【外国の判決→日本の財産差押|日本の判決→外国の財産差押】

1 外国の裁判所の判決→日本の財産の差押ができる|自動承認・執行判決
2 外国判決の『承認』要件|自動承認
3 外国判決→日本における執行|『執行判決』が必要
4 日本の裁判所の判決→外国の財産の差押の方法|『外国判決』のルールと同様

1 外国の裁判所の判決→日本の財産の差押ができる|自動承認・執行判決

(1)『判決』と『強制執行』の国が違う場合は特殊

『確定判決』によって『強制執行』する,というのは基本的な流れです。
ここで,『判決』と『強制執行』のそれぞれの裁判所が両方とも日本,というのが大原則です。
『判決を出した裁判所』と『強制執行(差押)をする裁判所』の国が異なる場合でも,実行する方法があります。
『外国の判決→日本で強制執行』と,この逆方向,については,基本的に同じ流れになります。
順に説明します。

(2)『外国裁判所の判決』→『日本で差押』の基本的流れ

<外国裁判所の判決→日本で差押|必要な手続>

あ 自動承認

『外国の判決として有効』ということを公的に認める要件
『執行判決』手続の中で審査・確認される
※民事訴訟法118条

い 執行手続

『執行判決』の手続+『強制執行の申立』が必要
※民事執行法22条6号,24条4項

それぞれのプロセスについては次に説明します。

2 外国判決の『承認』要件|自動承認

(1)外国判決の『承認』要件

日本の法律では『承認』自体は一定の要件を満たせば自動的に認められる,というスタイルです。

<外国判決の自動承認の要件|まとめ>

あ 外国裁判所の確定判決である
い 当該外国裁判所が裁判管轄権を有する
う 敗訴被告へ適切な送達がなされている
え 外国判決の内容・手続が日本の公序に反しない
お 国相互の保証がある

※民事訴訟法118条

それぞれの要件について,次に説明します。

(2)『承認』要件5つの内容

<外国裁判所の確定判決である(上記『あ』)>

外国の裁判所が,私法上の法律関係について終局的に行った裁判
ア 未承認国も含むイ 国際裁判所(国際司法裁判所など)は含まないウ 名称,手続,形式は問わない 例;『判決』『決定』『命令』
エ 当事者双方の手続的保障が尽くされている ※最高裁平成10年4月28日

<当該外国裁判所が裁判管轄権を有する(上記『い』)>

『国際裁判管轄』に関する判断
※最高裁平成10年4月28日
詳しくはこちら|国際的法律問題まとめ(準拠法・国際裁判管轄・内容証明・強制執行)

<敗訴被告へ適切な送達がなされている(上記『う』)>

『送達』に関する判断
詳しくはこちら|民事訴訟・保全手続における日本国外への送達(方法・所要期間)

<外国判決の内容・手続が日本の公序に反しない(上記『え』)>

ア 『公序』の内容 外国判決を承認→執行した場合の不合理性
イ 『実質的再審査禁止原則』 事実認定・法解釈については行えない
ウ 『公序違反→承認NG』という判例 米国の『懲罰的損害賠償』
※最高裁平成9年7月11日

<国相互の保証がある(上記『お』)>

ア 解釈 外国判決の判決国が,日本が承認・執行を行うのと同様の条件で,日本の判決を承認・執行することを法的に保証していること
※最高裁昭和58年6月7日
イ 否定された判例 ・ベルギー
※東京地裁昭和35年7月20日
・中国
※大阪高裁平成15年4月9日

3 外国判決→日本における執行|『執行判決』が必要

『承認される外国判決』では,直接強制執行をすることができません。
『債務名義』として認められないのです。
『承認』は,あくまでも『外国判決として』認められた,というものに過ぎません。
強制執行するためには『執行判決』を得るために『訴訟提起』が必要なのです。

<『執行判決』手続>

あ 形式

訴訟の提起

い 審理対象

実質的に『承認の要件』と同様
事実認定・法解釈は対象外(実質的再審査禁止原則)

う 判決(結論)

ア 『強制執行を許す』内容の判決or訴えの却下 ※民事執行法22条6号,24条4項

4 日本の裁判所の判決→外国の財産の差押の方法|『外国判決』のルールと同様

『日本の裁判所の判決→外国で強制執行』ができるのは『国相互の保証』がなされている場合です。
『国相互の保証』の中には『手続が同様』というものも含まれます。
結果的に,『外国判決→日本で強制執行』と同様の手続となります。

<日本の判決→外国で強制執行をする方法>

あ 外国の裁判所で『承認手続』

『判決の承認』という手続
『承認』自体には手続を要しない(自動承認)という国もある(日本と同じ)

い 外国の裁判所に『強制執行』を申し立てる

具体的には,日本の『執行判決』同様の『裁判』手続が必要になることもある

<参考情報>

『月報司法書士2015年1月』p21〜

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