1 ゴーストライターによるコンテンツの利用→『形式的著者』の承諾
2 書籍中の『写真』の利用→『撮影したキャメラマン』の承諾
3 書籍・SNSのコメントの利用→創作的なら著作者の承諾
4 『歌詞』の使用→JASRACへの音楽著作物使用料支払
5 装丁デザイン・装画の使用→制作者の承諾
6 書影(アイコン)の使用→装画制作者の承諾

1 ゴーストライターによるコンテンツの利用→『形式的著者』の承諾

既存の紙の書籍を,電子書籍にする,という場合に問題になる事項をまとめます。
まずは,ゴーストライターが存在する,という場合です。

<既存書籍の『著作者』が不明確である場合(ゴーストライター)>

あ 原則=形式的『著者』を権利者とする

ゴーストライターと『形式著者』の間で合意があったと認定できる可能性が高い
《合意内容の解釈》
ア 『形式著者』を『著者として表記する』
イ 『著作権』は『形式著者』に帰属させる

い ベターな方式

ア ゴーストライター+『形式著者』両方を契約当事者にする
イ ゴーストライターの著作権を『形式著者』に譲渡+著作者人格権の不行使を条項化→調印する

2 書籍中の『写真』の利用→『撮影したキャメラマン』の承諾

(1)原則はキャメラマンの承諾

<既存書籍中の『写真』の利用に関する権利処理|原則>

あ 前提

写真・画像の著作権者=撮影した者
元の書籍の出版社は『写真撮影者=著作権者』から権利譲渡or利用許諾を得ている
いずれも『複製(権)』が対象となっている
電子書籍での利用は『送信可能化権』である
一般的に『新たな電子書籍における使用』は譲渡制限の対象・利用許諾の範囲外とされている
そのまま電子書籍で使用すると『送信可能化権』の侵害となる

い 権利処理

新たに『写真撮影者』から権利譲渡or利用許諾を得る

(2)被写体が著作物→著作権者の承諾

例えば,既存書籍に掲載されている写真が『美術品』である場合,『著作権処理』がもう1段増えます。

<既存書籍中の『写真』の利用に関する権利処理|『著作物』の写真>

あ 権利処理

被写体が著作物の場合,この『著作権者』の承諾も必要
例; 被写体の『著作権者』から『送信可能化権』の譲渡or利用許諾を得る

い 被写体の『著作権者』
人物 『著作権』を持っているか
『被写体=著作物』の所有者
『被写体=著作物』の著作者

ただし,『所有者』が『著作権の譲渡を受けている』場合は,『所有者』と『著作権を持っている』ということになります。

う 例外

公的な場所では一定の条件下で,適法(承諾不要)となる
※著作権法46条

別項目|『屋外設置物』の撮影→公開は著作権侵害にならない;屋外設置の権利制限

(3)被写体が人物(顔・容姿)→人物の承諾|肖像権

人物の顔・容姿については,『肖像権』の対象です。
『著作権』ではないですが,説明に加えます。
要するに『掲載の承諾を得た範囲』によります。
特定の書籍への掲載だけ,なのか,2次的利用として別の書籍への掲載も含めて承諾をもらっているか,ということです。
この点,『形式的な承諾あり』でも,『具体的な使われ方』によっては『承諾の範囲外』と扱う判例もあります。
注意が必要です。
別項目|肖像権侵害は受忍限度などによって判断される

3 書籍・SNSのコメントの利用→創作的なら著作者の承諾

<SNSなどの短いコメントの利用の注意>

あ 短いコメントでも著作権の対象

『創作的』であれば著作権の対象になる
短い場合,『創作性』が否定される傾向がありますが,認められる場合もあります。
詳しくはこちら|『著作物』に該当しない典型例(全体)

い 『書籍』以外の記載(投稿)も対象となる

《例》
ア オンラインの掲示板
イ SNS;twitter・Facebookなど
ウ アプリ上のコメント;757,NewsPicksなど

<SNSなどのコメントを適法に利用する方法>

あ 権利者に承諾を得る

法的には『利用許諾』となる(著作権法63条)
『権利者』に注意が必要
ア 原則
『投稿者』=著作権者
イ 規約による権利処理済の場合
例;twitterでは規約により『複製(権)』等の非排他的許諾がなされている(※1)

い 『引用』の要件を満たす

『出所表示』などの一定の要件をクリアすれば承諾なく使用(転載)できる
詳しくはこちら|『引用』の要件|『利用制限の例外』

<twitter利用規約(上記※1)>

5.ユーザーの権利
ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介して、自ら送信、投稿、または表示するあらゆるコンテンツに対する権利を留保するものとします。
ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿、表示することをもって、媒体または配布方法 (既知のまたは今後開発されるもの) を問わず、かかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配布するための、世界的な非排他的ライセンスを (サブライセンスを許諾する権利と共に) 当社に対して無償で許諾するものとします。

4 『歌詞』の使用→JASRACへの音楽著作物使用料支払

『歌詞』は著作物として著作権の対象です。
これを書籍などの中で使用する場合,著作権者の承諾が必要です。

一般的に,日本では,JASRACが著作権の管理を委託されています。
JASRACを通して著作権者に使用料を支払うことにより,歌詞の使用承諾を得る,という形になります。
出版の過程で複数のプレイヤーがいる場合に,具体的に誰が使用料を支払うか,については,法律上のルールはありません。
実務上,よく行われている形態は次のとおりです。
あくまでも,実態・原則論です。
個別的に異なる場合もあります。

<音楽著作物使用料の支払の実態>

あ 紙の書籍

ア 支払者
元栓主義
→出版者(版元)が支払う方式
イ 使用料(規定)
情報料の6.2%または6.2円の多い方

い 電子書籍

ア 支払者
蛇口主義
→配信事業者が支払う方式
イ 使用料(規定)
情報料の0.2%または0.2円の多い方

5 装丁デザイン・装画の使用→制作者の承諾

<装丁デザインを使用する場合の権利処理>

あ 『装丁デザイン』の法的性格

装丁デザインそのもの=主に配置,については,一般的には著作権の対象ではない
理由;『創作性』が高くはない

い 『装丁デザイン』の構成要素

装画として用いられる写真,絵画,イラスト等は著作物となる
→著作権者の承諾が必要となる

6 書影(アイコン)の使用→装画制作者の承諾

<書影の使用における権利処理>

あ 紙の書籍のプロモーション

装画作成者の個別的承諾不要(原則)
理由;作成・納品段階で黙示的承諾あり

い 電子書籍のプロモーション

装画作成者の個別的承諾が必要となる可能性あり
理由;黙示的承諾の範囲は『紙の書籍だけ』『電子書籍は範囲外』と判断される可能性

要するに,従前の紙の書籍の場合,新聞広告や『インターネット書店(サイト)』に,書影が使われることは,当然に予想されることです。
一方,紙の書籍出版後に『電子書籍化される』ということは想定していない,ということも多いです。
もちろん,契約書で『承諾の範囲』が明記されていれば問題はありません。
そのような明確な取り決めがない場合は,電子書籍化する際,改めて装画制作者から承諾を取っておく方が安全です。

<参考情報>

電子書籍・出版の契約実務と著作権 民事法研究会