェイ・ロボット・ホバーボード・ドローン】

1 最新テクノロジーの『移動体』の進化を妨害するレガシー法規制
2 『移動する物体』に関する『法規制』の整理
3 近未来の移動物体の種類×法規制の関係|まとめ
4 『車輪あり×陸上』カテゴリ|セグウェイ・AirWheel_X8
5 『車輪なし×陸上』カテゴリ|ホバークラフト・ホバーボード・ヒューマノイド
6 『車輪なし×上空』カテゴリ|無人ドローン・ソーラープレーン
7 『小規模な飛行』ガジェット|通常のカイト・紙飛行機
8 『小規模な地上移動』ガジェット|小さなロボ

ここでは,具体的なマシーンについて,法規制との抵触をまとめます。
なお,法規制自体については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|道交法・道路運送車両法の定義|自動車・原付・電動自転車・車いす・歩行補助車

1 最新テクノロジーの『移動体』の進化を妨害するレガシー法規制

テクノロジーが進化し,近未来は人間の暮らしの中に『移動する物体』が展開して行きます。
セグウェイ,ホバーボード,アシモ・ヒューマノイド(ロボット)などの開発は日進月歩です。
一方,『移動体』に対する従来の法規制が存在します。
テクノロジー進化のハードル・ブレーキになっている部分もあります。
以下,『最新テクノロジーによる移動体』×『レガシー法規制』についてまとめます。

2 『移動する物体』に関する『法規制』の整理

(1)『移動する物体』に関する法規制|まとめ

最初に,『移動体』に関する法規制をまとめます。

<陸上と上空の『移動』の規制|まとめ>

規制対象 定義・規制対象 規制内容
道交法の『自動車』 車輪あり×陸上 ライト・ブレーキなどの装備・運転免許・自賠責保険加入義務
道路運送車両法の『自動車』 動力×陸上を移動 車検+登録(ナンバープレート取得)
航空法の『航空機』 上空×『人が乗れる大きさ』 『耐空証明』+『技能証明・身体検査』が必要
道路『使用』全般 一定の動力付物体 道交法の使用許可が必要
上空250m以上の飛行 ほぼすべての物体 飛行許可・通知が必要

ドローンについて,道交法の『道路使用許可』を詳しく説明しています。
詳しくはこちら|道交法|『道路使用許可』;77条

3 近未来の移動物体の種類×法規制の関係|まとめ

以上の規制について,普及準備中の『最新テクノロジー』との抵触(該当性)をまとめます。

<近未来の移動体×法規制|まとめ>

移動体の形態 車輪の有無 『陸上or上空』 道交法の『自動車』 道路運送車両法の『自動車・原付』 航空法の一般の『航空機』
セグウェイ・AirWheel_X8・電動キックボード あり 陸上
シニアカー・電動カート・UNI-CUB あり 陸上 (※5)
ホバークラフト・ホバーボード・ヒューマノイド なし 陸上
無人ドローン なし 上空or陸上
ソーラープレーン なし 上空

※5 道交法の『特殊マシーン』の規定(後述)

4 『車輪あり×陸上』カテゴリ|セグウェイ・AirWheel_X8

(1)車輪あり×陸上|原則

<『車輪あり×陸上』カテゴリのマシーン×法規制|原則>

あ 対象『マシーン』|例

セグウェイ・AirWheel_X8

い 法的扱い

車輪あり×陸上→道交法の『自動車』+道路運送車両法の『自動車』

う 適用される規制

ア 道交法の『自動車』 ライト・ブレーキなどの装備・運転免許・自賠責保険加入義務(※1)
イ 道路運送車両法の『自動車』 車検+登録(ナンバープレート取得)

え 適法に利用できる可能性

一般的な実現可能性は低い
理由;『車検+登録』の実現性が低い(※2)

お 適法に利用するための方法

ア 私有地内(『道路』扱いの部分を除く)のみで使用する レジャー施設・空港・大型ショッピングモール
イ 道交法の『道路使用許可』を得る 許可の範囲内の場所・時間で使用する
例;平成20年千葉県柏市;柏の葉モビリティフォーラム
ウ 法整備により『解禁エリア』を設定する 例;つくばモビリティロボット実験特区

<セグウェイが『車検』をパスしない理由(上記※2)>

『ブレーキ(の装備)』がネック
『車輪の回転を摩擦力で止める』という性能が付けられない
単純にこの機能を稼働させると『倒れてしまう』

<セグウェイを『自動二輪車』として道交法違反を適用した判例(上記※1)>

道交法の『普通自動二輪車』に該当する
(出力が0.6kw未満の場合,『原動機付自転車』となる=電動スクーターと同様)

整備不良;『前照灯・ブレーキ・方向指示器』などの装備が欠けている
無免許運転
など

罰金50万円
※東京簡裁平成16年4月9日(略式起訴)

(2)車輪あり×陸上|特殊マシーン

<『車輪あり×陸上』カテゴリのマシーン×法規制|特殊マシーン>

マシーンの種類 具体例;商品名 道交法上の扱い
シニアカー・電動カート モンパル(本田技研)・セニアカー(スズキ) 歩行補助車(歩行者扱い)
倒立振子の移動体 UNI-CUB・U3-X(本田技研) 歩行補助車(歩行者扱い)
電動キックボード・電動スクーター devil3 原付(or自動車)

これは,道交法上の『歩行補助車』という制度(種類)に該当するものです。
この制度の内容は別記事で説明しています(本記事冒頭のリンク)。
結論としては,シニアカーやUNI-CUBは一定規定に適応させれば道交法上は『歩行者扱い』となります。
実際にシニアカーはいくつかのメーカーが販売しています。
一方,電動キックボード・電動スクーターは警察庁の見解としても『歩行補助車』とは認めていません。
結果的に『原付(or自動車)』ということになります。
現実的には『公道では使えない』という状態です。

5 『車輪なし×陸上』カテゴリ|ホバークラフト・ホバーボード・ヒューマノイド

(1)ホバーボード系マシーンの法規制

<『車輪なし×陸上』カテゴリのマシーン×法規制>

あ 対象『マシーン』|例

ホバークラフト・ホバーボード・ロボット・ヒューマノイド

い 法的扱い

車輪なし×陸上→道路運送車両法の『自動車』(※3)

う 適用される規制

ア 道路運送車両法の『自動車』 車検+登録(ナンバープレート取得)
イ 道交法の『使用許可』

え 適法に利用できる可能性

一般的な実現可能性は低い
理由;『車検+登録』の実現性が低い
『ブレーキ』などの保安基準=レガシーマシーンの規格,がマッチしない

お 適法に利用するための方法

ア 私有地内(『道路』扱いの部分を除く)のみで使用するイ 道交法の『道路使用許可』を得る

道交法の『自動車』の定義における『車』を拡張的に解釈する考え方もあります(上記※3)。
道路上の移動物体を広く『自動車(車)』と捉えるという解釈です。
いずれにしても現行法では不明確な状態です。

(2)ホバーボード系マシーンあれこれ

<ホバークラフト>

あ テクノロジー

機体下部から風を出し,地上から浮遊する機構を持つ

い 実用や定番

大分空港−大分市を定期就航していたが廃止されている
ドラゴンボールや鉄腕アトムで『未来の都市』の中で登場する
ただし,浮遊の程度が『路面に近い』もののみ
(上空で『有人』の場合,航空法の『航空機』=現在の『ヘリコプター』と同じカテゴリになる)

<ホバーボード>

あ テクノロジー

超電導誘導その他のテクノロジーでスケートボード上の物体が浮遊する機構

い 実用や定番

バック・トゥ・ザ・フューチャーでドクが作っていた
Hendo Hoverboards(ヘンドー ホバーボード)
→Kickstarterで既に目標金額の$250,000を既に調達完了し開発へ
外部サイト|Hendo Hoverboards

(3)ヒューマノイド・ロボット

<ロボット・ヒューマノイド>

あ 道路運送車両法の『自動車』への該当性

次の定義(前記『2(1)』)に該当すると思われる
『原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具』
ネーミングの『自動』の語感は違和感があるが,定義とのマッチングは良好
定義上『人を乗せる』ことは要件になっていない
飛翔するマシーンの場合は『陸上』ではない(航空法の『航空機』)ともなる
その場合でも,離陸までに『陸上』を移動するはずなので『道路運送車両法の自動車』にも該当すると思われる

い テクノロジー

特にヒューマノイドは『バランスを取る』というテクノロジーが発展している
本田技研はASIMOの開発によって培った技術を自動車その他の現行モビリティに活かしている
機械的な姿態のものから,人型=ヒューマノイド,動物型(4脚)など,バラエティが拡がりつつある

う 実用化

ア ASIMO;本田技研イ ペッパー君ウ WABOT;早稲田大学エ Atlas;米国・国防高等研究計画局(DARPA)

(4)歩行アシスト

非常に特殊なマシーンとして『歩行アシスト』があります。
実際に本田技研が『研究段階』ながらもPRされています。
高齢化社会を迎え,交通システムの改良策の1つとして提唱されています。
ところが現行法では扱いがハッキリしていません。
まず,道交法の『自動車』『車両』の定義では『車』が前提です。
この時点で『歩行アシスト』が該当するかどうかが明確ではありません。
そもそも歩行アシストは『人力(自力)とマシーンの併用』です。
このような制度(定義)は,道交法では『電動アシスト自転車』だけです。
さすがに歩行アシストは『自転車』には該当しないでしょう。
完全に『既存の法体系の想定外』という事態(マシーン)です。
外部サイト|Honda Robotics

6 『車輪なし×上空』カテゴリ|無人ドローン・ソーラープレーン

<『車輪なし×上空』カテゴリのマシーン×法規制>

あ 対象『マシーン』|例

無人ドローン・ソーラープレーン

い 法的扱い−航空法

車輪なし×上空→航空法の『模型航空機』or『無操縦者航空機』(※4)
↓区別基準
人が乗れる大きさ未満→『模型航空機』
人の乗れる大きさ以上→一般の『航空機』

う 法的扱い−道路運送車両法・道交法

ア 道路運送車両法の『自動車』に該当しない 理由;『陸上を移動』ではない
イ 道交法の『道路使用許可』の対象となる可能性がある 理由;『道路』の使用の解釈による
ウ 具体例 一般の自動車と同じ位置(路面から1メートル以内程度)の場合
・道路運送車両法の『自動車』に該当する
・道路の『使用』に該当する→道交法の『使用許可』が必要

え 適用される規制

ア 航空法による次の規制 ・一定の空域の飛行禁止
・許可・通知など
イ 道交法の使用許可 要否は解釈による

(2)『上空/陸上』の判断

飛行する『高度』によっては『上空』ではなく『陸上』と解釈する余地もあります。
例えばドローンが地上1メートル以下を『飛行』する場合は『上空』というよりも『陸上(の移動)』と考えるべきでしょう。

(3)『車』の解釈を拡げる可能性

『車輪』はないですが,道交法の『自動車』を拡張的に解釈して『対象とする』考え方もあります(上記※4)。
道路上を移動する物体,という趣旨で広く捉えるものです。
いずれにしても現行法は不明確な状態であり,法整備が望まれます。

無人ドローンの法規制については,別に説明しています。
別項目|無人ドローン運用に必要な許認可とケアすべき法律問題

7 『小規模な飛行』ガジェット|通常のカイト・紙飛行機

(1)小規模な『飛行』ガジェット

参考として,既存のガジェット・玩具系についても説明を加えます。

<小規模な飛行ガジェット>

あ 通常のカイト(たこ揚げ)

『人を載せる』ような大規模なものを除く
※人間たこ揚げの例=相葉雅紀氏(嵐のお馬鹿実験コーナー)

い 紙飛行機

(2)公共の広場=公園・河川敷など→OK

いずれも『落ちた時に人や物に衝突するリスク』があります。
常識的には公園・広場でプレイされています。
原則としては法的にも問題ないでしょう。
ただし,人混みなど『密度』次第では『人に衝突→怪我をする』『物が損傷する』という可能性が存在します。
軽犯罪法1条11号に該当する可能性があります。

<軽犯罪法1条11号>

あ 構成要件=刑罰の対象

相当の注意をしないで,他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ,注ぎ,又は発射した者

い 法定刑

拘留or科料

この規定は場所の限定はありません。
『人の密度が高い場所』であれば道路・公園・私有地(JRの敷地内)なども含まれます。

(3)道路→基本的にNG

『周囲を確認すれば公道で紙飛行機・カイトを飛ばしても良い』と思えるでしょうか。
おそらく『急に車が来るかもしれないから広場でやってくれ』という発想が多いでしょう。
この感覚が法律上も反映されています。

<道交法の『禁止行為』|76条4項4号>

石,ガラスびん,金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ,又は発射すること

カイト・紙飛行機は,石・ガラスびん・金属片には該当しません。
しかし『その他人・車両等を損傷するおそれのある物件』に該当する可能性もあります。
この点,カイト・紙飛行機は非常に軽量です。
とは言っても,人の顔・目に直撃したら,クリティカルなダメージを生じる可能性があります。
道路では一律に『禁止行為』に当たる可能性が高いでしょう。

8 『小規模な地上移動』ガジェット|小さなロボ

(1)小さなロボあれこれ

一般的なASIMOなどのヒューマノイドについては公道での使用(歩行)が禁止されます(前述)。
一方,ロボファミリーの中には小さなかわいいものもいます。

<小規模なロボカテゴリ>

分類 典型例
ヒューマノイド ロビ
動物タイプ AIBO

これらを公園などで歩かせることは法的問題を生じません。

(2)『自動車』には該当しない

道路,具体的には歩道を歩かせる,という場合について説明します。
『大きい物でなければ警察が止めるほどのことではない』という発想が多いでしょう。
法律上は,『自動車』の定義の解釈が重要です。
条文の定義には『規模』などの詳しいことは記載されていません。
社会通念(常識)で解釈すれば,小さいロボ,については対象外と思われます。
『ヘッドライトが必要』『車検が必要』ということにはならないでしょう。

(3)『道路使用許可』には該当しないと思われる

もう1つが道交法の『使用許可』です。
東京都の場合の『要許可行為』を紹介します。

<東京都道路交通規則18条(9)>

『道路において,ロボットの移動を伴う実証実験』

これはある程度の規模のものが想定されています。
実際に,いくつかのイベントで道路使用許可の実例があります(上記『4』)。
一方,ロビ・AIBOなどは『おもちゃ・ペットレベル』『手で持っているに近い』という規模です。
『持ち物の延長上』という感覚が普通です。
このような『小規模』のかわいいものについては『要許可行為』ではないと考えられます。

以上は『法規制』の説明でしたが,これとは別に,事故が生じた場合の法的責任,という問題もあります。
詳しくはこちら|自動運転テクノロジー・ドローンの事故×『民事責任』

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